到達、最終階層。 〜解除と侵入と〜
本日は第159話を投稿します!
苦難の末ようやく目標の10階層目に着いたウィル達一行! さてここから目的のゴールの場所に行くには?!
-159-
コーゼストの「共生化」の講義を聞いている内に目標の10階層目に到達した俺達。
当面の最終地点である10階層目はこじんまりとした広間になっていて、広間の左右と正面奥の壁沿いにはドラゴンを模したらしき白い石像が3つ置かれており、壁面に描かれた彩色豊かな壁画や古代魔導文明の古代文字と併せて、この場に似つかわしくない強い魔導照明の灯りに浮かび上がる様に映し出されている。
その中央には水晶が嵌め込まれた管理端末が置かれていた。
トゥ・シンイェン女史から聞いた話だと、昔はこの広間には財宝や魔道具等が所狭しと置かれていたらしい。
それ等は途中の階層にあった財宝共々、探索した冒険者達が根こそぎ持って行ったらしく、『黄昏の城』は偶に見つかる隠し部屋で見つかるお宝と格上げする以外は、あまり旨味が無い迷宮になってしまったのだそうだ。
「でもこれはまた壮観ね……」
「ええ、そうね……」
アンとエリナがあまりの壁画の見事さに溜め息を漏らす。それはまぁ、ここまで到達しないと見れない光景だしな。他のメンバーも辺りを見回している。
「絵は綺麗だけどお腹が膨らまないのはねぇ〜」
ヤトさんは相変わらずのブレが無い発言をしている──あとで鎧水牛の肉をステーキにしてやるから暫し待て。
「さてと……グラマス、あとは任せた。ここから先はあんたが頼りだ」
俺はオルガ女史にそう声を掛け、彼女は「任せたまえ」と一言言うと迷いなく右手側のドラゴンの石像に向かい、その両目の部分に腰袋から取り出した小振りの魔核を嵌め込むと奥の石像に向けて頭を動かす。
そして今度は左手側の石像に向かうと同様の事をして、やはり奥の石像に向けて頭を動かす。そして最後に奥の石像の口に魔水晶を咥えさせる。
『あれは──『精霊の鏡』で回収した記録核ですね』
コーゼストがオルガ女史の邪魔にならない様に念話で話し掛けて来るが──あの時に回収した記録核はここで使う為でもあったんだ。まぁ恐らくは記録核にその事が書かれていたんだろうが。
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そんな事を思っていると、左右の石像の両目に嵌め込まれた魔核が輝きを放ち始め、同時に奥の石像の口に嵌め込まれた記録核からオルガ女史目掛けて眩しい光が放たれた。その光は彼女の事を調べているみたいに身体の上をなぞって行く。
『あれは、走査の光ですね。恐らくはグラマス殿が本人がどうかを確認しているのだと思われます』
再びコーゼストが念話による解説をしていると、何処からともなく声が聞こえて来た。
《悠久の時を超えし時の紡ぎ人よ、汝の名を示せ》
「オルガ・ロラ・セルギウス」
どうやらこれを想定内だったらしくオルガ女史はハキハキと答える。
《被験者番号は?》
「冷凍睡眠実験、被験者番号第001号」
《合言葉を》
「旅路の果て、白き古竜は詠う」
謎の(?)声の質問にオルガ女史が全て答え終えると、正面奥の石像がガコンと言う音と共に床ごと壁へと収納され、下へと降りる為の階段が姿を現した。どうやら彼女はオルガ女史本人と確認され、封印が解除されたらしい。それと同時に左右のドラゴンの石像の口が開き、何かの鍵らしきモノも2つ姿を現す。
オルガ女史は「はァ……」と大きく息を吐くと、その鍵を回収してから此方の方を振り返り
「さてと皆んな、行こうじゃないか」
とこれまた良い笑顔でそう宣うのであった。
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下へと降りる階段通路は照度の低い魔導照明で照らされており、何とか足元が見える程度であった。しかも割と急な角度で下降しているので全員で慎重に歩を進める。
そして歩く事約10分、階段は不意に終わり短い回廊の先に2枚扉が現れた。扉の前まで進むとオルガ女史から先程の鍵をひとつ手渡され
「それじゃあウィル君、君はこの鍵を其方の鍵穴に差し込んで僕と同時に解除してくれないかい?」
と頼まれてしまった。何でも左右にある鍵穴に鍵を差し込んで同時に回さないと施錠を解除出来ない構造になっているらしい。
何と言うか古代魔導文明人は変な所は慎重なんだな!? 等と思いつつも受け取った鍵を右の鍵穴に差し込む俺。
「──良いかい? イチニーのサンで右に回すんだよ。それじゃあ──1、2、3!」
オルガ女史の掛け声と同時に鍵を右に回す。するとガチャンと言う音が響き、目の前の扉が左右に別れながらゆっくり開いて行く。やがて完全に開き切ると、内側からひんやりとした空気が流れ出して来た。扉の向こう側は薄暗かったが、俺達が一歩中に踏み込むと魔導照明が点灯し薄闇の室内を明るく照らし出した。
室内は嘗てルアンジェが封印されていた『混沌の庭園』の魔導人工頭脳「アルカ」の施設に良く似ていて、様々な機械類が置かれており又、様々な魔道具が所狭しと置かれていた。
そして部屋の中央にはルアンジェが寝ていた繭の様な密閉容器がポツンと置かれている。
これはラファエルを連れてきたら一生ここから動かなくなる光景であった。
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目の前の光景に目を奪われていた俺達だが、ここで俺に1つの疑問が浮かんだのでオルガ女史に質問して見る。
「なぁグラマス、この部屋に来るまでにあんなに一杯ややこしい事しなきゃ来れないのに、アンタを見つけて連れ出した冒険者達はどうやってこの部屋に入って来れたんだ?」
「ああ、それはね──」
俺の質問に苦笑いを浮かべると天井の一点を指差すオルガ女史。
「僕を助けてくれた冒険者パーティーは、9階層目に設置されていたこの部屋へと続く縦坑から落ちて来たんだよ」
指差す先には天井にぽっかりと開いた穴が。どうやらアレがその縦坑らしい。
「恐らくこの部屋の中の換気の為と非常通路みたいなんだけど、肝心の梯子は9階層目から降ろして来ないと使えないらしくて、うっかり落ちたんだそうだよ。何せ僕以外では中からも外からも出入り出来ない様になっていたから大変だったみたいだね」
それを聞いて成程そうなのかと納得する、が新たな疑問が?
「ちょっと待て。それじゃあどうやってここから出たんだ?」
「その時のパーティーの魔法士がね、拠点帰還と言う稀有な魔法を使える魔法士だったのでそれでこの部屋から脱出したのさ」
何やら思い出深げな表情をしながらそう話すオルガ女史。こちらとしては疑問が解けてスッキリしたが。
と言うか、その冒険者パーティーもツイているんだか不運だったのか…… 。
『お話が盛り上がっているところ申し訳ないのですがマスター、グラマス、アン達をすっかり放置されていますが?』
そんな時に徐ろにコーゼストからツッコミが入る。しまった、つい話に夢中になってしまった! 恐る恐る後ろを振り返るとアン以下のメンバーが苦笑いを浮かべていた。
「御主人様ぁ、お仕事しないの?」
そしてヤトからはまさかの真っ当な指摘が入る。お前に言われるとは思わなかったぞ?!
「あーっと、皆んな、スマン!!」
開口一番、謝罪の言葉を口にする俺。それを聞いてアン達は笑顔で許してくれたが──アン、その「いつもの事よね」と笑いながら言うのはやめてください。
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「えへん、そ、それでこれからどうするんだ?」
とりあえずこのままと言う訳にも行かず、俺は軽く咳払いをすると改めてオルガ女史に指示を請う。
「そうだね、兎に角この部屋に収められている品物は全て僕に遺された物だから、何があるか皆んなに調べてもらいたいな。コーゼスト殿には皆んなが見つけてきた物の鑑定と無限収納への収納をお願いするよ。勿論それぞれ種別に分けてもらえればなお良いんだけどね」
オルガ女史は笑顔でそう宣い、それを受け俺の肩の上の定位置に腰掛けるコーゼストは
『そう言う事でしたら私の得意とする所、万事お任せ下さい』
とドヤ顔で無駄に見事な双丘を張る。つまりはコーゼスト頼りだと言う事である。まぁ俺達は専門家じゃないんだから壊れている云々なら兎も角、何に使う為の魔道具なのかとか聞かれてもさっぱりだからな。そこは適材適所と言う訳か。なるほど、な。
「聞いての通りだ。皆んなで手分けしてこの部屋にある魔道具を回収するぞ」
「「「「「「「はいっ!」」」」」」」
オルガ女史の話を受けてアン達メンバーに指示を出す。まぁ一緒に話を聞いていたから理解しているのだが、そこは様式美である。アン達も心得たもので元気良く返事を返してくれる。
「はぁい、わかったわぁ! いつかみたいに面白いの探せば良いんでしょ?!」
その横ではヤトさんも元気良く返事をしているが……何なんだ、面白いって?!
『まあヤトは以前『精霊の鏡』で活躍しましたしね』
「そらまぁ、そうなんだが……」
だからと言って面白いのとかは無いわぁ……はァ。
思わず心の中でヤトにツッコミを入れている間にも皆んな、部屋のあちこちに置かれている魔道具に向かって散っていく。無論オルガ女史も含めてである。
さて……と、俺も手頃な魔道具を確認して来るとするか。
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この部屋に置かれている魔道具は思いの外綺麗な状態で保存されていた。
俺が先ず近寄って見ていたのは、ずばりゴーレムである。と言っても魔物のゴーレムでは無くヒトが創り出したゴーレム、云わば魔法工学の塊だ──専門家では無いので何とも言えないが、とにかく一言で言うと機械っぽい。まぁうちのデューク達やスクルドを見慣れている所為もあるんだろうが、如何にもヒトが作りました感がある。
『まぁデューク達は生きた鉱物で構成された魔物ですからね。それにしてもこの型のゴーレムは初めて見ました。私の記録に残されているのは違うタイプのゴーレムです。ですが所々に古代魔導文明の様式が見受けられます──恐らくは最新型かと推測します』
俺と一緒に調べていたコーゼスト先生がそう宣う。と言うかまさかの最新型か──まぁ約990年前のだけど。それが6体整然と並んでいるのはなかなかに壮観ではある。だが…… 。
「馬鹿な質問良いか、コーゼスト?」
『なんなりと』
ふと頭の隅に浮かんだ疑問を尋ねる俺。こればかりはコーゼストに確認しないと何とも言えないからな。
「これって全部無限収納に入れられるのか? と言うか入れるゆとりがまだあるのか?」
そうなのだ。幾ら何でも入るとは言っても今でも色々と入れているのに入り切るのか、と言う疑問である。因みにゴーレム1体の大きさは身丈2メルトぐらいか。それを6体ともなれば結構な質量である。
『問題ありません。現在供給されている魔力ならこの部屋全てを収納してもまだお釣りがきます』
「結構入るな──って、ちょっと待て。お前に供給されている魔力って俺のじゃね?」
全く問題無いと言うコーゼストの答えに安堵するが──いま不穏な文言が無かったか?!
『そうですが? 他に誰の魔力を貰えると?』
「だから俺の魔力はお前のメシじゃねぇーーーっ!」
しれっと宣うコーゼストに全力で突っ込む俺!と言うかコイツの無限収納がやたらデカいのは俺が原因かよ!
「ウィル君、ちょっと良いかな?」
毎度お馴染みのやり取りをコーゼストと交わしているとオルガ女史から呼ばれた。ブツブツ言いながらも彼女の所に向かう俺。
「何だ、グラマス?」
俺の無愛想な物言いにも笑顔を崩す事無くオルガ女史は
「わざわざ済まないね。実はこれなんだけど……」
そう言ってちょいちょいと指で指し示す。何だろうとその指す先に視線を向けると──
「──自動人形?」
そこにもルアンジェの時と同じ様な密閉容器が置かれており、中にはヒトらしき影が垣間見れたのである。
本来ならやたら面倒臭い手続きを踏まないと入る事も出る事も出来ない古代魔導文明の遺跡! 250年前に偶然ここに入れたのはやはり運が良かった……のでしょうか?
そしてその遺跡に眠る自動人形(?)は一体何なのか? その辺は次回明らかに!
*拠点帰還…………短距離転移魔法。ダンジョン内から拠点とした地点に転移出来る。
☆2021年1月1日から1月3日の3日に渡り「なぜか俺のヒザに」スピンオフ!を公開します! 其方もお楽しみに!
http://book1.adouzi.eu.org/n0542fy/
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルのヤンデレブラコン妹のアドルフィーネのイラストを第107部本編百一話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




