表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
思えば東方に来たもんだ編!
170/330

女王撃破! 〜反間苦肉の覚悟ありき〜

本日は第158話を投稿します! 女王蛾亜人(モスクイーン)との決着やいかに?!

 -158-


 俺を包み込む女王蛾亜人(モスクイーン)特殊な匂い(フェロモン)


 一瞬鼻腔(びこう)(くすぐ)ったのは胸焼けしそうになるほど甘ったるい匂い──その匂いを()いだ瞬間、脳天が(しび)れる様な感覚に襲われた! その痺れは脳天から首筋、背筋を駆け抜け、動悸が激しくなると共に呼吸が乱れてくるのが判る! すぐさま鼻の奥に血が集まり、鼻血が出そうな感覚にも(とら)われる! 目の前にいる女王蛾亜人(モスクイーン)が物凄く愛おしく魅力的に見えて来て視線を離せなくなる! 欲しい──目の前にいるこの(メス)が!

 そう思考した瞬間、身体の中の血が(たぎ)るのを自身で知覚する! その次の瞬間、俺はカイトシールドに隠された左手の拳をグッと力一杯()()()()()()


『クスクスクスッ、さぁいらっしゃい。私の元に』


 女王蛾亜人(モスクイーン)は青白い(はね)と両手を広げ、甘美な声で俺を(いざな)う。

 その声に反応する様に足が一歩また一歩前に進み出る俺。


「ウィル!? しっかりして!」


「ウィルッ! しっかり!」


「ウィル!! 負けんなァ!!」


 アンやエリナ、レオナの必死な叫び声が聞こえてくる。その声を耳の奥に聞きながらもまた一歩また一歩と歩を進める俺。


「ウィルーーーッ!!!」


 アンの泣き声の様な叫び声が耳に届く──そんなに泣かなくても大丈夫だゾ? 心配するなアン。


『クスクスッ、そうよ、良く来たわね』


 俺の目前には勝ち誇った様に笑みを浮かべる女王蛾亜人(モスクイーン)が! 奴は勝利を確信したみたいに俺の両肩に手を掛けて来る──だがそれこそ俺が待っていたモノなのだ!


 俺は女王蛾亜人(モスクイーン)の目前で、カイトシールドに隠して素手で()()()()握り締めていた長さ10セルト程の手投小刀(スローイングナイフ)を握り直すと、そのまま躊躇(ちゅうちょ)無く自身の左の太腿(ふともも)に突き立てた! 鮮血が傷口から心臓の鼓動と共に()き上がり、下袴(ズボン)の表面を真っ赤に染め上げると左足から身体に激痛が走る!


 それと同時に匂い(フェロモン)の影響で(にぶ)っていた身体全ての感覚が一気に覚醒し、女王蛾亜人(モスクイーン)の勝ち誇った顔をはっきりと視界に(とら)える俺!


 少し惑わされたが──ここから反撃開始だッ!!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『なっ!? 何を?!』


 目の前で獲物にしようとしていた俺の一連の行動を見ていた女王蛾亜人(モスクイーン)は、驚きのあまり声を上げる。それはそうだろう、両手で俺の両肩を掴み、自分の胸に()(いだ)こうとしている最中だったのだから。


 そんな女王蛾亜人(モスクイーン)の驚く顔を見上げながら、俺はニヤリと笑って


「──残念だったな」


 そう一言告げると、その豊満な胸目掛け右手に持った刀剣(セイバー)を突き立てる! ズブズブと嫌な音を立てながら女王蛾亜人(モスクイーン)の体内に食い込んで行くセイバー!


『グッ?!? ギィヤャャァァァーーーーーー!!』


 自分の胸に(セイバー)が突き立てられるのを(ほう)けて見ていた女王蛾亜人(モスクイーン)が、突如として絶叫を上げる!


「今だッ!!!」


 その絶叫に負けじと大きな声で怒鳴る俺! すると背後から聞こえてきたのは魔法の言霊(ことだま)を叫ぶアン達の声!


「──雷霆三叉戟(ボルテック・トライデント)!」


「──真紅豪炎槍(クリムゾン・ランス)!」


「──滅光断閃(モータリティ・バスター)!」


「──射程距離射入(エンゲージ)──魔導火砲(マギア・イグナイター)最大出力発射(マキシマムファイア)


「──猛炎爆槍(イグニス・ランス)!」


 アンの、フェリピナの、マルヴィナの、そしていつの間にか封印解除(アンシール)したルアンジェとオルガ女史(グラマス)の声が重なり響く! そして!


「いっけぇー! 霹靂乃衝撃(ボルテック・インパクト)ォォ!!」


「グルオォォォォォーーーン!!」


 更にヤトとファウストの咆哮がそれ等に続けて聞こえ、背後から凄まじいまでの破壊の奔流(ほんりゅう)が迫り来るのを感じる!


 今度こそ決める──!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『ぐうぅぅぅ、こ、小癪(こしゃく)なァーーー!』


 アン達が放った攻撃に焦った女王蛾亜人(モスクイーン)は、セイバーに胸を突き刺されたまま顔を(ゆが)ませながらそう言い放つと、俺を引き()がす事を止め自分の周りに激しい風を(まと)わせ始めた──ヤトの「竜の咆哮(ドラゴンブレス)」をも防いだあの『螺旋風繭(スパイラルコクーン)』である! だがな、俺も()()()居るんだよ!!


 女王蛾亜人(モスクイーン)の胸からセイバーを引き抜くと背後を振り返り、周りを旋回し始めていた風に意識を集中して()()俺。すると風の流れに沿って走る魔力の()()が見えて来る! その連鎖(れんさ)()()箇所を探すと──見えた! 見えた箇所目掛けセイバーを鋭く振り抜く俺! 確かな手応えがあり、連鎖を絶たれた魔法の風は(たちま)ち霧散する!


『なっ、なにぃ?!?』


 突然自身を(まも)るべき風を()き消され、驚愕の声を上げる女王蛾亜人(モスクイーン)

 その刹那、俺は女王蛾亜人(モスクイーン)の身体に蹴りを入れ彼我(ひが)の距離を取り、自らの体を半回転(ひね)る様にし床にうつ伏せる!

 それと同時に破壊の奔流が女王蛾亜人(モスクイーン)に到達する! 女王蛾亜人(モスクイーン)の身体が轟雷と豪炎に焼かれ、閃光と衝撃波がその身を撃つ!


『ガガッ?! グウゥゥゥァァァァァァァァァ……』


 アン達の多重攻撃をその身に受け、激しい炎に焼かれていく女王蛾亜人(モスクイーン)。それをただぼんやりと見上げている俺。至近距離での爆発に巻き込まれたので背中や(くび)等を焼かれたし、(みずか)らが刺した左腿や抜き身の刃を握り締めズタズタに切れた左手がズキズキと激しく痛む。


 かなりの強敵だったが、何とかなったな──等と怪我や火傷の痛みで良く回らない頭で考えていると


『素体質量、虚数変換開始』


 女王蛾亜人(モスクイーン)の焼かれていく身体が、いつの間にか実体を顕現(けんげん)したコーゼストの台詞と共に()()()()に包まれる!


『変換完了──収納(ストレージ)


 次のコーゼストの台詞で女王蛾亜人(モスクイーン)はその姿を光へと変換され、妖精体(フェアリーモード)のコーゼストの体へと吸い込まれて行くのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ウィルッ!!」


 どうにか女王蛾亜人(モスクイーン)退(しりぞ)けた俺の元にアン達が血相を変えて駆け寄って来る。俺は床にへたり込みながら、ふよふよと空中に浮遊しているコーゼストに語り掛ける──まだ左腿が痛くて立ち上がれない。


「アイツは従魔(フォロー)にするんだ……」


『はい、あの女王蛾亜人(モスクイーン)には明確な自我がありました。それに私の申し出を聞き入れましたからね。それにあれほど手強かった魔物をむざむざ死なせるのは()しいと思いまして』


「まぁその辺の判断はお前に任せているが……」


 コーゼストの(もっと)もらしい理由に苦笑するしかない俺。そんな事をしている間にも駆け寄って来たアンとマルヴィナに怪我の程度を()て貰っていたりする。


「ウィルッ! 良かったぁ……」


 より正確にはアンに絶賛抱き着かれている真っ最中である。頼むからそんなにきつく抱き締めないで欲しいんだが──結構地味に痛い。


「貴方が女王蛾亜人(モスクイーン)に引き寄せられる様に近付いたと思ったら、いきなり自分の腿をナイフで突き刺すんですもの。本当に生きた心地がしなかったわ……」


 そう涙目で訴えてくるアン。その様子を見るにつけて悪い事をしたなと自戒すると


「……ごめん、アン」


 セイバーを離した右手をそっとアンの頭に乗せて、優しく()でながら謝罪の言葉を口にする俺。そこにはいつの間にか2人の世界が出来上がっていた。


 この際、同じ(かたわ)らで俺の怪我の程度を診ながら何とも言えない顔をしているマルヴィナには申し訳ないが。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺に頭を撫でられて復活したアンさんが改めてマルヴィナと2人で俺の怪我の治療を施してくれ、(ようや)く立ち上がる事ができた。


 その様子を少し離れた所に居たエリナとレオナが、俺の回復を見て思いっきり抱き着いて来て「アンと同じ様に頭を撫でて欲しい」と言ってきた。無論ちゃんと撫でてやった事は言うまでもない。


 2人がホクホク顔で離れて、ホッと息を吐く間もなく今度は


御主人様(マスター)ァ〜♡無事で良かったァ〜」


 ヤトの突撃を背後からモロに受けた。だから軽鎧(ライトアーマー)を着けたまま突撃して来るな! 衝撃が本当に半端ないンだぞ?!


 俺が痛がる素振りを見せても遠慮する事無く抱き着いて来るヤトの顔をよく見ると、金色の瞳が今にも泣きそうに見開かれていた──どうやら本気で心配してくれていたみたいである。まぁヤトはラミアなので涙は流せないらしいが。兎に角心配掛けた事は悪いとは思うのだが──俺の体を自分の蛇身で締め上げる(ホールドしてくる)のはやめてくれ!


 そのヤトをどうにかこうにか引き剥がすと、今度は背中にポスンとした軽い衝撃が?! 振り返って見ると、そこにはルアンジェが背後から抱き着いていたのである。


「ルアンジェ?」


「私、とても心配したの。ウィルはもう大丈夫よね?」


 俺の声にそう返してくるルアンジェにちょっと驚く。この子はこの迷宮(ダンジョン)での数日間で更にヒトっぽく、いや年相応の少女みたいな反応をする様になってきている。そうは思いながらも何となくその反応を嬉しく感じ


「ああ、ルアンジェにも心配掛けたな。ごめん」


 その頭に手を乗せてこれまた優しく撫でると


「ん」


 短い反応ではあるが嬉しそうな声が返って来る。


 何となくだがルアンジェの頭と尻に犬耳犬尻尾が見えるのは、これもまた何時(いつ)もの事である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ウィル君、ご苦労様だったね! かなりの難敵だったけど、もう大丈夫かい?」


 ルアンジェが頭を撫でられ満足して離れると、続けてフェリピナ、マルヴィナ、スサナの3人が口々に俺の名を呼びながら、これまた抱き着いてきた。勿論彼女らも頭を(なで)ぐってやったが。


 そんな事をようやくし終えるとオルガ女史(グラマス)が明らかにホッとした顔を見せながら俺の方に近付いてきた。もちろん(そば)にはゾラが付いている。


「それに初めて見たよ、コーゼスト殿が魔物を()()にする瞬間を。ファウスト達の時もああだったんだね。話には聞いていたけど現実に目の当たりにすると何とも凄いものだね」


 続けてそんな事を(のたま)うオルガ女史。そういやオルガ女史は話だけでコーゼストの「共生化」を目の前で見るのは初めてだったな。


『まぁ私もこの姿を得てからの「共生化」は初めてなんですが』


 浮遊するのを止め定位置の左肩の上に降りながらコーゼスト先生がそんな発言をしている。なので()()()()()なるとは思っていなかった、とはコーゼストの弁である。

 まぁさっきの()()視覚(ビジュアル)的にはなかなか綺麗ではあったが。


「それで? これから取り込んだ魔物はどうなるんだい?」


 コーゼストに対してそんな思考(考え)をしていると、続けざまに質問を投げ掛けてくるオルガ女史。そういや俺も、その辺はどうしているのかコーゼストから聞いた事が無かったな、等と思って女史ともども黙ってコーゼストの話を聞く姿勢を取るのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 とりあえずは『黄昏(ムー・グォン・)の城(ズィー・チャヴ)』の最下層である10階層目に進む事にし、俺は歩きながらコーゼストの話に耳を傾ける事にした。いつの間にか俺やオルガ女史のみならず、アン達も興味津々な顔をしている。


『先ず私の中に収納した魔物は戦闘による怪我や身体の欠損のみならず、()()()()()()をも()()する所から始めます』


 そうこうしている内にコーゼストの講義が始まった。


『その修復をマスターの魔力を使い修復する事により、マスターの情報(データ)を文字通り身体と魂魄(こんぱく)に刻みつけます。そうする事でマスターと魔物との上下関係を決定付けるのです。それに伴いマスターの魔力との繋がりを構築します。同時に高次元(こうじげん)魂魄(こんぱく)連結術式(れんけつじゅつしき)比翼連理(メリトゥル・バウス)』でマスターと魔物の魂魄を連結します』


『……何となく俺の魔力が麻薬扱いされている気がするんだが?』


『気の所為(せい)です』


 俺のツッコミを軽く()なすコーゼスト。


『──続けます。そうして身体魂魄共に修復された魔物は基本マスターに対し随順(ずいじゅん)となり、完全にマスターの支配下に置かれる事になるのです』


 ……間違い無く俺の魔力は完全に中毒性が高い麻薬扱いを受けている! 同じ話を聞いていたアン達やオルガ女史も顔を引き()らせているし。思わず抗議の声を上げようとすると


『マスターウィル、皆さん、10階層目に到着しました』


 コーゼストの台詞で気が付くといつの間にか下降通路を終え、空間が目の前に広がっていた。


 俺達は遂に当面の目的地である10階層目に到着したのである。


 兎にも角にも仕事はきちんとするが──まださっきの話への俺の抗議は生きているからな、コーゼスト!



苦難の果て遂に女王蛾亜人(モスクイーン)を倒す事に成功したウィル! 文字通り満身創痍の勝利ですが何とかなりました! そして女王蛾亜人(モスクイーン)をも仲間にしてしまうコーゼストの強かさ! ウィルのパーティーはますます大所帯になって来ました!


滅光断閃(モータリティ・バスター)…………数少ない聖属性の極大攻撃魔法。聖属性の魔力を超高圧縮し変換された熱光でビームの如く相手を撃ち貫く。撃たれた相手は一瞬にして塵芥と帰す。


猛炎爆槍(イグニス・ランス)…………炎属性の極大魔法。爆裂魔法(エクスプロージョン)の爆炎を槍と化し相手に打ち出す。爆炎は命中後、相手の体内で爆ぜる。


霹靂乃衝撃(ボルテック・インパクト)…………ヤトが使える風属性の極大中範囲攻撃魔術。激しい雷撃の嵐で効果範囲にあるあらゆる物体を粉砕・焼却する。範囲は設定出来る。


反間苦肉(はんかんくにく)…………肉を切らせて骨を断つと言う意味の四文字熟語。


☆2021年1月1日から1月3日の3日に渡り「なぜか俺のヒザに」スピンオフ!を公開します! 其方もお楽しみに!


http://book1.adouzi.eu.org/n0542fy/


☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルのヤンデレブラコン妹のアドルフィーネのイラストを第107部本編百一話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!


いつもお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818401577&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ