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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
思えば東方に来たもんだ編!
169/330

脅威!モスクイーン 〜攻略への方略〜 (☆イラスト有り)

本日は第157話を投稿します!

今回は蛾亜人(モスマン)、そして女王蛾亜人(モスクイーン)との戦闘開始です!

 -157-


「『ヴェン・フォック──風よ、封じよ』風陣(エクイップ・エオリエンヌ)!」


 アンが蛾亜人(モスマン)の群れ目掛け、風の精霊魔法を解き放つ! アンを中心に強風が生まれ、それが通路一杯に拡がりながら蛾亜人(モスマン)の群れへと押し寄せる!

 突然の強風に身動きが取れない蛾亜人(モスマン)達! どうやら慌てているみたいなのだが、ヒトみたいな()()()()、首の付け根に当たる部分に真っ赤な大きい目があるだけなので表情が読めない。


『──『複写(リプロダクション)』。アン、魔法を解除しても大丈夫です』


 コーゼストがアンの精霊魔法を即座に引き継ぎ続けて発動させる!


「──行きます(ゲーエン)


 それと同時に群れ目掛け駆け出すデューク達ゴーレム! そして群れの中に突入すると腕を伸ばして、近くに居た蛾亜人(モスマン)の1体の脚を無造作に掴み、(ちゅう)から引き()り下ろす! 配下(サポーター)ゴーレム達も手当り次第に蛾亜人(モスマン)を空中から床に引き摺り下ろしている! デューク達は見事に相手を撹乱(かくらん)する事に成功した!


「今だっ!!」


 アンの魔法発動と同時にデューク達と共に前進していた俺達は、俺の台詞で床に引き摺り下ろされた蛾亜人(モスマン)目掛け各々(おのおの)攻撃を仕掛ける!

 エリナの炎の斬撃が、レオナの鋭い拳撃が蛾亜人(モスマン)を討ち、ヤトの薙刀(グレイヴ)が、ルアンジェの鎌剣(ハルパー)が、スサナの短剣(グルカナイフ)(きら)めきを放ちながら蛾亜人(モスマン)を両断し急所(ウィークポイント)を深く切り裂いて行く!


 それにより更に混乱の度合いを深める蛾亜人(モスマン)達! 盛んに「キュー!」とか「ピーッ!」とかと言う声が聞こえる! アイツらは鎖骨付近にある両目の間に大きな口があるんだが、普段は体毛に隠れて見る事が滅多に無い。


 そして俺の空裂斬(アギト)が、ファウストの爪撃破が、フェリピナやオルガ女史(グラマス)、マルヴィナや戦列に加わったアンの火炎槍(フレイムランス)輝光十字射(クロスレイ・ランサー)リュシフェル(魔導小火砲)Heat(ヒート) Blaster(ブラスタ)が一斉に蛾亜人(モスマン)の群れに追撃として襲い掛かる!


 例えAやA+ランクであろうと、この一斉攻撃に(あらが)える訳もなく、女王蛾亜人(モスクイーン)(まも)る様に周囲を飛んでいた蛾亜人(モスマン)の群れは呆気なく殲滅(せんめつ)された──残るは問題の女王蛾亜人(モスクイーン)のみ!


 俺は一旦デューク達を後退させ、女王蛾亜人(モスクイーン)との戦闘に備えるべく全員の態勢を整えるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 コーゼストがアンの精霊魔法『風陣(エクイップ・エオリエンヌ)』を複写(リプロダクション)して発動させている間に前衛で戦っていたエリナ、レオナ、ヤト、ルアンジェ、スサナをマルヴィナが回復させ、魔法を使うオルガ女史(グラマス)達後衛組の魔力の残りを確認、デューク達が自身が受けた損傷を再生(リジェネレイト)するのを見届けると、改めて女王蛾亜人(モスクイーン)に対峙する俺達。


 強風で問題の匂い(フェロモン)もこちらには届いていないみたいで、俺もファウストも今のところ落ち着いている。


 それでも用心に越したことはない。俺達は通路一杯に展開すると、ジリジリと接近を開始する。接近して見てわかったのだが女王蛾亜人(モスクイーン)は、その青白い(はね)で自らの体を(まゆ)の様に包んでじっとしている──まさか休眠している、のか?


 だが良く見ると、翅の繭から突き出た櫛歯(くしは)の様な触角がピクピクと震えているのが見て取れる。どうやら起きてはいるみたいである。

 そして俺達との彼我(ひが)の距離が15メルトほどまでに縮まった時──


『──クスクスクスッ』


 不意に聞こえて来た笑い声に、一瞬で俺達の間に緊張が走る! 次の瞬間に女王蛾亜人(モスクイーン)が翅の繭をゆっくりと拡げ始め、そして──


『久しぶりに沢山のヒトの匂いがすると思ったら──こんなに来たのね。それに強そうな黒い(ケモノ)岩人形(ゴーレム)と、凄く強そうな女人蛇(ラミア)も一緒。しかもオトコのヒトも居るなんて、何てツイているのかしら』


 褐色(ブラウン)の前縁がある三角形の前翅(ぜんし)と、下が尾の様に伸びた後翅(こうし)を完全に拡げた女王蛾亜人(モスクイーン)が、瞳の見えない黒一色のみの眼をこちらに向けながらクスクスッと嬉しそうに声を漏らす。


 他の蛾亜人(モスマン)とは違い意外と整った顔があり、その身体は白い体毛に覆われつつも、女性特有の起伏に富んだ体をしている。まぁ当然だが衣服の(たぐい)は全く着けていない。


 しかし……ヤトもそうだったが、コイツもヒトの言葉を使うのか!? 流石はSランクだと、俺は妙な所で感心していたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『クスクスクス、では遊びましょうか』

挿絵(By みてみん)

 俺が場違いな事を考えていると女王蛾亜人(モスクイーン)が一言そう口にし、スッ……と右手を前に差し出す──その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走る!


「ッッ!? コーゼスト!!」


『了解。魔法障壁(マジックシールド)及び物理結界(フィジカルバリア)多重(マルチプル)最大範囲(マキシマムレンジ)展開へ(・エクスパンション)


 俺の叫びと同時に即座に多重結界を展開するコーゼスト! 一瞬の間を置いて表面の魔法障壁(マジックシールド)女王蛾亜人(モスクイーン)が放った無数の()()()が激突して()ぜる──いつの間に放ったんだ?! アン達もあまりの事に驚きを隠せずにいる。


『あらっ? それは意思ある(インテリジェンス)魔法具(・アイテム)? それにしても大したものね。並のヒトならこれでカタがついているんだけど? 随分と勘が良いのね、アナタ』


 そう言うとまたクスクスと笑う女王蛾亜人(モスクイーン)


『──魔法の発動状況から推測。敵女王蛾亜人(モスクイーン)は「無詠唱(ノンキャスト)」が使えるみたいです』


 無詠唱(ノンキャスト)──それは文字通り詠唱はおろか言霊(ことだま)すら使わない魔法士の超高等技術である。

 アンやフェリピナ、ヤトほどの腕前になると「詠唱破棄(アバンキャスト)」が普通なのだが、それでも魔法の名を魔法発動の(キー)として口ずさむものなのだ──とは昔、師匠から「魔法士と対峙した時の対処には魔法の事に詳しくならなければならない」と叩き込まれたのを思い出す。

 なので当然、無詠唱(ノンキャスト)使いとは初めて会った訳なのだが、こんなにヤバイものだとは思わなかった! 不可視の風の槍をあんなに一度に大量に、しかもコーゼストが吹かせている強風の中を、である。


 改めて目の前でクスクスと笑っている女王蛾亜人(モスクイーン)が強敵なのを思い知らされた──コイツは油断するとこっちが()られる!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そうしている間にもコーゼストが張り巡らせた魔法障壁(マジックシールド)の表面に女王蛾亜人(モスクイーン)が生み出す風槍(ウインドランス)が幾度となく爆ぜる音が響き渡る!


 もちろんこちらからも反撃の火炎槍(フレイムランス)雷撃槍(ボルテックスランス)をアン達が撃ち込んでいるのだが、それ等は全て女王蛾亜人(モスクイーン)が展開する魔法障壁(マジックシールド)(はば)まれ届く事は無かった。

 しかも奴は魔法障壁(マジックシールド)を展開しつつ同時に魔法攻撃を放つと言う芸当を(こな)しているのである──まぁうちでもコーゼストがアンの『風陣(エクイップ・エオリエンヌ)』を引き継いで発動させつつ防御結界を張っているんだが。コーゼストが言うにはこうした幾つのも魔法の同時発動の事を多重処理(マルチプル)と言うらしい。


 だがこれでは付け入る隙が無いのも確かである。ならば──!


『ヤト、『竜の咆哮(ドラゴンブレス)』を奴に叩き込め!』


『えっ!? やって良いの?!』


 俺の念話での指示に思わず念話で聞き返してくるヤト。そんなに意外な事か?


『構わん! 思いっきりやってやれ!』


『う、うん!』


 思わぬ俺の許可に意気揚々(いきようよう)と返事を返して来るヤト。そして(おもむ)ろに俺達より前に進み出ると深呼吸を数回繰り返し、そして!


「グゥゥゥーーー、グルオォォォーーーーーーーーーー!!!」


 口がガパッと裂けるほど開くと凶暴な咆哮(ほうこう)を上げるヤト! 同時にその咥内(こうない)から放たれるのは(まばゆ)いまでの輝きを放つ息吹(ブレス)! それは巨大な破壊の奔流(ほんりゅう)となって女王蛾亜人(モスクイーン)目掛け押し寄せて行く!


『な、何ですってーーーーーェ?!?』


 突然の強力な反撃に初めて狼狽(うろた)える女王蛾亜人(モスクイーン)を、ヤトから放たれた破壊の奔流はその輝きに叫び声すら共に呑み込んでいったのである。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ヤトが放った破壊の奔流がその輝きを徐々に失い、やがて迷宮(ダンジョン)の通路に静寂が戻り始める。


「や、やった……の?」


 エリナが(かす)れた声でそう(つぶや)く──エリナさん、それは伏線(フラグ)だぞ?


 そんな事を思いつつも通路の奥を注視する俺。すると竜の咆哮(ドラゴンブレス)が完全に消え去った通路の奥に、激しく渦巻く風の()()の様なものが!?!

 驚く俺達の目の前で風の(まゆ)は表面から次々と解けて行くと、中からは女王蛾亜人(モスクイーン)が無傷で姿を現した!


『クスクスッ、はァ、流石にさっきのは慌てたわね。あと少し『螺旋風繭(スパイラルコクーン)』を(まと)うのが遅れたら、流石に私が危なかったわ』


 そう言うと再びクスクスと愉快そうに声を漏らす女王蛾亜人(モスクイーン)──全く、何て奴だ!


『先程女王蛾亜人(モスクイーン)が纏っていたのは高密度に渦巻く風の結界だと推測します。(かつ)てアンが使用した『螺旋風之障壁(バリア・ヒーリクリダイル)』と同質の風属性魔法かと』


 コーゼスト先生、不出来な生徒の為の解説ありがとうございます! しかしまぁコーゼストの解説を聞いて、改めて目の前に存在する女王蛾亜人(モスクイーン)は飛んでもない奴なのだと思い知らされた。

 ヤトの竜の咆哮(ドラゴンブレス)も受け付けない強固な魔法防御力を持ち、しかも使う魔法は無詠唱(ノンキャスト)ときている。となると、だ。打つ手がかなり限られる事になる。


『まぁそれでもやって見るだけやってみるか……』


 思わず念話でそう(ひと)()ちる自分が居たのに苦笑する俺。


『何か妙案がおありですか?』


『まぁそれなりには、な』


 コーゼストの的確なツッコミを軽い口調で()なすと女王蛾亜人(モスクイーン)に正対する。するといつの間に俺の(そば)にアンやエリナやレオナ、ルアンジェやスサナやフェリピナやマルヴィナに、ヤトやファウストにデュークが集まってきてくれていた──何と頼もしい事か。


 その頼もしい仲間達と共に、俺は分が悪い賭けに賭けてみる事にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『コーゼスト。『風陣(エクイップ・エオリエンヌ)』を解除しろ』


『!? そんな事したら貴方が!?』


『俺に考えがある。アン達はそれぞれ俺の合図で直ぐに最高位魔法が撃てる様に準備しておいてくれ』


 アンの抗議の声に耳を貸す事無くそう押し通す俺。この際ぜいたくは言ってられない、それなりの覚悟をしなくては!


『──わかりました。『風陣(エクイップ・エオリエンヌ)』、解除します』


 コーゼストが俺の意を()んで指示に従ってくれ、不意に俺達を包んでいた強い風が止む。


 俺は1人、カイトシールドと刀剣(セイバー)を構え直すと、ゆっくりと女王蛾亜人(モスクイーン)の方へと進み出る。俺達の一連の動きを何もせずに見ていた女王蛾亜人(モスクイーン)は、俺が1人で近付いて来るのを見て


『あらっ? もしかしてもう降参なのかしら?』


 そう愉悦(ゆえつ)に満ちた声で話し掛けて来る。だが決して降参した訳でも(あきら)めた訳でも無い!


「やれるならやってみろ、そう思うのならな」


 そう少し(あお)ってみる俺。ヒトの言葉を使うなら無論こちらが言っている事を理解出来るはずだからだ。すると案の定、女王蛾亜人(モスクイーン)は触角をぴくりとさせると


『ク、クスクスッ、そう──なら遠慮なく』


 スっと右手をこちらに向けて(かざ)す! 次の瞬間、一斉に襲い掛かってくる幾本(いくほん)もの風槍(ウインドランス)


 だがそれを(ある)いは()け、或いはカイトシールドとセイバーで叩き落とす俺! それを見て驚いた顔をする女王蛾亜人(モスクイーン)! そして再度風槍(ウインドランス)を俺に向けて解き放つが、それ等も(ことごと)く避け、叩き落とす!


『……アナタ、もしかして、私の魔法が()()()()()のかしら?』


 (いぶか)しげに聞いてくる女王蛾亜人(モスクイーン)。実は俺が昔から持っている魔力を視る力──コーゼストが言うには「魔力視認能力」と言うらしいが──を使っているに過ぎないんだが。


 だがそんな事を()えて言う必要も無い。俺は「さぁな」と軽い口調で女王蛾亜人(モスクイーン)の言葉を受け流す。すると女王蛾亜人(モスクイーン)は口元をいやらしく(ゆが)めると


『クスクスクスッ、アナタ本当に面白いわね。そうしたオトコのヒトって嫌いじゃないわ』


 そう言いながら今度は両手を俺の方へと翳しながら


『──だからアナタが欲しくなっちゃった』


 黒い眼をスっと細める女王蛾亜人(モスクイーン)


 次の瞬間、俺を鼻腔(びこう)をくすぐる甘ったるい()()が包み込んだ──!



蛾亜人(モスマン)は呆気なかったですが女王蛾亜人(モスクイーン)は正に難敵強敵、ウィル達に為す術もないのか?!

そして次回、決着が?!


女王蛾亜人(モスクイーン)…………体高180セルト。褐色(ブラウン)の前縁がある三角形の前翅(ぜんし)と、下が尾の様に伸びた後翅(こうし)の青白い(はね)櫛歯(くしは)の様な触角。瞳の見えない黒一色のみの眼。白い体毛に覆われた身体の人型の魔物。高い知性を持つ。


無詠唱(ノンキャスト)…………詠唱はおろか言霊(ことだま)すら使わない魔法士の超高等技術。魔法の名、つまり言霊を魔法発動の鍵として口ずさむのは詠唱破棄(アバンキャスト)と言う。


風陣(エクイップ・エオリエンヌ)…………風属性の精霊魔法。相手に向かって強風を浴びせかけ動きを封じる。また煙や霧、ガスを飛ばしてこちら側に寄せ付けない効果もある。


風槍(ウインドランス)…………風属性の中級魔法。圧縮した風の槍を飛ばして相手を貫く。


螺旋風繭(スパイラルコクーン)…………超高密度に渦巻く風による螺旋状の防御壁。ヤトのドラゴン・ブレスをも防ぐ事が出来る。


☆manakayuinoさんに描いていただいた強敵モスクイーンのイラストを掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!


いつもお読みいただきありがとうございます。


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