脅威!モスクイーン 〜攻略への方略〜 (☆イラスト有り)
本日は第157話を投稿します!
今回は蛾亜人、そして女王蛾亜人との戦闘開始です!
-157-
「『ヴェン・フォック──風よ、封じよ』風陣!」
アンが蛾亜人の群れ目掛け、風の精霊魔法を解き放つ! アンを中心に強風が生まれ、それが通路一杯に拡がりながら蛾亜人の群れへと押し寄せる!
突然の強風に身動きが取れない蛾亜人達! どうやら慌てているみたいなのだが、ヒトみたいな頭が無く、首の付け根に当たる部分に真っ赤な大きい目があるだけなので表情が読めない。
『──『複写』。アン、魔法を解除しても大丈夫です』
コーゼストがアンの精霊魔法を即座に引き継ぎ続けて発動させる!
「──行きます」
それと同時に群れ目掛け駆け出すデューク達ゴーレム! そして群れの中に突入すると腕を伸ばして、近くに居た蛾亜人の1体の脚を無造作に掴み、宙から引き摺り下ろす! 配下ゴーレム達も手当り次第に蛾亜人を空中から床に引き摺り下ろしている! デューク達は見事に相手を撹乱する事に成功した!
「今だっ!!」
アンの魔法発動と同時にデューク達と共に前進していた俺達は、俺の台詞で床に引き摺り下ろされた蛾亜人目掛け各々攻撃を仕掛ける!
エリナの炎の斬撃が、レオナの鋭い拳撃が蛾亜人を討ち、ヤトの薙刀が、ルアンジェの鎌剣が、スサナの短剣が煌めきを放ちながら蛾亜人を両断し急所を深く切り裂いて行く!
それにより更に混乱の度合いを深める蛾亜人達! 盛んに「キュー!」とか「ピーッ!」とかと言う声が聞こえる! アイツらは鎖骨付近にある両目の間に大きな口があるんだが、普段は体毛に隠れて見る事が滅多に無い。
そして俺の空裂斬が、ファウストの爪撃破が、フェリピナやオルガ女史、マルヴィナや戦列に加わったアンの火炎槍や輝光十字射、リュシフェルのHeat Blasterが一斉に蛾亜人の群れに追撃として襲い掛かる!
例えAやA+ランクであろうと、この一斉攻撃に抗える訳もなく、女王蛾亜人を護る様に周囲を飛んでいた蛾亜人の群れは呆気なく殲滅された──残るは問題の女王蛾亜人のみ!
俺は一旦デューク達を後退させ、女王蛾亜人との戦闘に備えるべく全員の態勢を整えるのだった。
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コーゼストがアンの精霊魔法『風陣』を複写して発動させている間に前衛で戦っていたエリナ、レオナ、ヤト、ルアンジェ、スサナをマルヴィナが回復させ、魔法を使うオルガ女史達後衛組の魔力の残りを確認、デューク達が自身が受けた損傷を再生するのを見届けると、改めて女王蛾亜人に対峙する俺達。
強風で問題の匂いもこちらには届いていないみたいで、俺もファウストも今のところ落ち着いている。
それでも用心に越したことはない。俺達は通路一杯に展開すると、ジリジリと接近を開始する。接近して見てわかったのだが女王蛾亜人は、その青白い翅で自らの体を繭の様に包んでじっとしている──まさか休眠している、のか?
だが良く見ると、翅の繭から突き出た櫛歯の様な触角がピクピクと震えているのが見て取れる。どうやら起きてはいるみたいである。
そして俺達との彼我の距離が15メルトほどまでに縮まった時──
『──クスクスクスッ』
不意に聞こえて来た笑い声に、一瞬で俺達の間に緊張が走る! 次の瞬間に女王蛾亜人が翅の繭をゆっくりと拡げ始め、そして──
『久しぶりに沢山のヒトの匂いがすると思ったら──こんなに来たのね。それに強そうな黒い獣と岩人形と、凄く強そうな女人蛇も一緒。しかもオトコのヒトも居るなんて、何てツイているのかしら』
褐色の前縁がある三角形の前翅と、下が尾の様に伸びた後翅を完全に拡げた女王蛾亜人が、瞳の見えない黒一色のみの眼をこちらに向けながらクスクスッと嬉しそうに声を漏らす。
他の蛾亜人とは違い意外と整った顔があり、その身体は白い体毛に覆われつつも、女性特有の起伏に富んだ体をしている。まぁ当然だが衣服の類は全く着けていない。
しかし……ヤトもそうだったが、コイツもヒトの言葉を使うのか!? 流石はSランクだと、俺は妙な所で感心していたのだった。
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『クスクスクス、では遊びましょうか』
俺が場違いな事を考えていると女王蛾亜人が一言そう口にし、スッ……と右手を前に差し出す──その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走る!
「ッッ!? コーゼスト!!」
『了解。魔法障壁及び物理結界、多重最大範囲展開へ』
俺の叫びと同時に即座に多重結界を展開するコーゼスト! 一瞬の間を置いて表面の魔法障壁に女王蛾亜人が放った無数の風の槍が激突して爆ぜる──いつの間に放ったんだ?! アン達もあまりの事に驚きを隠せずにいる。
『あらっ? それは意思ある魔法具? それにしても大したものね。並のヒトならこれでカタがついているんだけど? 随分と勘が良いのね、アナタ』
そう言うとまたクスクスと笑う女王蛾亜人。
『──魔法の発動状況から推測。敵女王蛾亜人は「無詠唱」が使えるみたいです』
無詠唱──それは文字通り詠唱はおろか言霊すら使わない魔法士の超高等技術である。
アンやフェリピナ、ヤトほどの腕前になると「詠唱破棄」が普通なのだが、それでも魔法の名を魔法発動の鍵として口ずさむものなのだ──とは昔、師匠から「魔法士と対峙した時の対処には魔法の事に詳しくならなければならない」と叩き込まれたのを思い出す。
なので当然、無詠唱使いとは初めて会った訳なのだが、こんなにヤバイものだとは思わなかった! 不可視の風の槍をあんなに一度に大量に、しかもコーゼストが吹かせている強風の中を、である。
改めて目の前でクスクスと笑っている女王蛾亜人が強敵なのを思い知らされた──コイツは油断するとこっちが殺られる!
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そうしている間にもコーゼストが張り巡らせた魔法障壁の表面に女王蛾亜人が生み出す風槍が幾度となく爆ぜる音が響き渡る!
もちろんこちらからも反撃の火炎槍や雷撃槍をアン達が撃ち込んでいるのだが、それ等は全て女王蛾亜人が展開する魔法障壁に阻まれ届く事は無かった。
しかも奴は魔法障壁を展開しつつ同時に魔法攻撃を放つと言う芸当を熟しているのである──まぁうちでもコーゼストがアンの『風陣』を引き継いで発動させつつ防御結界を張っているんだが。コーゼストが言うにはこうした幾つのも魔法の同時発動の事を多重処理と言うらしい。
だがこれでは付け入る隙が無いのも確かである。ならば──!
『ヤト、『竜の咆哮』を奴に叩き込め!』
『えっ!? やって良いの?!』
俺の念話での指示に思わず念話で聞き返してくるヤト。そんなに意外な事か?
『構わん! 思いっきりやってやれ!』
『う、うん!』
思わぬ俺の許可に意気揚々と返事を返して来るヤト。そして徐ろに俺達より前に進み出ると深呼吸を数回繰り返し、そして!
「グゥゥゥーーー、グルオォォォーーーーーーーーーー!!!」
口がガパッと裂けるほど開くと凶暴な咆哮を上げるヤト! 同時にその咥内から放たれるのは眩いまでの輝きを放つ息吹! それは巨大な破壊の奔流となって女王蛾亜人目掛け押し寄せて行く!
『な、何ですってーーーーーェ?!?』
突然の強力な反撃に初めて狼狽える女王蛾亜人を、ヤトから放たれた破壊の奔流はその輝きに叫び声すら共に呑み込んでいったのである。
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ヤトが放った破壊の奔流がその輝きを徐々に失い、やがて迷宮の通路に静寂が戻り始める。
「や、やった……の?」
エリナが掠れた声でそう呟く──エリナさん、それは伏線だぞ?
そんな事を思いつつも通路の奥を注視する俺。すると竜の咆哮が完全に消え去った通路の奥に、激しく渦巻く風のまゆの様なものが!?!
驚く俺達の目の前で風の繭は表面から次々と解けて行くと、中からは女王蛾亜人が無傷で姿を現した!
『クスクスッ、はァ、流石にさっきのは慌てたわね。あと少し『螺旋風繭』を纏うのが遅れたら、流石に私が危なかったわ』
そう言うと再びクスクスと愉快そうに声を漏らす女王蛾亜人──全く、何て奴だ!
『先程女王蛾亜人が纏っていたのは高密度に渦巻く風の結界だと推測します。嘗てアンが使用した『螺旋風之障壁』と同質の風属性魔法かと』
コーゼスト先生、不出来な生徒の為の解説ありがとうございます! しかしまぁコーゼストの解説を聞いて、改めて目の前に存在する女王蛾亜人は飛んでもない奴なのだと思い知らされた。
ヤトの竜の咆哮も受け付けない強固な魔法防御力を持ち、しかも使う魔法は無詠唱ときている。となると、だ。打つ手がかなり限られる事になる。
『まぁそれでもやって見るだけやってみるか……』
思わず念話でそう独り言ちる自分が居たのに苦笑する俺。
『何か妙案がおありですか?』
『まぁそれなりには、な』
コーゼストの的確なツッコミを軽い口調で往なすと女王蛾亜人に正対する。するといつの間に俺の傍にアンやエリナやレオナ、ルアンジェやスサナやフェリピナやマルヴィナに、ヤトやファウストにデュークが集まってきてくれていた──何と頼もしい事か。
その頼もしい仲間達と共に、俺は分が悪い賭けに賭けてみる事にした。
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『コーゼスト。『風陣』を解除しろ』
『!? そんな事したら貴方が!?』
『俺に考えがある。アン達はそれぞれ俺の合図で直ぐに最高位魔法が撃てる様に準備しておいてくれ』
アンの抗議の声に耳を貸す事無くそう押し通す俺。この際ぜいたくは言ってられない、それなりの覚悟をしなくては!
『──わかりました。『風陣』、解除します』
コーゼストが俺の意を汲んで指示に従ってくれ、不意に俺達を包んでいた強い風が止む。
俺は1人、カイトシールドと刀剣を構え直すと、ゆっくりと女王蛾亜人の方へと進み出る。俺達の一連の動きを何もせずに見ていた女王蛾亜人は、俺が1人で近付いて来るのを見て
『あらっ? もしかしてもう降参なのかしら?』
そう愉悦に満ちた声で話し掛けて来る。だが決して降参した訳でも諦めた訳でも無い!
「やれるならやってみろ、そう思うのならな」
そう少し煽ってみる俺。ヒトの言葉を使うなら無論こちらが言っている事を理解出来るはずだからだ。すると案の定、女王蛾亜人は触角をぴくりとさせると
『ク、クスクスッ、そう──なら遠慮なく』
スっと右手をこちらに向けて翳す! 次の瞬間、一斉に襲い掛かってくる幾本もの風槍!
だがそれを或いは避け、或いはカイトシールドとセイバーで叩き落とす俺! それを見て驚いた顔をする女王蛾亜人! そして再度風槍を俺に向けて解き放つが、それ等も悉く避け、叩き落とす!
『……アナタ、もしかして、私の魔法が見えているのかしら?』
訝しげに聞いてくる女王蛾亜人。実は俺が昔から持っている魔力を視る力──コーゼストが言うには「魔力視認能力」と言うらしいが──を使っているに過ぎないんだが。
だがそんな事を敢えて言う必要も無い。俺は「さぁな」と軽い口調で女王蛾亜人の言葉を受け流す。すると女王蛾亜人は口元をいやらしく歪めると
『クスクスクスッ、アナタ本当に面白いわね。そうしたオトコのヒトって嫌いじゃないわ』
そう言いながら今度は両手を俺の方へと翳しながら
『──だからアナタが欲しくなっちゃった』
黒い眼をスっと細める女王蛾亜人。
次の瞬間、俺を鼻腔をくすぐる甘ったるい匂いが包み込んだ──!
蛾亜人は呆気なかったですが女王蛾亜人は正に難敵強敵、ウィル達に為す術もないのか?!
そして次回、決着が?!
*女王蛾亜人…………体高180セルト。褐色の前縁がある三角形の前翅と、下が尾の様に伸びた後翅の青白い翅。櫛歯の様な触角。瞳の見えない黒一色のみの眼。白い体毛に覆われた身体の人型の魔物。高い知性を持つ。
*無詠唱…………詠唱はおろか言霊すら使わない魔法士の超高等技術。魔法の名、つまり言霊を魔法発動の鍵として口ずさむのは詠唱破棄と言う。
*風陣…………風属性の精霊魔法。相手に向かって強風を浴びせかけ動きを封じる。また煙や霧、ガスを飛ばしてこちら側に寄せ付けない効果もある。
*風槍…………風属性の中級魔法。圧縮した風の槍を飛ばして相手を貫く。
*螺旋風繭…………超高密度に渦巻く風による螺旋状の防御壁。ヤトのドラゴン・ブレスをも防ぐ事が出来る。
☆manakayuinoさんに描いていただいた強敵モスクイーンのイラストを掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




