蛇姫の艷事、そして女王の魔物
本日は第156話を投稿します!
今回はウィルの唇を絶賛奪っている最中のヤトさんのシーンから!!
-156-
「んっ……クちゅう♡」
突如としてヤトに唇を奪われた俺! 現在絶賛で咥内をヤトの蛇舌に蹂躙されている最中である──ちょ、ちょっと待て! い、息が吸えない!
俺が苦しさを覚え思わず身動ぎすると
「んんッ……ぷはぁ♡」
艶っぽい声と共に漸く俺から唇を離すヤト。そして
「えへへへっ、ご馳走様♡」
と何時に無くご機嫌な声でそう宣う。少し青みがかったら肌をほんのりと紅く上気させ、金色の瞳は潤んでいる。
「ちょ、おまっ、なっ──?!」
漸く解放されて自由に話せる様になったが、あまりの出来事に言葉が継げない俺。
「ッッ!? な、な、な、な、何をするのかな!?」
そんな俺の所にアンが文字通りすっ飛んで来て、未だに硬直が取れない俺をヤトから奪う様に、自分の胸にかき抱いてヤトに抗議の声を上げる。どうやらアンさんも頭の中がパニックになっているらしく、口から出た台詞が変である。
『何を冷静に解説しているんですか?』
いつの間にか離れていたコーゼストが肩に止まりながら的確なツッコミを入れてくるが……やっと思考が回り始めたばかりなんだよ。
「えへへっ、だってアンばかりずるいんだもん! だから真似してみたの! それに前から御主人様とは接吻してみたかったのよねぇ〜♡」
アンの詰問にあっけらかんと答えるヤト──まだ顔を上気させたままである。
「な、なっ?!」
逆にヤトの答えを聞かされたアンさんは、あまりの内容に二の句が告げないでいる。
「それにね、私は御主人様と番に──ううん、結婚するのが望みなの!」
その様子を見て更にテンションが揚がるヤトさんは、飛んでもない事を口走る──ちょっと待て! 誰がヤトと結婚すると言った?!
「「「「「「「?!?」」」」」」」
ヤトのぶっ飛んだ発言を聞き、驚きのあまり言葉を失うアン以下メンバー達とオルガ女史。
「ん、待って。ヤトが結婚するなら私もしたい」
訂正……ヤトのぶっ飛び発言に感化されてルアンジェまでもが飛んでもない事を宣いだした! その台詞に更に騒然となる一同。
「ッッ! い、い、いい加減にしろーーーーー!!!!!」
何とか思考と行動が正常に戻った俺の第一声がこれだった。
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「はァ……皆んな落ち着いたか?」
「「「「「「「はい……」」」」」」」
俺の絶叫に色々と我に返ったアン達プラスオルガ女史がコクリと首を縦に振る。確か1階層目でも同じやり取りをした気がするんだが?
「はぁい♡御主人様、ごめんなさいっ♡」
「ごめんなさいウィル。つい感情が高揚した」
一方でこの混沌を生み出した元凶のヤトさんは、相変わらずあっけらかんと返事を返してくる。そしてルアンジェよ、君、最近ますます人間っぽくなってきてるな!?
「ま、まぁとにかくだ! 俺はヤトと番とかになる気は無いからな! そもそも魔物と結婚するとか聞いた事が無いし!」
兎にも角にもここは明確に否定しておかなくては!
『過去、古代魔族に於いては人化した魔物と婚姻を結んだ例が幾つかありますが?』
「うぉい?! ちょっと待てや!?!」
このタイミングで飛んでもない事を宣うコーゼスト! お前は何故に沈静化しつつある混沌を更に掻き回す!? 思わぬ伏兵にワタワタしていると
「でも、飽くまでもそれは私の夢なだけだから、御主人様はそんなの気にしちゃ駄目よ?! 私は御主人様がアン達やグラマスと結婚しても大好きだから! もちろん何人と結婚しても文句なんか言わないわ! 私の事を今まで通りに可愛がってくれるならねっ♡」
未だに顔を上気させたまま笑顔で俺にそう言って来るヤト。なんだろう、何故かヤトの顔が慈悲深い女神の様に思えてきた──ラミアだけど。どちらかと言うと戦いと愛の女神アナトと言う方が納得出来るの、か?
何処までも屈託の無い笑顔を見せるヤトを見ていて、俺はそんな事を思ったりするのだった。
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そんないざこざもあり、すっかり寝るのが遅くなった俺達は、手早く不寝番の順番を決めると不寝番以外のメンバーはそそくさと眠りに着いた。
まぁ迷宮の中は事の他暖かく、麻の敷物の上に皆んなゴロ寝なんだが。因みに最初の番は俺が買って出たのは言うまでもない。そして不寝番を次のレオナへと引き継いで、俺も敷物の上にゴロリと転がると直ぐに眠気が来て、そのまま目を閉じて眠りへと落ち──そして翌朝。
「……ううん、ウィル♡」
「すぅすぅ……あん、ウィル♡」
「……ウィル♡……むにゃ」
「すやすや」
「くぅくぅ……」
「ふにゃぁ……」
「……むにゃむにゃ」
「えへへっ~御主人様♡」
「…………ヲイ」
……なぜか俺の周りに不寝番のルアンジェ以外のメンバーとヤトが集まっているんだが?! 右腕にエリナ、左腕にレオナが抱き着き、アンは俺の胸に乗る形で、更にその外側にフェリピナとマルヴィナとスサナとオルガ女史が俺に添う形で寝ていて、ヤトに至っては毎度の定位置で膝枕をしている──なんだコレ? これでは俺が全く身動きが取れないんだが?!
俺が堪らず身動ぎすると、先ずアンが目を覚まし、次いでエリナとレオナ、更にフェリピナ達へと伝播していって
「「「「「「「あっ、ウィル(さん)おはよう♡(ございます♡)」」」」」」」
皆んなが一斉に朝の挨拶を投げ掛けて来る。
「んむぅ? あ、御主人様、おはようっ!」
そして最後はヤトが毎度の如くの挨拶を口にしながらニカリと笑う──その牙を剥き出しの笑顔も相変わらずだな!?
などと的外れな感想を考えていたら、そそくさと皆んなが一斉に離れて行く。やれやれ、やっと解放された…… 。
安堵の溜め息を漏らす俺の背中に、ぽすっと言う音と共に抱き着いてくる感触が?! 振り向くとそこに居たのは
「ん、ウィルおはよう」
不寝番に立っていたルアンジェが俺が起きたのに気付いたらしく抱き着いて来たのである。
「あ、ああ、おはようルアンジェ」
俺はそう言うとその頭に手を乗せ優しく撫でる。「ん」と満足そうなルアンジェを見て、ここに来てこの子も本当にヒトらしくなって来たな、と苦笑を浮かべながら改めて思う俺なのであった。
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全員が起きたのもあり、そのまま朝食を食べる事にした俺達。フェリピナ達はともかく食事中もアン、エリナ、レオナの3人は俺にベッタリと付いて、何かと甲斐甲斐しく世話を焼いたりしていた──オルガ女史とゾラの何とも言えない視線か痛かったが。
手早く食事を終えると、最下層である10階層目を目指し探索を再開する。この9階層目で遭遇する魔物はかなり格が高く、また陰湿な罠も仕掛けられていて、苦戦を強いられる場面が何度かあったがそれ等も何とか突破し、10階層目へと下りる通路の直前で遭遇したのは──
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迷宮の通路一杯に拡がり、音も無く空中を浮遊する10数体の蛾亜人の群れ。コイツらはその翅から撒き散らす毒の鱗粉と、鋭い爪が付いた4対の腕が危険な魔物だ。
だがコイツは全くの想定外である。
事前に東方大陸冒険者ギルドのグラマスのトゥ女史から聞いた話だと、確かこの『黄昏のの城』9階層最奥に居るのは、喧しく大音量で鳴いて獲物を失神させて、口吻を突き刺し獲物の体液を奪う奈落蝉だったはずなんだが?!
『確か奈落蝉は蛾亜人の好物だった筈です。その関係でここに集まって来た可能性があります』
そう念話で宣うコーゼストだが、今回はファウストとこいつのお陰で奴等に見つかる前に、ここに居るのが蛾亜人だと言う事に気付く事ができ、目視出来るギリギリの距離を取る事が出来たのである。
『それより……その奥に居るのが厄介だな……』
同じく念話て呟くと顔を顰める俺。そう蛾亜人の群れの奥に佇んでいる存在が問題なのだ。
青白い美しく大きな翅を持つ存在、それは女王蛾亜人──つまり蛾亜人の雌なのだが、この女王蛾亜人が厄介で、コイツは雄の蛾亜人を引き寄せる特殊な匂いを常に周囲に漂わせているのだ。
しかもその匂いはヒトの男にも作用し、その匂いを吸い込んだら最後、強力な催淫と幻覚の効果で強制的に発情させられ、女王蛾亜人の相手をさせられる事になる──と以前冒険者ギルドの魔物図鑑で読んだ事がある。
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実はさっきからアン達に対して特別な感情を向けてしまっているのだが、それもここまで匂いが流れて来ている……からだと思う。確か魔物図鑑にも「ヒトの男がこの匂いで発情させられると見境が無くなる」と書いてあったからな。
『動悸および血圧の上昇を確認、若干の発汗を確認。軽度の興奮状態と推測──間違いなくマスターはフェロモンの影響を受けていますね。まぁ先日の件も無関係だとは思えませんが』
俺の状態を監視しているコーゼストがそう報告をしてくる。但し一言余計であるが。
『さて……と、どうするか…………』
コーゼストに心の中でツッコミを入れつつ、俺は全員と作戦を練る事に集中する。先ずはコーゼストに相手の事をなるべく詳しく調べさせる。
『コーゼスト、再確認だ。あの蛾亜人と女王蛾亜人のレベルと順位、それと技能と能力も併せて頼む』
『はい────確認しました。まず群れている蛾亜人達ですが、レベル68ランクA+の個体が4体。技能は連携、能力は守護を保有。レベル64ランクAの個体が8体でスキルは同じく連携でアビリティはありません。奥に陣取っている女王蛾亜人はレベル74でランクはSランク。スキルは魅了、アビリティは『女王の支配』と言う指揮の上位版を保有。魔法は風属性系統を幾つか使える様です』
俺の質問に的確に答えるコーゼスト。こうした所は流石である。因みに蛾亜人の群れに接近する前にコーゼストは妖精形態を解除している。
あの姿は色々と目立つからな…… 。
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兎にも角にも作戦を立てなくては何にもならないので、念話でゾラを除く全員と会話をする俺。因みにゾラは従来の仕事である「グラマスを守護」をしてもらう手筈になっている。
『皆んな、聞いての通りだ。先ずは女王蛾亜人の匂いを何とかしないといけないんだが……』
そこまで言うと言い淀んでしまう俺。あの女王蛾亜人を見立てたコーゼストの、『風属性魔法を幾つか使える』と言う報告が急に気掛かりになったのだ。奴が風属性魔法を使えるなら、こちらが匂い対策として風属性魔法を使っても打ち消される可能性が有り得る事に思い至ったからだ。
『? どうしたのウィル?』
『いや……アン、フェリピナ、グラマス、この通路一杯に魔法で風を起こす事は出来るか?』
アンの問い掛けに俺は言葉を濁しつつ、この作戦の要になる魔法が使えるか逆に確認する。
何故そんな事を確認しているかと言うと、コーゼストの物理結界は直接的攻撃は防げるが空気は通してしまうので、匂いを魔法の風で向こうに押し返す作戦を取る事にしたからである。
確認した所フェリピナとオルガ女史にはそこまで広範囲な風属性魔法は使えないが、アンには風属性の尚且つ広範囲の精霊魔法が使えるとの事だった。
『よし、じゃあ……アンはその精霊魔法を直ぐに使える様に準備しておいてくれ。アンの魔法が発動と同時に攻撃を開始する。先陣はデュークと配下ゴーレムにしてもらう。但し蛾亜人達を撹乱だけだからな?』
『了解』
デュークは短く返事を返す。それを聞いて更に指示を出す俺。
『そして前衛はエリナとレオナとヤト。ルアンジェとスサナはエリナ達2人を支援、必要に応じて遊撃だ』
俺の声に応じてエリナ達とルアンジェ達、そしてヤトが頷きながら返事を返して来る。そして最後に
『俺とファウストは匂いの影響を受けない様にやや後方から、グラマスとフェリピナとマルヴィナと一緒に遠距離攻撃。コーゼストはアンの魔法を『複写』しアンと交代、それと常に蛾亜人達と女王蛾亜人の動向に注意を払っていてくれ。アン、コーゼストが魔法を引き継いだら俺達と一緒に遠距離攻撃だ』
残りのメンバーに指示をし終えると皆んな頷きつつ返事を返して来るのを確認する。
良し──それじゃあおっ始めるとするか!
ぶっ飛んだヤトの発言でカオスと化すウィル達! まあそれだけヤトはウィルにゾッコンなんでしょうけどね(笑)
そんなこんなで迷宮の奥深くに進んだウィル達の前に難敵が?! 次回、戦闘シーン満載かと(予定)
*蛾亜人…………体高180セルト、2対4枚の翅と2対4本の鋭い爪がついた腕を持つ亜人系の魔物。翅から撒き散らす毒の鱗粉で相手を弱らせ捕食する。
*奈落蝉…………体長60〜70セルトのデカい蝉。馬鹿でかい鳴き声で相手を失神させて口吻を突き刺し獲物の体液を奪う。集団行動をする傾向がある。
*女王蛾亜人…………詳しくは次回!
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルのヤンデレブラコン妹のアドルフィーネのイラストを第107部本編百一話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




