嫉妬、なにそれ美味しいの?
本日は第百五十三話を投稿します!
女性だと判明したグラマス=オルガさんがウィルにトラブルを運んで来ます(笑)
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歓喜のあまり抱き着いてきたグラマスの所為で、背後のアン以下のメンバーから物凄い圧を受ける羽目になった俺! 正直言って理不尽である。
「あっ、えっと、いや、ごめんごめん♡」
片や一方の当事者であるグラマスは、そんな圧など何処吹く風、笑顔で詫びを入れながらその体を俺から離す──ただ頬がほんのり紅いが。
「お、おぅ」
かく言う俺も、思わず顔に熱が集まっているのが自分自身で良くわかる!
「ん、グラマス、ウィルの独り占めは良くない」
「そうよっ! 御主人様は私のモノなんだからっ!」
不意に背中から抱き着きながらそう宣うのは、今まで黙っていたルアンジェとヤト。ヤトはともかく、ルアンジェがそんな事を言って来るとは珍しいが…… 。
「み、皆んな、ちょっと待てーーーーーッ!!!」
迷宮の只中で俺は心の叫びを上げるのだった──まだそんなに進んでないが。
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「皆んな、ちょっと落ち着こうか」
俺の心からの叫びに皆んな仰天して、一旦行動が停止した。それを好機とばかり全員に向けそう台詞を重ねる俺。
「あーっ、うん、そ、そうね。ごめんなさいウィル」
俺の台詞にいち早く反応したのは、いち早く再起動したアン。それに続いてエリナとレオナも気が削がれたみたいに「う、うん、ごめんなさい」と落ち着いたみたいである。
フェリピナとマルヴィナ、スサナもその様子を見て漸く正気に戻ったようだ。因みに先程抱き着いてきたルアンジェとヤトも驚いて俺から離れている。
『折角の修羅場が……』
俺から少し離れ浮遊しているコーゼストは残念そうに呟くが──お前は何を期待していたんだ?! 俺は軽く咳払いをすると
「えっとな、皆んなも言いたい事は色々あるだろうが、先ずはひとつずつ順番に、な?」
と改めて仕切り直す。その声に全員が頷くのを見てから俺は、改めてグラマスに質問を投げ掛ける。
「まずはグラマス。ひとつはっきり聞かせてもらえないか?」
「な、なんだい? 改まって……」
俺の真剣な物言いに怪訝な物言いで返してくるグラマス。
「えっとな、アンタは俺の事をどう思っているんだ? 怒らないから正直に答えてくれ」
俺の質問を受け、グラマスは何やら考え込んでいたが、やがてフゥ……と大きく息を吐くと
「……うん、さっきはああ言ったけど……どうやら僕はウィル君の事を自分が思っていた以上に好きみたいだ。今、自分自身のウィル君に対する今までの態度を省みてそう確信したよ♡」
そう満面の笑みではっきり告げてくる──その台詞を聞いた再びざわめき立つアン達。俺は俺で何となくこう言われる予感があったので、逆に納得している。だがまぁ一応──
「えっと、それって、「恋愛感情」としての「好き」って事なのか?」
「うん、そうだね。「愛している」って言い換えた方がわかり易いかな? ともかく僕はウィル君の特別になりたいのさ♡」
俺の再確認に対し、グラマスは虹色の瞳に熱を込めてはっきりと返して来たのである。
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オルガ女史の「愛している」発言に俄に殺気立つうちのメンバー! アンさんなんかはドス黒い霊気を身体中から発散させリュシフェルに手を掛けている──ちょ、ちょっと待て! 早まるな!
「──でもまぁ、それを受けてくれるかはウィル君次第なんだけどね」
熱の篭った視線から一転、フッと表情を緩めるオルガ女史。ちょっと待て! まさかの俺に丸投げかい?! その台詞を聞いたアン達メンバー全員から俺に視線が集まる!
『やはり修羅場になりましたね』
浮いているのを止めて俺の左肩に腰を降ろしたコーゼストが何やら楽しそうに宣ってくる──お前は人の不幸がそんなに楽しいのか?!?
「まぁでも、とりあえずは返事はまだ良いかな? 何せこの『黄昏の城』に眠るモノいかんではウィル君と結婚出来ないかも知れないし、ね」
おっと!? コーゼストにツッコミを入れてやろうかとしていたら、オルガ女史の話はまだ続いていた。と言うか、何だよ、そのあやふやな物言いは?
「? 何だかずいぶん奥歯に物が挟まった言い方だな?」
「ん? んー、まぁ、それは見てのお楽しみ、と言う事で♡」
俺の突っ込みを平然と受け流すオルガ女史。
何なんだ、本当に…… 。
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兎にも角にもまだ迷宮探索は始まったばかりである。そんな初っ端からこんな事で揉めていても埒が明かないので、アン達を「とりあえずこの話は目的を達成してから」と説き伏せた。
アン達はもちろんオルガ女史も仕事に私情を挟むのは違うと思っていたらしく大人しく従ってくれた。
そして幾数度もの魔物との戦闘を経て、1階層目を越えて2階層目を突破し3階層目に下りた俺達は──
「ギギッギギギッ!」
巨大な蟻達と戦っていた。奇声とも咆哮ともつかない音を発しながら上半身を起こし、大顎をガシガシと鳴らして威嚇して来る巨大な蟻──武将蟻!
その武将蟻に刀剣を向けて身構える俺! その周りには二回りほど小振りな武者蟻の死骸が幾つも散乱している!
「お待たせっ!」
「全く! コイツら硬過ぎだわ!」
俺の傍には武者蟻達を斃したエリナとレオナが駆け寄って来る! 彼女達以外にはファウストとヤトが武者蟻の相手をしていたが同じく俺の傍に寄ってきた。
オルガ女史とフェリピナとマルヴィナにはルアンジェとスサナとゾラが直衛に付き、いつでも魔法を撃てる状態になっており、アンもフェリピナ達の側でリュシフェルを構えて攻撃の好機をうかがっている!
勿論デュークには後方で護りを固めてもらっているのは言うまでもない。
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全員の配置を確認すると改めて武将蟻と向かい合う俺。大体体長3メルトぐらいか? コーゼストの調べでは格は70、順位はA+らしい。
長剣ほどもある大顎を盛んにカチカチ噛み合わせて、俺達の隙を伺っている──と思った次の瞬間、大顎を振りかざしながら此方に突っ込んで来た!
やや散開気味だった俺とエリナとレオナは、銘々に元居た位置から回避行動をとり武将蟻の攻撃を躱す!
すると今度はその場に留まり大顎が付いた頭を振り回す武将蟻! 間近でそんなロングソードほどもある大顎を振り回されたらたまったもんじゃないな!
俺はそう考え徐々に間合いを詰めると、間隙を縫って武将蟻へと肉薄する! と同時にエリナとレオナも動く!
武将蟻は頭を振り回すのを止めると、それを捕らえようと大顎を大きく拡げ俺らの方に頭を向ける! だがそれは俺達にとっては好機だ!
「アン!」
俺の掛け声と同時に立て続けに魔力弾が2発後ろから飛んで来て、武将蟻の両大顎を撃ち砕く! アンが後方からリュシフェルを時間差無くほぼ同時に2回連続で射撃したのである!
「ギギッ?!」
「エリナッ! レオナッ! 今だ!!」
自慢の大顎を撃ち砕かれ焦りの奇声を上げる武将蟻に、エリナとレオナが追撃を仕掛ける!
エリナは武将蟻の6本の右脚、レオナは左脚に攻撃を集中する──が武将蟻は両脚を我武者羅に振り回し抵抗を見せる! その抵抗は左脚に攻撃を仕掛けていたレオナに鮮烈な一撃となり命中した!
「ぐっ?!?」
堪らず通路の壁に飛ばされるレオナ!
「──『風壁』!」
すかさずフェリピナが魔法を唱えると、レオナの身体に濃密な空気の塊が纏わり付き、壁への激突を防御する! そうしている間にエリナは右脚を、レオナに替わり左脚は俺が斬り落とす!
「ッ、今だ!!」
両脚を失い、動きを封じられた武将蟻が地に伏せると、俺は後方のオルガ女史達に声を掛ける!
「「雷撃槍!」」
「輝光十字射!」
オルガ女史とフェリピナが雷撃槍を、マルヴィナは光の槍──輝光十字射を武将蟻目掛け解き放った!
その頭部や胸部に雷撃槍と輝光十字射をモロに受け、武将蟻はその甲殻を貫かれ、その身を焼き尽くされるのだった。
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「ふぅ……レオナ、大丈夫か?」
武将蟻達が光の粒子になって消えて行くのを見届けて、俺は残心を解いて壁まで飛ばされたレオナの方に顔を向ける。
レオナは丁度マルヴィナから「癒し」を掛けてもらっていた所だったが、俺の声に反応して此方に駆け寄って来る。 もちろんマルヴィナにはちゃんと礼を言っていたが。そして──
「うん! あたしは大丈夫だよ♡ちゃんとマルヴィナに治してもらったからね!」
──何故か俺の右腕に抱き着く形で密着して報告して来るレオナさん。なんだなんだ?! レオナの大胆な行動に焦っていると──
「あーっ、レオナ狡い! ウィル、私もちゃんと貴方の指示通りにしたんだから褒めて♡」
──空いている左腕にレオナ同様に体を密着させて甘えて来るエリナ! ちょ、エリナまで?! 俺が更にあたふたしていると──
「あーっ! 私だって御主人様の言い付けを守って武者蟻を倒したのよ! だから褒めて欲しい〜っ♡」
「ん、私も同じく」
──背中に毎度お馴染みの衝撃を感じるとヤトとルアンジェが背後から抱き着いてきた! ヤトはいつも通りだが、何故にルアンジェが?!? だがそれだけではありませんでした!
「──ウィル」
3人(+ヤトさん)から抱き着かれ右往左往する俺の正面に、いつの間にか後ろから前に回って来ていたアンさんの姿が。そして──
「そ、その、ね。私もちゃんと仕事を熟したんだから──御褒美を欲しいの」
──そう言うとリュシフェルを肩に担ぎ、自由になった両手で俺の頬を優しく包む様に挟むと、正面からその美しい顔を近付けてきて、そして──
──むちゅッ♡
その柔らかい唇を俺の唇に重ねて来た──な?!
「ん……はぁ♡」
一瞬で頭の中が真っ白になる俺の目には、翠玉の瞳を潤ませゆっくりと顔を離すアンの顔が映る。その頬は熟れた蔓苔桃みたいに真っ赤でアンの浅黒い肌からも判るくらいである
──って! 何を冷静に解説している俺!?
あまりの出来事に頭の思考が完全に過熱状態になる俺だった。
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「はァ……皆んな落ち着いたか?」
「「「「……ハイ」」」」
何とか自力で再起動した俺は、抱き着いていた4人と1匹を何とか引き剥がす事に成功した。4人は引き剥がされた事で色々正気を取り戻し、ヤトは「え〜、もう終わり〜?!」と何やら不服そうだったが、今日の晩飯にステーキを出してやるからと言ったら素直に喜んでいた。
ある意味ヤトはブレが無い。まぁ其方はそれで良いとして──
「えへん、あーっとな、皆んな何であんな事をしたんだ?」
──正気に戻った4人に改めて問い質す俺。すると先ず
「いやーっ、つい昂っちゃて♡」
レオナがそう答え
「わ、私はレオナがウィルに抱き着いたのを見たら、つい……」
「ん、私もエリナと同じ気持ちだった」
エリナとルアンジェはレオナに感化されたと言い
「わ……私はレオナやエリナだけじゃなくてルアンジェまで貴方に媚びているみたいに見えて、その、何だか焦っちゃって……「これは私も負けてられない!」と思ったら……」
最後に消え入りそうな声で言葉を紡ぐアンさん。まだその顔は紅いままである。
「それってつまり──」
何となく嫌な予感がしつつも4人にその気持ちを確認する俺。すると返ってきた返事は「オルガ女史に負けたくなかった」と言う台詞。見事に予感的中である。
『思えばアン達はこの旅が始まってから今日まで、マスターにやきもきさせられて来ましたからね。それが今回のグラマス殿との一件で一気に表に現れ出たのでは無いのですか?』
「ゔっ!?」
事の成り行きを少し離れて見ていたコーゼストからのまさかの指摘に声を詰まらせる俺。マディやジータ、更にはオルガ女史など色々思い当たる節が多過ぎて反論出来ない!
ふとフェリピナ達の方に視線を向けると彼女達も「そうだそうだ」と言わんばかりの表情で俺を見ていた。
これは一刻も早くこの迷宮を攻略して、一刻も早くオルガ女史との件に決着を着けなければ、アン達の嫉妬もだが俺に掛かる負荷が確実に増える…… !
それはもう色んな意味で!
まさかのアンの大胆な行動にドギマギするしかないウィル! 攻められ慣れていませんので!(笑)
一応ウィルの名誉の為に言っておきますが、アン以下の婚約者達とは肌を重ねてはいます!
それでも人前でとは……ねぇ?
*風壁…………風属性の支援系魔法。対象の周りを濃密な空気の塊で包み込み衝突からの衝撃を緩和する。
*輝光十字射…………数少ない聖属性の上級攻撃魔法。光を圧縮した槍を高速で相手に向かい撃ち出し、相手の体内から焼き尽くす。
☆manakayuinoさんに描いていただいたラファエル家の毒舌メイド、ノーリーンのイラストを第21本編二十話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




