目的地到着 〜グラマスは意外と低レベル?!〜
本日は第百五十話を投稿します!
遂に『黄昏の城』手前の街フェンチェンを発つウィル達一行!『黄昏の城』到着前にウィルがグラマスから話を聞く所からスタートです。
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『黄昏の城』手前の街フェンチェンに泊まった翌々朝──
「──それじゃあゾラ、よろしく頼むよ」
全員が乗ったのを確認すると、竜車の客車からグラマス殿が御者台の爬虫類人ゾラ・エルダに声を掛ける。その声で宿屋『黒鷲』の前からゆっくりと進み出るドラゴンキャリー。
「……あと半日か」
動き出したキャリッジの中で俺はそう独り言ちる。ここから目的地である『黄昏の城』まではドラゴンキャリーで凡そ半日で到着するとはグラマスの弁である。
「グラマス、済まないが到着前に俺達に『黄昏の城』について分かっている事を話してくれないか?」
「うん、良いとも!」
俺の問い掛けに相変わらずの笑顔で答えるグラマス。アン以下のメンバー達も聞き耳を立てる。それによると──
目的地である迷宮『黄昏の城』は東方大陸の西部に位置するダンジョンで、「城」などと呼ばれているが実際は小高い丘の様な墳墓に5つの大きな尖塔が規則正しく立っている迷宮で、西方大陸のダンジョン『精霊の鏡』と同じ「迷路型迷宮」であり、入口から地下に向かい10階層あるらしい。
内部はご多分に漏れず方向感覚を狂わせる認識阻害の魔法結界が張り巡らされており、偶に遭遇する魔物も順位がAからA+と強力であり、低クラスは勿論、中堅であるBクラス冒険者でも苦戦するのだそうだ。なので必然的にこのダンジョンへの入場許可はAクラス以上となっている。
因みにグラマスの目的の施設は最下層の10層目の更に下に位置するらしい。尤もそこに行くのにもひと仕掛けあるらしいが。
「まぁ、その辺の仕掛けに関しては僕が解除するから大丈夫だけどね(……多分)」
そう笑顔で言葉を締めるグラマス。だが今、小さな声で「……多分」とか言ってなかったか?! アン達も聞こえたらしく顔が引き攣っているんだが?!
そうして一抹どころでは無い不安を覚えたまま、俺達を乗せたドラゴンキャリーは目的地へと走るのだった。
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「はァ……こう来たか……」
ほぼほぼ予定通りに到着した『黄昏の城』は草原地帯の中にポツリと誰かに置かれたみたいに佇んでいた。本当に丘の上に尖塔が5本、規則正しく立っている。何の意味があるんだ?
『これは──尖塔が五芒星に配置されていますね。恐らくは高度な結界の維持の為に魔力を供給させる為かと。これだけ高度な魔法技術は古代魔導文明の物だと言う裏付けになります』
俺の疑問に左肩の上に座るコーゼストが答えてくれた。成程、な。しかし何か想像していたのよりこじんまりしている感じがするんだが?
『外観で判断するのは禁物ですけどね』
「まぁ、そうだけどな」
俺の考えを読んだコーゼストからの指摘を軽く受け流す俺。こうしたのは往々にして地下に広い空間が拡がっているのが常であるからな。
そうコーゼストと言い合いをしつつ、ドラゴンキャリーから必要な物資を皆んなと一緒に降ろす作業を進める──尤もこの物資の大半はコーゼストの無限収納行きではあるが。と言うかそもそもコーゼストの無限収納ってどう言う造りをしているんだ? 内容量には制限が無いみたいだし、欲しいと思ったものは直ぐに取り出せるし…… 。
以前コーゼストとラファエルの話に参加してこの疑問をぶつけてみたんだが、『それを説明するとなると凄まじく複雑な術式を説明しなくてならないのですが宜しいので?』とはぐらかされた。
そりゃまぁ俺は専門家じゃないからな、そんな高度な術式を言われても理解不能である。そう話したらコーゼストとラファエルから「貴様は(マスターは)その認識で良い」と言われてしまった。何となく俺、出来ない子扱いされてないか? 確かに理解不能とは言っているが全く解らないとは言っていないんだが?!
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そんな事をしている間にも必要なモノは全て降ろし終え、コーゼストの無限収納に全て仕舞い終えると、いよいよ迷宮探索の開始である。
「よし、じゃあ行くとしますか!」
気を吐く俺に全員が頷き、ダンジョンの入口の扉を押し開ける。内部の通路は想像よりも広く3人が横並びしても余裕があるので、それを踏まえた上で隊列を決める事にした。
最前列にデュークとその配下ゴーレム1体に立ってもらい盾役をしてもらう事に。俺とエリナ、レオナをその後ろに配置、グラマスの従者であるゾラは槍士との事なので俺達3人の後ろにヤト、ルアンジェと共に配置。その後ろにアンとフェリピナ、更にその後ろにグラマスとマルヴィナに居てもらい、スサナは2人の直衛として付いてもらう事に、そして最後尾にはファウストに目を光らせてもらう事にした。
『────・──周囲200メルト四方の生命探査完了しました。結界に阻害され周囲100メルトしか探査が出来ません。生命反応は10、うち私達パーティー以外のヒトの反応はありません。移動しながら迷宮内探査を継続。併せてこのダンジョンの地図作成を開始します』
いつもの如くダンジョンに入って早々にコーゼストが御自慢の感覚端末での探査結果を報告してくる。
「何だ、結界って? 方向感覚を狂わせる結界じゃなかったのか?」
『認識阻害の結界ですよ、マスター。兎に角通常のセンサーだけでは役不足みたいなので、センサーを全起動 させたいので許可願えますか?』
俺の疑問に端的に答えるとそのまま許可を取り付けてくるコーゼスト。そうしたやり取りも随分と久しぶりな気がする。
「そっちはお前の判断に任せるよ」
俺がそう言うと妖精コーゼストはニコリと笑みを浮かべ
『では──感覚端末を全起動。生命感知センサー、魔力波センサー積極化。熱感知センサー及び動体センサー覚醒』
頭の上に複数の魔法陣を浮かべながらそう呟く。魔法陣はその呟きに答える様に一瞬輝きを放つと宙に霧散する。
『全センサーがフルアクティベーションしました。これで準備万端です』
「お、おう」
コーゼストさんや、何だか張り切ってませんか?
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先ずは『黄昏の城』の第一階層目を進む俺達。まぁ俺達としても久々の迷宮探索なのではあるが、アン以下のメンバー達はやる気に満ちているし
「うんうん、これぞ正に『冒険』だよね!」
グラマスに至っては完全に迷宮探索を楽しんでいるみたいである。全く、遊びじゃないんだが? そう訴える俺のジト目に気が付いたグラマスは
「いや、ごめんごめん。こうした経験が少ないものでね、つい興奮してしまったよ」
と全く悪びれた様子が無い。
「そうなのか?グラマスぐらい長く生きていたらそれなりに経験があると思ったんだが……?」
あまりにも意外過ぎたので思わずそう聞いてしまう俺。するとグラマスは
「いやいや、そんな事は無いよ。990年前にはこうした事には全くと言って良いほど無関係だったし、250年前に目覚めてからほんの数年冒険者稼業はしたけど、精々Bクラス止まりさ。そもそも昔の冒険者にはクラスとか無かったんだからね」
と苦笑いをしながら自分の認識札を見せてくれる。
タグは2枚あり、1枚は冒険者ギルド最高統括責任者の証である星銀のタグであり、もうひとつの冒険者としてのタグは銀のタグだった。冒険者のタグにはグラマスの名前と共に「Bクラス」と記されていたのである。
するとグラマスの格は大体30前後なのか? 俺としてはグラマスのクラスはAクラスの方が良いと思うんだが──主に対外的にであるが。これはこれでちょっと問題ありか?
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『マスターの仰る通りグラマス殿のレベルは35です──私としては今後の事も考えるとグラマス殿にも戦闘に参加してもらって宜しいかと。まぁマスター達が支援する事が前提になりますが』
またもや俺のそうした思考を読んだコーゼストがグラマスのレベルを計測してそう宣ってくる。
「──だそうだ、グラマス。もしこの際レベルを上げたいなら戦闘に参加するか? 勿論トドメを刺すのをやってもらう事になるが?」
コーゼストの台詞を受けグラマスにそう提案して見る。最終的に決めるのはグラマス自身だからな。
「うーん、そうだねぇ、もし参加させてくれるならやらせて貰おうかな? でも良いのかい? ウィル君達のレベルアップにはならないよ?」
『その事なのですが、マスターウィルのレベルは現在76へと到達しています。アンは74、エリナは73、レオナは71、フェリピナは68、マルヴィナは69、スサナは44、ルアンジェは74相当へと上がりました。従魔達はファウストがレベル76、デュークもレベル76、ヤトに至ってはレベル77となっております。なので心配は無用かと』
このタイミングで俺達の現在のレベルについて話すコーゼスト──と言うか、いつの間にかまたレベル上がっていたのかよ?!
『マスター達のレベルアップは海蠍やジータ達との戦闘による経験値が多かったからかと。特にジータ達との対人戦闘による経験値が大きかった所為ですね。ジータに至ってはレベルは69相当ありましたから』
そこでコーゼストさんからの補足情報である。しかし対人戦闘でか──俺達は冒険者だから魔物以外とにも必要なら戦うのは厭わないが、まさかジータ達との戦闘でもレベルアップの為の魂の階位から力を得る事が出来るとは思いもしなかった。
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そんな事をしているとファウストが不意に唸り声をあげる!
『この通路の先、約150メルト付近に魔物の反応──反応から見て邪木精だと思われます。数は7体、レベルは66、順位はA+』
同時に探査結果を報告してくるコーゼスト。相変わらず早期警戒に関してはファウストとコーゼストは優秀である。
その警告に戦闘態勢を取りつつ慎重に進む俺達。やがて魔導照明の仄かな灯りに体高2メルト程の細身のシルエットが! 間違いない、あれはイビルトレントだ。
「ギギギ、ギギ」
見た目は出来損ないの案山子の様に見えるが獲物を認識すると想像以上の機敏さで襲い掛かって来て、その槍の様になっている腕を突き刺して相手の血を吸い取るのだ。
「ギギ、ギギギーー!」
どうやらイビルトレントはこちらに気付いたらしい! それまでのゆっくりした動作を止め俺達の方に向かって来る!
「デューク、アイツらを止めろ!」
「了解!」
俺の声に即座に反応してデュークが配下ゴーレムと共に押し寄せて来たイビルトレントを押し留める!
しかしその隙間から槍の様な腕を伸ばして来るイビルトレント! 幾本もの木槍を俺とエリナ、レオナとルアンジェ、ゾラとヤトがそれぞれの武器で打ち払う!
ヤトの薙刀はともかくゾラの槍捌きも大したものである。
そうしている間にも突き出される木槍の腕を刀剣で斬り飛ばす俺! エリナも長剣に炎を纏わせイビルトレントの腕を斬り飛ばし、レオナに至っては拳鍔でピンポイントに木槍を受け止め粉砕している。それに負けじとルアンジェの鎌剣が、ヤトのグレイヴが、ゾラの槍がイビルトレントの腕を迎撃して行く!
瞬く間に攻撃手段を失うイビルトレント達!
「ギギッ?!」
「今だ!」
イビルトレントの驚く様な声と俺の声が重なる! 後ろではグラマスとフェリピナが魔法を放つ準備を整えていた!
「「火炎槍!」」
そう言うと同時に生まれる幾本もの炎の槍! だがグラマスが生み出したのは明らかに大きさが一回り以上大きい! しかも紅い波動を纏っている──コイツは!?
『あれは真紅豪炎槍ですね』
コーゼストは飽くまでも冷静に答えるが──クリムゾン・ランスって言ったら、以前『デュミナス』のベルナデットが使っていた炎属性の極大魔法じゃなかったか?! 何でお前はそう冷静なんだ?!
「ちょっ! ちょっと待て、グラマス!?」
驚きのあまり俺は思わず声を上げるが
「「射抜け!」」
その声は届かず2人は魔法をイビルトレント目掛け解き放った──ちょっと待てーーー!
「伏せろーーーッ!!」
俺はそう言うが早い、エリナとレオナの手を引いて床に伏せるのだった!
ウィルとの会話で発覚した(?)グラマスの実戦経験の少なさ! これは迷宮『黄昏の城』攻略に暗雲が……?
まぁウィル達が反則級に強いので問題無いですね!(笑)
*邪木精…………見た目は出来損ないの案山子の様に見えるが、獲物を認識すると想像以上の機敏さで襲い掛かり、槍の様になっている腕を突き刺して相手の血を吸い取る。体高は2メルト程。
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルの三人目の婚約者ルピタ・リットンのイラストを第115部本編百八話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




