禍もあれば福もあるかも?
本日は第百四十六話を投稿します! 押し寄せたトラブルの解決後の話です。
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邪猟犬の大群に追われていたシャミー、ヴィネ、ルマティマの3人の話は続いている。
「──実はギルドにイビルハウンドの討伐依頼が出ていて、それで私達は依頼を受け討伐しに来たんです。そしたら──」
リーダーのシャミーに続けてヴィネが発言する。
「──程なくしてイビルハウンドの群れを見つけたんだけど、聞いていたのとは群れの大きさが少し違っていて……あたしは一旦帰ろうって言ったんだけど……」
そこまで言うと口を噤んでしまうヴィネ。すると
「でもリーダーが「手早く倒せば大丈夫だから」と言って1つの群れを全滅させたら、辺りに離れていた別の群れに気付かれて、一斉に襲いかかられたんです」
そのあとを引き継ぐ形でルマティマが話を締める。
「それってつまり──」
『端的に相手の戦力を見誤ったと言う事ですね』
俺がどう声を掛けるべきか一瞬躊躇していると肩の上のコーゼストが図星を突いてしまう。因みにコーゼストの事はきちんと説明しておいてあるので、何ら問題無いのだが──
「「「ゔっ!?」」」
言われた3人はバツの悪そうな声を上げる。
「お前はもう少し柔らかい表現が出来ないのか?!」
思わずコーゼストに突っ込む俺。見ろ! 3人ともしょぼくれているじゃないか?! 片や言った当の本人は『事実を言っただけですが?』と全く反省する気がない。傍らではアン達が苦笑いをし、ヤトは「イビルハウンドって不味そうねぇ」と的外れな事を言ったりしていた。
「えへん、と、とにかくだ! すまんが一緒に来てくれないか? その話を聞かせて欲しい人を向こうに待たせているんだ」
少し無理矢理だが話を逸らす俺。大体そうした事は俺が聞くよりも関係者が聞いた方が断然良い訳だしな。
「「「は? はい……?」」」
請われた3人はなんの事だろうとキョトンとしながら生返事を返して来る。言っておいてなんだが、うちのグラマス殿に会わせても大丈夫だろうか?
本当に今更であるが…… 。
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一抹の不安はあるが、とりあえず停めてあるドラゴンキャリーに3人組を連れてきた。勿論キャリーの番をしているファウストとデュークの事は話しておいたのだが、やはりラミアだけで無く、実物のオルトロスと剛鉄ゴーレムを見るとかなり驚いていた。尤もこれからもっと驚くんだが。
「それは──災難だったね。恐らくは討伐依頼を受けたギルド支部の確認不足だね」
ドラゴンキャリーの客車の中、うちのグラマス殿が3人の話を聞いて顔を曇らせる。それは曲がりなりにも西方大陸冒険者ギルドの全権を預かる最高統括責任者としての顔である。大陸も所属も違えど責任を感じているのだろう。
「「「…………」」」
一方のシャミー達3人はガチガチに緊張している。そりゃそうだ、曲がりなりにもこの人はグラマスなんだからな──見た目、子供に見えるけど。
「それはどう言う事なんだ、グラマス?」
とりあえず当たり前の反応を見せているシャミー達は置いておいて、俺は疑問に感じた事を質問する。アン達も聞き耳を立てている傍で、お腹が空いたと訴えたヤトが俺が無限収納から出したステーキを頬張っている。
「そうか、ウィル君達はその辺の事は詳しくは知らないか。冒険者ギルドが個人や市町村、或いは国から魔物や盗賊等の討伐を依頼されると、先ずギルド職員もしくは専属の冒険者に事前調査をさせるんだよ。依頼された内容と実際の現場の状況に齟齬が無いかどうかね。齟齬が無ければそれで良し、もしもあった場合には依頼主に交渉して依頼する冒険者のクラスを調整したり、報奨金を上げてもらったりする為にね。だけど今回のはどうやら依頼を受けたギルドがちゃんと仕事をして無かったんだろうと思うよ」
何せ場合によっては安く済ませる為にわざと難易度を低く見せ掛ける不届き者も居るんだよ、とはグラマスの弁である。
確かに以前そうした話をルピィから聞いた気がするが、本当にやる奴がいるのか……何と言うかそんな事をしても結局自分で自分の首を絞めるだけだと思うんだが?
まあいつの世もセコい奴はいるもんだがな。
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「とにかく話を戻すと、今回の依頼の失敗は彼女達の責任じゃないんだな?」
少し逸れた話を戻す意味も含め、改めてグラマスに確認する俺。ギルドでそうした事前調査をするのが当然なら、それをキチンと行わなかったギルド側に責任があるからな。アン達も事の成り行きを心配そうに見ている。そんな空気の中、お代わりを要求したりしているのはヤト。
「うん、当然そうした事はちゃんと確認した上で冒険者に依頼するのがギルド本来の在るべき姿だからね。今回の件は……まあ少し先走った感があるけど、彼女達『山猫』には責任は無いかな。寧ろやるべき事をしなかったギルド側に責任があるね」
聞かれたグラマスはシャミー達3人の顔を見ながらはっきりと言い切る。これはわざと言質を取れる様に話したな。一方その言葉を聞いていたシャミー達からは微かな安堵の溜め息が漏れる。
そして何故かアン達もホッと胸を撫で下ろしたりしていた。ヤトは2枚目のステーキにあむあむと齧り付いている。
「聞いての通りだ。3人とも良かったな」
「あっはい、ありがとうございます、ウィルフレドさん!」
ヤトにお代わりのステーキを与えてから幾分緊張が解けた3人にそう声を掛けると、シャミーが代表して礼を言ってくる。
「それで? この後はどうするんだ?」
「はい、このままドゥングアの町まで戻ろうと思います。私達が依頼を受けたのはそこのギルドでしたし、今回の事を報告しないと」
今後の事を確認するとそう答えるシャミー。ドゥングアならこちらも次の目的地だな……ふむ、それなら──
「グラマス」
──この3人をドラゴンキャリーに乗せたいんだが、と言おうとする俺の台詞の先を取り
「勿論構わないさ。向かう所は同じドゥングアだし、何より僕が直接ギルド支部に口添えした方が彼女達の為にもなるしね」
そう言ってニコリと笑うグラマス。
やはりこの人は人誑しである。
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話について来れず呆然としていたシャミー達3人に、俺達がドゥングアの町に向かっている最中だと言う事を改めて話して聞かせた。なので3人も同道しないかとも。3人は目を瞬かさせると
「「「いいんですか?!」」」と大変驚いた様子を見せる。
「まあ俺としてもこのままここから歩かせるのは気が引けるし、何よりギルドに話すにしても威厳のある人に話してもらえれば問題ないだろうしな」
「僕はあまり威厳とか無いんだけどね」
3人の声を受けて答える俺の台詞にそう言って苦く笑うグラマス。そりゃまぁあんたは見た目がアレだが、ちゃんとグラマスとしての責務を全うしているぞ?
『それはそれで失礼な言い回しかと』
俺の左肩に座るコーゼストがジト目を向けながら念話でボソッと呟いた。良いんだよ、聞かれてなけりゃ! 安全圏内だ!
「まあウィルもそう言っている事だし、グラマスも許可しているんだしさ、遠慮せず乗っていきなよ! ねっ、ウィル?」
コーゼストのツッコミに念話で反論していたら、今まで黙って成り行きを見ていたレオナが3人にそう言って聞かせる。
アン以下のメンバー達も一様に頷き同意していた。そしてヤトもステーキを頬張りながら頷いたりしている。
「あの……本当に良いんですか?」
ルマティマが恐る恐る確認を入れて来て、俺やグラマス、アン達全員が頷くのを見て「よ、よろしくお願いします!」と不安そうな顔から一転、3人とも元気良い声を上げながら頭を下げて来た。こうした話はレオナが言うのが一番纏まり易い気がするんだが?
まあその辺は適材適所だな!
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あまり時間を損失する訳にもいかず、話を終えるとシャミー達を乗せたまま出発するドラゴンキャリー。因みに彼女達の荷物は手持ちの物のみだったのが幸いした。そしてキャリッジの中では──
「では改めて。私は涅森精霊のアンヘリカよ、この氏族の中では銃士なの。よろしくね」
──うちのメンバーがシャミー達に自己紹介をしたりしている。そう言えばさっきはちゃんと紹介してなかったなと反省する俺。因みにガンナーとはコーゼストとラファエルが作った造語である。
「私はエリナベル、魔法騎士よ。よろしくね」
「あたしはレオナ! 拳闘士さ! よろしく!」
「私はルアンジェ、軽戦士で遊撃手をしている。これでも自動人形。よろしく」
「私はフェリピナ、魔法士をしているの。よろしくね」
「私はマルヴィナと言います。神官を務めています。よろしくお願いします」
「えっと、あたしはスサナだよぉ。ここでは斥候をしているの、よろしくねぇ」
「私はヤト! 御主人様の一の僕なのよ!」
『そして私は有知性魔道具のコーゼストと言います。改めてよろしくお願い致します』
最後に妖精体コーゼストで締め括られ、俺も改めて自己紹介をする──と言うかルアンジェがオートマトンだと暴露した段階で3人が固まったままなんだが?
「あーっと、それで俺がこのクラン『神聖な黒騎士団』の頭領、ウィルフレド・ハーヴィーだ。このクランでは戦士を務めている」
それに構わず話し掛けると、3人は再起動して「こ、こちらこそよろしくお願いします!」と一斉に頭を下げて来る。
何と言うか、この3人の連係はバッチリみたいである。
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そうしたトラブルはあったものの、それ以降は特に何も起こらず順調に進むドラゴンキャリー。キャリッジの中ではアン達とシャミー達が話に花を咲かせている。
「へぇ! アンさんはウィルさんの婚約者なんですね!」
アンの話にヴィネが食い付き気味に反応する。するとアンはニッコリ微笑むと
「ええ、そうよ。エリナとレオナの2人もウィルの婚約者なの」
右手中指に輝く婚約指輪を見せながらそう宣う。エリナもレオナも同様に右手を3人に見せながら満面の笑みである。
「「「ええっ?! そうなんですか?!」」」
それに対し驚きの声を上げる3人。それは見事に重なり、3人のチームワークの良さをここでも示している。
本当に女3人と鵞鳥1羽で市が出来るとは良く言ったもんである。
『その比喩表現は2度目ですね』
コーゼストが耳元に顔を寄せると、他のメンバーには聞こえない様にコソッと話し掛けて来た。
「……良くそんな前の事を覚えていたな?」
『そこはマスターのパートナーとしては当然ですからね』
そう言いながら豊満な双丘を張るコーゼスト。どうでも良いがそのドヤ顔はやめれ。
「どうかしたの、ウィル、コーゼスト?」
「「いや(いいえ)、何でもない(です)」」
怪訝そうなアンの問い掛けに思わず声を揃えて答えてしまう俺とコーゼスト。それを見て首を傾げるアン。しまった! ついこいつと声が重なった! 見るとコーゼストも思わず口を押さえている。
「……本当に貴方とコーゼストは息がピッタリ合っているわね。私、前から思っていたんだけど、貴方とコーゼストって性格と言うか考え方が似ている気がするのよねぇ……」
俺とコーゼストの様子を見て若干呆れ気味にそんな事を宣うアンさん。そらまあコイツは俺の腕にずっと一緒に居るからな。すぐに人の思考を読むし…… 。
『アン、流石にそれは失礼かと。私はマスターみたいに性格がひねくれていません』
何か今、物凄く失礼な事を言われたのだが…… ?
良し、次の町に着くまでじっくりと話し合おうじゃないか、コーゼスト!
結局、シャミー・ヴィネ・ルマティマの三人組を次の町までドラゴンキャリーに乗せてあげたウィル! この男、本当に人が良過ぎます! そのお陰で羞恥に晒されていますが(笑)
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルの三人目の婚約者ルピタ・リットンのイラストを第115部本編百八話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




