東方到着 〜報奨金と久々のマモノ達〜
本日は第百四十二話を投稿します!
とうとう目的地のドゥンダウ大陸に到着したウィル一行! でもこのまま何事も無く……はありません! 予定調和です(笑)
-142-
朝霧が穏やかな入り江の海の上を薄く覆う中を、『大海の剣』は滑る様に進んでいく。やがて朝霧を抜けると今度は目の前には大きな港が見えて来た。陽の光で港町全体が紅玉のように紅くツヤツヤと光っている。
魚人族のオーリーフ島から彼等が使う ” 水路 ” を使って15日目、俺達は東方大陸の玄関口であるリーリエ国の港町ドンチュワンに無事に着いたのである。
「おぉ……」
『大海の剣』の舷梯を降りてしっかりと大地を踏み締め、港の建築物に目をやると改めて異国に来たのだと言う思いに駆られる。良く見ると屋根を葺いている瓦が赤く焼かれ、硝子の様に輝いている。だから先程船上から見た街並みが紅く輝いていたのだと納得。
「へぇ、街並みが西方大陸とは随分と違うのね」
俺に続いてタラップを降りてきたアンが俺と同じ感想を漏らす。
「でも赤い瓦が宝石みたいで綺麗ねぇ」
こちらはエリナさんの感想で
「それに壁はレンガや石積みって訳じゃないんだね!」
そしてこれはレオナさんのご感想。
「ん、それに建物がごちゃごちゃとしている感じ」
その後にルアンジェが続いてそうした感想を述べ、スサナ、フェリピナ、マルヴィナが首を縦に振って同意している。
「まあ、ドゥンダウはルォシーとは違う文化が発達しているからね。あの瓦ひとつ取っても陶器の様に釉をかけてから焼いているんだよ」
最後にタラップを降りてきたグラマス殿が笑いながらそう教えてくれる。
『流石はグラマス殿、博識ですね。うちのマスターとは大違いです』
俺の左肩の上にちょこんと座りながらグラマスを賞賛し、序に俺を貶してくるコーゼスト。悪かったな、こちとら初めて訪れた場所なんだよ!
そんな突っ込みを心の中でコーゼストにしていると、巨船『大海の剣』を遠巻きに見物していた人達の群れから冒険者の一団がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
「やれやれ、どうやらお迎えが来たみたいだね」
それを見るなり苦笑いを浮かべるグラマス。やがて一団は俺達の前まで来ると一団の中から1人の女性が進み出てきてグラマスの前に立つと
「お久しぶりアルね、セルギウス様」
と変な抑揚とともに恭しく礼を執る。
「久しぶりだね、トゥさん」
それに苦笑混じりの笑顔で答えるグラマス。
「グラマス、その人は?」
思わず尋ねてしまった俺にグラマスが答える。
「うん? ああ、彼女はこのドゥンダウ大陸冒険者ギルドの最高統括責任者だよ」
「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」
グラマスの言葉に見事に全員の声が重なった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とにかく埠頭で話していても埒が明かないので、続きの話はドンチュワンの冒険者ギルドでと言う事になり移動する俺達。
「さて、改めて……ドゥンダウ大陸冒険者ギルドグラマスのトゥ・シンイェンあるよ。皆さんよろしくお願いするアル」
ギルドの執務室で改めて自己紹介してくるドゥンダウのグラマス、トゥ・シンイェンさん。年の頃は20代後半辺りか? 黒髪の左右をお団子にし、目は所謂糸目と言われる様な細い目で表情が読み取りにくい。
服装は以前晩餐会でレオナが着ていた様な身体の線が際立った両脇に深いスリットが入った衣装を着ている。そして胸のボリュームはなかなかであり、謎の語尾と共に凄まじく気になる…… !
『マスター、観察するのもその辺にしておいて下さいね』
肩のコーゼストに念話で突っ込まれてしまった…… 。俺は軽く咳払いし、こちらも自己紹介しなくてはと言葉を発しようとしたが
「そして、貴方達が氏族『神聖な黒騎士団』の人達あるね。お噂はセルギウス様からかねがね聞かされているアルよ」
そうトゥ女史ににこやかな笑顔で言われてしまった──一体どんな風に話されているのか、猛烈に気になるんだが?! 思わずグラマスの方を見やると何時もの笑顔の中に困った表情が垣間見れた。
「まあウィル君達が僕のお気に入りの直属の冒険者パーティーだと言う話はしたけどね。勿論従魔達の事もね」
勿論それだけだけどね、とはグラマスの弁である──本当にそれだけなのか?
「それでも自己紹介しなくては礼を失するからな。俺が『神聖な黒騎士団』のリーダー、ウィルフレドだ、よろしく頼む」
気を取り直してそうトゥ女史と自己紹介しながら握手を交わす俺。
「初めましてグラマス、アンヘリカと申します」
「あっ、私はエリナベルです」
「あたしはレオナさ! よろしく」
「ルアンジェと言う。よろしく」
「あっ、私はフェリピナと言います!」
「私はマルヴィナと申します」
「あ、えと、スサナと言いますぅ。よろしくお願いしま〜す」
『初めましてトゥグラマス様、マスターウィルの一番の相棒のコーゼストです』
俺の挨拶に続いてアン以下のメンバー達もそれぞれ自己紹介を済ませる。そしてコーゼストよ、何気に自己主張激しくないか?
「これは皆さん、ご丁寧にありがとうアル。ちょっと驚いたアルよ」
俺達の自己紹介を受けそう言うトゥ女史。何かそんなに驚く所があっただろうか?
聞けば普通の冒険者は大体横柄な者が多く、グラマスと言えどあまり敬わられないのだそうだ。まあ俺は態度が横柄だが、礼を失する事はしていないつもりである。
『ご自覚がおありとは驚きですね、マスター』
コーゼスト、お前は俺に喧嘩を売っているのか?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「まあ、兎に角、だ」
一触即発の様相(笑)を呈して来た俺とコーゼストを見ていたグラマス──セルギウス殿が手をパンッと叩いて逸れかけた話を元に戻す。
「ウィル君達の事は既にこちらのギルドでは周知されているからね。安心してくれたまえ」
「一体どんな周知のされ方をしているんだ、俺?!」
俺としてはその辺が一番知りたいんだが?!
「まあ、ウィル君も言いたい事もあるだろうが……とりあえず今日はここまでと言う事にして、詳しい話はまた明日にしないかい? 皆んな疲れているだろうしね」
「あっ、そうアルね! では早速ギルド指定の宿に皆さんを案内させるアル!」
俺の心からの叫びは見事に無視され、トゥ女史は俺達を案内させる為にギルド職員を呼び出した。
「では彼に付いて行って下さいアルね。ブレッド、宜しく頼むアル!」
そうにこやかな笑顔で職員のブレッド君に任せるトゥ女史。その傍ではうちのグラマスも笑顔で「それじゃあ」と宣っている。
「いやいや、グラマス! 何であんたが一緒に来ないんだ?!」
「うん? 僕は少しトゥさんに用事があるんだよ、ほんの少しね」
「いやいやいや、あんたは休まなくて良いのか?!」
にっこりと笑うグラマスに思わず突っ込む俺。するとグラマスは
「心配してくれるんだね、ありがとうウィル君。でも大丈夫。二三、要件を話したら僕も宿に向かうから」
そう言って手をひらひらするグラマスにそれ以上何も言えず、俺達はブレッド君の後に着いていく事にした。
本当に何なんだ、一体………… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
結局、宿屋『銀蛇亭』にグラマスが来たのは1時間後だった。何をしてたかと問うと「それは明日のお楽しみだよ」と言われてしまった。それはそれで物凄く気になるんだが── 。
兎にも角にもファウスト、デューク、そしてヤトを招喚して久しぶりに俺の膝上争奪戦をさせ勝者がファウストに決まった翌朝、ヤト達をミニモードで伴いギルドを再び訪れると──
「それではウィルフレドさん、こちらが報奨金になるアル!」
ギルドの執務室の机の上に積まれる白金貨と金貨の山。
「何だ、これ?」
目を瞬かせながら思わずトゥ女史に尋ねる俺。
「はい、勿論これは海賊『黒百合団』と海賊ザイラ一味の討伐の報奨金アルよ!」
俺の問い掛けに満面の笑みで(目が細くてわからんが)答えるトゥ女史。いやいや、何でそんなのが準備されているんだ?! すると俺の混乱を察したグラマスが
「昨日、あの後、僕がトゥさんに話したのさ。確かに首領のジータやザイラを含む一団はオーリーフ島で生きているけど、事実上2つの海賊団を討伐したのはウィル君達なんだし、こうしてちゃんと誰かが正規の手続きで報奨金を受け取れば少なくとも彼等に追っ手が掛かる事は無くなるからね。もちろん、それ等は全て僕が討伐の証人だから安心してくれたまえ」
そう笑いながら説明してくれ、それを聞いて色々と納得出来た。確かに俺がジータやザイラ達海賊団を討伐したとなれば彼等が今後お尋ね者として追われる事が無くなるし、しかもルォシー大陸のグラマスが討伐の証人となれば、その信憑性も増すと言う事になる。
「そうか……済まなかったな、グラマス。色々と気を使わせてしまって」
「なんのなんの、そうした所を支援するのが僕達グラマスやギルマスの役目なんだからね。君達冒険者がそこまで気を使っていたら大変だよ?」
いつも通りの笑顔でそう宣うグラマスに、俺はひとつ頷くと思った事を口にする。
「なるほど、するとうちのギルマスの薄毛は気遣いからだと言う訳か……」
『それは違うかと。と言うか随分と失礼な台詞ですね』
俺の台詞にコーゼストが肩の上でツッコミを入れてくる。後ろではアン達が肩を震わせて笑いを堪えていた。
「うん、ヒギンズ君の薄毛はそうした事じゃないんだけどね」
グラマス、ただの冗談にそんな真面目に答えないでくれないか?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とりあえず折角グラマスが気を利かせてくれた事もあり、有難く報奨金を受け取る事にした俺。ジータの分が白金貨7枚、ザイラは白金貨1枚と金貨50枚となった。やはりジータの方が名も売れていた分、結構な額になっていた──尤もこの報奨金の大半はレグラ帝国が出しているのだろうが。そんな事を思っていたら
「それでアルな、私はウィルさんに頼みたい事があるアルよ」
トゥ女史がいきなり頼み事をしてきたりする。
「……頼み事って?」
「あははっ、そんなに難しい事では無いアル。貴方の従魔達を紹介して欲しいアルよ。もちろん元々の大きさででアル!」
思わず身構える俺に笑い声と共にそう言って来るトゥ女史。それを聞いて思わず入っていた肩の力を抜く。
「そんな事なら構わないが……ここはちょっと狭いと思うぞ?」
「うーん、そうだね。ヤトならともかくファウストやデュークもとなると執務室よりも修練場が良いね」
俺の台詞に同意して台詞を重ねるグラマス。なんと言ってもヤトだけでも3メルトもの蛇身を持っているからな。
俺とグラマスの言葉を聞いて「それならこちらに来て欲しいアル」と先頭に立ち、俺達を修練場に案内してくれるトゥ女史。そして修練場に到着すると
「さ、さ、頼むアルよ!」
と急かしてくる。俺は苦笑いを浮かべながら付いてきたヤト達の仮想体の顕現を解き、改めて現実体へと顕現し直す。すると──
「御主人様の一の僕、ラミアのヤト参上!」
「ヴァンヴァン!!」
「ヴ……マスター、ゴめいレイを」
ヤトを筆頭に、ファウスト、デュークがそれぞれ元の状態となって修練場に姿を現した! と言うかヤトよ、お前いつもの台詞がパワーアップしてないか?!
そんな事を思いながら傍に立つトゥ女史を見やると、完全に固まっていた。何やらブツブツと呟いているので、耳を澄まして聴いてみると「ほ、ほ、本当にSランクのラミアとオルトロスと剛鉄ゴーレムでアル……」とうわ言の様に繰り返していた。
「どうやら、トゥさんは僕の話が誇張されていたと思っていたみたいだね。でもまあ普通はこんな反応だよ」
そんなトゥ女史の様子に1人頷きながら納得しているグラマス。
いやいやグラマス、アンタはトゥ女史に何をどう伝えていたんだ?!
ジータ等海賊達の討伐報奨金は結構な額となりました。
でもこのまま貰わないでいるとジータ達はこれからも追われる身になりますので、セルギウスグラマスのファインプレーが光ります!
そして案の定と言うかやはりと言うか、ファウスト達従魔は何処でも注目の的なんですね!そしてセルギウスさんはトゥさんに何を吹き込んでいたのか?!
*トゥ・シンイェン…………東方大陸冒険者ギルド最高統括責任者の女性。頭の左右に髪の毛がシニヨンで纏まっている糸目の美人。見た目年齢は20代ぐらいだが……?
☆レオナ・シャルリムのイラストをmanakayuinoさんに描いていただきました!manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました! 第125部本編百十八話に掲載されています! そちらもお楽しみください!
お読みいただきありがとうございます。




