清廉と熱愛と妙案
本日は第百三十七話を投稿します!
メロウ族の女王である事が判ったマディことマデレイネ! とマーユ! その女王様が何やらやらかします(笑)
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魚人族の頂点に立つ女王である事がわかったマディ──マデレイネ・ジョゼ・ファンテーヌ陛下の詰問に答えた俺。マディは俺の顔をジッ……と見詰めていたが、不意に表情を緩める。
「そう……ですか。貴方はやはり──」
そう呟く様に言うと玉座を降り俺の傍に歩いて来ると
「──清廉な心根の人なのですね。流石は私が見込んだ男性です、とっても素敵♡」
そのままギュッと抱き着いて俺の胸に顔を埋めながらそんな事を宣うマディ。ちょっ、これって王族としてどうなんだ?! 思わず玉座の脇に控えているヨエル摂政を見ると「ほほぅ、これはこれは」と何故か満更でもない様子。
それって臣下として良いのか?! と言うか航海中より愛情表現が斬首刑みたいな即死レベルの直接的になっている気がするんだが?!
そんな風にワタワタしていると不意に背筋に寒気が?! 恐る恐る振り向くとアン、エリナ、レオナの3人が魔王すら平服しそうな真っ黒い霊気を放っていた──これは不味い!
「あーっと、マディさんや? そろそろ離れて欲しいんだが……」
俺はそう言うと抱き着いているマディの肩に手を掛け、胸に顔を埋めてうりうりしているマディを強引に引き剥がす。
「あんっ♡」
物凄く名残惜しげな声を上げるマディ。そんなに艶っぽい声を上げないで欲しいものである。そして肘掛椅子から今にもこちらに来そうなマーユ、流石に今は止めて欲しい。
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「ごめんなさい、つい昂ってしまって……」
玉座に座らず床に土下座してアン達と俺に謝罪を敢行しているマディ。
「まぁ私もああ言った手前、反対はしませんがもう少し節度を持ってくださらないと困ります(怒)」
片やアンさんは偉く御立腹であり、それに賛同するエリナとレオナ、そしてその彼女らに対し小さくなっているマディ。実に対照的な構図であるが、何故君ら3人は俺に抱き着いている?! 特にエリナとレオナ、そんなに胸を押し付けないでいただきたい!
俺はわざとらしく咳払いをすると
「あーえへん、アンもエリナもレオナももう良いだろ? マディだって謝っているんだし許してやれよ。確かに俺もさっきは抱き着かれて驚いたけど、本人に悪気があった訳じゃないんだから」
そう軽くマディを擁護する。その言葉に驚いた顔をするアン達に言葉を続ける俺。
「それに俺が原因で知っている人皆んなが不仲になるのは俺の本意じゃない。もし俺に至らない所があったなら謝るべきは俺なんだからな」
「そんな事……! 貴方は確かに女性に対して少し優柔不断な面も見受けられるけど、今まで女性と付き合った事が無いからだとわかっている。だけどそれは貴方の所為じゃないわ」
強いて言えばアドルフィーネ様の所為なんだけど、と小声で呟くアン。俺もそれに対しては全面的に同意する!
「ま、まぁウィルがそう言うなら……」
俺がやたら一人納得していると、そう言いながら渋々と怒りの矛先を収めるアン達。それを見て俺は改めてマディに声を掛ける。
「兎に角だ、貴女の気持ちは受けるがそれを受け入れるかはまた別の話だ。俺はこの──」
そう言うとアン達3人の顔を順番に見て
「──3人と婚約しているし、向こうの大陸にはもう1人婚約者がいる。彼女達を幸せにしてやる事が俺のすべき事だと思っているんだ。だから済まないが──」
一緒になる気は無い、と言おうとするとマディが「わかりました……」と小さな声で返事を返してくる。
「今回はここまでにします。ジータと差をつけようと思ったのですが……」
さも残念そうに宣うマディ。いやいやいや、結局諦めていないのかい?! と言うか何だよジータとの差って?! それを聞いて表情が再び凍りつくアンさん達とは対照的に何故か満面の笑みを浮かべるマディ。
何なんだ、その自信に満ちた笑みは?!
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「とにかく話を戻しますが」
土下座を解いて玉座に座り直したマディが口を開く。そう言えばジータの処遇について話していた筈なのにいつの間にかあらぬ方向に話がズレていた。
「ジータとその部下の取り扱いをどうするか、ウィルは何か考えがあるのでしょうか?」
暗に不安があります、と含ませた物言いのマディ。俺としてはこのまま旅に同行させる訳にも行かないので、何処か安全な場所に身を隠させたいとは思っていたんだが…… 。
『マデレイネ女王陛下に聞きたい事があるのですが宜しいでしょうか?』
今まで黙って事の成り行きを見聞きしていたコーゼストが言葉を発する。そう言えばコイツ、さっきは楽しそうだったな?
「コーゼストさん、何ですか?」
『現在のメロウ族の国際的な立ち位置はどうなっていますか? それとこのオーリーフ島近傍の様子についてお教えください』
「わかりました。現在私達メロウ族は──」
コーゼストの質問に答えるマディ。それによるとメロウ族はこのオーリーフ島と近傍にある大小7つの島を中心とした半径300キルトを範囲とした海域を国土とした独立国家となっており、立場的には何処の国にも与しておらずまた、西方大陸と東方大陸の間を往来する貨客船の中継基地として機能している事もあり、何処の国も彼等メロウ族とその国土に手を出さない云わば不可侵条約があるそうな。
『それならばこのメロウ族の国土にいる限りにおいては、何処の国もそこにいる者に対し干渉出来ないと言う訳ですね』
「確かにそうですね」
『聞き方を変えます。仮に犯罪者がメロウ族の管理する海域にて遭難等で救助救援を求めた場合の処置はどの様になっていますか?』
「その場合は当然救助救援はいたします。『溺れる者に善悪の区別は無い』、私達メロウに古くから伝わる言葉です。それに例え海賊であろうとも私達を害する事は『海に生きる者の掟』として決して出来ません──ッ?!」
そこまで言うと何かに気付いたみたいなマディ。
『では最後の質問です。その様に助けた者を自国土に招き入れる事に何か問題があるのでしょうか?』
それに構わず話を続けるコーゼスト。何かに気付いたマディは
「いいえ、例え救助者が他の国で指名手配されている人でも私達の国土に留め置く事に何ら問題はありません」
次のコーゼストの答えを知っているみたいな面持ちでコーゼストの質問に答える。
『すると私達が『海に生きる者の掟』としてジータ達を助けた事はどうでしょうか? マスターは『溺れていた』ジータ達を助け、そのままこの島に乗せてきただけなのですが?』
コーゼストはその答えを待っていたみたいに話の核心に触れる。
「それは──何ら問題ありませんね」
マディの口から出たのは肯定の意。その顔は「敵わないですね」と若干苦笑を浮かべていた。どうやら今の舌戦はコーゼストが勝利したみたいである。こうした論理的思考ではコーゼストに敵う相手はいないみたいである。
何にせよ助かった。
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「ではジータ達、元海賊団『黒百合団』の面々の身柄はメロウ族が預かる事にするとして……当面の住処と仕事をどうするか……何か良い案はありませんか、コーゼストさん?」
ジータ達を受け入れる方向で話は纏まったが、ここでマディは現実問題を口にする。まぁ言いくるめられたコーゼストへの意趣返しに見えなくも無い。だがそれもコーゼストは承知していたみたいで
『一番実現可能な案としては──ここオーリーフ島以外にある群島の1つを彼等の手で開拓させるのです。そして彼等にはその開拓した島の永住権を与え自給自足させます。最初は大変でしょうからあなた方メロウ族に手助けしてもらう必要はありますが。それと仕事に関してはメロウ族の領土の防衛を担ってもらい、それに見合うだけの金額を毎月払う様にすれば良いかと──有り体に言えば用心棒代ですね。元々このオーリーフ島を含む群島と半径300キルトの領域はメロウ族の領土であり領海なのです。この広さをメロウ族だけで全て護るには限界があります。なので海を知り尽くした彼等の能力を最大限発揮してもらう方が効率的ですし、そうすれば彼等自身の罪滅ぼしにもなります。勿論彼等には永住権を与えた島の利用料金としての租税は払ってもらいます』
そう一気呵成に自説を言い放つコーゼスト。改めて思い出したがコイツは本当に大概だな!
マディやヨエル摂政のみならず、話を聞いていたアン達もコーゼストの提示した案に驚きを隠せずにいた。どうやらコーゼストはこの為にマディに色々と聞いていたみたいである。
「な、成程、それなら確かに実現可能かと……ヨエルはどう思いますか?」
いち早く再起動したマディは一緒に惚けていたヨエル摂政に意見を求める。
「は?! は、はい! そ、そうですな、それでしたら「伍の群島」が宜しいかと。7つの群島の中でも2番目に大きい島ですし、北西に聳える山の麓には割方広い平野もありますし、何より彼処には水脈があるので真水を比較的簡単に手に入れられます。それにこの本島にも一番近い島です」
与えられた条件に見合う島を直ぐに見繕うヨエル摂政。その辺は流石である。まぁこの本島に近くないと防衛も何もあったもんじゃないからな。
何にせよ、これで纏まる……かな?
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ひと通り話し合いも済み、決まるべき事と決まったので宮殿から港に使いを送り、ジータを呼び寄せる事にした。やがて輿車に乗せられジータが連れて来られ──
「マディがメロウ族の女王陛下だったとはね……」
半ば呆れ気味な態度をとるジータ。何となく親近感が湧くのは何故か?
『マスター以外に身分に媚びない人を初めて見た気がします』
その様子にコーゼストも半ば呆れ気味にそんな事を宣うが、そんな事を俺に言われても困るんだが?
兎にも角にもジータにコーゼストが提示したプランを説明し反応を伺うと
「そう言う事なら大丈夫だよ。アイツらも元は軍人だった奴が多いんだ。軍人時代に色んな事を叩き込まれているし、何より元々食いっぱぐれた漁師や農民出の奴らだから島1つ開拓するぐらい造作も無いさね」
そう嬉しそうに笑って答えて来る。首領のジータがそう言うなら問題無いんだろう。
「でもさ、そこまでされると何だか申し訳ないんだけど……本当に良いのかい? そらまぁあたしらは居場所を与えてくれるなら文句は言わないけどさ」
それまでの笑顔から一転、不意に表情を曇らせるジータ。それを聞いていたマディは何やら含み笑いを浮かべ
「それに関しては大丈夫。実はウィルが──」
と先程俺が話した話を全て言って聞かせてしまう──ちょっと待て! 案の定話を聞いたジータが物凄く熱い視線を向けて来る! ほらな、こうなる!!
「ウィル、アンタがそんな思いでいたなんて……あたしは嬉しいよ! 流石はあたしが見込んだだけの事はある男性だよ♡」
そう言うが早いギューッと抱き着いて来るジータ! こちらも愛情表現が即死レベルになっとる!
「「「「「「ああっ!!」」」」」」
それを見ていて叫ぶルアンジェを除く6人。いやいやいや、アンとエリナとレオナは兎も角、何でフェリピナやマルヴィナ、スサナまで叫ばにゃならんのだ?!
俺は自分の身に降り掛かる女性絡みの面倒事の多さに思わず呆れる。コーゼストは違うと言うが、これ絶対呪われているんじゃ無いのか?!?
『これは──やはり私もマスター争奪戦に参戦すべきでしょうか?』
左肩のコーゼストがくすりと笑いながらそんな事を宣う。
よし──後でじっくり話し合いな!
すったもんだの末、何とかジータ達の受け入れ案が纏まりました! それにしてもこうした論理的な掛け合いに関してはコーゼストの右に出るものはありませんね!
☆メロウ族の住む領域、半径300キルト(300キロメートル)は凡そホノルルを中心としたハワイ諸島の領域と同じぐらいです。参考までに。
いつもお読みいただきありがとうございます。




