新技披露、トラブルは海賊が元?!
本日は第百三十二話を投稿します!
とりあえずは順調な航海の『大海の剣』。その船上では暇にかこつけてウィルとレオナが何やらしております…… 。
-132-
蒼い海の只中を進む巨船『大海の剣』。時折大きな波が打ち付け船体が揺れる事はあっても比較的穏やかである。
このまま順調なら予定より3日早く、あと5日ほどでオーリーフ島が視界に入ってくるとは船長の話である。そろそろ陸が恋しい俺達としては有り難い話である。それとつい最近知ったのだが船長の名前はモデストと言うそうな。
それにしても本当に何も無いな等と思いつつ、俺達は何をしているかと言うと── 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「せいやっ!」
「おりゃーーーッ!」
──甲板上で模擬戦をしていたりする。船の娯楽施設にも飽きたレオナにせがまれて相手をしている最中だ。平和なのは結構なのだが、体を動かさないでいるといざと言う時に何かあっても困るしな。因みに見物人として何故かルアンジェとヤトが俺達の模擬戦を見ていたりする。
刃を潰した剣と拳鍔が激突し幾度も火花を散らしている! 俺の斬撃を悉く避け、或いはナックルダスターで受け止め、或いは受け流すレオナ!
俺としては距離を取り空裂斬を放ちたい所だが、そうしようとすると素早い身のこなしですぐさま接近戦を挑まれる! 更には隙をついての拳撃が来るので油断が出来ない! 仕方ない──俺はカイトシールドで拳撃を受け止める瞬間、武技『皇竜砕牙』をシールド越しに放つ! 本来の使い方では無いので威力は低いがレオナを後ろに押し返す事に成功した──今だ!
俺も後ろに飛び退くとロングソードを構えアギトを発動させ──だが次の瞬間! 胸に衝撃が走り更に後ろに飛ばされる俺! な、何が?!
「くっ?!」
何とか足を踏ん張り踏み止まり視線を向けると、俺の方に向かい拳を突き出しているレオナがいた。
「はっ、はっ、はっ、はぁ……ど、どうだいウィル!!」
呼吸を乱しながらドヤ顔で吠えるレオナ。
「いつつつっ、一体何をしたんだレオナ?!」
衝撃を受けた胸を押さえながらレオナに尋ねる俺。すると待ってましたとばかり
「へ、へへへぇ! これがあたしの編み出した武技さ!」
そう自慢気に言い放つレオナ。聞けば拳闘士の間には ” 遠拳功 ” なる武技が伝説として在るそうなのだ。何でも闘気を極限まで高めて拳撃と共に放ち、遠くにいる敵を倒す武技らしい。
尤も今までこれを使いこなせたのは、『執行人』と呼ばれたあのノーリーンだけなのだそうだ。
『レオナの武技は闘気が足りない分を魔力で補っているみたいですね』
「何と言うか、私の竜咆衝撃波に似ているわね」
俺が気付かない間にレオナの一連の様子を見ていたコーゼストがそう分析し、ヤトはレオナの武技をそう評する。
「流石はコーゼストとヤト、良くわかったね! その通りさ、ヤトの魔術を参考にしたあたしの自己流さ!」
そう言ってヤトに負けず劣らずの巨大な双丘の胸をこれでもかと張るレオナ。正直目のやり場に困るんだが?! だがそうか、最近アンやフェリピナ、果てはヤトにまで何かを熱心に聞いていたのはこの武技の為か。
「そ、そんでだね、ウィルにこの武技の名前を付けて欲しいんだけど……」
「俺がか?!」
急にしなを作り上目遣いでお強請りして来るレオナに、ちょっとドギマギしてしまう俺。親密な関係になってから俺の婚約者さん方はお強請りが上手くなった気がするんだが? 後ろではヤトがニヨニヨしている。
俺は軽く咳払いをすると武技の名前を考える。そしてふと思い付き
「それなら──『正拳砲撃破』てのはどうだ?」
とレオナに振ってみると、レオナはパァッと弾けた表情で
「インパクトカノン! うん、良いね、それ!! 流石はウィルだよ!!」
とこれまた小躍りして喜びを全身で表す。
その仕草に「レオナはこんな表情も見せるんだな」と更に胸の鼓動がドキリと跳ねる俺だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんな風に模擬戦が終わってひと息ついていると船橋の拡声器から声が響く。
「魔動波探知機に反応! 右舷60度方向に船影複数!」
因みにレーダーとは音響探知と同じく特殊な音波を船から周りに放ち、跳ね返って来る音波で障害物の位置を探る魔導機械であるとは、モデスト船長の話である。尤もこの場合の音波とは特殊な魔力の波動なのだが。
何はともあれそのレーダーに反応があった方角に皆んな注視する。ブリッジでは測距儀と言う距離を測る機械で確認したらしく
「距離4キルト、約8分で近傍を通過します。船影は3」
ラウドスピーカーからそう声が聞こえる。何処の船なんだ? 一方の『大海の剣』には少し緊張が漂う。もし万が一、何かしらの面倒事なら場合により救援する場合もあるからである。
「ふーん、何かあったのかな?」
共に右の舷に寄り、目を凝らしていたレオナがそう呟き、ヤトも何事かと様子を伺う。だが流石に4キルト先の船の様子を見る事なんて出来る訳が無い。
「ん、確かに3隻並んでいる。でも真ん中の船の様子が変」
訂正……ここには凄まじく視力が良いルアンジェさんがおりました。そう言えばルアンジェは1キルト先のポーションの小瓶を判別出来る優秀な自動人形だった。
なので俺はヤトを甲板に残し、ルアンジェとレオナを伴いブリッジに上がった。そうしている内にも距離がどんどん縮まり、だんだんと詳細がわかって来た──主にルアンジェが、であるが。
「両側の船から真ん中の船に人が沢山乗り込んでいる──どうやら真ん中の船の人と戦闘──ううん、略奪をしているみたい」
ブリッジの窓から視ていたルアンジェがそう報告して来る! ちょっと待て! それって海賊じゃないのか?! ルアンジェの言葉を聞いたモデスト船長は
「総員、警戒態勢を取れ!」
とブリッジの音声入力機に向けて声を張り上げ、途端に船内が慌ただしくなる。俺達もブリッジを飛び出し、船内に流れた船長の言葉を聞いて船室から出てきたアン達と合流し甲板で他の船員と共に戦闘準備を整える。大きく舵を切る『大海の剣』。
こいつは一波乱ありそうだ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから程なくして問題の船団が視界に入って来た。いや、この場合船団と言うべきではないのか? そんな風に考えているうちにも徐々に接近する『大海の剣』。
目に見えてきたのは左右の船から舶刀を手に中央の船上に乗り移り、船員と戦闘を繰り広げている様子だった! やはり海賊か! すると左右の船は海賊船と言う事になるのか。
ブリッジでもその光景を確認したらしく向かって右側の海賊船に接舷する様に舵を切る『大海の剣』! だが相手もこちらに気付いたらしくいきなり大砲を撃ってきた! 至近距離に着弾し水柱が上がる! いきなりだな、オイ!?
一方こちら側も2連装の主砲が膨らみから迫り出し海賊船目掛け砲撃を開始する! 轟音と共に爆風が甲板を吹き抜ける! 放たれた砲弾は海賊船に着弾し大砲付近が吹き飛ぶ! 向こうの砲撃が止んだ合間を縫って海賊船の左舷側に接舷する『大海の剣』! 50メルトの船に120メルトの巨船が激しい音を立て接舷する!
その接舷の衝撃が止むとすぐさま甲板から甲板へと乗り移る俺とエリナとレオナとルアンジェとスサナとヤト! 海賊船上では「敵襲だ! 魔物もいるぞ!」と言う声が上がり、海賊達がカトラスを振り翳し襲い掛かってくる!
俺は剣を刃を潰したロングソードから刀剣に小型盾を装備し、エリナは何時ものロングソードから歩兵剣に持ち替え、レオナは先程と同じくナックルダスター、ルアンジェはお馴染みの鎌剣、スサナもお馴染みの短剣、そしてヤトは薙刀で迎え撃つ! 『大海の剣』の甲板上からはアン、フェリピナ、マルヴィナが魔法で援護している!
「おりゃーーーッ!」
「はぁーっ!」
「せいっ!」
「ん!」
「ええーい!」
「やぁぁ!」
セイバーが、ショートソードが、ハルパーが、グルカナイフが、グレイヴが海賊の身体を断ち切り、ナックルダスターが海賊の身体を打ち砕き、辺りに血飛沫を撒き散らす!
『エリナ、ヤト、ここは任せた! アンとフェリピナは魔法で援護! マルヴィナは回復役に徹しろ!』
『ええ! 任せて!』
『任せなさいっての!』
『ええ!』
『は、はいっ!』
『はい!!』
念話でそう5人に指示を出し、俺とレオナとルアンジェとスサナは海賊船の甲板を駆け抜ける! 途中斬り掛かって来た海賊を悉く血の海に沈めると、中央の襲撃を受けている船に乗り込む俺達!
ここでも海賊達を斬り伏せ打ち倒していると、反対側の海賊船から何人もの海賊達が乗り込んで来るのが見えた!
『ルアンジェ、スサナ、ここは任せた! アンは『魔導小火砲』で2人の援護を頼む!』
『ん』
『了解ですぅ!』
『わかったわ!』
俺の指示にすかさず念話で答える3人! 俺はセイバーの血を振り払うと、レオナと共にもう1隻の海賊船に向かい甲板を駆けていった!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「何だ、おめぇらは?!」
反対側の海賊船に海賊達を打ち倒しながら乗り込むと黒い上着を羽織り、軍用刀を腰に下げている大男が俺達を誰何して来る! どうやらコイツが海賊の親玉らしい。
「俺達はただの助っ人だ!」
俺がそう言うと大男は徐ろにサーベルを抜くと
「てめぇ、生意気な! 切り刻んで魚のエサにしてやる!」
と叫び声を上げ斬り掛かって来た! その剣をバックラーで受ける俺! なかなか鋭い剣筋である──ならば!
「『断兇』!」
今度はセイバーでサーベルを受け止めると根元からその刃を断つ! 宙を舞って甲板に突き刺さるサーベルの刃!
「な、何?!?」
刃を失ったサーベルを見て仰天する大男。一方こちらに駆けつけようとしている海賊達は、レオナがインパクトカノンで数人を纏めて吹っ飛ばしていて一切寄せ付けない!
「く、く、くそぉ〜!」
肝心の獲物を失い、後退りする大男。
「どうしたんだい……騒がしいねぇ……」
その時大男の背後にある船長室から声が響き、其方に顔を向けると丈の短いドレスを着崩し、黒い軍服コートを羽織った女が気怠そうに船長室から出てきた。そして大男の方を見やると
「何だい、ダリオ。随分苦戦してるじゃないかい」
と楽しげに語り掛ける女。その女を見た大男は
「お、御頭!!」
とまるで自身の母親を見るかの如く声を上げる。この女が海賊の頭領だって?!
「アンタがリーダーなのか?」
それでも一応誰何する俺。すると御頭と呼ばれた女はニカリと笑うと
「そうさ、海賊『黒百合団』の御頭ジータとはこのあたしさ」
はっきりとした口調で答える。そして周りを見渡すと
「やれやれ……あたしが久しぶりに昼寝しているうちに、うちの船員や副長を随分可愛がってくれたじゃないか……」
俺の方に先程とは違う鋭い視線を向けて来るジータ。
「一応聞いといてやるよ。あんたの名は?」
いつの間にかダブつき気味の両袖から40セルトほどの棒の様な物を出し、両手で握りながら名前を尋ねてくるジータ。
「俺は氏族『神聖な黒騎士団』のウィルフレド・ハーヴィー、オールディス王国の冒険者だ」
俺がそう名乗ると「ハッ!」と鼻で笑うジータ。
「何だい、陸の冒険者かい。随分舐められたもんだねぇ。まぁ良いか……」
そう言うと両手に握った2本の棒を勢い良く振るう! 先端から槍の穂先が飛び出し、瞬時に2条の短槍に変わる棒!
「そんじゃあたしがアンタに海の怖さって奴を教えてやるよ!!」
そう獰猛な笑みと共に吠えるジータ。いつの間にか周りにいる海賊達もレオナも戦う事を忘れこちらを注視している。
「いいだろう」
短く答えるとセイバーとバックラーを構える俺。
そして俺とジータの1対1の決闘が始まる。
順調過ぎる航海に「何も無いな」と思ったウィルは海賊と言うフラグを踏み抜きました! と言うかこの男のトラブル体質は健在みたいです! そして次回、海賊の頭領である女海賊ジータとの戦闘が繰り広げられます!
*正拳砲撃破…………極限まで高めた闘気を収束して拳撃とともに撃ち出す拳闘士の武技をレオナが魔力を併用する事で使える様にしたオリジナルの武技。いわゆる波○拳である。
お読みいただきありがとうございました。




