疑惑の5人目 〜そこまで面倒みません〜(☆イラスト有り)
本日は第百二十九話を投稿します! 一晩明けてウィルがマデレイネ親子を連れて行った先は…… 。
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マーユの母親、魚人族のマデレイネさんを助けてから一晩明けて、俺はアン達と共にマデレイネさんとマーユを伴い港に停泊している「大海の剣」のグラマス殿の元を訪れていた。しかも何故か船の中にある執務室にである。
「──と言う事があって俺達は無事マデレイネさんを救い出す事が出来たんだ」
勿論昨日の経緯を報告する為にである。そしてそれだけでは無く、助けたマデレイネさんとマーユの親子をメロウ族の住む島オーリーフに送り届ける為にグラマスの知恵を借りに来たのもある。
「──成程、事情はわかったよ。そうだよね、折角助けたんだから最後まで面倒見たいよね」
このままだと寝覚めも悪いだろうしね、とはグラマスの言葉である。そして暫し考え込むと顔を上げ
「それなら何とかなるかな──ゾラ、ちょっと船長を呼んでくれないかな?」
そう執務室に居た爬虫類人のゾラ・エルダに声を掛けると、直ぐに呼びに行きすぐさま船長が執務室に現れた。グラマスは事のあらましを船長に話し、船長と手元にある書類を見て何やら確認していたが、話が纏まったらしく俺達に話を振って来た。
「本来なら何処にも寄らず真っ直ぐ東方大陸に向かうつもりだったんだけど、予定を変更してオーリーフ島に寄る事にするよ。それでマデレイネさん達を乗せるのに食糧と水を幾らか降ろして2人を乗せる様にする。不足する食糧と水はオーリーフ島で補給させてもらう事にしようと思うんだけど……」
そこまで言うとグラマスは視線をマデレイネさんに向け
「そう言う事なのでメロウ族から補給をさせてもらえるなら、あなた達親子を送り届けられるんだけど……その辺は大丈夫かな?」
ひとつの条件を提示し様子を伺うグラマス。それに対してマデレイネさんは躊躇する事無く答える。
「はい、私達の島はこの大陸からドゥンダゥ大陸へ渡る船の中継基地になっていますので問題無いかと。それで私達親子を送ってくださるのでしたらメロウ族一同協力を惜しみません」
その返答を聞いて満足そうに頷くグラマスと船長。どうやら決まったみたいである。
「なら決まりだね! それじゃあ船長、早速その様に手配してくれないかな?」
グラマスの言葉に会釈して執務室を出ていく船長。どうでも良いが船長、あんた無口過ぎないか?
「さてとウィル君、これで良いかな?」
そして笑顔で俺に話を振ってくるグラマス。アンタも本当に笑顔を絶やさないな?!
「あ、ああ、ありがとうグラマス。お陰で助かった」
「なんのなんの。今回は僕の個人的な用件に付き合わせているんだ。これくらいしないと天罰が当たりそうだからね」
そう言って笑みを深めるグラマス。マデレイネさんはマーユの頭を撫でながら優しく言って聞かせる。
「マーユ、良かったわね。私達はこのお船に乗せてもらってお家に送ってもらえるのよ」
「お兄ちゃん達も一緒に来てくれるの?」
「ええ、ウィルフレドのお兄ちゃんも一緒よ」
それを聞いたマーユの顔がパァッと笑顔になり
「やったぁ! お兄ちゃんと一緒だぁーっ!」
両手を上げ喜びを全身で表す。それを見て「あらあらあら♡」とこちらも笑顔になるマデレイネさん。
「ウィル君、愛されているねぇ」
グラマスが俺にニヨニヨした顔でそんな事を宣ってくる。
いや、この場合「愛」は関係ないだろ!?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
兎にも角にも一番の問題が解決したのでグラマスに礼を言うと「大海の剣」を一旦降りる事にした。マデレイネさん達の船室はこれから準備に入るそうなので、そこは船員達に任せる事にする。
「ふんふんふーん♪」
俺の前をマデレイネさんとマーユが手を繋いで歩いているんだが、マーユがえらく御機嫌である。やはり母親と一緒に帰れるのが嬉しいんだろう。
「良かったな、マーユ。お母さんと帰る事が出来て」
そんなマーユにそんな声を掛ける俺。だがマーユは俺の方を振り向くと
「それもだけど、お兄ちゃんも一緒だからうれしいの!」
と真逆の返答を寄越して来た。
「へ? お、俺とか?」
「うんっ!」
「あらあら、御機嫌ねマーユ♡」
マーユの思いもよらない返事に間抜けな声を上げる俺と、そんな娘を微笑んで見ているマデレイネさん。実に対照的であるが戸惑うしかない。だって今まで子供に泣かれる事はあっても好かれる事など無かったんだが?!
『『銀の林檎亭』のリズちゃんも居たじゃないですか』
俺の左肩を占拠しているコーゼストが俺の思考を読んでそんな事を宣う。そういやリズちゃんも居たな。だがあの子は商売絡みだからあんな反応だったんじゃないのか?!
俺が軽く混乱しているとアンさんが傍に来て
「きっとマーユちゃんは貴方の優しさを敏感に感じ取ったのかも知れないわね」
と愛しいモノを見る目でそんな声を掛けて来た。そんな事を言われても俺は何時もと変わらないんだが? でもまあ意味も無く(正確には目付きが怖いらしいのだが)泣かれるよりはマシか…… 。アンの言葉にある程度納得していると
「わ、私達もあんな可愛い子供が欲しいわね♡」
頬を赤らめとんでもない事を宣うアンさん。そんなに照れるなら言わなきゃいいのに………… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
港近くのレストランで朝食を食べてから市場に向かう。俺達は粗方準備は整っているが、マデレイネさんとマーユは着の身着のままなので2人の着替えや日用品などの物資を買い込む為である。マデレイネさんは慌てて固辞しようとしたが「マーユの為だから」と説き伏せた。
そんな事をしながらマーケットの服飾店の一件に立ち寄ると、マデレイネさん親子のみならずアン達が思い思いに店内に散って行く。言っとくがキミらのは買わんぞ?
思わず苦笑しながらマデレイネさん達の後に付いて行くとマーユの服を物色している所だった。だがマデレイネさんは近くに居た店員に値段を聞くとおずおずとハンガーに戻し、また別の服を手に取る、を繰り返していた。
「マデレイネさん、何してんの?」
思わず間抜けな声で尋ねてしまう俺。
「あっ、ウィルフレドさん。な、何でしょう?」
「いや、だから一体どうしたんだ?」
「いえ、実は……」
何でも俺に買ってもらうのにあまり高額なのを買う訳にはいかないと、まだ気にしているのだそうだ。
「ご厚意は嬉しいんですが……やはり気が引けてしまって……」
そう言いながらもチラチラと視線を、嬉しそうに服選びをしているマーユに向けているマデレイネさん。
「その事なら気にしないでくれ。俺がそうしたいからしているだけなんだからな」
『そうですよ。このマスターには遠慮は無用です』
「うるせぇ! 何なんだその物言いは!?」
横からコーゼストが口を挟み思わず突っ込む俺。
「ふふっ」
おっと! ついコーゼストに素で突っ込んでしまった! そんな俺の様子を見たマデレイネさんに笑われてしまった。何か恥ずい。
「えへん、まぁ、その、なんだ。そんな事を気にせずにマーユに良い服を買ってあげてくれ。勿論あなたのも一緒にな」
俺は軽く咳払いをするとマデレイネさんに向け、出来る限りの笑顔でそう話し掛ける。
「ふふふ、はい! ありがとうございます、ウィルフレドさん!」
そう言うと頭を深く下げ、マーユに似合う服を見繕い始めるマデレイネさん。そして──
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「えへへっ、どうお兄ちゃん?!」
乳白色のブラウスに緑黄色のエプロンドレスでくるりと目の前で一回転するマーユ。可愛さに更に拍車がかかった。
「うん、良く似合っているぞマーユ」
「ほんと?! わーい!」
花が綻ぶような笑顔で喜ぶマーユ。いつの間にか戻って来ていたアン達が背後で「きゃーっ、可愛い〜♡」と歓声を上げている。全員その手にはそれぞれ色とりどりの服が握られていた──だから君達のは買わんよ?!
「ウィルフレドさん♡」
アン達に気を取られていたらマデレイネさんから声を掛けられた。そちらを向くと薄桃色のワンピースを纏ったマデレイネさんが、何やら期待に満ちた目で立っていた。そんなに潤んだ目で見つめないで欲しいものである。
「あーっと、マデレイネさんもなかなかお似合いですね」
思わず変な敬語になってしまった! するとマデレイネさんは潤んだ目のまま
「私の事は是非マディとお呼びください。近しい者からはそう呼ばれています」
と何やら熱っぽく話し掛けて来る。視線は兎も角、本人がそう言うのなら構わない……のか?
「それなら俺の事もウィルで構わないが……」
「あっ、はい、ウィルさん♡」
俺がそう言うと潤んだ目に顔を上気させて俺の略称を呼ぶマデレイネ──マディさん。
ふと背後から何とも言えない圧力を感じ振り返ると、ルアンジェを除くメンバーが何とも言えない顔をしてこちらを見ていた。なんだ何だ?!
「「「まさか5人目の嫁候補?!」」」
アン・エリナ・レオナの声が綺麗に重なる。うぉい!? 幾ら何でもそれは飛躍し過ぎだ!! それを聞いて顔を更に上気させてモジモジするマディさんと、サーッと血の気が引く俺。
「貴方は誰彼構わず優しくするからねぇ……」
凄いジト目でそんな事を宣うアンさん。
そんな事言われても俺は何時も通りにしているだけなんだが?!
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何とも言えない空気の中、ブティックをあとにする。勿論アン達の選んだ服も買う羽目になってしまったのは言うまでもない。全員から潤んだ目で「お願い」と言われた結果でございます。
その俺はと言うと皆んなの先頭でマーユと手を繋いで歩いていた。
「いっぱいありがとう、ウィルお兄ちゃんっ!」
マディさんから「ウィルお兄ちゃんがお服を買ってくれたのよ」と聞かされたマーユは小さな手で俺の右手をギュッと握り始終ご満悦である。
「どういたしましてだ」
マーユの笑顔につられて俺もつい顔が緩む。
「良かったわね、マーユ♡ウィルさん、本当にありがとうございました♡」
そして母親のマディさんはマーユの右側に立ちその手を取っていた。
『ふむ、こうして並んで歩いている所を見るとまるで子供を連れた夫婦に見えますね』
「なっ?!?」
少し離れて様子を伺っていたコーゼストがいきなりとんでもない事を宣う! 背後のアン達の空気がピキリと張り詰める音が聞こえた気がした。
「えへへっ、お兄ちゃんがお父さん!」
「あらまぁ、どうしましょう♡」
一方のマーユとマディさんは満更でもない様子である。
「コーゼスト! お前は何で火に油を注ぐ?!」
お陰で俺の横と後ろの温度差が激しいんだが?!
『私は見たままを申し上げただけですが?』
しれっとすっとぼけるコーゼスト。お前は俺に恨みでもあるのか?! アン達はアン達で「やっぱり5人目?!」と疑いの眼差しを向けてくる。
「ちょっと待て! 俺にはそんな気はさらさら無いからな!!!」
俺が思わず叫ぶと、辺りにいた人達から一斉に衆目を集めてしまった!
「うっ……」
何となく気不味くなり、小さな声で「お騒がわせしました……」と言いながらそそくさとその場を離れる俺達。
『全く……周りの状況を考慮してくださいね』
肩の上のコーゼストがジト目で抗議して来るが──そもそも原因はお前だゾ?!?
俺はブツブツ言いながら日用品を買う為に雑貨屋へと向かうのだった。
全く……今日は凶日か…………はァ。
マデレイネ親子を「大海の剣」でメロウ族の島まで送る事になりました! まあウィルは面倒見が良い男ですので。それにしてもマデレイネさんがウィルに急接近している気が…… 。
そして次回、いよいよ出発回になります!
☆manakayuinoさんに描いていただいたメロウ族のマーユちゃんのイラストを掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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