助けたは艶然な人魚、もしくは天然(☆イラスト有り)
本日は第百二十八話を投稿します!
メロウ族の少女マーユの願いに答え、彼女の母親を助け出したウィル達! 当然ながら新キャラが登場します!
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「そう、そんな事が……」
岩窟の奥の岩場に腰を落としたまま、マーユを抱きながら頭を優しく撫でている魚人族の女性──マーユの母親のマデレイネさんが、俺達とマーユとの出会いの経緯を聞いて顔を曇らせている。青緑色の胸元まである髪のが陰から少し覗く首筋にはマーユと同じ二条の線の鰓蓋があるのが見えた。
「まあトラブルはあったが、マーユ嬢はちゃんと役目を果たそうと頑張っていたよ。貴女を助けるまでは泣かないんだと自身に言い聞かせていたらしい」
「そうですか……ありがとうございましたウィルフレドさん」
マデレイネさんが自分の胸に視線を落とす。そこには泣き疲れて眠ってしまった娘のマーユが未だにしがみついている。
「この子には苦労をさせてしまいました……」
そう言ってマーユの頭を優しく撫でるマデレイネさん。そうしながらもチラチラとコーゼストを気にしているみたいである。俺はここで顔の傍にふよふよ浮いているコーゼストの事を紹介する事にした。
「あーっとマデレイネさん、こいつはコーゼストと言う。本体は俺の左腕の腕輪の姿をした知性ある魔道具なんだ」
『マスター、やっと真面な紹介をしてくださりましたね。初めましてマデレイネ様、只今紹介に与りましたコーゼストと申します』
「まあ! 妖精さんかと思っていたら……驚きです。宜しくお願いしますコーゼストさん」
そうしている内にもマルヴィナとアンがマデレイネさんの怪我の具合を確認していたが、やがて診断結果が出たらしくアンが口を開く。
「私とマルヴィナの見立てだと腰の怪我も両足の怪我も魔法での治療で完治させられるわね。特に足は傷口を良く洗ってから整復しながら、何度か回復魔法を重ね掛けしないとだけど。それとここは少し暗いし狭いから明るく広い所に移動させたいんだけど……」
「ふむ……」
アンの説明を聞き終え少し思案する俺。まあ考えなくてもそれしか方法が無いんだけどな! 俺は意を決してマーユを抱いているマデレイネさんに話し掛ける。
「今のアンの話の通り、貴女を移動させたいんだが……」
「あっはい、ちょっと待ってくださいね」
アンと俺の話を聞いたマデレイネさんが寝ていたマーユを優しく起こし、一旦自分から離させる。
「お待たせしました。それでどの様にするんですか? 足の感覚が無くて立てそうにないんですが……」
申し訳無さそうに話すマデレイネさん。そんな事はわかりきっている。
「ああ、それなら……ちょっと失礼」
「えっ? きゃっ!?」
俺はそう言うと両腕を背中と太腿の所に差し入れ、そのまま抱き上げる──所謂お姫様抱っこである。両足の怪我は脛から足先にかけてなので、これなら問題無い筈だ。
「「「……………………」」」
訂正、問題がありました。アンとエリナとレオナからの視線が物凄く痛いんだけど!? 一方のマデレイネさんは俺の腕に抱かれて「あらあらあら♡」と何やら嬉しそうである。
「いいな〜お母さん。お兄ちゃん、次はマーユね!」
そしてマーユからはまさかのリクエストである。うん、君ならお姫様抱っこしても問題無さそうだな!
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アン達の冷たい視線に耐えながらマデレイネさんを岩窟から移動させ、外の砂浜にそっと降ろす。何やらマデレイネさんが残念そうだったが敢えて無視する。
早速アンとマルヴィナがマデレイネさんの怪我の治療を開始し始め、腰の怪我の治療に続けて両足の治療に移る2人。アンが魔法で綺麗な水を生み出し傷口を洗浄し整復すると、マルヴィナが『癒し』を足の様子を見ながら重ね掛けしていく。やがてヒールの淡い輝きが薄れると、傷ひとつ無いスラリとした足が姿を現した。
「……これで良し、と。ゆっくり立ってみてくださいな」
回復した足の様子を確認したアンがそう声を掛け、マデレイネさんが恐る恐る足に力を込めゆっくりと立ち上がる。
「……立てる、立てます、立てますわ!」
少し寄ろけながらも立ち上がり、両足で何度か砂浜を踏み締めると喜色を浮かべるマデレイネさん。その様子を見たマーユは「よかったね、お母さん!」とこちらも満面の笑みを浮かべながら母親であるマデレイネさんの足に抱き着く。
「良かったな、マーユ」
俺は屈み込むとマーユの頭を優しく撫でてやる。
「うん! ありがとうお兄ちゃん!!」
「俺だけじゃなくてアン達にも、な?」
輝く様な笑顔でお礼を言ってくるマーユを優しく諭す俺。
「うん!! お姉ちゃん達もありがとう!!」
するとマーユはアン達に向かいお礼を言いながら頭をペコリと下げる。お礼を言われたアン達は「キャー可愛い〜♡」と嬉声を上げている。わかるぞ、その気持ち──マーユは愛くるしいからなぁ。
そんな事をしていたら急に視界が柔らかい何かに塞がれた。そして頭上からマデレイネさんの歓喜に満ちた声が響く。
「立てるわ! 歩けるわ! 本当にありがとう! ウィルフレドさん!!」
……どうやらマーユの視線に合わせる為に屈んでいたのが仇になったみたいである。感極まったマデレイネさんにそのまま頭を胸に掻き抱かれたらしい。つまり俺の視界を塞いだのはマデレイネさんの見事な双丘と言う訳だ。
『何を冷静に解説しているんです?』
コーゼストが念話で冷静な突っ込みを入れて来る。そう言うなら助けろよ!?!
「んんんーー♡」
そのままマデレイネさんの双丘に押し付けられる俺の頭! お願いだからそんなに押し付けないで!?
「「「「「あああああぁぁぁ!?」」」」」
アン以下女性陣の驚きの重奏が、くぐもった音で俺の耳に届いた。
どうでも良いが早く解放してくれないか? 呼吸が苦しくて気が遠くなってきた………… 。
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「本当に御免なさい! あまりにも嬉しくて、ついあんな事を──」
目の前ではマデレイネさんが砂浜の上に土下座して頭を下げている。アン達の抗議の声を聞いて漸く解放してくれたのだ。あのまま女性の胸で窒息死とか冗談でも笑えない──少し勿体無かったとか思ってないからな、いや本気で!
『まあ、あのままマスターがそんな情けない死に方をされたら私が悶死しそうになりますが』
「いや、お前は死なないだろが!?」
俺としてはインテリジェンス・アイテムの死に方と言うのが凄く気になるが! 一方のマーユはマデレイネさんの傍らに立ち俺に謝って来る。
「お兄ちゃん、ごめんなさい! お母さんはうれしくなるとすぐに抱きつくの!」
何でもマーユも今まで何回何十回も俺みたいな状況に陥っていたらしい。6歳児にそれは色々不味くないか、マデレイネさん?
「私もいつか胸が大きくなったら──」
ルアンジェが何やら決意したみたいに呟いているが──キミはそれなりに大きいし、何より自動人形だから成長期は無いぞ?!
「御主人様が顔を埋めるのは私の胸なのよ!」
ヤトはヤトで変な妄想を垂れ流している──キミは自分から押し付けて来ません?!
ふと視線を横に移すとアンが何やら絶望していた。
アンよ、俺はそうした大きさは気にしないから安心しろ!!
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このままだと話が色々桃色になりかねないので、無理矢理変える事にする。
「と、兎に角だ! もう怪我は大丈夫そうで何よりだな、マデレイネさん」
「あっはい、お陰様で♡」
そう言って土下座のままニッコリ笑うマデレイネさん。笑顔が本当にマーユと似ている。まあ親子なんだから当然か。
そんな事を思っていたらマデレイネさんがゆっくり立ち上がる──が直ぐに寄ろける。まだ何処か痛むのか? そう思っていたらキュルルルル〜と何処かで聞いたみたいな音を立てマデレイネさんのお腹が鳴った。
「お腹が空きました……」
そう頬を赤らめ「あははは……」と訴えかけて来るマデレイネさん。その表情がまた艶っぽいが、おくびにも出さず
「そういや4日間飲まず食わずだったんだっけ……」
ふむ、と思案する俺。するとエリナが
「だったら一度レーヌに戻らない? そろそろ日が傾いて来ているし、向こうに戻ればちゃんとした食事も摂れるでしょうし」
日の傾き具合を見て意見を述べてきた。確かにその方が色々安心出来るが…… 。俺は無限収納ザックから当座の空腹の足しに燕麦粥の入った皿と水袋を出して、マデレイネさんに手渡しながら確認してみる。
「マデレイネさん。俺達は貴女とマーユを連れて一旦レーヌに戻ろうと思うんだが……大丈夫か?」
俺の「大丈夫か」には一緒に来たであろうメロウの仲間達と合流出来るのが遅れるが、と言う意味が含まれていた。
「それで構いません。私はあの怪我でしたしマーユは安全の為にレーヌに向かわせたのですし、何より既に一緒に来た者達は昨日島を発ち帰路に付いている筈です。なのでオーリーフに帰るにしてもレーヌから近くを通る船に乗せて貰おうと思っていましたので」
だがそれに対するマデレイネさんの答えは実に呆気なかった。と言うか随分割り切っているな! まあそれがメロウ達の民族性なのかも知れないが…… 。
「そう言う事ならマーユと是非一緒に来てくれ。今夜の食事と宿は俺達から提供させてもらう」
「はい、ではお世話になりますねウィルフレドさん♡ マーユ、今夜はウィルフレドのお兄さん達とお泊まりよ」
「ほんと? わぁーい、お兄ちゃんと一緒だぁ!」
頭を下げるマデレイネさんと無邪気にはしゃぐマーユ。
まあ人助けするならキチンと最後まで面倒見ないとな。
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オートミールを食べ少し落ち着いたマデレイネさんとマーユを再び高速船「海飛竜」に乗せ、俺達は日が傾き始めた海をレーヌに向けて帰還した。
何とか夕暮までには港に戻り、操縦士を務めてくれた船員には「報告は明日の朝」とグラマスへの言付けをして帰ってもらった。そして俺達はマデレイネさん達を伴い宿屋「ボニート」に戻り、丁度空いていた部屋を1つ借りマデレイネさんを泊まらせる事が出来たのである。そしてその夜── 。
「ではマデレイネさんの救出と怪我の回復とマーユとの再会を祝して──乾杯!」
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」
「ありがとうございます」
「ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん達!」
アン達に請われささやかな祝宴の乾杯の音頭を取らされた俺と楽しげに葡萄酒が注がれた木杯を掲げるアン達。マデレイネさんは同じくワインで、マーユは薄荷水で乾杯している。目の前のテーブルには沢山の料理が並び、なかなか豪華である。
「かんぱいって、どの料理?!」
「ヤト、乾杯は料理じゃない、ただの挨拶だ」
ヤトに至極真っ当に突っ込みを入れながら、皆んなと食事を始める俺。マデレイネさんとマーユは並んだ料理を無我夢中で食べている。それが落ち着いた頃を見計らい俺はマデレイネさんに話し掛けた。
「マデレイネさん、良いか?」
「あっはい、何ですか?」
自分の空腹が収まり、大貝の貝殻から身を外してマーユに食べさせていたマデレイネさんがこちらに顔を向ける。
「さっきの話だが、当てはあるのか?」
「さっきの? ああ、何方かの船に乗せて貰う話ですか……当てはありませんけど、東大陸への船便に何とか乗せて貰うつもりではいますが……私達2人が無理な場合はせめてこの子だけでも運んでいただこうかと思っています。私の夫は既に他界しておりませんが向こうに知り合いがいますので、その人にマーユの面倒は見て貰えますからね」
そうはっきりと自分の考えを口にするマデレイネさん。
「そうか……」
最悪マーユだけでも帰したい気持ちはわかるが、それではまたマーユが独りぼっちになりかねない。マデレイネさんの話を聞いて、アン達も心配そうな顔をしている。俺としてもその結果は不本意でならないが──仕方ない。
俺は意を決してマデレイネさんに自分の考えを伝える事にした。
「もし余計なお世話じゃ無ければ明日の朝、俺達と一緒に会ってもらいたい人が居るんだが……もしかしたら2人一緒に帰れる手段が見つかるかも知れない」
俺の話に目を見開くマデレイネさん。
まあ駄目で元々だがな!
わかっていたと思いますが、マーユの母親のマデレイネさんの登場です! 子連れの未亡人の魅力的な女性がこの後色々と騒動を巻き起こす……予定です(笑)
*マデレイネ…………海棲種族メロウ族の女性でマーユの母親。30歳。ターコイズブルーの胸元までの髪とアメジストの様な紫の瞳、首筋にはやはりエラがある。パッと見ほんわかした感じの人。
☆manakayuinoさんに描いていただいたメロウ族のマデレイネさんのイラストを掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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