救出作戦決行、海魔との激戦
本日は第百二十七話を投稿します!
今回はメロウ族の少女マーユ絡みのトラブル解決編です! 戦闘シーンもございます!
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助けた魚人族の少女マーユが俺の手を小さな両手で握りながら懇願してくる。
「お兄ちゃん、お願い! お母さんを助けて!」
「ちょ、ちょっと待て! お母さんがどうしたって?」
気が急いて要領を得ないマーユをとりあえず落ち着かせて聞き直す俺。助けてと言われても話が見えないと何にも出来ないからな。
「あ、う、うん……ごめんなさい……」
俺に言われ少し落ち着きを取り戻すマーユ。そうしている間も、キュルルルル〜とマーユのお腹が可愛く空腹を訴えて来ていたので
「と、兎に角だ! 食事をしながら話を聞かせてもらうとしよう! マーユだって腹ペコなんだろ?」
再び鳴ったお腹に顔を赤らめコクリと頷くマーユを伴い、俺達はヤトも一緒に入れそうな料理店を見つけ入る事にした。席に座ると早速料理を注文する。
何でも地元では有名な海鮮グリルなる料理がお薦めらしく、それを人数分注文すると一緒にパンとミルクを先に持ってきて貰いマーユに食べさせる。余程腹が減っていたのだろう、籠いっぱいのパンとミルクをあっという間に平らげ、ホゥとひと息を付くマーユ。
「落ち着いたか?」
「うん、ありがとうお兄ちゃん!」
俺の問い掛けに笑顔で答えるマーユ。そう言いながらもチラチラと俺の左肩に視線を向けるマーユ。そこで俺はコーゼストをマーユに紹介する事にした。
「マーユ、こいつはコーゼストって言うんだ。悪い奴じゃないから安心しろ」
『何です? その取って付けたような説明は? マーユちゃん初めまして、私はコーゼストと言います。よろしくお願いしますね』
「うん! はじめして妖精さん!!」
肩で会釈するコーゼストにも満面の笑みを向けて挨拶をするマーユ。そんな事をしているうちに料理が運ばれて来て、皆んなで食べる事にした。
「それで……マーユ、さっきの話を俺達に詳しく聞かせてくれないか?」
俺は海老の殼を剥きながらマーユに改めて問い直す。
「あ、うん! えっとね……」
夢中で料理を食べていた手を止めマーユが事情を話し始める。その内容は──── 。
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マーユと母親はここレーヌに用事があり、荒れる海の只中に浮かぶメロウ達の住む島オーリーフからメロウの船を使い、5日ほど前に訪れていたのだそうだ。乗ってきた船はレーヌの沖合に浮かぶ群島の1つに隠しているらしい。
船での旅は窮屈だったらしく、到着して3日目にマーユは船から降り母親と共にレーヌ近傍の島まで泳いで来たのだそうだ。だがその泳ぎ着いた島の海には海蠍が住み着いていて、マーユ親子は襲われ母親がマーユを庇って怪我を負って島から動けなくなってしまったらしい。
仲間達がいる島に向かうにしてもシースコーピオンが居る海を渡らなければならず、仕方なくマーユは反対側にあるレーヌに1人で助けを求めに来たらしい。
尤もシースコーピオンの居る島から丸一日飲まず食わずで泳ぎ、あまりの空腹に耐えられず悪いとは思いながら漁師の生け簀に入り魚を食べていた、と言う事だった。
「そう言えばマーユは幾つなんだ?」
「えっとね、この前6歳になったばかりなの」
俺の問い掛けに指折り数えて答えるマーユ。
「6歳の女の子がこんな目にあうなんて……」
アンもエリナもレオナも、マーユの話を辛そうに聞いていた。俺も6歳になったばかりの子が経験するには苛烈な経験だったと思い、やるせない気持ちになっていると
「でもマーユは偉い。良く頑張った」
マーユの隣りに座るルアンジェがマーユの頭を優しく撫でながらそんな台詞を口にする。するとマーユは食事の手を止め俯きながら「うん……」と小さな声で返事を返していた。
こんな状況なのに泣く事をしないマーユが不思議で訊ねてみると「お母さんを助けるまで泣かない」と自分に言い聞かせてここまで頑張っているのだそうだ。何とも泣かせる話である。
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兎に角マーユの母親を助けなくては、と手早く食事を摂り終えるとマーユを連れて埠頭に向かう。助けに行くにしても島に渡る手段を確保しなくてはどうにもならないからだ。
『でもどうするのですか? 当てはお有りで?』
肩に留まるコーゼストが尋ねて来る、が任せておけ。当てはある、一応な。
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「──と言う訳なんだが」
「成程……メロウ族の親子とシースコーピオンかぁ。それは確かに困ったねぇ」
当てとはズバリ! グラマス殿である。
『成程、私もそれは失念していました』
コーゼストが一頻り感心する。俺の話を聞き、少し考え込んでいたグラマスは
「それなら「大海の剣」に積んである小型船を使うと良いよ」
そう言うと傍に控えていた船長が「早速準備します」と請け負ってくれた。そして程なくして── 。
「大海の剣」の船体の横側が開き、中から船体が3つ繋がった形の小型の船が海面に降ろされた。何でも三胴船と言うらしい。
「これが小型高速船「海飛竜」さ。本来は上陸用なんだけどね」
グラマスが説明してくれている間に準備が整ったみたいである。俺達では操縦が出来ないので、今回は船員の1人が操縦士として乗り込んでくれる。俺達も梯子で小型船に乗り込むとグラマスが甲板から声を掛けてくる。
「では『神聖な黒騎士団』の諸君、頼んだよ!」
そんなグラマスに俺は軽く親指を立てると操縦士に出発を促し、俺達を乗せた『シーワイバーン』は海面を滑る様に進み始めるのだった。
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海原を進むシーワイバーン。初めて動く船に乗ったが、そんなに揺れも少なく安定感があるのに驚いた。「三胴船は安定性は抜群に良いんです」とは操縦士を務めている船員の話である。操縦士の横には俺が座り、アン達はその後ろの3人掛けの席に座り、マーユは俺のヒザの上である。
マーユの話から大体の場所は見当が付いていた。近年、漁船や客船等が魔物に襲われる事件が多発していて、付近の航行を禁止されている海域にある島が目的地である。何組かの冒険者パーティーが討伐に向かったが、討伐出来ずにいたらしい。
これは苦戦しそうだな……などと思っていたら、操縦士から「あの島です」と声を掛けられ意識をそちらに向ける。高速船の進む先に小さな島影が見えてきた。
「マーユ、彼処で間違い無いか?」
俺はマーユの体を支えると膝の上に立たせ、見えてきた島を確認させる。
「うん! あそこだよ! あそこにお母さんがいるの!」
マーユは俺のヒザの上で小さな歓声を上げる。俺はマーユの頭を手でくしゃりと撫でると「わかった」と言い、操縦士に慎重に島に近付く様に指示を出し俺達は戦闘態勢を取る。
シーワイバーンは島の形がわかる距離まで近付くと速度を落とし、ゆっくりと上陸出来そうな海岸を探し始める。すると不意に目の前の海面が盛り上がり
「キシャァァァ!!」
問題のシースコーピオンが姿を現した! 大きさはこの全長15メルトの高速船と比べると少し小さく感じるが、それでも胴体だけで5メルト、尻尾を含めると10メルト超ありそうだ! そいつが俺達が乗る船に鋏を振りかざしながら真っ直ぐ向かって来る!
「アン! フェリピナ! ヤト! あいつに魔法をぶち込め!!」
3人に声を掛けながら、俺も刀剣を抜くと空裂斬をシースコーピオンに向かって放つ!
ギャリッと言う嫌な音を残し空裂斬がシースコーピオンの硬い甲殻に弾かれる!
遅れてアン達の火炎魔法が到達したが、シースコーピオンは素早く海に潜り、魔法は海面で虚しく爆散する! 不味い──!
「?! コーゼスト!」
『了解。魔法障壁及び物理結界多重展開──最大へ』
コーゼストが多重結界を張るのと同時に船全体が揺れる! 眼下に目をやるとシースコーピオンのシルエットが船の真下に! やはり潜水して船体を狙って来たみたいである。
『結構ギリギリでしたね』
コーゼストが掻かない汗を拭う仕草をする。俺だって咄嗟に出した指示がこうも当たるとは思いもしなかったから驚いている。
しかしこうも海での戦闘がし辛いモノだとは思わなかった! 陸上ならアン達後衛組と俺達前衛組の攻撃が効率良く噛み合うんだが、前衛組はアギトを使える俺以外は何も出来ないし、後衛組の魔法攻撃も水中を泳ぐ相手には決定打にならない。どうする──?!
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海面の変化に注意を払いながら、有効な手立てを思案していると
「御主人様! 私に任せて! 御主人様はアギトをいつでも放てる様に準備して!」
そうヤトが叫び、何と海に飛び込んだのだ! 何をする気だ、ヤト!?
皆んなヤトの事を心配して船の上から海面を注視すると、海の中から低く鈍い音が立て続けに響き、船の左側の海面が盛り上がる!
一瞬の間を置いて海中からシースコーピオンの大きな躯体が吐き出されるみたいに空中に吹き飛ばされてきた!
『マスター、今です!』
「ッ!? ウオォォォォー!!!」
コーゼストに指示され、貯めに貯めた魔力を振り絞り最大級の空裂斬を放つ! セイバーより生み出された斬撃波は、空中で藻掻くシースコーピオン目掛け一直線に飛び、今度はシースコーピオンの身体を頭から両断した!
「雷霆槍!」
「火炎槍!」
両断されたシースコーピオンの身体にアンの雷霆槍とフェリピナの火炎槍がそれぞれ命中し空中で爆散するシースコーピオン! 下の海面一面にその肉片を降り注がせると、その只中に浮かび上がるヤト!
「御主人様! やったわね!」
そんな言葉を発しながら、滑るように船まで泳いでくるヤト。
「あ、ああ、お陰で何とかな……しかしヤト、お前は何をしたんだ?」
俺は誰の手も借りず船に這い上がってくるヤトに問い質すと
「ん? ああ、海中に深く潜ってアイツの腹目掛けて、『竜咆衝撃波』を連続で叩き込んだの!」
ヤトはあっけらかんと自らがした事を教えてくれた。成程、あの時海中から聞こえた鈍い音は竜咆衝撃波の音だったのか。
「それにしても見事な泳ぎっぷりだな……」
「ふふん、私達ラミアは泳ぐのは得意なのよ! 勿論潜るのもね!」
胸を張りドヤ顔を決めるヤト。そう言えば蛇は泳ぐのは得意だったな──ヤトは、まぁ半分蛇だしな。
「何にしろ助かった。ありがとうヤト」
「うんうん、もっと誉めても良いのよ!」
素直に感謝の気持ちを伝えると益々ドヤ顔をするヤト。そんなにふんぞり返ると後ろに倒れるぞ?
「何にせよ、これで上陸出来るわね」
エリナがホッとした声を上げ、漸く先程までの緊張感が霧散し始めた。俺は操縦士の船員を促し、邪魔者が居なくなった海岸に船を着けさせる。船首が砂浜の海岸に静かに乗り上げ、俺達は浜に乗り上げた船首から島に上陸した。
「よしマーユ、お母さんの所に案内してくれないか?」
俺はマーユを船から降ろすとそう声を掛ける。
「うん! こっちよ!!」
マーユが先導して俺達を母親が居る場所に案内する。トトトトと先に進むと「お兄ちゃん、早く!」とこちらを振り返りながら盛んに促して来るマーユ。よほど気が急いているみたいである。
そんな事をしながら上陸した海岸の近くにある岩場に連れて来られた。
「この奥にお母さんがいるの!」
マーユが指差す先には小さな岩窟が。マーユは「お母さんっ!」と声を上げながら岩窟に飛び込んで行く。後に続く俺達の目に飛び込んで来たのは──
「マーユ!?」
「お母さん!!」
母親らしきマーユと同じ青緑色の髪の女性と、その女性に抱き着いて泣きじゃくるマーユの姿であった。どうやら大事に至らなかったみたいである。その様子にホッとする俺達に向かい
「あの……あなた方は何方の方々なんでしょうか……?」
女性が訝しげに誰何して来る。
おっと、そうだったそうだった。ちゃんと言わなくては。
「俺達はマーユちゃんに頼まれ貴女を助けに来たんだ」
俺はそう言いながら、しゃがんでいる女性に手を差し伸べるのだった。
今回のトラブルの元凶は海の魔物シースコーピオンでした!
思えば初の水棲の魔物ですが、ウィル達は不慣れな海上戦闘に苦戦していましたね!
それにしても「大海の剣」はチート船…… 。
*海蠍…………海に棲む魔物で全長10メルト。大きな鋏で掴み、引きちぎって相手を倒す。肉食性の凶暴な魔物。
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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