東方への誘い
本日は第百二十五話を投稿します!
グラマスの所に行って用事を済ませたら面倒事を頼まれる。今回はそんな話しです。
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「これは……何と言えばいいのかな」
目の前に顕現したオルトロスのファウストと、剛鉄ゴーレムのデュークを見て絶句するグラマス殿。まあこれが普通の反応だな。
因みにギルマスにファウスト達を見せたら青い顔をして執務机の椅子から転げ落ちた──明日、頭の毛が全部抜けているかもしれん。その辺グラマスは流石に胆力があるみたいで、恐る恐るながらもファウストやデュークに手で触れて何かを確かめていた。
「しかしオルトロスとアダマンタイトゴーレムかい……990年前にはアダマンタイトゴーレムは居たけどオルトロスには出会わなかったなぁ」
何やら感慨深げに話すグラマス。そういやグラマスは古代魔導文明人で、990年前に冷凍睡眠して、今から250年前に目覚めたんだっけな。
「あーっと、兎に角だ、ファウストとデュークがこんな感じに進化したので従魔の登録情報を変えておきたいんだが」
「なるほど、確かにコレはヒギンズ君じゃ無理だね」
俺の申し出に苦笑いで答えるグラマス。お陰で特にトラブルも無くファウストとデュークの登録変更が完了する事が出来た。
最初から王都に来た方が良かったのか?
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「まあでも丁度良かったよ」
手続きを終えホッとしていたら、いきなりグラマス殿がそんな事を宣う。
「何だかいきなりだな」
「まあそう言わないでくれたまえ」
少し警戒する俺に笑顔で話し掛けてくるグラマス。この人はいつもこうである。
「実は、ウィル君達に以前『精霊の鏡』で回収して貰った記録核が解析出来てね。それに記録されていたある場所に行って欲しいんだ。勿論仕事として依頼する形をとるからね」
「そう言う事なら俺は構わないが……それで何処に行けば良いんだ?」
「荒れる海を越え東のドゥンダウ大陸さ。そこにある『黄昏の城』と言う所なんだけどね」
グラマスの台詞に思わず目を剥く俺。一緒に来たアンも驚いている。そりゃそうだ、まさか海を渡った向こうの大陸とか言われるとは思わなかった!
「また随分遠くまで行かされるんだな」
俺は正直に感想を言う。俺達が居るオールディス王国はルォシー大陸の東に位置するが、それでもここから東のドゥンダウ大陸まで行くとなると片道でも軽く3ヶ月は掛かるだろうからだ。
「まぁ向こうに行くまでにかなり掛かるけど、ニエベ山脈の向こうにある港町レーヌから我がギルド所有の高速船を使うからかなり早く着くと思うよ。恐らくは往路2ヶ月くらいかな」
俺の感じた懸念に先んじて答えるグラマス。その辺は用意周到である。
「どちらにしても宜しく頼むよ! ウィル君達ぐらいじゃないと僕の護衛として認めてくれそうにないんだ」
「ん? ちょっと待て。それはどう言う意味だ?」
「今回は僕も一緒に行くからさ。いや正確には連れていってもらうと言うべきかな? 今回の件は飽くまでも僕個人の用件でもあるし、その為にギルド会議を説き伏せる必要があるんだけど、護衛に新進気鋭の氏族『神聖な黒騎士団』が就くとなれば反対される事はないからね」
笑顔でそう言うグラマスに目眩を覚える俺。まさかグラマスを連れていく羽目になろうとは!
何となくグラマスの笑顔が悪魔の微笑みに見えて来た…… 。
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もとより俺に拒否権は無いので今後の旅程をグラマスと打ち合わせた。
予定としては王都ノルベールから東部の港町レーヌまでは、王都ギルド本部の転移陣を使って一気に移動し、レーヌからギルド所有の高速船に乗り「荒れる海」と呼ばれる海を渡り、東のドゥンダウ大陸を目指す。ドゥンダウ大陸では先ずこちらの大陸との窓口になっているドンチュワンと言う港町に入り、そこからは馬車に乗り換え幾つかの町を経由して目的の迷宮『黄昏の城』と言う事になるそうだ。
「……とまあ、こんな道程になるのかな?」
「すると道程で危険なのは……」
『陸路より間違い無く海路、ですね』
ここで今まで黙っていたコーゼストが口を挟む。だが言いたい事は良くわかる。俺を初めとしたメンバー全員は今まで陸地での戦いばかりで海とか湖とかでの水上での戦闘は経験が無いからである。
「そこはまあ、安心してもらっても良いかな」
グラマスがそんな事を口にする。疑問に思い尋ねてみたら、ギルド所有の高速船はそうした水上戦闘を想定して独自の戦闘能力を持っている云わば ” 戦闘船 ” と呼ばれる代物なのだそうだ。ならば安心出来るかな? 過信するのは禁物であるが。
「あと……これはウィル君達に申し訳無いんだけど高速船で運べるのは乗組員以外だと人が10人なんだよ。僕の方はゾラを連れていくからウィル君の方からは8人選んで欲しいんだ」
続けてグラマスの口から語られたのはまさかの人数制限だった。そこはラーナルー市の屋敷に戻ってから皆んなと話し合って決めるとしよう。とりあえずはグラマスがギルド会議を説得してきてからと言う事になり、俺達は王都ギルド本部をあとにラーナルー市に戻る事にした。
まぁグラマスの事だから、笑顔で押し切って来るんだろうけど、な。
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「「「「「「「目的地はドゥンダウ大陸!?」」」」」」」
屋敷に戻り全員の前でグラマスからの依頼について話した。案の定皆んな驚いていたが。
「ああ、それで相談なんだが、船に乗れる人数に制限があって俺達は俺を含めて8人選ばないといけないんだ」
そこまで言うとアンが口を開く。
「それだけど……ウィル以外に私、エリナ、レオナの3人は決定ね。ルピィには残ってもらう事になるけど……」
「まあそうですよねぇ、残念ですけど」
アンの言葉を受けてルピィがガックリと肩を落とす。
「すまないな、ルピィ」
「まぁそこは後ほどウィルに埋め合わせしてもらうと言う事で」
「?! うぉい!」
ルピィに労いの言葉を掛けていたら、アンが怖い事を口走る。何なんだよ、埋め合わせって!?
「と、兎に角だ! あとは誰を連れていくかだが……」
兎にも角にも無理矢理話を逸らす俺。このままだと話が変な方向に行きかねん!
「ん? そうね……あとは誰が良いかしら?」
アンが俺の誘導に乗ってくれた。やれやれ…… 。
「ねぇエリナ、レオナ、誰を連れて行こうかしら?」
そのままエリナとレオナに話を振るアンさん。振られたエリナ達は目を閉じて黙考すると
「そうすると……やはり元『白の一角獣』のメンバーから、と言うのが順当かしら?」
「そうだね……それに編成の組み合わせとかも関係してくるだろうし……」
お互いの意見を発するエリナとレオナ。
「そうなると……ウィルにエリナ、レオナは前衛担当で、私は後方支援で、ルアンジェは遊撃だから……」
その意見を受け、アンがパーティー編成を口にする。どうでも良いがそれは俺の仕事だ。
「その編成で足りないのは回復役と魔法による支援だな」
折角なので俺も口を挟む事にする。するとエリナがふむ、と頷くと答えを声に出す。
「……フェリピナとマルヴィナが適任かしらね」
「そうだな……するとあと1人は……」
どうするか、と俺が言おうとすると、事の成り行きを黙って見ていたスサナがおずおずと手を挙げる。
「あのぉー、私も行きたいですぅ」
スサナがそんな主張をするとは珍しい。そう思い俺が尋ねようと口を開くと
「あなたがそんな事を言うなんて珍しいわね。理由を聞かせてくれるかしら?」
……エリナに先を越された。
「あっ、ハイ。えっとですねぇ、私の両親の親の親、つまり曾お祖母さんや曾お祖父さんがぁ、東のドゥンダウ大陸から更に東にあるオウェス大陸を通ってこっちの大陸に渡って来たらしいんですよォ。昔からそう言う話を聞いて育ったんでぇ、もしかしたら私の起源を見れるかなぁって、ただの興味本位なんですけどねぇ」
いつに無く長い台詞回しを熟すスサナに目が点になる。俺だけじゃなくエリナもアンもレオナも同様で、思わず「そ、そう言う事なら」と言う言葉が口をついて出てしまっていた。俺もだけどな!
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「と、とりあえずメンバー編成はこんな感じだな」
なし崩し的にスサナをメンバーに加えた事を、やはりなし崩しにしようと誤魔化す俺。流石にアンもエリナもレオナもこの件に関しては沈黙を貫いている。スサナは猫耳をピクピクさせて嬉しそうではあるが。
『では早速グラマス殿に報告をしなくてはいけませんね』
コーゼストが肩の上で何事も無かった様に宣う。まぁそれも大切なんだが…… 。
「まず連絡はするとして、それと長期の旅に向けた支度をしないとな。それと──」
俺は居残るメンバーのベルタとユーニスとルネリートとアリストフで臨時パーティーを組ませ、「魔王の庭」の第六階層での探索を継続する事を頼んでおいた。魔法士のフェリピナと神官のマルヴィナが居ない分大変だと思うが、「戦乙女の盾」であるスクルドが居るから問題無いと踏んだのだ。
「わかりました! ウィルさん達がお留守の間に少しでも強くなってお待ちしてます!」
リーダーを任せるベルタの力強い台詞を聞いて「よろしくな」と言葉を掛け、俺の予備の無限収納ザックを手渡す。上気した顔で受け取り「任せてください!」とベルタは返事を返してきた。
一方で傍らに居るルピィにも声を掛ける。
「ルピィ。俺が居ない間は君にこの屋敷を取り仕切ってもらう。シモンにもそう伝えておくからよろしく頼む」
「! わかったわ! ハーヴィー伯爵第三夫人として頑張って、この屋敷を盛り立ててみせるわ!!」
やたら張り切るルピィさん。可愛い鼻から荒い鼻息を噴き出していらっしゃる。
「お、おう」
何にしろ張り切ってらっしゃるなら良いだろう──少し引くが。
「あとは……長旅の準備をしなくてはな」
『勿論皆さん総出になりますね』
「そうね! それじゃあ行くメンバーの人はまず自分の替えの下着と服を買い揃えましょうか?! 勿論ウィルに全額出していただきますけど!」
「うぉい?! アンさんや、ちょっと待て!!」
ナニとんでもない事を口走るんだアン?! まぁちゃんと皆んなの買い物分は俺が金を出すけどな!
「それじゃあ皆んな、早速買い出しに出掛けるとするか!」
「良いわね! 行きましょ行きましょ!」
アンの言葉を受けレオナが音頭をとり、それに乗って燥ぐエリナ。仕方ない、付き合うとするか── 。
『マスターは先ずグラマスへ報告をしてくださいね』
「ハイ……ソウシマス」
ワイワイと騒ぎながら買い出しに出ようとしているアン達に付いて行こうとしたら、コーゼストから待ったをかけられた。
そんな事より居残りのルピィまでもが何故か買い出しグループの中に居るんだが?!?
俺はギルドの口座から幾ら下ろすべきか、痛む頭で考えるのだった。
グラマスの面倒事は、新たなる旅への誘いでした! 何故グラマスが一緒に行かなくてはならないのかは、あとで本編中でネタバレしますのでお楽しみに!
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☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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