閑話〈8〉レオナ 〜流浪と拳と尽きないアイと〜
本日は閑話を投稿します!
今回は4人目の嫁候補になったレオナの話です。
*今回から1話のみの投稿に戻りますのでご注意ください。
閑話〈8〉
「でやあぁぁぁァァー!」
醜い豚面目掛け、あたしの右の拳が振り抜かれる! 拳に打ち抜かれた巨猪人は顎を砕かれ、ゆっくりと上体が後ろに倒れていく!
大きな音を立て倒れたオークに油断する事無く脇に視線を向けると、リーダーの重戦士の戦斧が別のオークにトドメを刺している所だった。後衛の子達も弓や魔法で一緒にいた他のオーク達を斃していた。
「ふぃーっ」
全てのオークが斃されたのを見届けると、ようやくあたしは構えを解いたのだった。
「よし! それじゃあ耳を集めろ!」
そんなあたしに視線を向ける事無くリーダーがメンバーに声を掛け、オークの討伐証明用に右耳を切り落とす作業に入るのをぼんやりと見ているあたし。この作業はパーティーメンバーが討伐報酬の取り分を決める為にも重要な作業なんだけど、あたしは部外者だ。まあ、とりあえず金は前金でもらっているから文句を言う事も無いけど。
あたしの名はレオナ。レオナ・シャルリムと言う無所属の拳闘士だ。
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あたしの生まれた家は無い。正確に言うと元々無かったのだ。あたしを生んだ母親も父親も、元々流浪の民だったからだ。
あたし達ルクサーは一所には決して落ち着かず、常に旅を続けていた。だけど物心がついたばかりのあたしにはその生活が酷く歪んで見えたのだ。あちこちの村や町に立ち寄る度に旅先で仕入れた珍しい品を売ったり、ある時はルクサーの歌や踊りを見せ、金が出来るとすぐにまた別の場所へ流れて行く──立ち寄った街にある様々な、そして今まで見た事も無い人らしい暮らしにも背を向け、何かに取り憑かれたみたいにひたすら旅を続ける自分の両親が凄く嫌いだった。そしてただ流されているだけの自分自身にも。
だからあたしは15歳の時、立ち寄った先の町で親を捨てた。2人が金を稼いで町を立つ日にひとりで行方をくらましたのだ。
そしてあたしは生きる為に冒険者になった。でも当時15歳でルクサーだったあたしがなれたのは単なる荷物持ちだったけど。それでもこれから1人で世の中を生き抜く為にも夢中で働いた。そしてポーターをしながらギルドでは文字の読み書きを学んで、色んな冒険者からは色んな技術を貪欲に学び、同時に身体を鍛える事にも一生懸命取り組んだ。そんなあたしは育ち盛りの事もあり身体が見る間に大きくなって、1人で3人分の荷物ぐらい平気に持てる程の力も付き、読み書きが出来る便利なポーターとして引く手あまたにもなった。
そして2年の月日が流れあたしは17歳になり、売られていた家名を買いシャルリムを名乗り、それと同時に正式にギルドに申請し晴れてちゃんとした冒険者になった。その時に選んだ職業が拳闘士、切っ掛けはとある冒険者から拳技を学んだ事で、ポーターをしながら鍛えた身体ひとつで闘えるストライカーがあたしにはピッタリだったのだ。まあほかの武器を使い熟すほど器用じゃなかった事もあるけど。
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「メンバー募集だって?」
そうしてフリーランスのストライカーとして、あちこちの冒険者パーティーの間を金で雇われ渡り歩く生活を続けていたある日、ギルド職員の子からそんな話を聞かされた。
「ええ、王都ギルド本部から大陸全部のギルドに貼り出されたんですよ」
受付カウンター越しにそう言うギルド職員の子。詳しく聞くと何でも新しく拓かれた氏族で新メンバーを募集しているのだそうだ。噂ではそのクランの前身のパーティー『黒の軌跡』は女性冒険者に人気があったパーティーらしい。
何でもリーダーの冒険者が男女の区別無く、メンバー誰もを同等に扱っていて特に女性冒険者は存分に活躍させてもらえるとの事で、かなりの女性冒険者がそのパーティーからメンバー募集が有れば今居るパーティーを抜けてでも行きたがっていたパーティーだったらしい。
「レオナさんなら応募すれば間違いなく選ばれると思いますよ」
笑顔でそう勧めてくれるギルド職員の女の子。
冒険者になって8年、知らず知らずのうちに階級もAクラスまでになっていたあたしは、その新クランのメンバー募集に興味が湧いた。そしてこの8年間何処のパーティーにも入らず、ずっと1人で活動して来たけど、それは昔捨てたあの両親がしていた、あたしが毛嫌いしていた事となんら変わらない事に今更ながら気付いたのだ。
「折角だし募集してみようかな……」
出来ればこれを切っ掛けに今度こそ本当に自分に染み付いたルクサーの流民生活みたいな事に決着を付けられれば良いんだけど……ね。
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そんな感じに募集してみたものの正直言うとあまり期待して無かったのも事実だ。ギルド職員の女の子が「募集には結構な人数が集まりそうですね」と言っていた事と、募集は斥候と回復役と弓士が1人ずつと格闘士か拳闘士のいずれか1人と言う内容だったからだ。
あたしは自分の腕前にはそれなりに自信があったけど、選ぶのは向こうだし何よりあっちはあたしを知らないはずだから、選ばれる事の方がむしろ奇跡じゃないかと思っていたのだ。だけど──
「レオナさん! 候補者に残りましたよ!」
ギルド職員の子がニコニコとしながらあたしに報告してくる。何でもこの大陸全部から合わせて96人も募集者が集まり、王都ギルド本部の方で7人に絞り込んだらしい。あたしは見事にその中の1人になれたのだ。
「何でも王都ギルドで最終的な面接が行われるとの事ですよ! なので今回は特別に我がギルドが所有している非常用の転移陣を使って王都ギルドに行ってください!」
彼女が言うには各地の冒険者ギルドには転移陣が非常用に設置されていて、他のギルドと繋がっているのだそうだ。今回は特別にそのポータルを使って王都ギルドに行かせてくれるらしい。何にせよこれはありがたい。
どうやって急いで王都に向かうか考えていたあたしは、世話になっているギルド支部から王都ギルドへと向かう事になった。
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「そこまで!」
クランのリーダーの声が修練場に響くと、クランのメンバー達と一緒に戦っていたあたし達7人が大きな息を吐きながら構えを解く。中には疲労でしゃがみ込む者もいたりした。
「もうお終い? つまんな〜い!」
「ヴァンヴァン!」
「…………ヴ」
片やあたし達の相手を務めていたクランのリーダーが使役する従魔達は余裕である。新メンバーに応募したあたし達7人は3匹の従魔達と模擬戦を行っていたのだ。
何でも3匹の従魔のうち、ヘルハウンドと蒼玉ゴーレムはランクはAランク、レベルは70を越していて、ラミアに至ってはSランク、レベル75もあるのだそうだ。道理でこちらの攻撃が模擬戦とは言え効かなかった訳だ。でもまさか最終選考が模擬戦とは思いもしなかった。まあ実力を測る意味では間違っていないけど。
とにかくその後、部屋で待機する様に言われたあたし達は疲れた様子で用意された部屋で待つ事にした。この7人のうち3人が選ばれるのだ。何故4人じゃなくて3人なのかと言うと、スカウトだけは先に決まったのだとは、グラマスの話だった。
そしてしばらく経ち──あたしとアーチャーの女の子ルネリートと、ヒーラーの男の子アリストフの3人がグラマスの執務室に呼び出された、そうあたし達3人は見事選ばれたのだ! そしてその場で簡単な自己紹介を済ませると、詳しい話をする為に再びポータルを使ってクランの拠点があるラーナルー市に移動したのだ。
何でもリーダーはギルドのポータルを自由に使える許可を持っているのだそうだ。そこは流石Sクラス冒険者だと思った。
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そして連れてこられたのはとても大きな屋敷だった。何でもリーダーはSクラスになった際、王様から伯爵の位をもらい伯爵様になり、そしてこの大きな屋敷も王様からもらったらしい。何と言うか、あまりのスケールの大きさに言葉が出ない。
そして改めてリーダー達クラン『神聖な黒騎士団』の紹介がされ、更に驚くあたし達。リーダーはウィルフレドと言う戦士でしかも三重職で、そのうちのひとつのジョブが魔物調教師だと言う事、しかも妖精の様な姿を持つインテリジェンスアイテム持ちだと言う事、ヒトとそっくりな自動人形の少女が居た事、メンバーのダークエルフのアンと魔法騎士のエリナとギルド職員のルピィの3人と婚約している事、等など、正直一生分驚いたと思う。
でもあたしはリーダーのウィルと行動を共にしていて、ウィルと言う人間は自分が最高位の冒険者なのに変に偉ぶったりせず、どんな相手でも同じ目線で対等に話すのを知った。それが例え使役している従魔のラミアであろうともだ。
今まで何十組ものパーティーを渡り歩いたあたしから言わせてもらうと、大体のリーダーの男は変に偉ぶり、しかもクズ野郎が多かったのだ。だからあたしがウィルに好感を持ったのは本当に自然だった。
そしてあたし達新メンバーの腕試しに迷宮「魔王の庭」に潜って行動を共にしていた時、常に周りを気遣いし相手を信頼してくれ、あたしやアリストフ、ルネリートや新メンバーのスサナの能力を存分に発揮させてくれる、そんなウィルにあたしはどんどん惹かれていった。
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そんな最中ほんの少しの悪戯心からウィルの唇を頂戴したのがアン達にばれてしまい、あたしとウィルはアン達の前で弁明する事になり──目の前のアンがあたしにズバリ聞いて来た。
「貴女はウィルの事を好きなのかしら?」
その真っ直ぐな問い掛けにあたしは俯いていた顔を上げると視線をアン達に向けて
「好きか嫌いかと言われれば好きだよ。知っての通りあたしは今まで幾つもの冒険者パーティーを渡り歩いてきたんだけど、ウィルみたいな男には初めて会ったんだ。リーダーとしても優秀だし、もちろん男性としても優良物件さ。優しいし、何より人に偏見を持たずに接してくれるし、こんなに『良いオトコ』は他にいないさね。それにあたしみたいな冒険者稼業はいつ死んでもおかしくは無いんだ。それなら自分が惚れた相手に対して変に遠慮する方が可笑しいさね。惚れたならとことん惚れる、まぁ相手には迷惑かも知れないけど、そうしてあたしは自分が今まで生きていた証を残したいのさ。それはおたくらも同じなんじゃないのかい?」
そう真っ直ぐにアン達に、そしてウィルに言い切るあたし。例え受け入れてもらえなくてもあたしは自分の気持ちに正直に生きたいと、ただそれだけの想いを込めて。
でもウィルはこんなあたしを真っ直ぐ受け止めてくれ、なんと今度はウィルからプロポーズされたのだ!
勿論あたしに断る理由なんかひとつも無い。アン達も祝福の言葉と共に認めてくれて、晴れてあたしはウィルの4人目の婚約者になったのだった。
次の日には星銀の婚約指輪が用意されて右手の中指にウィルの手ではめてもらい、あたしは天にも登る気持ちになった。一旦はめた指輪は戦闘の時は邪魔になるので同じミスリルの鎖で首に下げた事は言うまでもない。
それからは正に怒涛の展開、憧れの『執行人』と呼ばれたノーリーンさんに会ったり、屋敷のお披露目晩餐会を開くからと生まれて初めてドレスを新調したり、果ては晩餐会に王様やウィルの妹が来て人生最大の緊張を強いられたり……だけどいつもそばにウィルが居てくれたから、あたしはそんな事を乗り越えて今ここに居るのだと思う。優しくて頼りになるウィルとなら、この先もきっと幸せになれると思うのはあたしだけだろうか?
だけど今はそれで良いと思うのだ。そしてもう一度自分自身に誓いを立てる。
これからのあたしの拳は全てウィルに捧げる事を── !
今回もレオナの生い立ちとウィルと知り合うまでの経緯を描きました! 以前書いたエリナとは違い1人で居る事が多かったレオナの心情を描写しましたが上手く書けていれば幸いです。
次回からは本編に戻りますのでお楽しみに!
☆第64部本編六十話にてイラストレーターnyazさん作のサブヒロイン(?)の1人、ラミアのヤトのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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