魔物達の進化、ただし一匹は除く
本日は第百二十四話を投稿します!
ウィルの進化(?)に続き、ファウストとデュークが進化します。
▽今日は第百二十三話も投稿しています△
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「はい、これで全て完了致しました」
最後の属性水晶の胸飾を加工し終えた宝飾職人のサロモン・ヘガティが声を上げる。屋敷で働く侍女のレイラの親だ。
彼はラーナルー市第三層区画で宝飾店『エムメルス』を営んでいるのだが、今回は屋敷の方に来てもらい属性装備を頼むメンバーの要望を聞いて加工してもらっていた。
最後のブローチはアリストフが頼んだ分であり、作ってもらったアリストフは早速神官服の胸元に飾って御満悦である。
「ありがとうサロモンさん、お陰で助かった」
俺は作業を終えたサロモンに声を掛ける。
「いえいえ、私こそお役に立てて何よりです」
一方のサロモンは単眼鏡を外しながら笑顔で答える。
「それに娘からの達ての頼みでしたから無下には出来ませんからね」
笑いながらそう言うサロモンは髪に白いものが混じる初老の男性で、娘のレイラはようやく授かった一粒種なのだそうだ。
「それにしても、ここまでの高品質の魔水晶はなかなかお目にかかれません。この様な品物を弄れるとは、こちらとしても職人冥利に尽きます」
「そう言ってもらえるとありがたいが、仕事分はきちんと払わせてもらうよ」
俺はそう言うと予め聞かされていた金額を支払う。サロモンは「こちらこそありがとうございました」と金貨5枚を受け取ると、「また何かご入用の際はよろしくお願いします」と言って若い職人と一緒に帰って行った。
今度は是非、アン達のお洒落に協力してもらおう。
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何はともあれ8人分のエレメント・イクイップが完成した。
まずエリナとレオナは俺と同じ火属性のクリスタルが嵌められたペンダントトップを、ベルタは風属性の、ユーニスは水属性のペンダントトップをそれぞれ、フェリピナはアンに刺激され苦手な木属性のブローチを、マルヴィナとアリストフは神官らしく聖属性のペンダントトップとブローチ、ルネリートはやはりアンの影響で風属性のペンダントトップを、スサナもルネリートと同じ風属性のペンダントトップを求め、それぞれ皆んなの首元や胸元に装備されたのだった。皆んなそれぞれに御満悦だったのは言うまでもない。
「そう言えばヤトは何で欲しがらなかったんだ?」
俺は素朴な疑問をヤトにぶつけた。するとヤトは
「んー、魔術は全部使いこなせるから特に欲しいのとか無いのよねぇ。それに御主人様の魔術刃も出来ると思うし……」
と何の事は無いみたいな物言いで返事を返して来た。ヤトは天才肌だからやろうと思えば出来るんだろう。何か狡い気もしなくも無いが。
まあこれで少しは慌ただしかった毎日も落ち着くと思うんだが──はァ。
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そんな事をのほほんと思っていたら、ファウストの具合が悪くなった。
朝いつも通りに起きると、何時もの如く3体が俺のヒザの上を陣取っていたのだが、ファウストがいつもより更に丸くなっていて、しかもかなりの熱を帯びていたのだ!
慌ててファウストの様子をつぶさに確認すると全身を硬直させていた。これは何処か身体の具合が悪いと思うのは普通である。しかし困った、普通の犬なら兎も角ファウストはヘルハウンドと言う魔物だ。流石に魔物を診る治癒士など居ないだろう。尤も動物を専門に診察する治癒士自体稀有なのだが。
『私が簡単ですが診てみましょう』
どうしたものかと悩んでいたらコーゼストが声を上げたので、ここは任せてみる事にした。暫くファウストの周りをふよふよ飛び回り、色々な角度から観察するコーゼスト。すると徐ろに
『わかりました。これは進化の準備段階ですね』
と簡潔に診断結果を言うコーゼスト先生。
「何なんだ、その進化の準備段階って?」
「現在ファウストの格は75、レベルが上がった事によりヘルハウンドから上位個体への進化の為の条件が整ったと思われます。他にも要因はあるかと思いますが魔物の進化の引き金が何なのか、不明要素が多過ぎて断定は出来ませんがファウストはマスターが一番最初に従魔にした個体です。それも起因しているのではないかと。何れにしても私も記憶領域にある情報で判断しているだけで、実際に魔物の進化そのものに立ち会うのは初めてです」
観測と推測を同時に述べるコーゼスト。反論する要素は見当たらない。
「すると、こいつは病気とかじゃないんだな?」
『はい。但しこの状態が直ぐに収まるのか1時間掛かるのか、或いは1日なのか1週間掛かるのかわかりませんが。何しろデータが少な過ぎますので』
まあ何にせよ病気じゃないなら安心である。俺はファウストの顕現を解いて、暫くコーゼストに管理してもらう事にした。ファウストを収納してからコーゼストが
『それとマスター、この分だとデュークにも近々同じ事が起きると思いますので、やはり顕現を解いておいた方が宜しいかと思います』
「そうなのか?! だがあとヤトはどうなんだ?」
続けてデュークの顕現を解こうとして俺は再び疑問をコーゼストにぶつける。
『ヤトの場合は恐らく最初から上位個体なのではないでしょうか? なので進化は無いと思います』
何でもコーゼストが言うにはファウストとデュークがレベル75になっていて、ヤトは現在78なのだそうだ。ファウストがこのレベルで進化したと言う事は、少なくとも同レベルのデュークも可能性が極めて大なのだが、それ以上のヤトが今まで進化の「し」の字すら無いのだからと言うのが、コーゼストの推測の根拠らしい。
然もありなん。
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兎にも角にもファウスト達の事を朝食の時みんなに話した。アンもエリナもルピィもレオナも、勿論ベルタ達も皆んな心配していた。特にファウストは女性陣の愛玩物だったし、デュークは良くアンやエリナの抱き人形と化していたからな。
そして当然の如くヤトの事にも話が及んだが、「しんか? 何それ美味しいの?!」と当の本人はあっけらかんとしていたのだった。
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そんな事をしながら3日が過ぎ、コーゼストから『ファウストとデュークの進化が完了しました』との報告を受け、折角だから全員の前で顕現させようと言う事になり屋敷の裏庭に集まった。確かこの前もこんな感じに観客が居た気がするんだが?
気を取り直してファウストを顕現する! 光となって現れたファウストのシルエットはみるみる大きくなって何時もの子牛サイズ(150メルト)から成牛サイズ(200メルト)ぐらいまで膨らむと──
「「ヴァンヴァンヴァン!!」」
双頭の黒い魔犬が姿を現した! ──って、オイ!?
「こ、これがファウストなの?!」
アンが驚きの声を上げるが俺だって驚いている。
「……なぁ、コーゼスト」
『はい』
俺は左肩の上にちょこんと座るコーゼストに尋ねる。
「これは何だ?」
『ファウストは進化してヘルハウンドからオルトロスになったみたいですね』
「オ、オルトロスだって?!?」
俺はあまりの出来事に大声を上げた。
オルトロス──それは迷宮「魔王の庭」はおろかこの大陸と東西大陸のダンジョンにすら存在しえない伝説の魔物である。嘗ては400年前、魔王の傍を護っていたとも言われる強力な魔物で勇者が討伐した以外、記録にすら残っていない存在なのだ。
「そんな存在、どうしろと言うんだ……」
俺は思わず頭を抱えてしまう。勿論アン以下のメンバーもである──ルアンジェとヤトを除いてだが。
『そうした伝説があったのは知りませんがファウストの順位がAランクからSランクに強化されたのは確かです』
「それはそれで凄くね?」
淡々と語るコーゼストに素で突っ込む俺。まあ伝説は兎も角、ランクがAからSに上がった事の方がより現実味がある。何よりアン達もうんうんと頷いているし。しかし素の姿は凶悪さが倍増したな。
「「ヴァンヴァン!!」」
どうだと言わんばかりに尻尾をぶん回すファウスト。尻尾が巻き起こす風も倍増していた。
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「……次、デュークを喚ぶのが怖いんだが?」
『しかし確認は重要ですよ?』
素直な気持ちを口にしたらコーゼストに正論を言われてしまった。なので不安ではあるがデュークを顕現する。
目の前に生まれた光はヒトの形をとると2メルトほどまで膨らみ、光が薄れると黒鉄色の騎士が立っていた。ちょっと待て、この色合いは──!?
「──コーゼストさんや」
『はい』
「俺の目が悪くなったのか、デュークの体が黒鉄色に見えるんだが?」
『間違いありません。これは剛鉄ゴーレムですね』
「…………はい?」
いやいやいやいや、剛鉄ゴーレムってなんだよ!? こっちも確か400年前の伝説上の存在じゃないか?! 何と言うか、良く多用していたごつい重騎士型よりよりヒトの騎士に近い姿をしている、と言うより重甲冑を身に纏った大柄な騎士そのものである。
面頬の奥からファウストと同じ紅い双眸がこちらを見ている。
『……ワたシは、デゅーく。ますター、よロシくおネガいシまス』
「?!? デューク! お前、話せる様になったのか?!」
不意にヒトとは違う声がデュークから発せられ、俺は間抜けにも尋ねてしまう。それに短く『ハイ』と答えるデューク。何と言うか──ファウストでも驚いたが、デュークの進化も凄いものである。
『デュークはその自我の中に、マスターと交流を図りたいと言う渇望があったのは確認しています。今回はそれが進化に伴い色濃く出たのかと思われます。この姿もマスターの要望を汲んでかと』
コーゼストの話を聞いて、何となくだがしっくりくる理由だったので納得出来る俺だった。まぁ俺もファウストとかデュークと話せたらなぁと思った事が何度かあるからだ。デュークがそうした想いを持っていたとしても何ら不思議では無い。
それにしてもファウストは兎も角、デュークもオトコみたいなのでひと安心していると
『マスター、デュークはゴーレムなので無性ですよ?』
コーゼストが要らん情報を教えてくれる。
そこはかなり重要且つ切実な問題なのだよ、コーゼスト君!
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その後デュークと二言三言言葉を交わし、ファウスト共々改めて2体には仮想体になってもらった。
ファウストは体長30セルト程の2つ首の真っ黒い子犬に、デュークも大体身長60セルト程のずんぐりした体型の人形みたいに変化した。普通の犬サイズになったファウストに真っ先に反応したのはルピィで、「きゃ〜、モフモフの量が増えてる〜♡」と抱き着いていた。確かに現実体よりアバターの方が毛並みがフワフワしているのだが。これは何の加減なんだろうか?
片や大きめの抱き人形みたいなデュークはデュークでアンとエリナに抱き上げられていた。何やらアンとエリナは「丁度3ヶ月の赤ちゃんの大きさだわ♡」と言って、顔を赤らめながら交互にデュークを抱いていたのがやたら印象的だったが、そんな先の事を妄想しないでいただきたいものである。
結局進化したら強さよりも可愛らしさが倍増した2体の通過儀礼はその日1日掛かったのであった。
うちは女性が圧倒的だからなぁ…… 。
すったもんだの末、何とか無事に進化したファウストとデューク! にしてもオルトロスとかアダマンゴーレムとかって……随分強力な魔物になりましたねぇ〜(他人事)。何れにしてもクラン全体の更なるパワーアップと相成りました!
△今日はもう一話、百二十三話も投稿しています。そちらもお読み下さい▽
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☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
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