いきなり増えて困るのはスキルだけ?
本日は第百二十三話を投稿します!
ある朝いきなり言われて戸惑う事ってありませんか? 今回はそんな話です。
▽本日はもう一話、第百二十四話も投稿しています△
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ある朝、コーゼストが宣った。
『そろそろマスター御自身の能力向上を図りたいと思います』
「何なんだ、藪から棒に」
本当に突然だな、おい!?
『ちゃんと理由はあります』
肩の上の妖精コーゼストが、やたら偉そうに話し始める。
『先ず、マスターは最初にファウストを従魔にした時に「空裂斬」を取得しましたが、その後デュークにヤトを従魔にしてから共生化から来る能力特性を発現していません。それを確認したいと思います。次にマスターと私の同化率が100パーセントになった事の実証実験をしたいなと』
「……それはどちらかと言うと最後の方が本命なんじゃね?」
然も当然の様にドヤ顔で話すコーゼストにジト目で突っ込む俺。
『まあ、そうでもありますが』
悪びれる事無くサラッと認めるコーゼスト。そんな所で舌をペロッと出しても誤魔化されんぞ?
でもまあ、コーゼストの言う事も一々もっともである。正直俺もデュークみたいに城壁が使えたり、ヤトの竜咆衝撃波が使えたら何だか嬉しいしワクワクするのは確かである。
「まあ……確かめてみても損は無いか」
俺は屋敷の執務室でそんな事をぼんやり考えていたりした。
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何はともあれ試してみる価値はある、と言う事で屋敷の裏庭を改造して造った修練場で実験してみる事にした。
「ウィルがどんな能力が使えるのかしら?」
「そうね! 楽しみだわっ!」
「そう言えば私は初めて見るんですよね〜」
「そういやあたしもだわ!」
「ん、興味津々」
「私の御主人様だから大丈夫よ!」
「「「「「「「ワクワク!」」」」」」」
…………見学する観客達が姦しい。
「さてと、何処から手をつけるか……」
『まずは順番通りにファウストの破滅の咆哮から、でしょうか?』
「ふむ……それってどうやれば良いんだ?」
『そうですね。叫んでみては如何でしょうか』
「ちょっと待て! そんな事で出来るのか?!」
『恐らくは』
確証が無いのかい!? 全く…… 。
とりあえず自分の出来る範囲で色々試してみたが、俺の武技「皇竜砕牙」を発動させた時に同様の衝撃波が発せられたのだ!
「おいおい……」
衝撃波に巻き込まれた木人形が吹っ飛ばされていた!
「コイツは使いどころを考えないとな……」
迂闊に人に使ったら目も当てられん。
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気を取り直して続けて試してみると、まずデュークの技能のうち配下召喚と再生と城壁は使えなかったが、剛力と金属化が使えるのが判った。
正確には剛力は金剛力と言う技能になっていて、発動させると身体の皮膚が硬くなり同時に力が倍加するのだ。試しにエリナに長剣で切りつけてもらったが傷ひとつ付かなかったし、両手剣を片手で軽く扱う事が出来た。コーゼストが言うには『恐らく「城壁」と「剛力」の両方の特性を持つスキル』では無いかと言う事だったが、まあ使い勝手は良さそうである。ただし金剛力を発動させながら破滅の咆哮を使う事は出来なかったが。
あと金属化は発動させると地面から槍を生み出す事が出来た。これもコーゼスト先生の言葉を借りると『地中の金属を集めて創り出している』との事だった。これもいざと言う時に使えそうである。こちらも破滅の咆哮若しくは金剛力との同時使用は駄目だった。
これだけでもかなりの戦闘能力が向上したな!
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気を良くして続けてヤトのスキルを試してみる、と言っても俺は魔法が使えなかった。より正確にはヤトが使うのは魔術なのだがこの際どっちでも良い。
『いいえ、マスターは魔法が使える様になっていますよ』
「マジか?!」
『言葉で言うより試されては如何です?』
コーゼストの思いもよらない宣言に吃驚する俺。そこでヤトに使い方を尋ねてみる。
「ヤト、魔法ってどう発動させるんだ?」
「ん〜、こう頭にフッと浮かぶ術の名前を意識してバッと使うと出来るの!」
……どうやら聞く相手を間違えたみたいである。そうしていたらコーゼストが指摘して来る。
『マスター、まさか垂飾の属性装備をお忘れですか?』
「…………あ」
そういやラファエルの所で作ってから使う機会が無くてすっかり忘れていた! 確か火属性の属性水晶だったな。えっと確かエレメント・クリスタルに魔力を集める様に意識して…… 。
そう自分の魔力を意識するとエレメント・クリスタルが下がる胸元が熱くなって来て、気が付くとペンダントが淡い輝きを放っていた。
『では掌を差し出しながら唱えて下さい──『火を我に』』
「こうか? ──火を我に」
差し出した右掌に小さな火が灯る! 何だか感動するんだけど!? しかしコーゼストの反応は違っていた。
『予測より火力が低いですね……マスター、次はこう唱えて下さい。『風よ切り裂け』』
「? おう、風よ切り裂け」
コーゼストに請われるまま次の魔法を発動させる。掌から風が巻き起こり木人形を揺らす。
『ふむ……どうやらマスターは放出系の魔法とは相性が悪いみたいですね』
「なんだって?!」
折角魔法を使える様になったかと思ったら、俺は撃ち出す系の魔法が使えないのかよ!? するとコーゼストが俺の考えを読んで変な指示を出して来た。
『──マスター、剣を構えて見て下さい』
「ん? おう──こうか?」
俺は請われるまま刀剣を鞘から抜き放つと右手で構える。
『では──手元にある剣をイメージしてもう一度唱えて下さい。『猛る炎よ』』
「??? 何なんだ一体……猛る炎よ」
とにかく言われた様に剣をイメージして唱えた瞬間、セイバーの刀身に沿って炎が現れた! あまりの出来事に俺のみならず周りで見ていたアンやエリナ、ルピィにレオナ、そしてベルタ達が絶句する!
何なんだ一体?!
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『マスターは物体に接触した状態で魔法を行使出来る、いわゆる具現化系で間違い無いみたいですね』
コーゼストは俺の魔法についての考察を説明する。
「それって、つまり」
『つまり撃ち出す魔法より、接触して魔法を発動させる方が得意だと言う事ですね。但し破滅の咆哮や金剛力などと同時に使用するのは難しそうなのでお勧めしません。まずはどちらからか1つずつ熟達させる事を心掛けるのが宜しいかと』
「非常にわかり易い説明と注意をありがとうございました」
噛み砕いた説明をするコーゼストに思わず頭を下げる俺。
「すごい……凄いわウィル!」
片や放置状態だったギャラリーの中からエリナが大きな声を上げた。
「それって私の職業の魔法騎士の一部の人が使える『魔法刃』じゃないの!」
魔法刃とは文字通り魔法と剣技を掛け合わせた魔技と呼ばれる武技のひとつなのだそうだ。魔法付与士から付与を受けて行使するのが一般的であり、魔法騎士単独で行使出来るのはほんのひと握りなのだとはエリナの話である。
「魔法刃はマギアナイトの憧れでもあるのよ。それをこんな風にあっさり使えるだなんて……」
そう半ば呆れたみたいな物言いをするエリナ。そんな事俺に言われても、出来たんだから仕方ない。
『恐らくはマスターの持たれているセイバーの材質が緋緋色金だと言う事も関係しているのではないかと推測します』
コーゼストはコーゼストでひとつの推測を述べる。つまり普通の剣だと使えないと言う事なのか?
『使えるには使えるでしょうが、まず魔法の効率が悪いでしょうね。それに剣の耐久性もかなり低下するでしょうし。あとマスターが使われているのは魔法ではなく魔術ですので、より正確に言うと『魔術刃』かと』
更に俺の思考を読んだコーゼストがそんな事を宣う。確か魔法って言うのは世の中の法則を書き換える事で、魔術は魔力を用いる技術だったけか?
「ん? そうすると俺が魔法の使い勝手が悪いのは、魔術じゃなくて魔法を使おうとしていたからじゃないのか?」
『いいえ、マスターに詠唱してもらったのは単なる『力ある言葉』です。これは魔法と魔術、どちらにも共通する言葉なので何ら問題はありません』
俺の疑問にきちんと答えるコーゼスト。そう言う物なのかと何となく思っていたら
「流石は私の御主人様! 魔術が使えるなんて凄いわぁ!!」
いきなり横合いからヤトに抱き着かれた。何やら感極まっているみたいである。それを見ているアンやエリナの顔が引き攣っているのがわかる。
ルピィはルピィで「この後は私が抱き着かないと!」と何故か気合が入っているし、レオナは「こ、今度ウィルがあたしの部屋に来るのは何時だっけ?」と良からぬ妄想を巡らせていた。
まぁそこは順番通りと言う事で勘弁して欲しいものである。
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そんな騒動もあったが無事俺自身の能力を確認する事が出来た。そしてそのままの流れで女性陣はお茶会を始めた、勿論俺も参加している。
「ねえウィル、私にもそのエレメント・イクイップとか言うの貰えないかしら?」
香茶を飲みながらエリナが不意にそんな事を言ってきた。他のメンバーも頷いている。エレメント・イクイップを作るのは構わないんだが、魔水晶の人数分の加工は兎も角、アクセサリーにするのは誰かに頼まなくてはいけないからな。またラファエルに頼むとしてもアイツも色々忙しいだろうし……うーん。
そんな風に頭を悩ませていたら傍に控えていた我が家の完璧家令シモンが「何かお悩みでしょうか?」と尋ねて来たので、今考えていた事を話すと
「それでしたら侍女のレイラの家が宝飾店を営んでいると聞き及んでおりますが」
「そうなのか?!」
これは良い事を聞いた! なので早速部屋の掃除をしていたレイラをここに呼んでもらう事にして、俺は皆んなに欲しいエレメント・イクイップの要望を聞く事にした。今回作製するのは俺とアンとルピィとルアンジェを除くメンバー、8人分である。1人1個と言う事で聴き終わった頃、呼ばれたレイラが裏庭に現れた。
「あの、旦那様、お呼びでしょうか?」
突然呼ばれた事に何事かとビクビクするレイラに俺の構想を話し、レイラの家のジュエリーショップでコーゼストが創るエレメント・クリスタルの宝飾品への加工を頼みたい旨を話す。するとレイラは
「そうですね……特殊な加工で無ければうちで出来ると思います。よろしければ今日帰って親に聞いて来ますけど、いかがでしょうか?」
となかなかの好感触である。
「わかった。それじゃあ聞いて来てくれるかい?」
「わかりました! 必ず親を説得して来ますね!」
レイラは両手を胸の前で握りながら「任せてください!」と意気込む。そんなに張り切らなくてもいいから…… 。
話を終えレイラは仕事に戻って行った。一連の話を聞き皆んな目を輝かせている。
「さて、と、この後はまた魔水晶を切り出すか……」
ラファエルの所で買ったクリスタルはまだ残っているしな。
『エレメント・クリスタルへの加工はお任せ下さい』
コーゼストも頑張ってくれるみたいである。尤もクリスタル1つからエレメント・クリスタルを1つ創り出すのに3分ぐらいしか掛からないから、全部でも30分程有れば良いんだからコーゼストの能力から見ると造作でもない事なんだけどな。
『何か私の労力に文句でも?』
「いえ、なんでもございません」
ジト目で見てくるコーゼストに、しれっとすっとぼける。
それにしても俺自身、ここまで強くなっても良いんだろうか?
まぁあまり悩むとギルマスみたいに頭髪で悩む事になるから気を付けないとな!
色々とスキルが増えたウィル! まあ周りが元々チート状態なのでウィルも合わせないと、と思いこうなりました!
それにしても随分とパワーアップとなりました。でもこうした事に溺れないのがウィルの良い所なんですけどね!(自画自賛)
△今日はもう一話、百二十四話も投稿しています。そちらもお読み下さい▽
☆第64部本編六十話にてイラストレーターnyazさん作のサブヒロイン(?)の1人、ラミアのヤトのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
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