披露晩餐会 Ⅱ 〜王と魔物の饗宴〜
本日は第百二十一話を投稿します! 今回はアドルフィーネの良からぬ妄想から話が始まります!
▽本日はもう一話、第百二十二話も投稿しています△
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執事のディナールがエリナ達を呼びに行き、ほどなくして──
「皆様をお連れ致しました」
3人を連れて戻って来る。エリナは白色のロングドレスで、肩巾が広く腰はベルトで絞られ、裾にかけて広がりがあるドレスである。ルピィは肩巾が小さく裾広がりの葡萄酒色のドレス、レオナは襟が立った身体にフィットした濃紺の深いスリットが入ったドレスをそれぞれ着ていた。
「お久しぶりです、アドルフィーネ様。改めてエリナベル・セルウィンです」
「お、お初にお目にかかります、アドルフィーネ様。ルピタ・リットンと申します」
「は、は、初めまして! アドルフィーネ様、レオナ・シャルリムです!」
エリナは兎も角、ルピィとレオナは緊張気味である。そらまあルピィとレオナは初対面だし、何よりアドルは内務卿代理を務めているから仕方ないと言えば仕方ないか…… 。
「「う、ウィルの妹君にお会いできて嬉しく思います!」」
……どうやら違ったみたいである。どうやら俺の身内に会った緊張かららしい……と言うか言葉遣いが滅茶苦茶だな?!
一方のアドルはエリナを一瞥し、ルピィとレオナを頭の天辺から足の爪先まで不躾な視線で見ると
「エリナベルさん、ルピタさん、レオナさん、この度は兄様と御婚約おめでとうございます」
とニコリと笑顔で祝福の言葉を3人に贈る──目は笑っていないが。
「でも! 次こそは私がそこに並び立ちますわ!」
そして相変わらず危ない妄想を垂れ流すアドル。いっそ清々しいが──俺にはそんな気は毛頭無い。
「アドル……」
流石に大勢の面前で小突く訳にもいかないので、ジト目でアドルを睨む俺。アドルは軽く咳払いをすると
「と、兎に角、これからも兄様の事を宜しく御願い致しますわ。兄様を泣かす事などありません様に気を付けてくださいまし」
と慌てて咳払いをし至極真っ当な事を言うが、その後に小声で「何かあったら私が兄様をお世話致しますから♡」と呟いたので全て台無しである。
お前はいい加減諦めろ………… 。
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あまりの出来事に静止していたエヴァン夫妻と妄想を垂れ流すアドルと別れると、4人の婚約者と共に周りに挨拶をしながらエリンクス国王陛下とジュリアス殿下の元に向かう。
やがて上座で椅子に座る国王陛下とその傍らに立つ殿下、そして2人と和やかに歓談しているセルギウス殿と陛下達の護衛をさせているベルタ達『戦乙女』やルアンジェの姿が見え──
「ウィル! 久しぶりだな!」
いきなり横合いから肩を叩かれた。誰かと思い振り向くとそこに居たのはSクラス冒険者パーティー『デュミナス』のリーダー、オルティース・トリスタンその人であった。後ろには貴森精霊のベルナデット・エテルニテがカーテシーを執っている。
「オルトとベルか。久しぶりだな」
考えてみたらこいつらも曲がりなりにも子爵位だった事を今更思い出す。
「いやー、Sクラスになったからお前も爵位を受けるとは思っていたが、まさかの伯爵位とはな! おっと、こんな口の聞き方は不味いな!」
「別に構わないさ。今まで通りウィルで良い」
そう言うと何方ともなく笑い合う俺とオルト。一方のベルナデットはアン達に「この度はおめでとうございます」と話し掛けていた。
「で、どうだ? 良かったら俺と飲まないか?!」
いつも通りの暑苦しい笑顔でそんな事を宣うオルト。
「すまん、これから国王陛下の元に向かうつもりだったんだが……」
「ん? そうか! それなら俺達も一緒に挨拶しに行くとするか! おい、ベル!」
俺がそう言うと然も当然の様に同行しようとするオルト。呼ばれたベルナデットはベルナデットで「本当にうちの馬鹿リーダーは……」と呆れた様子である。
しかしまぁ、拒否する訳にもいかないか…… 。
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「陛下、殿下、お楽しみになられていますか?」
結局オルト達も伴ってエリンクス国王陛下達の元に向かった。
「おお、ハーヴィー卿か! それにトリスタン卿も? うむ、楽しんでおるよ!」
「ハーヴィー卿、トリスタン卿、良く参られた。勿論楽しませて貰っているが……もう平気なのかね?」
陛下の気分が高揚している様子の一方で、飽くまで冷静な物言いのジュリアス殿下。
「それはようございました」
とりあえずそうしたのは無視して会釈する俺。横ではオルトが珍しい物を見た様な顔で俺を見ている──何だ、その顔は?! そんな事を思っていたら国王陛下が
「うむ、ハーヴィー卿よ。もう少しくだけた物言いをしてはくれまいか? その方がジュリアスも喜ぶし、何より卿が楽であろう?」
「父上の言う通りだ。もっと率直な言葉遣いで構わない」
陛下と殿下から思わぬ要求である。俺は困ってグラマスに顔を向けると、グラマスも少し困った様な顔をしていた。俺は少し思案すると
「ではお言葉に甘えて──陛下、楽しんでもらえて何よりです。出来れば俺の事はウィルと呼んでもらいたい」
エリンクス陛下に向けて少しくだけた口調で言い直す。陛下は満足そうに頷き「うむ、ではこれからはウィルと呼ばせて貰おう」と御満悦である。続けてジュリアス殿下に話し掛ける。
「ジュリアス──と呼べば良いのだろうか? 失礼なら言い直すが……」
「うむ、『精霊の鏡』の時の様で構わないぞウィル!」
こちらもこの喋り方に満足したみたいである。一方オルトとベルは俺と陛下達とのやり取りを聞いて苦笑いしていた。聞けばオルト達も俺と同じ様な事を陛下から言われたのだそうだ。周りの列席者達は俺の物言いに驚いた表情を見せている。
何と言うか……フランク過ぎないか、国王陛下?
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「それで早速ウィルに頼みたい事があるのだがな」
とりあえず話が纏まると、国王陛下が何やら意気込んで話し掛けてきた。何だ、改まって?
「頼みと言われても……場合によりけりですが」
「うむ、ウィルの従魔であるラミアに是非一度会わせて欲しいのだ! ジュリアスから迷宮行の話しを聞かされてジュリアスが羨ましくてな。な、頼む!」
息巻く陛下の言葉を聞いて苦笑いを浮かべるジュリアス。まァそれ位ならお易い御用だが、流石にここで顕現する訳にもいかないし、そもそもいきなりそんな事をしたら列席している貴族達が大混乱になってしまうし、うむむむ…… 。
すると俺の心の葛藤を察したのか、ジュリアスが徐ろに
「皆の者聞け! 今日のパーティーの招聘者であるハーヴィー卿が国王陛下の命により、今この場で自らの従魔を召喚する運びとなった! 決して狼狽せぬ様に心せよ!」
と声高らかに宣言してくれる。そして俺の方を向くと「これで大丈夫だろう」と笑顔を見せた。お陰で心配しなくても良くはなったが……これ、呼び出す事決定じゃね?
「では……」
俺は色々諦めてヤトを顕現する事にした──開き直ったとも言う。
「ヤト、召喚!」
俺の台詞と共に目の前の拓けた場所に光に包まれたヤトが顕現する!
「御主人様の一の僕、ヤト見参!」
何時もの台詞と共に現れたヤトは、辺りを見回すと
「さぁ、美味しい料理が待っているわ!」
相変わらずの食い意地を披露するのだった。
ある意味、おおらか過ぎる…… !
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「えっと、はじめまして王様! ユリウスも久しぶり!」
フライドチキンを頬張りながら国王陛下とジュリアスに挨拶をするヤト。山と盛られたフライドチキンがみるみる減っていく。周りの貴族達も、ある者は遠巻きに、ある者は警戒し、ある者は興味を持ってヤトを見ている。そんな中──
「うむむむ! 本当に本物のラミアなのだな!」
「ですから父上、何度もそう申し上げた筈ですが?」
エリンクス陛下は初めて真近に見る魔物に興奮を隠しきれない様子で、ジュリアスがそれを宥めていた。
「如何にも、私は蛇鱗族の半人半蛇だわ」
陛下達の反応を見て急に尊大な態度をとるヤト。俺はその後頭部を軽く小突いて注意する。
「ヤト…… 陛下に対して失礼だぞ。あとユリウスじゃなくてジュリアス殿下な」
「はぁいマスター、ごめんなさ〜い♡」
テヘッと長い舌を出して戯けるヤト。そして陛下に向かい
「改めて──よろしくお願いするわ、王様、ジュリアス! 私は魔物だからヒトの身分とかに疎いから失礼な事を言うかもだけど勘弁してね!」
元気良く自分の事を話す。それを受け陛下は嬉しそうに
「うむ、それは構わん! ヤトよ、宜しく頼む!」
とヤトの無礼な振る舞いに理解を示した。そして──
「人間の言葉を解するヤトに早速聞きたいのだが……そなた達魔物とはどう言った存在なのだ? 何故人間と敵対するのだ?」
ヤトに魔物としての生き様を聞く国王陛下。恐らくはそれを聞きたいが為にヤトに会いたがっていたのだろう。それに対するヤトの答えは「生きる為」と極めて単純だった。
「私達魔物と呼ばれるモノ達はやたらめったらにヒトや家畜を襲っている訳じゃないわ。先ず襲うのは食べる為、勿論ヒトだけじゃなくて同じ魔物同士でも仲間以外なら喰らう相手だと考えるの。それと私達魔物には縄張りがあって、そこに入ってくるモノはヒトだろうと魔物だろうと排除するの、自分が生き残る為にね」
淡々と語るヤトとは対照的に、ヤトの話を聞いた者は皆んな衝撃を受けた。勿論俺もであるが……まぁ俺達ヒトにはヒトの理由ってのがあって魔物には魔物の理由があると言う事はわかった。
『陛下、殿下、そしてグラマスにマスター。魔物と言うのはヤトが話した二大本能が特に際立った存在です。それ故に彼等魔物の行動原理は極めてシンプルになっています。それはヒトが知恵を振るい知性を働かせ万難を排するのとは真逆だとも言えます。そして魔物は生殖能力がヒトより高く瞬く間に数を増やします。魔物より生殖能力が低いヒトがこの地で生きる為にそうした魔物を狩るのは自然の事かと』
ヤトの言葉を受けコーゼストが1つの答えを言葉に表す。国王陛下はうむむ、と唸ると、その思いを口にする。
「……恐らくはコーゼスト卿が言う事が正しいのだろうな。そうしなければ我々人間は魔物に淘汰されかねない」
「あとはマスターにいつか話した通り私達魔物には『勝つか負けるか』しか無いからね。だから私達魔物はヒトに殺されようと文句を言う事は無いわ。それは弱かった自分が悪いと思うから。だから私は私に勝ったマスターに今までもこれからも従うの。それに私はマスターの事が大好きだし♡」
そんな真剣な思いの陛下の言葉とは対照的に飽くまでも淡々と『魔物としての思い』を言葉にするヤト。但し最後の言葉は余計であるが──どうでも良いから背後から抱き着くのはやめろ!?
「何と言うか……ウィルはある意味傑物だな。女性のみならず魔物にも好かれるとは!」
エリンクス陛下がニヤリと笑って、ヤトに抱き着かれている俺を見てそんな事を宣う。頼むから人を漁色家か好色漢の様に扱わないで欲しいものである。
望むと望まざるとに拘わらず女性が集まったのは俺の所為じゃない筈だ………… !
遂に実現した人間の王と魔物の会話! そしてヤトの口から語られる魔物の生存する為と言う行動原理、コーゼストが示す答えは飽くまで魔物と言う存在の本能を表しているに過ぎませんが……意外と歴史的な瞬間なのにサラッと流しているウィルって……(笑)
△今日はもう一話、百二十二話も投稿しています。そちらもお読み下さい▽
☆第64部本編六十話にてイラストレーターnyazさん作のサブヒロイン(?)の1人、ラミアのヤトのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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