拳の誓い、そして魔法士はかく語りき(☆イラスト有り)
本日は第百十八話を投稿します!
新メンバー加入、そして婚約と忙しかったウィル(笑)。そんなウィルの元をあの人が尋ねて来ます。
▽今日は第百十七話も投稿しています△
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レオナの右手の中指に輝く星銀の婚約指輪。因みに右手の中指に婚約指輪を嵌めるのは「魔除け」の意味合いもあるのだ。勿論結婚したら結婚指輪は左手の薬指に嵌める事になる。その意味は「愛の証」なのだとは、嘗てアンさん達に力説された。
「おお〜♡」
右手を窓から差し込む陽の光に翳し、感嘆の声を上げるレオナさん。ベルタ達の視線が痛い…… 。
「これでレオナも正式な婚約者になった訳だ。おめでとう」
「おめでとうレオナ」
「レオナ、おめでとう!」
「レオナ、おめでとうございます!」
「ん、レオナおめでとう」
「「「「……おめでとうございます」」」」
「わぁ、おめでとうございますぅ」
「レオナさん、おめでとうございますっ!」
「おめでとうございます!」
アン、エリナ、ルピィ、ルアンジェ、そしてベルタ達、スサナ、ルネリート、アリストフがそれぞれ祝福の言葉をレオナに贈る。しかし、ベルタ達よ、何だか暗くないか?
「あ、ありがとう皆んな! こういうのは何だか照れくさいね……」
一方のレオナは嬉しそうに皆んなに返礼の言葉を返すと、俺の方に向き直り
「本当に夢を見ているみたいだよ。ウィル、本当にありがとう。あたしを選んでくれて♡」
頬を赤らめ本当に嬉しそうに話し掛けて来る。
「これからのあたしの拳は全てあなたに捧げる事を誓うからね!」
そして新たな決意──拳闘士であるレオナが己の拳を相手に捧げる事を誓うのは、生涯を賭けての誓いなのだ。
(俺も──皆んなを護れる男にならないとな)
レオナが向けて来る幸せそうな笑顔を見て、俺はそう決意を新たにするのだった。
因みにレオナを4人目の婚約者として迎えた日の夜から、俺はアン、エリナ、ルピィ、レオナの部屋を順番に訪れていた。言いたい事はあるのだが、これも自分で蒔いた種だと罰を甘んじて受ける事にしたのだ。勿論それぞれに歓迎され、それぞれと甘い一夜を過ごした。そのお陰かアン達の視線が今までより、より熱っぽくなっている。まぁお互いに相手を深く知る事ができ、より深い繋がりを持てたのだから良かったのだが。
「──まぁ、全てはこれから、なんだけどな」
笑顔を浮かべレオナを祝福しているアン達と、祝福の輪の中で笑顔を振りまいているレオナを眩しく感じなから俺はポツリと呟いた。
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何のかんのでレオナの騒動から1ヶ月経ち、新しく屋敷の住人になったレオナやルネリートやアリストフも今の生活に馴染んで来ていた。そんなある日── 。
「旦那様、お客様ですっ」
裏庭を改造した修練場で皆んなと鍛練に勤しんでいたら侍女のカルラが来客を告げに来た。
「来客? 誰だい、カルラ?」
「はいっ、ラファエル様と申される御方ですっ」
「ラファエルだって?」
何故ラファエルがと言う疑問はあるが、応対の為に屋敷の中に戻る事にする。アンとエリナ、レオナとルアンジェも付いて来た。
「久しぶりであるな、ウィル。そしてお邪魔しているであるよ」
「お邪魔致しております」
応接間には数少ない(自分で言うと悲しいが)友人であるラファエルと、ラファエルの侍女のノーリーンが待っていた。
「久しぶり……と言ってもひと月半振りなんだがな」
「お久しぶりです。ラファエルさん、ノーリーンさん」
「2人とも久しぶり」
俺に続きアンとルアンジェも挨拶をし、そのまま続けて俺はエリナとレオナの2人を紹介に移る。
「こちらはエリナベル、あちらはレオナ、2人ともアンと同じ俺の婚約者だ。エリナ、レオナ。こいつはラファエル、俺の友達だ。そちらの女性はノーリーン、ラファエルの家のメイドさんだ」
俺がそこまで言うとレオナが急に興奮気味に声を上げた。
「ノーリーンって…… も、もしかして『執行人』のノーリーン?!?」
どうやらノーリーンに対する反応だったらしい。そう言えばノーリーンは昔、高位の冒険者だったと以前の旅で聞いた事があるが、その事なのか?
「確かに昔、その名で呼ばれた事もございましたが……まだ知っている方がおいでになるとは夢にも思いませんでした」
ノーリーンは軽く目を伏せ恐縮しているみたいである。
「そんなに有名だったのか?」
「ウィルは知らないだろうけど、あたし達拳闘士を生業にする者にとって『執行人』のノーリーンと言えば、その拳1つで若くしてSクラスまで昇りつめた有名人なんだよ! あたしの目標でもあるんだ!!」
俺の問い掛けに気持ちの昂りを抑えられないみたいなレオナ。
そらまぁ目の前に憧れの存在が現れたら興奮しない方がどうかしているが、俺としては最高位のSクラスまで昇り詰めたノーリーンが何故ラファエルのメイドさんをやっているのか謎なんだが?!
ノーリーンに色々聞きたそうなレオナはとりあえず放っておいて、俺はラファエルに向き合う。ラファエルは半ば呆れたみたいな顔で
「本当に何人とも婚約したのであるな」
「いや? あと1人居て全部で4人だな」
「それだけ婚約者が居れば充分であるよ……」
ラファエルは短く溜め息をつくと
「それにしても本当にウィルも爵位持ちになったのであるな。この屋敷が物語っている──これは私も敬語を使わなくてはならないのであるかな?」
そう苦く笑うのだった。全くらしくない話である。
「別に今まで通りで構わないぞ。俺は堅苦しいのは苦手だからな」
「それを聞いて安心したであるよ。本当に貴様は変わらないのであるな」
「……俺は爵位と言うのは責任を負った事だと思っている。それ以上でもそれ以下でも無い」
「……その台詞を権力闘争に明け暮れる貴族達に聞かせてみたいものであるな」
俺の物言いに相変わらずだな、と笑うラファエル。こいつも俺も大概だ。正に似た者同士である
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「まぁ、その話は別の機会にするとして……今日は貴様とコーゼスト殿に相談があって訪れたのだよ」
単眼鏡を掛け直し本題に移るラファエル。俺も居住まいを正す。
「何だ、改まって」
「うむ、実は──」
そう言って語り出したラファエルの話を纏めると──ラファエルがコーゼストと知り合ってから今日までコーゼストと一緒に製作した様々な魔道具──久遠の水瓶や魔法術式消去機や、最近だと遠方対話機とかの権益をどうするかと言う話だった。
俺としてはラファエルに丸投げしているし、別に権利とか主張する気など毛頭無いんだが、ラファエルとしてはその辺りをキチンとしておきたいのだそうだ。
「──それにこの話は寧ろコーゼスト殿に関わりが深い話でもあるのだよ。無論ウィル、貴様とコーゼスト殿からは今まで作った魔道具は私が作った事にして自由にしても良いとは言われているが、私としてはそれでは合点がいかないのだ。故に私から貴様とコーゼスト殿に提案をしたいのだよ──コーゼスト殿、私と通名を作り発表する事を了承して欲しいのであるよ」
「? なんだそりゃ??」
ラファエルの言う通名──つまり通称名とは共同開発者2人以上の場合に使用出来る名で、正式に認められる名前なのだそうだ。こうする事により共同開発者同士に公平な利益を与えられるのだ。
「──つまりお前はコーゼストと2人での共同開発にして開発した魔道具の発表とそれに伴う利益をコーゼストと分けようと言う事か?」
「無論、一連の開発はコーゼスト殿が中心となって行われたものであるから割合はコーゼスト殿が7で私は3で構わない。開発した魔道具の権利はコーゼスト殿に、管理は私が行う事にする。それでどうであろうか? 決して悪い様にはしないのであるよ」
ラファエルの説明にコーゼストは一瞬思案すると
『その場合のラファエル殿のメリットは──私からの継続的な技術情報の提供でしょうか?』
となかなか鋭い事を言ってきた。だがラファエルはそれに動じる事無く
「それは勿論であるよ。私が欲するのはコーゼスト殿の持つ古代魔族の知識だけである故に。構わないだろうか?」
と、あっさり認めつつ敢えて確認して来る。何も隠し立てしない所とか、本当に自分の欲望(この場合は知識欲であるが)に忠実な奴である。
『私はそれでも構いませんが……一部条件を変更したいと思います。利益分配の割合は私とラファエル殿で5:5の等分にします。あとはラファエル殿の案通りで結構です『人材は利益の双輪』とも言いますしね』
「何だ、そりゃ?」
コーゼストの言い回しが理解出来ず、思わず聞き直してしまう。なんでも「人材は利益の双輪」と言うのは、2人のヒトが同じ目的に向かい、互いの力で利益と言う馬車の車輪を回している限りどちらかがその関係を壊す事は無い、と言う理屈なのだそうだ。なかなか的を得ている言い方である。
「そう言う事ならコーゼスト殿の言う通りで構わないのである。元よりお互いの関係を壊す気は毛頭無いのだが、コーゼスト殿がそれで安心するならその様にするのである」
ラファエルも了承したので執事のディナールに皮紙とペンを持ってきてもらい、契約書を2通認め1通は俺が、1通はラファエルが預かる事にした。文面はコーゼストが全て記録しているのは言うまでもない。ラファエルは「これで漸く安心出来るのである」と如何にもホッとした表情を見せていた。
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『あとは通名ですが──どの様な名前にしますか?』
俺の左肩にちょこんと座りながらコーゼストが尋ねて来る。それって俺に考えろって事か?! ラファエルも「そうであるな……」と言いつつ、俺の方に期待の視線を投げ掛けてくる──お前も少しは考えろ!!
そうは言いながらも名前を考える。そもそもだが実在の人物の名前は駄目である。すると全くの創作となるが…………偽名、か……偽名……偽りの名…………うーん…… 。
俺とラファエルが頭を悩ませていると、コーゼストが不意に自身が思い付いた名前を口にする。
『では──フォールスェン・ジニアと言う名は如何でしょうか?』
「「フォールスェン・ジニア?」」
俺とラファエルが声を揃えて問い直す。
『ええ、フォールスェン・ジニア。「偽りの技師」の綴り「False engineer」を捩ってみたのですが……』
コーゼストは少し遠慮がちに言っているが、これはこれでなかなか良い名だと思う。
「うむ! フォールスェン・ジニア! なかなか良いであるな!」
ラファエルもお気に召したらしく、柘榴石の瞳を輝かせている。これは決を採る必要も無いな。
「なら決まりだな。通名はフォールスェン・ジニアにしよう」
「では早速その名でギルドに登録を済ませておくのであるよ!」
そう言うが早い、認めた契約書を持って飛び出して行くラファエル。レオナと話し終えていたノーリーンは「全く……旦那様は」と呟くと、俺達に向かい頭を下げ
「我が主が粗相を致しまして誠に申し訳ございません。これにて失礼致します」
と挨拶をすると「……これは……後で折檻が必要ですね」と呟きながらラファエルの後を追って部屋を出ていった。何となくだがラファエルがノーリーンに折檻されているさまが目に浮かぶ様である。
「何だか慌ただしい人だったわね……」
エリナがラファエルが去っていった扉を見つめながら呆れたみたいに言葉を零す。レオナも同意しているらしく頻りに頷いていた。
『私としてはラファエル殿に発表を任せた魔道具の制限事項を決めたかったのですが……』
コーゼストは困った様な顔でそんな台詞を宣う。いや、それは最初に決めとく事じゃね?
そして後日、ラファエルから無事に登録が済んだとの連絡があったのは言うまでもない。
訪問者はラファエルとノーリーンでした! それにしてもノーリーンがそんなに有名人だとは思いませんでしたが、ウィルの言う通り何故メイドさんなんかをやっているんでしょう?
何れにしてもコーゼストとラファエルの通名が決まりました! その名もフォールスェン・ジニア! 今後はコーゼストはラファエルと開発した魔道具でウハウハに……なる予定です。主にウィルが(笑)
△今日はもう一話、百十七話も投稿しています。そちらもお読み下さい▽
☆第47部本編四十四話にてイラストレーターnyazさん作のサブヒロインの1人ルアンジェのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆イラストレーターmanakayuinoさん作の婚約者の1人であるレオナ・シャルリムのイラストを載せました!manakayuinoさん、ありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




