確定するは、デレる嫁候補
本日は第百十七話を投稿します!
付き合いが浅い女性にいきなりキスされた経験はありますか? 私は勿論……ありません! まあそうした時は往々にしてトラブルに巻き込まれるんですけどね…… 。
▽本日はもう一話、第百十八話も投稿しています△
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「ウィル、レオナさん、そこに座って」
「お、おぅ」
「はい……」
アンの凍結地獄すら生温い全てを凍てつかせる冷たい視線に気圧され、土下座する俺とレオナ。アンの後ろには腕を組み、アンと同じく凍てつく視線を向けているエリナとルピィの姿が。そして何故かその傍にはルアンジェが居て無表情で俺をジッと見据えているし、何故か俺の背中にはヤトが抱き着いていた。何だ、この構図は?
「フェリピナやマルヴィナから事の次第は聞きました。先ずはウィル、何か言いたい事はあるかしら?」
「……イエ、ゴザイマセン」
そうなのだ。「魔王の庭」から戻って来てアン達と合流したのは良いんだが、俺がレオナに口付けをされた事をフェリピナとマルヴィナがエリナに話し、それがアンとルピィに伝わり今に至るのだ。
「私達は突然貴方の4人目の婚約者候補が現れようと驚いたりしないわ。と言うか、恐らくはまだ何人か増えそうだし」
アンさんが何やらとんでもない事を宣う。いやいや、俺は増やす気など毛頭無いんだが?!
「実際の話ベルタにユーニス、フェリピナやマルヴィナ、果てはスサナも貴方に気がありそうだし。まぁルネリートは未だ何とも言えないんだけど……あとアリストフは男の子ですし関係ないとして」
いやいやいや、アンさん、なぜいま何気にアリストフの名前を出したんだ!? そもそもこの話とは無関係だろが?!? 断っておくが俺には男色の趣味は1ミルトも無いからな!!
「しかし! キスを交わしたとなると意味は全く違って来るわ! そもそも私達3人の誰とも未だキスすらしてくれていないのに、何でレオナにキスを許したの?!!」
何かアンの怒りの方向があらぬ方向に向かっている気がするんだが?! だが怒り心頭のアンの話はまだ終わらない。
「その罰として、先ず今夜から私達3人の婚約者の部屋をひとりひとり順番に訪れる事! それと部屋に掛けている鍵は今後外しておく事! そして何より私達3人を良く構う事!!」
弁解する余地すら無く、一方的に有罪判決が下されてしまった。まぁ不可抗力とは言え悪いのは俺なんだが……にしてもいきなり高難度なクエストを義務付けないでいただきたいんだが?! 何となくこれは色々と危機感を感じる!
「わかりましたか?!?」
「ハイ……オオセニシタガイマス」
だがアンの迫力に気圧され反論出来ない、と言うか反論したらこれ以上の無理難題をふっかけられそうで怖い!
やっぱり俺の屋敷での家庭内序列は底辺なのか…… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そしてレオナさん」
アンの凍てつく視線と詰問が俺からレオナに移る。俺は相変わらずヤトに抱き着かれているが。
「これは大切な事。とても大切な事なので正直に答えてくれる? 貴女はウィルの事を好きなのかしら?」
そのストレートな問い掛けにレオナは俯いていた顔を上げると視線をアンに向け
「好きか嫌いかと言われれば好きだよ。知っての通りあたしは今まで幾つもの冒険者パーティーを渡り歩いてきたけど、ウィルみたいな男には初めて会ったんだ。リーダーとしても優秀だし、もちろん男性としても優良物件さ。優しいし、何より人に偏見を持たずに接してくれるし、こんなに『良いオトコ』は他にいないさね。それにあたしみたいな冒険者稼業はいつ死んでもおかしくは無いんだ。それなら自分が惚れた相手に対して変に遠慮する方が可笑しいさね。惚れたならとことん惚れる、まぁ相手には迷惑かも知れないけど、そうしてあたしは自分が今まで生きていた証を残したいのさ。それはおたくらも同じなんじゃないのかい?」
そう真っ直ぐに言い切った。そこには妥協も打算も一切感じさせない決意が滲み出ていた。その言葉を聞いたアンが不意に表情をフッと緩めると
「確かに……私もそうした思いはあったし今もあるわ。だからレオナさんのその気持ちも想いも良く判る」
今までの怒気を収めそんな風に理解を示す。そしてエリナとルピィの方に顔を向けると
「エリナ、ルピィ、私はウィルがいいと言うのならレオナさんを4人目の婚約者として迎い入れたいと思うんだけど、2人はどうかしら?」
改めて2人に尋ねる。と言うかアンが女性陣のリーダーで間違いないみたいである。
「私も構わないわよ。私も同じ想いがあるし、何と言っても私はウィルと知り合って1週間もしないで婚約したし……」
「あ、えっと、私も別に構いません。ウィルの事を好きな人が増えるのは良い事だから……」
アンに尋ねられエリナとルピィも納得したみたいに承諾するが……何でそんな話になっている!? と言うか話の方向性がいつの間にか変わっていないか?!?
「ねぇ御主人様、今度はレオナと番になる予定?」
ヤトは後ろから抱き着いたままそんな事を口走る。
ヤト?! 何でそんな直情的な事を言うのかな?!?
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「さて、ウィル」
俺が独り悶絶しているとアンが再び声を掛けてきた──それはもう真剣な表情で。
「聞いての通りレオナさんは貴方の事が好きだそうよ? 今度は貴方の偽らない本心を聞かせてくれるかしら?」
あまりにも真剣な瞳で見てくるアンを見て、俺も嘘偽りなく答える事にした。
「……正直に言うとレオナの事は気に入っている。少し大雑把な所はあるが、裏表が無い性格だし、何の気負いも無く話せるしな。だけどいきなり婚約者と言われると……今までそんな事を考えてもいなかったから戸惑いしか無い」
「そうよね、それが普通の反応よね」
俺の台詞を受け、フゥと小さく溜め息をつくアン。レオナはジッと俺を見つめている。
「では聴き方を変えるわ──好きか嫌いかで言ったらどうなの?」
「それなら──好きなんだと思う。少なくとも嫌う要素が無いからな」
「それなら迷う必要は無いんじゃない? 大体エリナとは出会って5日目で婚約したんだし、今回は1ヶ月以上経っているのよ? お互いを知る時間はエリナより沢山あったんだし、あとは貴方の覚悟だけ」
そこまで言うと沈黙するアン。
(覚悟──か)
俺は目を閉じ沈思黙考する。アンの時、エリナの時、ルピィの時、それぞれの時に思った事、考えた事を改めて思い出す。そして今回──レオナの事を。さっきアンに言った言葉には嘘偽りは無い。だとすると俺はレオナの想いに答えるべきなのでは無いか? 少なくともレオナを拒絶する要素などある訳も無く、俺は深い思考の中に光を見つけ目を開ける。
「──心は決まったかしら?」
俺の様子を見てアンが口を開く。エリナやルピィもこちらに注目している。少し気後れしそうになるが俺は意を決して言葉を紡ぐ。
「俺は──レオナの気持ちに応えたい。それは同情とかじゃなく純粋にレオナの想いに応えたいんだ。そこには好きだと言う気持ちは勿論ある。アンやエリナやルピィと同じ様に大切にしたいと思える人なんだ」
アン、エリナ、ルピィ、ひとりひとりの目を見ながら偽る事の無い気持ちを伝える。そしてレオナの方を向き直ると
「レオナ。俺は君を幸せに出来るかわからないが大切にする。それでも良いならアン達と同じ俺の婚約者になってくれないか? もちろん遠くない将来、ちゃんと結婚するのが前提だが」
俺の想いと決意を伝える。事の成り行きの急展開に付いて来れず、キョトンとしていたレオナは
「えっと、今のって告白なのかい? それとも求婚?」
いきなり再起動すると、目を見開きながら聞き直して来る。
「うん? もちろん求婚しているつもりなんだが?」
「えっ……? ほ、本当に? 本気で?」
「ああ、極めて本気だ」
俺がそう言い切ると日焼けした頬を真っ赤にし、急にモジモジしたかと思ったら
「えと、その、す、凄く嬉しいんだけど、言葉が見つからなくて……その、あ、あたしなんかでいいのかい?」
吃りながらも何とか言葉を発するレオナ。そのあまりにも可愛い様子を見て少しドキリとする。
「ああ、レオナさえ良ければ」
「え、えへへへへへへっ、よ、よろしくねウィル!」
そう嬉しそうに言いながら抱き着いて来るレオナ。一瞬アン達の表情が強ばる。
「お、おい、レオナ?!」
「えへへへへへへへへへ〜♡」
慌てる俺にお構いなく中々離れない! もしかしてこれってレオナの癖なのか? レオナの思いもよらぬデレデレぶりに困惑を深める俺とアン達なのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ごめんごめん。つい自分を抑えられなかったわ♡」
苦笑いしながら俺とアン達に向かい、謝罪の言葉を発するレオナ。興奮から覚めたら慌てて俺から離れた。聞けば昔から極度に興奮すると辺り構わず抱き着く癖があるのだそうで、今後注意が必要である。
俺は黄色い歓声と共にアン達に迎えられているレオナを見ながらそんな事を思ったりしていた。するとアンが
「なにはともあれ、こうして無事レオナを第四夫人として迎えられました。それで早速、先程ウィルに与えた罰について一部変更します」
満面の笑みを浮かべながらそんな事を宣う! いやいやいや、何だよ変更って!? そんな俺に構わずアンは言葉を続ける。
「先ず第一に今夜から私、エリナ、ルピィ、レオナの4人の部屋を順番に訪れる事。その際、ちゃんと私達1人ひとりにキスをする事。第二にウィルが部屋に掛けている鍵は外す事。その際、ちゃんと私達4人を受け入れる事。第三に今後私達4人を放置せずにちゃんと相手をする事、まぁこれは状況に応じてと言う事になるかしら?」
ひとつひとつ指折り数えながら罰則を口にするアン。何だかさっきより内容が増えてないか?! それにクエストの難易度が数段上がっているんだが?! 何だよキスって!?!
はっきり言って頭を抱えたくなるレベルの話だが、これも自身の不甲斐なさが蒔いた種なんだと思い諦める事にした。本当に最近状況に流されっぱなしだな………… 。
『お話しは済みましたか?』
俺がガックリと項垂れていると、今まで実体化を解いて黙りを決め込んでいたコーゼストが、再度実体化して話し掛けて来た。
「……お前は今の今まで何をしていたんだ?」
思わずジト目をコーゼストに向けながら詰問する俺。
『それは勿論、マスターの困惑する様を具に観察していました。何にせよ婚約おめでとうございます』
俺の詰問にしれっと答えるコーゼスト。その表情が如何にも楽しそうである。全く……「人の不幸は蜜の味」とは良く言ったもんである。
『それでレオナにお聞きしたいのですが──何故あの時マスターにキスをしたのですか? アン達から非難が殺到するのは目に見えていた筈なのに。何故です?』
抗議しようとした俺の事を無視して、コーゼストはレオナに質問をぶつける。そういや何でいきなりあんな事をしたのか、俺も聞きたいと思っていた! するとレオナは一瞬コーゼストを見つめると、苦笑いを浮かべながら答えだした。
「いやぁ、あの時はつい盛り上がっちまってさ……それに」
「それに、何だよ?」
レオナの答えの続きをジト目で促す俺。
「アン達はもうウィルとキスぐらい済ませているもんだと思ってさ。まさかウィルがこんな美人達に手を出してないとは思わなかったよ! んでさ、この分だと、その、よ、よ、夜伽とかもまだなんだよね?!」
そこまで答えると最後には顔を真っ赤にしてそんな事を宣うレオナさん。聞いていたアン達も一様に真っ赤な顔をしながら俺の方に視線を送ってくる。ルアンジェは顔に疑問符を貼り付けているし、ヤトに至っては「何だか楽しそうね!」と相変わらずの鷹揚である。
「わ、悪かったな! どうせ俺は惰弱だよ!!」
俺は女性陣の何とも言えない視線に精一杯の抗議の声を上げるのだった。
色々とアンから無理難題を押し付けられたウィル! そこはまあ自業自得ですけどね!
そして流れでレオナが4人目の婚約者となりました! 確か前にこれ以上婚約者を増やす気は無い! と言っていたのはどこのどなただったか…… 。
△今日はもう一話、百十八話も投稿しています。そちらもお読み下さい▽
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☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
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