夜討ち朝駆け、それと姦しい日々
本日は第百十五話を投稿します!
いつものように目覚めたらそこに居たのは…… 。以下は本文をお読み下さい!
▽本日はもう一話、第百十六話も投稿しています△
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「何だ……これ?」
屋敷の自室のベッドで目覚めると何時もの膝上の光景に違和感を感じた。ファウストとデューク、まずこれはいい。それとヤト、今日に限って何故かいつもの定位置から離れて寝息を立てている。それより重要なのは──
『スサナ──ですね』
コーゼストが膝上の違和感を指摘する。
「うにゃ……すぅすぅ」
俺の膝の上で丸くなって寝ている蒼灰色の髪の猫耳娘──スサナが目の前に居た。いやいや、何でスサナが俺の部屋の俺のベッドの上の俺の膝の上に居るんだ?!
慌てふためく俺とは対照的に猫耳をピクピクさせ気持ち良さそうに寝ているスサナさん。しかしこれは不味い! 侍女の誰かが起こしに来たら何を言われるかわかったもんじゃ無い!
「あのぉー、スサナさんや?」
俺は慌ててスサナの肩に手をかけると揺さぶる。
「んむぅ? あ、御主人様おはよ……って、どうかしたの?」
スサナを起こそうとしてヤトが目覚めた。ヤトは俺と膝の上のスサナを交互に見て声を上げる。
「あれっ? 何で猫がここに居るのよ?」
「そんなの俺が聞きたいわ!」
ヤトの台詞に思わず大声で突っ込むと「ふにゃ〜」と間延びした声を上げてスサナが目を覚ました。
「ふわァ〜〜、んんっ……あ、ウィルさん、おはようございますぅ」
丸まりを解き、身体を起こすと大きく伸びをしながら挨拶してくるスサナ。羽織っているシャツから零れそうになっている胸や、ずり落ちかけている下着から見えそうな尻を隠す事無く、にへらぁと笑いかけてくる。
「す、スサナさんや、その、い、色々見えてるンだが?」
「んん? あぁ、これですかぁ? 私、寝相悪いんですよぉ〜。だからいつもこんなになっちゃうんですよねぇ」
俺の指摘にも何ら何処も隠す事無く、えへへへ〜と笑うスサナ。
「そもそも何で俺の部屋にいる?!」
「えっとぅ、それが良く解らないんですよねぇ。私、確かに厠から自分の部屋に戻ったはずなんですけどぉ、また寝惚けたのかな?」
そう言って小首を傾げるスサナ。見ていて可愛い仕草ではあるが今は違うと思う。
「と、兎に角だ! 早く俺の部屋から出ていってくれないか?」
「あっ、はぁい。失礼しましたぁ」
俺の願いを聞いてベッドから降りると、ぺこりと頭を下げ部屋を出ていくスサナ──やれやれ。
「結局何しに来たの、猫は?」
「んなもん俺が知るか!!!」
スサナの後ろ姿を見送りながらヤトが聞いて来るが、そんな事を俺に聞かれても返答に困るわ!! いつの間にかファウストとデュークも起きてきたがキョトンとしている。ただベッドで寝ていただけなのに迷宮に何ヶ月も潜ったみたいに疲れたのは何故だ!?
『彼女は以前、蟻亜人の街ガナンでも似たような事をしていましたね』
コーゼストが何やら思い出したみたいに忘れていた昔話を口にする。
俺は怒涛の如く過ぎ去った嵐の様な展開に、開いた口が塞がらなかった。
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早朝からの騒動にげんなりしながら皆んなで朝食を食べる。
基本うちの屋敷では朝起きる時間は特に取り決めていないンだが、何故か申し合わせたみたいに毎朝ほとんどのメンバーが、決まった時間に食堂に顔を出すのだ。お陰で料理長のジアンナは同じ時間に料理を準備すれば良いので助かっているらしい、と家令のシモンが言っていた。
「どうかしたの、ウィル? 朝から疲れているみたいね」
「うんにゃ、何でもない」
「?」
俺の左側が定位置のアンが、俺の顔色を見てどうしたのかと訊ねて来るが、言葉を濁しておく事にした。間違っても今朝の一件を話す訳にはいかないのだ! 一方の当事者であるスサナはフェリピナやマルヴィナ、そしてルネリートと談笑しながら食事を食べていた。
今ふと思ったんだが、そもそもスサナの部屋は3階なのに何でわざわざ2階の俺の部屋に来たんだ? しかも鍵を掛けてあった筈なのに?! 間違えたにしても違和感が半端ない!!
『そう言えば確かに…… 。間違えたにしては無理がありますね』
コーゼストも念話で感じた疑問を宣う。だがそれを声にして問う訳にもいかない!
(意外とわざと、だったりしてな……)
もしそうだとすると……スサナはあれで居てかなりの策士なのかも知れない。
『何方にしても要注意ですね』
『そ、そうだな』
コーゼストの注意喚起にしどろもどろで答える。そのうち毎晩押し掛けられたりでもしたら堪ったもんじゃ無い!
鍵、今度から2つに増やすか…… 。
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「格の確認、ですか? ギルドで確認して来ればいいんですか?」
皆んなが食事を終えるのを見計らって俺が、皆んなのレベルを改めて確認したい旨を告げると、ベルタが不思議そうに尋ねて来た。聞いていた皆んなも不思議そうである。
「いや、実はコーゼストには見ただけで相手のレベルが判る機能があるんだよ。それを使って確認したいんだ」
そう言うと皆んな「ああ」と納得していた。そもそもレベルと言うのは各国あちこちの街にある冒険者ギルドの鑑定板と言う魔道具で確認するもので、コーゼストみたいにレベルを簡単に見る者自体稀有なのだ。皆んなが納得していたのは「コーゼストだからアリ」と言う理由に他ならない。
そしてその結果でコーゼストの共生化の組織網に低レベルのメンバーを優先的に組み込む事も併せて説明する。もちろんその理由も併せて、である。因みに今まで念話での連絡網もネットワークと言っていたが、これを機に組織網をネットワーク、念話による連絡網をコミュニケーションと言い換える事にした。そうしないとややこしいからな。
「そう言う事なら是非ともよろしくお願いします!」
皆んなを代表してベルタが元気良く了承の意を声にする。他の皆んなも一様に頷いていた。
「良し。それならコーゼスト、皆んなの許可も出た事だし早速頼む」
『わかりました』
コーゼストは俺の顔の前に進み出ると皆んな1人1人に視線を向け
『──確認しました。現在マスターはレベル74、アンはレベル72、エリナはレベル71、ルアンジェはレベル72相当、ベルタはレベル70、ユーニスもレベル70、フェリピナはレベル66、マルヴィナはレベル67、レオナはレベル68、ルネリートはレベル49、スサナはレベル41、アリストフはレベル39ですね。スサナとアリストフは1つレベルが上がっていますね』
確認した結果を報告してきた。相変わらずの速さで何よりである。
『『『『おお〜!』』』』
コーゼストの報告を聞いて皆んな大興奮になる。それはとりあえず無視して
「すると、優先的に組み込むのは──」
『低い順からだとアリストフ、スサナ、ルネリート、フェリピナ、マルヴィナ、レオナですね』
俺がふむ、と思案顔をすると、結果を答えるコーゼスト。
『勿論皆さん全員は念話の連絡網に組み込みます。将来的には組織網にも組み込む予定です』
続けてベルタ達皆んなにも、その計画である事を伝えるコーゼスト。
『『『『おお〜〜!!』』』』
それを聞き、更にハイテンションになるベルタ達一同。正直これ以上は収拾がつかなくなるので、コーゼストに全員の連絡網への組み込みと、アリストフ、スサナ、ルネリート、フェリピナ、マルヴィナ、レオナの6人の組織網への組み込みを手早くやらせる。
『──完了しました。これでレオナ達は共生化の恩恵を受けられます』
コーゼストの言葉を聞き「おお〜」と何故か拍手喝采する一同。
君達、本当にノリが良いな…… 。
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「随分と大勢で来たもんだな」
「何かすまん」
慌ただしい朝食会を終え、ドゥイリオのガドフリー武具店に皆んなで押し掛けた。全員の武具を出来る限り新調する為にである。エリナの「どうせなら皆んな、防具とかの色とか形とか誂えてみたいわね」と言うひと言が発端であった。それでどうせなら良い武具を誂えた方がいいだろうと思い、俺が皆んなを引き連れてきたのである。
「……にしても皆んな女かよ」
「1人、男がちゃんと居るんだが?」
アリストフが気付かれていない…… 。
「とりあえず急がないから全員分の防具を頼む。武器に関しては俺とアンとルアンジェ以外のメンバーのを揃えたい」
「するってぇと、とりあえずは半誂えで良いか? 付与魔法までとなるとそれなりに時間が掛かるが、この方が手っ取り早い」
俺の要望を聞き、それに見合う案を提示して来るドゥイリオ。
「当面はそれでも良いが……出来れば全員のを全誂えにしたいんだ。付与魔法はコーゼストがいるから良いよ」
「わかった! そんじゃ早速……おい、グードゥラ! この嬢ちゃん達の三位寸法を測っといてくれ! 暫く大仕事になるぞ!」
あちらの案を受け、こちらの案を伝えると早速行動に移るドゥイリオ。こうした所は流石である。向こうの方では奥さんのグードゥラがメンバーの1人ひとりを並ばせ早速スリーサイズを測りだした。それは構わないのだが、何で一々測ったサイズを口にする?! 気になって仕方ないわ!!
と、とりあえず意識を切り替えて、ドゥイリオと細かい部分の打ち合わせをせねば──!!
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ドゥイリオとは綿密な打ち合わせをし、特に全員の防具はクランの名前になぞらえ「黒」で誂える事にしたのだが、これはメンバー複数からの要望でもあった。そらまぁ『神聖な黒騎士団』と名乗っているのに白とか蒼とかだと統一感が無くて締まらないからな。
先ずは先行で誂える半誂えの防具から黒に統一してもらう事を頼み、ガドフリー武具店を後にすると西区から一旦屋敷に戻るべく第三層区画へと向かう。その道中── 。
「しっかし、改めて思うんだけど……本当にうちのクランは待遇が良いよね! やっぱりリーダーのウィルが面倒見が良いからかな!」
「そうです! 私もそれは良く感じます!」
唐突にレオナがそんな事を言い出し、ベルタがそれに賛同し、他のメンバー達も一様に頷いている。
「何だなんだ、本当に唐突だな?!」
一方の俺は出し抜けにそんな事を言われ、目を白黒させてしまう。何でもレオナが言うには、他のパーティーやクランでは大体リーダーが男性の場合、メンバーの女性の待遇は決して良いものでは無いらしい。実力が有れば大丈夫なのだが、例えばパーティー内での報酬の分配の割合が低かったり、苛めや虐待、果ては夜伽の相手をさせられる事さえ有るのだそうだ。それはそれで酷い話である。
「そこに行くとうちのリーダー様は女性に優しいから安心だね!」
レオナさんがやたら高評価をしてくれるが、俺はこれが普通だと思ってやっているだけなんだが? だがレオナの台詞にベルタ達一同が大きく頷いている。
「そうですよねっ。それにウィルさんって賭け事も全くしませんし……真面目な人ですよねっ!」
ルネリートもそんな事を宣う。いやいや、何時も迷宮で命を懸けているのに、何で金まで賭けにゃならんのだ?
「ぼ、僕は、分け隔てない人だと思います!」
アリストフ君、キミもかい…… 。そもそも差別なんてのは偏見や不満から来るもんだが、俺は偏見するほど自分が特別だとは思った事なんか無いし、今に不満を感じる様な事も無いからな。
「そうなんですよねぇ、ウィルさんって陽だまりの様な良い匂いがするから好きなんですよねぇ」
そしてスサナさんや、何なんだその表現は?! 俺は君の昼寝する布団じゃないんだが?!
だがそれ等の意見にも大きく頷く一同。
「ハッ?! これってもしかして、理想的な結婚相手になるのかな?!」
ハッと気付いたみたいにそんな事を口走るレオナさん。いやいやいや、何を口走っている?!
「「「「ですよね〜♡」」」」
更にそれに同調するベルタ達! そしてこちらに熱い視線を向けて来る。ルネリートとスサナも何となく頬を赤らめこちらをチラチラ見ているし!?
「「あらあらウィル、あと何個指輪が必要になるのかしら?」」
片やアンとエリナからは凍結地獄級の冷たい視線を浴びせられる!
『これは──近々修羅場になりそうですね』
コーゼストは俺の横で浮かびながら何やら愉しげに不穏な台詞を声に出す。
いやいやいやいやいや、これまでも今後も嫁さん候補を増やす気は毛頭無いからな!!!
今回はとある日常を書いてみました! 何と言うか、スサナはスカウトですので解錠のスキルはありますが、わざわざウィルの部屋の鍵を開けて侵入しているんですかね? だとしたら何と言うスキルの無駄遣い(笑)まあ今の環境は女性比が圧倒的に高めなので仕方がないかと思うんですけどね。
△今日はもう一話、百十六話も投稿しています。そちらもお読み下さい▽
お読みいただきありがとうございます!




