新参者達と拳妃とコンプリートネス
本日は第百十四話を投稿します!
新メンバーと共に迷宮「魔王の庭」に潜るウィル達『神聖な黒騎士団』。勿論新メンバーの腕試しであります。
▽今日は第百十三話も投稿しています△
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「おりゃーーーーー!!!!!」
掛け声一閃、レオナの右の拳が梟熊の腹に突き刺さる!
「グガッ?!」
堪らず腹を押さえ呻くアウルベア! だがレオナの攻撃はまだ終わらない! その頭を両手で抱えると
「シッ!!」
短い気合と共に左膝の蹴りが繰り出され、アウルベアの頭を打ち砕いた! 大きな音を立てて頽れるアウルベアの身体!
「ふぅ……」
「流石だな、大したもんだ」
構えを解き、額の汗を拭いながら息を吐くレオナに声を掛ける俺。ここは「魔王の庭」第五階層。新メンバー加入から5日経ち、俺はアン、エリナ、ルアンジェと共に、レオナ、アリストフの実戦での力を見る為に潜っていた。俺達との連携についても見る為ではあるが、同時に格上げも兼ねているのだ。
「まぁアウルベアぐらいならね、こんなもんさね。それに」
そう言うと後ろに視線を送る。視線の先には槌矛を前に掲げ常時回復を発動させているアリストフが居た。
「あの彼が一生懸命支援してくれたからね。お陰で攻撃に専念出来るのさ!」
そう言って呵々と笑うレオナは中々の姉御ぶりである。今回は氏族を俺達のチームとベルタ達『戦乙女』の2チームに分けて別行動とし、新メンバーは俺達の方にレオナとアリストフ、『戦乙女』にはスサナとルネリートが割り振られていた。その方が効率的に格上げも出来るだろうと思ったからである。
「アリストフもお疲れ様。しかし常時回復が使えるとはな」
「本当に凄いわね、森精霊でも常時回復を使えるのは数える程度なのに」
俺もアンも感心した面持ちで後列のアリストフに声を掛けると
「あ、ありがとうございます! でも僕はこれしか使えなくて……」
そう言って少しはにかむ様な顔をするアリストフ。だがそれにコーゼストが異を唱えた。
『それは違います。そもそも常時回復とは魔力を多く消費する魔法です。それを連続使用出来るアリストフさんは、並の魔法士より魔力量が多いのです。それこそ誇るべき事かと』
その意見にアリストフは目を白黒させている。
「すると……アリストフの魔力量ってのはどの位あるんだ?」
『簡易測定ですがアンの2倍はあるかと』
「「「「ヱッ?!」」」」
コーゼストの台詞に俺とアン、レオナとアリストフの目が点になる。
『恐らくは先に師事された魔法士──この場合神官職の方ですが、教え方が下手だったのでは? 私なら上手く教える自信があります』
続くコーゼストの台詞にいち早く反応したのはアリストフ、俺の横でふよふよ浮いてるコーゼストに迫ると
「よ、よろしくお願いします! コーゼストさん! 是非僕に教えてください!!」
コーゼストの体をガッシリ掴み懇願する。あまりの勢いにコーゼストもタジタジである。
「まぁ、なんだ。アリストフの事はコーゼストに任せるわ」
『!? そんな事言わないで助けてください、マスター!』
アリストフに必死の形相で迫られているコーゼストが助けを乞うが、言い出しっぺのお前が何とかしろ! 片やレオナは事の成り行きに付いていけず硬直していた──何かすまん。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コーゼストがアリストフに絡まれているのを尻目に、俺は腰袋からゴソゴソと魔道具を取り出す。コーゼストがラファエルと協力して作った遠方対話機である。大きさは水晶地図板より細身で、手に収まる大きさである。良く解らないが3種類の魔水晶で構成されていて、それぞれ相手の声を再生する部分、相手に声を伝達する部分、そしてそれ等を制御する部分に別れているらしい。
とりあえずうちの氏族の間で使う分で4台作り、グラマス殿とギルマスの分として2台作っておいた。グラマスとギルマスには後で渡す予定であるが、後々には氏族のメンバー全員分を揃えるつもりでいる。
ふと思ったんだが、これ2人以上同時に話したら会話出来るのか? 一度試してみるか…… 。
そんな事を思いながらも遠方対話機を起動させると釦を押しベルタを呼び出す。少ししてテレ・チャットからベルタの声が聞こえる。
『はい、ベルタです!』
「あーっと、ウィルだ。そっちの状況を教えて欲しい」
向こうの方から「キャー、ウィルさんの声が聞こえるわ♡」と何やら歓声が聴こえるが無視する。
『あ、はい! こちらは現在第四階層の凡そ3分の1ほどです。今の所問題ありません』
「そうか、スサナとルネリートはどうだい? 上手くやっているか?」
『それは大丈夫です。魔物との戦闘ではなるべくトドメを刺すのをやらせてます』
「わかった、それなら大丈夫そうだな。それじゃあそのまま進んでくれ。何かあったら連絡を」
『わかりました! ウィルさん達もお気をつけて!』
「ああ、ありがとう。それじゃ」
話を終えアンやエリナ、レオナ達の方に顔を向けると声を掛ける俺。
「聞いての通り、向こうは向こうで頑張っているらしい。こちらも先に進むぞ」
皆んな「了解!」と声を揃えて返事を返す。ふと気が付くとアリストフとコーゼストの話はどうやら纏まったらしく、コーゼストはゲンナリした顔をこちらに向けていた。
たまには良い薬である。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その後、数度の戦闘を繰り返しながら第五階層を俺達は進んでいった。そして──
「グルウゥゥゥゥォーン!」
「エリナ、ルアンジェ、止めてくれ!」
「ええ!」
「ん」
前方から襲い掛かる上位狗人の群れにエリナとルアンジェが突っ込む! エリナは身体強化を既に唱えており、ルアンジェは何時も通りの足捌きを駆使し、2人ともハイコボルトの群れを攪乱する! 俺も迅風増強を発動させてハイコボルトの攻撃をカイトシールドと歩兵剣で受け止める!
その俺の身体を迅風増強とは違う輝きが包む。アリストフの常時回復の輝きだ。俺だけでなくエリナも淡い輝きに包まれている!
(良い判断だな、アリストフ)
俺はハイコボルトの剣を押し戻し、その剣を持つ手を歩兵剣の切っ先を返し深く切り裂く! エリナもルアンジェも同様にハイコボルトの腕や脚を切り裂き深手を負わせる!
「うおぉぉぉぉーーーーー!!」
背後から雄叫びが聞こえる! 俺達同様に輝きを纏ったレオナが突っ込んで来た! そして繰り出したのは
「『破砕掌』!」
掌の付け根の硬い部分をハイコボルトの狗顔の突き出た顎目掛け鋭く打ち出す、いわゆる掌底突きである! レオナの掌底突きを食らったハイコボルトの顎は砕け、後頭部が爆ぜる!レオナは躊躇する事無く、次々とハイコボルトを餌食にしていく!
その背後から襲い掛かろうとしていたハイコボルトの何匹かは、後ろに控えるアンのリュシフェルに撃たれ呆気なく絶命した! 気付けば10数体居たハイコボルトは尽く光の粒子になって消えて行ったのであった。
「──ふぅい、やれやれ」
ハイコボルトの全滅を確認して、油断無く残心を解いたレオナは大きく息を吐き、アリストフも同様に緊張感を解いていた。
「こうして見るとレオナはかなり良い所まで行っていると思うんだが……コーゼストはどう思う?」
俺は肩の上に座るコーゼストに尋ねると、コーゼストは即座に答える。
『はい、レオナさんは現在格は68、アリストフさんは格38、ベルタ達の方に居るスサナさんは格40、ルネリートさんは格が49ですね。因みにマスターは現在格74、アンがレベル72、エリナが71、ルアンジェはレベル72相当、ファウストとデュークはレベル73で、ヤトがレベル75でスクルドがレベル70です。それと報告ですが──私のマスターへの侵食率・同化率共に100パーセントに達しましたので、マスターが指定する複数人を共生化の組織網に組み込む事が可能になりました。おめでとうございます』
……皆んなの格は兎も角、何なんだ最後のは?!
「……お前、今の今までその事を言わなかったよな?」
『まぁ、同化が完了したのは3日前でしたし最終調整に手間取りましたので。それにしても意外と冷静ですね? マスターの事なので罵詈雑言を浴びせられるかと思いましたが』
肩の上でキョトンとした顔でこちらを覗き込むコーゼスト。如何にも不思議そうである。
「まぁ……最初の頃はお前を外したくて仕方なかったが、今は構わないかなと……単なる心境の変化さ」
事実である。今でこそ俺の左腕にコーゼストが居るのに、何ら不自然さを感じないからだ。
『ふむ……ではそう言う事にしておきましょう』
「何だ、その喉に小骨が引っ掛かっているみたいな言い方は?」
『いえ、別に。他意はありません』
議論になりそうな所をコーゼストが先に矛を収めてくれたので正直助かった…… 。まぁ単に説明するのがめんどくさいだけなんだけどな。
俺がそんな事を思っているとは露知らずコーゼストが聞いて来る。
『それはそうと、どうしますか? 共生化ネットワークにレオナさん達を組み込みますか? そうすればネットワークに組み込まれた人のレベルの値が大幅に向上します。そうなれば短期間での格向上も容易です。但しマスター自身が戦闘しなくてはなりません。マスターやアン達が得る経験値の何割かを格が低いメンバーに分配される形になりますので』
それはつまり全員で戦えば戦うほどレオナ達が受け取れる経験値は、自身が稼いだ分+俺達から送られる何割かと言う事になり、それこそあっという間にレベルが上がると言う事なのだろう。俺は少し考えて
「んー、そこは屋敷に帰ってからだな。どうせネットワークに組み込むなら一度ベルタ達のレベルも見てから誰を優先的に組み込むか考えないとな」
コーゼストにそう告げる。どうせやるならキチンとした方が断然良いのだから。
『わかりました。そこの判断はマスターにお任せします。それでマスター──』
コーゼストが珍しく言い淀む。
「ん? 何だ?」
『皆さんの事を等閑にされているのにお気付きですか?』
「あ……」
コーゼストの指摘に慌てて皆んなの方を振り向くと、アンとエリナは生暖かい視線を向けていてレオナ達は何とも言えない顔をしていた。ルアンジェは俺の視線に気が付くと「終わった?」と小首を傾げて尋ねて来る。
「あーっと……皆んなすまん!」
俺は皆んなに全力で謝罪する。その様子を見て
「何と言うか、ウィルってすぐにコーゼストと話し込む癖があるわよね」
「確かに……私も前から気になっていたんだけど……もしかして1人の期間が長かったからかしら? そう言えばルピィが『ウィルはぼっちを拗らせかけたから人と話すのが苦手』とか言っていたわね」
エリナが疑問を呈し、それに偏見タップリの答えを返すアン。そしてルピィよ、なに女性同士で話している時にそんな事を宣った!? と言うか勝手に人をぼっちにするんじゃない!! そらまぁ成りかけていたけど!!
1人で憤っていたら、アンが顔を赤らめながら
「だ、大丈夫よウィル! い、今は私が貴方の傍にいるんだから! ね♡」
「ああっ! 狡いわアン! ウィル、わ、私も傍にいるからね♡」
いつの間にか甘い言葉を口にする2人。はっきり言って惚気全開である。
「この流れだとあたしもそこに参加しないと駄目かな?」
一連の話を聞いていたレオナが胸を腕で寄せしなを作り、にやにやしながらそんな台詞を口にする。
頼むから悪ふざけしないでください、レオナさん!!
なんと言うか、ハイレベルなメンバーが集まりました! 特にレオナが際立っています。これはかなりの戦力アップですね! 勿論アリストフ君も際立っていますけど!(笑)
*遠方対話機…………コーゼストとラファエルが共同開発した通信機、トランシーバー。切り替える事で複数のチャンネルを使える。
*破砕掌…………レオナの武技のひとつ。いわゆる掌底打ちだが、破壊力抜群。
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近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
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