氏族『神聖な黒騎士団』
本日は第百十話を投稿します!
クランを拓く事にしたウィル。まずはギルド職員であるルピィの説明が入ります。
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「では改めて、氏族について私から説明しますね」
場所を大広間に移し氏族を拓くに当たっての話を続ける。ここからは現役の冒険者ギルド職員であるルピィに話してもらう事にする。
「まず氏族を拓くに当たって前提条件が2つあります。第一に元になる冒険者パーティーのクラスがAクラス以上である事。第二に構成員数が六名以上である事。ウィルがエリナのパーティーと1つになって氏族を拓く場合、最初に述べた前提条件は満たしている事になるので問題無いですね! あとは新しく拓く氏族の氏族名を決めるくらいかな?」
ルピィが説明し終えると周りにいる皆んながどよめく。流石はギルドでギルマスの秘書をしているだけの事はある。しかし氏族名かぁ…… 。
「ん」
どうしようかと思っていたらルアンジェが手を挙げる。
「どうした、ルアンジェ?」
「ん、ならその氏族名も皆んなで考えれば良い」
ルアンジェ、良い提案だ! ルアンジェの意見を聞いた皆んなも目を輝かせている。
「それなら」
俺は傍にいたディナールに頼み、書斎から皮紙を何枚かとペンを何本か、そしてインクを持ってきて貰い
「これにそれぞれが考えた氏族名を書いて発表しよう」
と全員に声を掛ける。皆んなはそれぞれ皮紙とペンを手に取り考え始める。これで俺の負担も減ると言う訳だ。
『また上手く丸投げしましたね』
「合理的だと言えよ」
コーゼストのツッコミに平然と受け答えする俺。
さてと、俺も考えるか…… 。
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暫くして──
「それじゃあ、皆んなが考えた氏族名を発表するぞ。それを全て読み上げた後に多数決で決める事にしよう」
皆んな一様に頷いてくれる。さて、先ずは……
『漆黒の天鶴』
から始まり
『古参の妖精』
『原初の遺産』
『涅色の聖騎士』
『無彩色の騎士団』
『聖白の堕天使』
『高潔な黒薔薇』
『神聖な黒騎士団』
『栄光ある伯爵』
となっていた。因みに『涅色の聖騎士』は俺が書いたのであるが。それにしても皆んな結構ノリノリで氏族名を考えたな、俺もだけどな!
「良し! それじゃあ多数決を取るぞ。先ず『漆黒の天鶴』から……」
そうして多数決の結果、決まったのは────『神聖な黒騎士団』であった。考えたのは剣士のユーニスである。因みに次点は女神官マルヴィナの『聖白の堕天使』であった。
兎にも角にもこれで氏族名も決まった事だしギルドに行って登録しないとな。
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「……話には聞いていたが本当に3人と婚約したんだな…………」
「それが何か問題があるのか?」
久しぶりの冒険者ギルドの執務室、久しぶりに会ったギルマスが呆れたみたいな物言いをしてきて、つい突っかかってしまう俺。大体これに関しては俺が一番驚いているのだ!
「……まぁそれはそれとして、氏族を拓くと言う話だが……」
「ああ、俺のパーティー『黒の軌跡』とエリナのパーティー『白の一角獣』を1つに纏めて氏族にする気なんだが……それこそ何か問題があるのか?」
「特には無いんだが……とにかく手続きなら王都ギルド本部でしてきた方が良いぞ。グラマス殿に言えばそれこそ直ぐだからな」
ギルマスの言葉に成程と思う。確かにその方が速そうである。
「わかった。それならグラマス殿に頼んでくるよ」
俺が納得して返事を返すと「そうしろ」と素っ気なく返事をするギルマス。
「全く……お前がルピィと婚約した事が広まったら何人かの男性職員と冒険者が寝込んだんだぞ」
「そんな事言われてもなァ」
それこそ単なる言いがかりである。
「そのうち『俺と決闘しろ!』と行くかもしれんがそっちで何とかしろ! 俺を巻き込むな!」
「えらく物騒な話だな!?!」
俺の傍ではルピィが「私を巡って、け、決闘とか♡」と1人身悶えしていた。ルピィよ、君は自分が思っていた以上にモテていた事を自覚した方が良いぞ。
『人の事は言えませんよね? マスター』
コーゼストから突っ込まれてしまった──すんません。
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兎にも角にもラーナルー市の冒険者ギルドから転移陣で王都ノルベールのギルド本部に来た。
「成程、氏族を拓くんだね」
グラマス殿にもギルマスと同じ様に話をし、グラマスはすぐに納得してくれた。
「確かに。何れウィル君とエリナ君が結婚してからよりは、その方が誰にとっても良いかもね。わかったよ、そうしたら直ぐに手続きしようじゃないか!」
グラマスはそう言うと秘書を勤めている女性職員に、二言三言何かを告げると秘書は部屋を出ていき、やがて戻って来た彼女の手には1枚の皮紙と何枚かの黒い金属製の認識札が握られていた。するとグラマスは徐ろに引き出しから魔法陣が刻まれた台を執務机の上に出し、俺達の視線が置かれた台に集まる。
「これは認識札の焼付け台さ。氏族証明用のね。そして──」
そう言うとグラマスは黒い金属の認識札を手に取ると俺達に良く見える様にして
「──これが剛鉄製の氏族専用認識札さ。氏族の認識札は僕が自らの手で焼き付けるんだよ」
そして秘書が持ってきた皮紙を拡げるとペンにインクを付け尋ねて来る。
「それじゃあ早速始めようか。氏族名は決めて来たのかい?」
「ああ、それなら決めて来た。『神聖な黒騎士団』と言う名なんだが」
「成程……『神聖な黒騎士団』、と…………」
グラマスは俺から聞いた氏族名を皮紙に書き込み、続けて俺達全員の名前と職業と階級を書き込み台の上に乗せ、更にその上に8枚の認識札を並べると台の左右の隅に両手を乗せると魔力を注ぐ。台から淡い光が一瞬溢れたかと思ったらすぐに収まり
「よし、焼き付け終わったよ。これで事実上7番目の氏族の誕生だ」
グラマスが終了を宣言し焼付け台の上に置かれていた認識札を俺達1人1人に手渡した。認識札には1枚1枚に氏族名とそれぞれの名前と職業と階級が刻まれていた。
「これからはその認識札を肌身離さない様にね。今まで使っていた星銀の認識札はこちらで回収するから」
全員に渡し終えたグラマスがそう促し、俺達は首に掛けていた鎖から前の認識札を外し、新しく剛鉄の認識札を通すと外した認識札をグラマスに手渡した。
そして皆んな、自分の首に掛かる剛鉄の認識札をしげしげと眺め、口々に嬉しさを表現している。
「これが氏族の証明か……」
俺も認識札を眺めながら感慨深げに呟く。
「これとは別に神鉄の認識札も有るんだけどね……それこそ「英雄」や「勇者」の為の認識札さ。まあ今まで使われた事は無いけどね」
俺の呟きに答える様に隠された事実を話すグラマス。元々そんなに「英雄」や「勇者」と呼ばれる存在がホイホイ居た訳でも無く、魔王が討伐されてから現在に至る歴史の中で「英雄」と呼ばれた人物は4人、「勇者」は魔王討伐後は今だ現れていなかった。
「まぁそのうちウィル君なら「英雄」ぐらいにはなるかもしれないんだけどね。そうしたらまた僕が神鉄の認識札を焼付けしてあげるからね」
爽やかな笑顔でそんな事を宣うグラマス。いやいやいや、そんな大層なのになる予定は無いから!
『でもマスターは幼少期には勇者になりたかったのでは?』
コーゼストがグラマスの真似をして爽やかな笑顔で突っ込みを入れてくる。いや、あの頃は子供特有の万能感があったから大言壮語していただけなんだが?!
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「それはそうと」
何やら思い出したみたいにグラマスが話し掛けて来る。
「ウィル君は新しい氏族構成員を募集しないのかい?」
「? 何だそりゃ?」
いきなりの話に疑問をぶつける俺。するとグラマスは納得したみたいに
「ああ、ウィル君達は知らなかったのか。今までの慣例で新しく拓いた氏族は記念として構成員を何人か募集するんだよ。主な目的は今までいなかった職業もしくは技能持ちを獲得する為なんだけどね」
それを聞いた俺に雷撃の様な衝撃が走った! これぞまさに天啓であると!
『男性メンバーを1人でも入れられば、この氏族がマスターの后宮だと揶揄される事も今後ありませんね、マスター』
俺の考えを読んだのか、コーゼストが念話でそんな事を話してくる。これは獲るしかない!
「それなら……俺達も募集してみるか」
そう言いながら俺は俺の氏族に足りない戦力を考える。
「そうね……やっぱり斥候かしら?」
俺の声にアンが考えながら答える。確かに現状では斥候が出来るのは技能持ちの俺だけだしな。
「あと格闘士や拳闘士とかも!」
「あと出来れば回復を使える人があと1人居て欲しいです」
エリナとマルヴィナも思い思いを口にする。確かに近接戦闘に特化した人が1人ぐらい居ても良いだろうし、回復役もあと1人居ればマルヴィナの負担も少なくて済む、か。
「それと槍士も居ると良いと思います」
「そうね。中近距離の戦闘力が有ると攻防に幅が出るからね」
ベルタとユーニスも自分の希望を述べる。弓士であるアンが魔導小火砲の装備で遠距離支援になったから中近距離の戦闘力が有った方が確かに良い。
「あ、あと! アンさんと同じ弓士や盾役になる人も居れば良いんじゃ無いでしょうか!?」
フェリピナも私見を口にする。その辺りの立ち位置はゴーレムのデュークが賄っていたが、やはり居ると居ないのとでは違うのも確かである。それにフェリピナと同じ魔法要員にはヤトも居るしな。しかしアンと同じ長距離支援はあと1人居ても良いかもしれない。
それにしても改めて考えてみると結構人材不足気味だったみたいである。まぁ今までは各々で複数の役目を兼任していたんだが、エリナ達の合流で少しはそれも解消されると思う。
だがそれでも1つの技能に特化した人の能力は飛び抜けて高い事も事実である。問題は何人募集するか、である。俺は暫し熟考すると
「それじゃあ今回は斥候と格闘士か拳闘士の何れかと、弓士と回復役の4人を募集しようと思う。出来れば男性に来て欲しいんだが」
俺が「男性」と言った瞬間、アンやエリナやルピィは怪訝な面持ちになったが、俺としては自身の男の矜恃より実利を取りたい!
「ん、周りが女性ばかりだとウィルが色々困る……と思う」
そんな微妙な空気の中、なんとルアンジェが気を利かせて援護してくれたのだ! ルアンジェの台詞にアン達はハッとしたみたいで、俺に生暖かい視線を向けて来る。その視線に薄っぺらな矜恃がチクリと傷付いたが、俺は実利を取りたい! 大切な事だから何度でも言う!
そうして俺達『神聖な黒騎士団』は新規メンバーの募集をする事になった。
後日、各地のギルドには募集が殺到したらしい──何でだ?!
無事に(?)クラン『神聖な黒騎士団』が発足しました! 何となく名付けの際に厨二病全開なネーミングが並んでいましたが(笑)
それにしても男性メンバー加入にこだわるウィル! どうか察してあげてくださいね!
▽次回から4月始めまでこの「俺ヒザ」は二話ずつ更新します! お読みになる際はご注意ください。
☆第47部本編四十四話にてイラストレーターnyazさん作のサブヒロインの1人ルアンジェのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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