完璧家令とスタッフ雇用 〜氏族の鼓動〜
本日は第百九話を投稿します!
屋敷の準備と3人目の嫁候補も決まったウィル。いよいよ新居での生活が始まります。そして大きな屋敷の管理の為に人を雇います。今日はそんなお話です。
-109-
贈られた星銀の婚約指輪が輝く右手を目の前に翳し、うっとりするルピィ。
「これでルピィも晴れて俺の婚約者になった訳だな」
「はい! ありがとうございますウィルさん♡」
そんな言葉を掛ける俺にはにかんだ笑顔で答えるルピィ。
「おめでとう、ルピィさん」
「おめでとうございます、ルピィさん!」
「おめでとう、ルピィお姉さん」
「「「「おめでとうございます、ルピィさん!」」」」
そんなルピィに祝福の言葉を贈るアン・エリナ・ルアンジェ、そして『白の一角獣』のメンバー達。
「はい! 皆さん、よろしくお願いします! それと……私の事はルピィで良いですからね!」
ルピィは満面の笑みを見せ、皆んなに向かい頭を下げると一言付け加え、皆んなもそれに頷く。
「改めて宜しくな、ルピィ。アンやエリナにも言ったんだが……必ず幸せにするとかそんな陳腐な事は言わないが、後悔はさせないつもりだ。それと俺の事はウィルと呼び捨てで構わないぞ」
「は、はい! えっと、う、ウィル♡」
水色の瞳をクルクルさせながら俺の名を呼ぶルピィ。その表情はなかなか可愛らしい。
『これで后宮まっしぐらですね、マスター』
肩の上のコーゼストがボソリと呟いた。
それを言わないでくれ、コーゼスト!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんなこんなの出来事が過ぎ、屋敷への引越しの日を迎えた。尤もアンやエリナは旅鞄5つ程の荷物量だったので引越しはあっという間だったが、一番引越し荷物があったのはルピィであったのは仕方のない事か。
それも一段落つく頃1人の老紳士が屋敷を訪れた。
「お初にお目にかかります。シモン・ユーグと申します。使用人ギルドから参りました」
見事な白髪の紳士が綺麗な礼を執る。
「良く来てくれた。歓迎するよ」
「いらっしゃい。あなたが家令を勤めてくださる方ね」
俺とアンが紳士に応対する。彼はこの屋敷を内覧した後に使用人ギルドに寄って依頼しておいた家令である。
「何卒宜しくお願い致します、旦那様、奥方様、コーゼスト様」
「お、おう、だ、旦那様か……」
「え、えっ? お、奥方様なんて……」
『私も少し変な感覚ですね』
「貴方様は国王陛下から伯爵を叙された御方、その御方を旦那様と呼ぶのは普通でございます。またこの屋敷の主人でも在らせられる御方ですので。また貴女様は旦那様の御伴侶で在らせられる御方、奥方様と呼ぶのは当然でございます。勿論コーゼスト様も国王陛下から男爵を叙されておりますので敬称でお呼びするのが当然でございます」
さも当然のように言い切る家令シモン。旦那様は兎も角、アンとは婚約しただけであって結婚は未だなんだが? その事をシモンに告げると「ではアン様で」とそこは折れてくれたが、旦那様に関しては「慣れていただくしかございません」と押し切られてしまった。
これは慣れるしか、無い……のか? 因みにコーゼストは「たまにはこうした呼ばれ方も良いですね」と御満悦であった。
とにかく皆んなに声を掛け大広間に集まってもらいシモンと引き合せる。エリナやルピィは勿論、ファウストやデュークにヤトも交えてである。ファウストやデュークには微動だにしなかったシモンも、流石にヤトを見て一瞬動揺を見せた。それでも平静さを失う事は無かった事に感心した。その辺はやはり一流の本職である。
当然ちゃんとエリナとルピィの事も婚約者だと紹介し、それぞれに「エリナ様」「ルピタ様」とシモンに呼ばれ2人とも身悶えしていた。因みにルアンジェの事は「ルアンジェお嬢様」と呼び、ルアンジェがちょっぴり嬉しそうな顔をしていたのは秘密である。それとベルタ達の事は「〜さん」と言う呼び方に落ち着いた。
「早速ですが旦那様」
皆んなとの紹介を終え、シモンが俺に話し掛けて来る。やっぱり旦那様は聞き慣れない…… 。
「皆様のお世話をするに当たって先ずは執事以下使用人を決めたいのですが、私にお任せ願いますか?」
「使用人かぁ……何人ぐらい雇う事になるんだ?」
「そうですね……執事に家政婦長、料理長に厨房係に侍女若干名に従僕2名で……15名と言う所でしょうか」
「それくらい雇う事になるか……」
「旦那様方は冒険者でも在らせられるので、これでもだいぶ簡略にしました。とりあえずこの人数でやってみて様子を見たいと思います」
少し不安はあるが、ここは本職のシモンに一任する事にした。既に使用人ギルドには手配済なのだそうだ。明日にでも必要なスタッフは揃いそうである。
何とも頼もしい家令が来てくれたものだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日は皆んな自身の部屋を生活出来る様に片付け終えた。家令になったシモンの部屋は三階の大階段の直ぐ前の部屋に決まった。「ここなら直ぐに動けますので」とはシモンの弁である。そして翌日── 。
目の前には15人の男女が一堂に会していた。
「旦那様、彼等が新たに雇い入れた者達です」
シモンがそう彼等を紹介すると
「執事のディナール・ニーンと申します」
「家政婦長のタティアナ・ルネーです」
執事のディナールと家政婦長のタティアナが先ず挨拶をして来る。ディナールは30代後半、タティアナは30代前半か。
「料理長のジアンナです」
「厨房係のカミロです」
料理長のジアンナと厨房係のカミロが続けて挨拶をして来る。何と料理長は女性であった。ジアンナがタティアナと同じ30代前半、カミロは20代後半みたいである。
「あとは侍女のマリアン、フィリス、アンナ、レイラ、ケイト、フアナ、カルラ、リア、ラナ」
『『『『『よろしくお願い致します』』』』』
「それと従僕のアントンとロニー」
「「よろしくお願いします!」」
あとに続いてシモンが侍女達と従僕達を紹介する。
「うん。皆んな、これからよろしく頼む」
「「「皆さん、よろしくね!」」」
全員の紹介を受けて俺とアン、エリナ、ルピィが答礼をする。すると「よろしくお願いします、旦那様、アン様、エリナ様、ルピタ様」と見事な重奏で一斉に挨拶された。なかなか壮観である。
「それで旦那様、執事のディナールと家政婦長のタティアナはお屋敷内に部屋を宛がっていただきたいと思います。またマリアン、フィリス、レイラはお屋敷の近くに住んでいるので通いで勤めてもらうつもりです」
シモンが居住まいを正し、そう進言して来る。
「わかった。それじゃあそれ以外の人達には、庭の離れで暮らしてもらうとするか」
そうなのだ。この屋敷の広い敷地には離れが2つ建っていて、うち1つの離れは二階建てと大きく部屋数も12部屋あるので十分事足りるだろう。
「では其方の部屋割りはジアンナに任せます。宜しいですね?」
「はい、シモンさん。お任せ下さい」
離れの部屋割りを指示しようと思っていたら、シモンが住み込み組の年長者であるジアンナに先に指示を出した。そして俺の方に向き直ると
「では旦那様、私は彼等を離れまで案内してまいります」
会釈をしつつそう告げると颯爽と先頭に立ち、ジアンナ以下の使用人達を離れに案内していった。
「本当に頼もしい家令ね。屋敷暮らしって不安だったけどこれなら安心出来るわ」
エリナが率直な感想を口にする。アンやルピィも同様に頷いている。
これからはシモンの事を完璧家令と呼ぶ事にしよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして3週間が経ち、屋敷での生活にも慣れ始めて来た──と言っても、俺の寝室のベッドの上では相変わらず子犬形態のファウストとミニゴーレムのデュークと何故かヤトが俺の膝の上を取り合っていたのだが。特にヤト、お前は自分の部屋があるだろう?!
「おはようございます、旦那様」
ひとつ変わった所は毎朝メイドが起こしに来てくれる所だ。
「ふあぁ……ん、おはよう、今朝はケイトか……」
しかもこちらも日替わりである。
「クゥーン」
「…………」
「んむぅ? ふぁぁ、あ、おはよぉ〜」
そしてほぼ同時に膝の上の3匹も目を覚ます。
「はい、おはようございます。ファウスト、デューク、ヤト」
一番最初の頃は起こしに来たメイドが俺の部屋のベッドの惨状(笑)を見て硬直したりもしたが、皆んな直ぐに慣れてくれたのは有難かった。
起きて直ぐに階下に降り洗面場で顔を洗う。因みにこの屋敷がある第三層区画は、水道が整っていて水道栓さえ開ければ手軽に綺麗な水が何時でも飲めるのだ。顔を洗い終えてから部屋に戻り手早く身支度を整え、食堂を兼ねた晩餐室で朝食を食べ始める。程なくしてアンとエリナとルピィとルアンジェが一緒に晩餐室に降りてきた。
「「「「おはよう、ウィル」」」」
「ああ、おはよう。アン、エリナ、ルピィ、ルアンジェ」
そんな挨拶を交わすと4人はそれぞれ席に座る。俺のすぐ右手にアンが左手にエリナが、ルピィはエリナの左手側にルアンジェはアンの右手側に座るのがいつの間にか定位置になっている。座った4人に直ぐ食事が配膳されると、次いでベルタ達『白の一角獣』のメンバーが起きて来て席に着く。
「「「「ウィルさん、おはようございます」」」」
「ああ、おはよう」
そしていつも最後にはヤトがノロノロ現れる。
「ふぁ〜、皆んなおはよう……」
「ヤト……お前、俺と一緒に起きているのに何時も一番遅くに来るな?」
「ん〜? あ〜、あのあと自分の部屋で二度寝してるの〜」
うちの蛇姫様は悠々自適、もとい自堕落な生活を送っているらしい。
陽射しで身体が温まればスッキリ目覚められるんじゃ無かったのか?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
恒例行事になりつつある朝食を慌ただしく終えて、俺は執事のディナールが淹れてくれた香茶にひとくち口を付けてから、皆んなに声を掛ける。
「あーっと、皆んな聞いてくれ」
その一言で思い思いにお喋りしていた皆んなの視線が俺に集まる。ただ1人ヤトだけはステーキをおかわりしているが。
「なぁに? ウィル」
アンが代表して口を開く。どうやらこのメンバーの中では家庭内序列が一番高いのはアンらしい。
「うん、実はこの前から考えていた事があって……それを相談したいんだ」
「なに? 考えていた事って?」
これはエリナ。香茶を一口飲みながら尋ねて来る。
「えっとな、回りくどい事は嫌いだからはっきり言うと、俺はオレのパーティーの『黒の軌跡』とエリナのパーティー『白の一角獣』で氏族を拓こうと思うんだ。勿論アン達やエリナ達が良ければ、なんだが」
「氏族を作りたい理由を聞いても?」
俺が言い終えるとアンが質問して来る。まぁ当然聞くよな…… 。
「理由は……先ず俺がエリナと何れ結婚するのが第一だな。結婚すればエリナは俺達のパーティーに加入する事になるんだろうが、エリナの『白の一角獣』のメンバーをどうするかと言う話になる。俺としては折角知り合いになった彼女達が俺の結婚の所為で離れ離れになるのは忍びない。ならばいっその事氏族を拓こうかと思ったんだ」
俺が理由を述べると聞いていたベルタ達『白の一角獣』のメンバー全員が瞳を潤ませて俺を見詰めて来る。そんなに見詰めないでくれ! 尤もらしい理由を言ったがその実、このままなし崩し的に后宮になるのが嫌なだけなんだよ!
俺が心の中で身悶えしているとアンが納得したみたいに口を開く。
「そう言う理由なら私は賛成するわ。エリナはどうかしら?」
「まさかウィルがそこまで考えてくれていたなんて思わなかったわ……勿論私は賛成よ。いえ、むしろこちらからお願いしたいわ!」
アンがエリナに話を振るとエリナは感動したみたいに両手を胸の前で組み、俺を熱く潤んだ瞳で見詰めて来る。ベルタ達の方を見やると全員から大きな声で「よろしくお願いします!」と懇望されてしまった。ま、まぁ、反対されるよりマシであるが…… 。
『まあ「沈黙は金」と言いますからね』
肩の上に座るコーゼストがしれっと念話でそんな事を宣う。
そもそも氏族拓こうと提案したのはお前なんだが?! こっちは尤もらしい理由を考えるのが大変なんだよ! 全く…… 。
完璧家令シモンの登場です! これで屋敷の管理は任せて安心です! そして15人ものスタッフも雇い入れる事になったウィル。まぁ稼いでいますから何ら問題はありませんね!
いよいよ次回はクランを作ります!
☆第47部本編四十四話にてイラストレーターnyazさん作のサブヒロインの1人ルアンジェのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
こちらも是非御一読下さい!




