新居は后宮の始まり
本日は第百七話を投稿します!
騒動を見事に収めたウィルに嬉しい話が! そして相変わらずトラブります(笑)
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「何だって?」
「だから国王陛下がウィル君に屋敷を下賜されるんだって」
天蠍の起こした騒動から1ヶ月後、グラマス殿に呼び出されたと思ったら第一声がこれである。
「また、いきなりだな……」
「この前の騒動がひと通り解決したので、今回最大の功労者であるウィル君に褒賞を与えようと言う話になってね。伯爵位を賜っている上位貴族なのに屋敷のひとつも無いのはおかしいだろ? だからこの際、拠点になる屋敷を与えよう、と言う訳さ」
「俺はそれよりも今回の騒動の当事者がどうなったか気になるんだが」
「それは勿論、君達にも知る権利があるからね」
笑顔を崩さず宣うグラマスの話によると──ネヴァヤ女史とグラマスが2人で今回の件を非常事態としてコーゼストが回収した動画と共に世界評議会に連絡した所、直ちに世界評議会はツェツィーリア共和国を招聘、事実確認を行った結果グァンズと言う人物が特定されたのだそうだ。
何でもグァンズことグァンズ・ド・ソーケルはツェツィーリア共和国の伯爵で鉱物資源大臣政務次官と言う地位に就いていたのだそうだ。それで今回の件はこのグァンズ伯爵が、蟻亜人達の街ガナンに大量に眠っている鉱物資源とガナンがあるゼフィロ山の利権を狙い、独断で一連の騒ぎを起こしたのだと、ツェツィーリア共和国元老院は世界評議会に正式に説明し、グァンズ伯爵の伯爵位を剥奪、即日処刑したとの事だった。元老院としての謝罪は無かったそうだ。因みに天蠍の処罰は冒険者ギルドに一任されたそうだ。
「まぁ実の所はツェツィーリア元老院の高官や上位貴族達が一枚噛んでいたのは天蠍のメンバー全員が口を揃えて証言しているんだけどね。でも一介の冒険者の証言如きでは確たる証拠にはならないらしい。結局今回はツェツィーリア共和国に厳重注意と再発防止策の提示と罰金処分に落ち着いたよ」
「……何ともあやふやな決着だな」
「まぁ世界評議会はまだ発足したての組織だから権限が少ないんだよ。そこは今後の課題だね」
俺の憮然とした物言いに苦笑いを浮かべるグラマス。アンもエリナも同様に憮然としている。国の政には興味など無いが、それでも己の欲の為に知性のある生命を弄んでいい訳が無い。
まあヒト同士でさえ国と言う括りの違いで仲違いしているのが多いんだけどな…… 。
「それと例の生産設備の情報流出だけど、王都ギルドで手配した生産設備の職員の1人が金を貰い、彼らの方に情報が流していたのが判明したよ。こちらも既に処理したから安心してくれたまえ」
やはりと言うか、何と言うか……どうしても情報ってのは漏れるんだな。まぁどう処理したかは敢えて聞かないが…… 。
「さて、この話はここまでと言う事で……ウィル君の屋敷の話に戻ろうか!」
パンッと手を叩き、話を切り替えるグラマス。そういやそんな話をしてたっけ。
「その下賜される屋敷は何処に在るんだ? まさか王都じゃないよな?」
屋敷を貰うに当たって一番懸念している事をグラマスに尋ねる。王都に屋敷を貰ってもアドルフィーネが毎日突撃訪問して来そうで安心して暮らすに暮らせない! 後ろではアンやエリナ達も心配そうだ。
「その辺は大丈夫! ちゃんとラーナルー市にある屋敷にしてもらったからね。妹君に毎日突撃訪問されたら困るだろうしね!」
ニコリと満面の笑みでそう宣うグラマス。それを聞いて胸を撫で下ろす──流石グラマス、いい仕事をする。
「それでいつ国王陛下に拝謁するんだ?」
「2日後に簡単な授与式が執り行われる事になっているよ。だから今日明日は王都に泊まってもらいたいんだ」
「わかった」
それなら──今回は良い契機だろうし、有難く頂戴させてもらうとするか。
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それから2日後、王城にて俺は屋敷を下賜された。授与式はエリンクス国王陛下とジュリアス殿下とマウリシオ宰相の3人のみの簡素な式で、屋敷の目録と鍵を国王陛下から直に手渡されたのだ。その際国王陛下からは「近々時間を取って今回の冒険譚を聞かせて欲しい」とお願いされたのは秘密である。まぁマウリシオ宰相は気付いていたみたいであるが…… 。
またそれとは別に俺には支度金として白金貨10枚が、アン達とエリナ達にも白金貨がそれぞれに1枚ずつ授与されたのである。
何とも貰い過ぎだと思うんだが口には出さない。
そして── 。
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「ここか……」
あれからラーナルー市に戻り、目録に書かれていた屋敷に来た。城塞都市ラーナルー市の第三層区画北街区、所謂高給取りの高位冒険者や神官や一部の貴族が住む住宅街にその屋敷はあった。ラーナルーでは滅多に無い三階建ての大きな屋敷だ。正門の鍵を開け敷地内に入る。
「ふわぁ……大きなお屋敷ねぇ」
エリナが俺の傍で唖然としながらそんな言葉を漏らす。そんなにポカンと口を開けたままだと折角の美人が台無しになるぞ。
俺としてはこれを機にエリナとも同居しようと思っているんだけどな! 向こうもその気だし…… 。
「何でもこのラーナルー市に嘗て赴任していた都市開発監督官の伯爵が暮らしていた屋敷だそうだ。本人はここの開発が一段落したのち陞爵して王都に戻ったらしい」
そんな事を言いながら屋敷の玄関に向かって歩いていく俺達。これだけ敷地が広いとファウストやデュークが走り回っても余裕がありそうである。途中にある庭園を横目で見ながらそんな事を思う。
玄関に着くと渡された鍵を使い開錠して玄関の扉を開ける。目の前には吹き抜けの広い玄関ホールとその中央には大階段が。天井から下がる大燭台は開け放たれた玄関から入る陽の光にキラキラ輝いている。
「全部で何部屋あるのかしら?」
古ぼけた絨毯の上を歩きながらアンが聞いて来た。俺は手渡された目録に目を落とす。
「えっとな、一階には大広間、晩餐室、応接室、居間、書斎、図書室、調理場、大浴場があるみたいだ。二階には主寝室とか夫人の寝室とか化粧室とか主客房とかの私的空間になっていて、三階は客房が主みたいだな。ゲストルームは全部で30部屋あるな!? あと地下には貯蔵庫もあるみたいだ」
「「そんなに?!」」
目録を読み上げていた俺も驚いたがアンもエリナも揃って驚いている。これって本当に貰ってもいいのだろうか? 少し心配になる。
『まあ、いつまでも玄関ホールに居ても仕方ありませんですし、まずは実際に部屋を確認して見ては如何ですか?』
「お、おう」
あまりの事に呆然としていたらコーゼスト先生から責付かれてしまった。
「ま、まぁ、コーゼストの言う事も一々もっともだし、ここは各自好きな様に屋敷の中を見て回るとするか。見終わったら大広間に戻って来てくれ」
「ええ、それで良いわ」
「どんな間取りかしらねぇ」
「ん、楽しみ」
「ホント楽しみ〜♡」
「「「「見させていただきます!」」」」
俺の言葉を受けて皆んな銘々に別れた。
さて、俺は何処から見るかな………… 。
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皆んなが屋敷の中に散ってから2時間後、てっきり俺が先かと思ったのだが大広間にはルアンジェが先に居た。
「ルアンジェ、もう見終わったのか?」
「ん、全部の部屋の寸法は記憶したから大丈夫」
聞けばひと部屋辺り2分掛けて見て回ったらしい。ルアンジェにとってはこれでもゆっくり見てきたのだそうだ。俺は一階を中心に見て回り、あと二階の私的空間は主寝室等をざっくり見てきただけである。
「それで……どの部屋にするのか決めたのか?」
「アンとエリナが決めてから決定する」
そう尋ねる俺に一言答えるルアンジェ。中々の気遣いが出来る娘である──自動人形だけど。
そんなルアンジェと話していたらアンとエリナが何事かお喋りしながら大広間に入って来た。
「あ、ウィル、ルアンジェ、先に戻っていたの?」
アンがたおやかな微笑みを浮かべた顔で尋ねて来る。
「ああ、見たい場所は決まっていたからな」
「おかえりアン、エリナ」
俺は返事を返し、ルアンジェは大広間に戻ってきたアンとエリナに言葉を掛ける。
「はいただいま、ルアンジェ」
「ただいま。ルアンジェはもう部屋を決めたのかしら?」
「ん、2人が決めたら決めるつもり」
そんな会話を3人でしているとベルタ以下『白の一角獣』のメンバーが戻って来た。
「「「「ただいま戻りました」」」」
相変わらず綺麗な調和である。
「おかえり。内覧してどうだった?」
「いや〜、色々見応えがありました!」
俺の問い掛けにベルタが代表して答える。ユーニスやフェリピナ、マルヴィナも「素敵でした」と口々に言っている。これはこれで良しかな?
最後にヤトが「う〜ん、あの部屋にしようかしら? いや、でもあそこの部屋も捨て難いし……」と頭を悩ませながら戻って来て、これで大広間に全員集合した。
「さて、と。これで皆んなひと通り見て回ったと思う。それでそれぞれどの部屋にするのか聞かせて欲しいんだが?」
皆んな揃った所でそう切り出す俺。アンやエリナ、ルアンジェやヤトは今にも言いたそうに目を輝かせて、ベルタ達は目を見開いて驚いている──そんなに驚く事だろうか?
「あ、あのウィルさん。私達もここに住んでも良いんです……か?」
ユーニスが手を挙げおずおずと尋ねて来る。
「ん? 別に構わないぞ? そもそもこんな大きな屋敷、俺のパーティーメンバーだけで住むには広過ぎるしな。それに──これを機にエリナとも同居しようと思っているし、何より本人がその気だしな。そうなればエリナのパーティーメンバーの皆んなとも同居した方が何かと都合いいだろう? いつまでも女性だけで宿屋暮らししている訳にもいかないだろうしな」
俺の言葉を受けて顔に喜色を浮かべるベルタ達『白の一角獣』のメンバー。それを見ていたコーゼストが俺の右頬をツンツンと啄く。
「何だ、コーゼスト?」
『マスター、まさか后宮をお作りになるつもりですか?』
「いや? そんな気はさらさら無いが?」
『しかしエリナのみならずエリナのパーティーメンバーとも同居となると──これは紛ごうことなき后宮になりませんか?』
「……えっ?」
コーゼストの指摘に一瞬頭の中が真っ白になる。俺はただ何れアンとエリナと結婚して一緒に暮らす事になるんだから、この際エリナとも同居しても構わないかなと思っただけで、それなら『白の一角獣』のメンバーとエリナが一緒に暮らせれば何かと都合がいいんじゃないかと思って同居を勧めただけであって、別に『白の一角獣』のメンバー達を娶るつもりは毛頭ないんだが………でもこれって未婚の女性複数人と同居するのだから傍から見たら后宮に見えるのか?!
俺は自分でも気付かないうちに后宮を自らの手で作ろうとしていた事に気付き、あまりの事に意識が飛びそうになった。
コーゼストに向けていた顔をぎこちなく動かしてベルタ達を見やると「どの部屋にしようかしら♡」と嬉しそうに燥いでいる姿が見えた。これは今更言い直せる雰囲気では無い!
俺が事態の深刻さに顔を引き攣らせていると
『本当に……我がマスターは女性の事に関しては残念なヒトですね』
コーゼストが溜め息混じりにそんな事を呟く。
「そんな事言ってもなぁ……」
仕方ないだろ?! 不慣れなんだから! そもそもそんなのに慣れていたらいたでトラブル一直線だわ!
『仕方ありません。この状況を打破する方法が1つあります』
『教えてください、コーゼスト先生!』
呆れ顔をしながら念話でそんな事を宣うコーゼストに渇仰する俺。割と──いや、かなり必死である。
『それは──氏族を拓く事です。冒険者ギルドの規則にはAクラス以上の冒険者でメンバーが6名以上で氏族を拓く事が出来るとなっていました。マスターは十分に資格を有しています。それなら后宮と言われる心配もありません』
そうドヤ顔で言い張るコーゼスト。
氏族かぁ……確かにそれなら后宮とか言われないだろうが……正直めんどくさい。
でも……それしか無い、か…………はァ…… 。
俺は色々諦めの境地で、皆んなにどう話を切り出すか考えあぐねていた。
国王陛下から屋敷を賜ったウィル! そして知らず知らずハレムを作ろうとしていた自分に戦慄していましたが、それってもっと早くに気付くべきでは?
いずれにしてもコーゼストの提案にすがりつくウィル。これが新たなトラブルに(笑)
*白金貨→金貨100枚分の価値。日本円に換算すると1000万円。つまりウィルが国王陛下から賜ったのは〆て1億円也!
☆本編十三話にてイラストレーターnyazさん作のヒロイン・アンヘリカのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さい!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
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