密謀の決着 〜捕縛劇と世界評議会〜
本日は第百六話を投稿します!
いよいよ実行犯達に肉薄するウィル達! お待ちかねの戦闘シーン入ります!
*一部残酷な表現があります。ご注意ください。
-106-
目の前の光が薄れ視界が鮮明になる。
俺達は魔導人工頭脳「アルカ」の在る最下層から一気に蟻亜人の転移陣がある部屋に転移してきた。
本来、転移と言うのは転移陣同士の間でのみ移動が可能なのだが、アルカは『混沌の庭園』内限定ではあるが、転移場所さえわかっていれば何処にでもヒトや物を転移させられるのだった。今回はアルカのその機能を使わせてもらったのだ。
「──本当に便利だよな、これ」
俺が独り言ちると、コーゼストがそれを受け
『元々アルカは迷宮管理用の魔導人工頭脳ですからね。この様な機能は標準装備なのでしょう。まぁ転移の術式は解析したので何時でも魔道具で再現可能ですが』
そんな事を宣う。そういやコーゼストは知らない魔法でも一度見れば解析出来るんだったな──と言うか後で魔道具を作る気満々かよ?!
『では早速、周囲の生命探査を開始します』
当のコーゼストはしれっと周囲を調べ始めると、程なくして結果報告してくる。
『──周囲200メルト四方の探査完了。周辺の生命反応は15。うちヒトの反応は3。位置から見ても天蠍だと思われます。蟻亜人の街ガナンに通じる転移陣のあるこの部屋は認識阻害の魔道具で厳重に隠されていますからね。奴等も特定出来ずにウロウロしているみたいです──マスター、何やら言いたそうですが?』
「うんにゃ、何でもない」
ジト目を向けてくるコーゼストに思わず言葉を噛む俺。慌てて咳払いすると
「と、兎に角だ! 奴等がこの場所を特定する前にカタを付けたいが……」
話を思いっきり逸らす。すると女性陣からは
「背後から掃討する?」
「強襲してグゥの音も出ないほど叩きのめす?」
「ん、一気に殲滅」
「どんな奴等も抹殺するだけよ!」
なかなか物騒な文言が聞こえて来た。まぁ俺としてもそれには文句を言うつもりは無い。だが……
「今回は殺しは無しだ。奴等をなるべく生かして捕らえる事が目的だからな。まあ骨の一本か二本ぐらいは構わないだろうけどな」
皆んなを窘める俺。奴等の背後を叩く為にも絶対捕らえないとな。
「さて、どの様な作戦で行くか……」
『──それに対し提案があります。マスター』
どうするか少し考えあぐねているとコーゼストから真逆の提案である。一体なんだ── ?
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「おい、まだわからないのかよ?!」
「そんな事言ってもよォ……おかしいな、この辺のはずなのに」
「なァ、グァンズ様から渡された地図が間違っているんじゃねぇ?」
「クソ! ここまで来て……!」
目の前の3人組が何やら揉めているみたいである。さっきから怒鳴り散らしているのがリーダーのジェイデン・ヘルナンデスか?
「早いとこ、このスライムを化け物蟻の巣穴に投げ込んでとっとと帰りたいぜ」
3人の後ろで紫色の塊がグニョグニョ蠢いている。どうやらアレが暴喰者らしいな。それにしてもとんでもない事を言ってやがるな、こいつら!
『気付かれていないな……流石はフェリピナの迷彩だな』
『それほどでも……あります♡』
『うふふふふウィル、そのうち婚約指輪が増えそうね♡』
『『『いいな〜フェリピナ……』』』
『マスター、エリナ、皆さん、ちゃんと仕事をしてください』
グダグダ揉めている天蠍の後ろに付いてゆっくり歩いている俺達。フェリピナの迷彩で全員姿を隠して行動していた。今の念話は俺から順にフェリピナ、エリナ、『白の一角獣』の残りのメンバー、コーゼストである。
俺とエリナは兎も角、『白の一角獣』のメンバー全員もコーゼストが念話の連絡網に組み込んでくれたので出来る事なのである。そのコーゼストは妖精モードを解除している。
『ウィル、そろそろ良いんじゃないかしら?』
アンが念話で確認してくる。転移陣がある部屋から充分距離が離れていて、しかもほぼ直線の通路である。
『よし、アンは後ろから距離を開けて魔導小火砲を準備。ベルタとユーニスとヤトは奴等の背後から強襲、倒す必要は無いぞ。その間に俺とエリナとルアンジェは前に回り込む。フェリピナは魔法の準備。マルヴィナはベルタ達に聖魔法を──行くぞ!』
先ずはマルヴィナが聖魔法を唱え、ベルタ達とヤトが天蠍の背後から襲い掛かる! ベルタとユーニスが声を上げて斬りかかった!
「たぁ!」
「とぅ!」
声を出すと同時に迷彩が解除され姿が顕になる2人に驚くジェイデン達3人!
「な!?」
「ど、何処から現れた?!」
天蠍の2人と切り結ぶベルタとユーニス! 残されたジェイデンは我に返ると切り結んでいるベルタに剣を抜いて斬り掛かる!
「させないわ!」
掛け声と同時にジェイデンの剣が何かに止められる! 驚くジェイデンの目の前には薙刀で剣を受け止めるヤトが姿を現した!
「く!? ま、まさか隠蔽か?!」
一瞬混乱状態になるが、直ぐに立て直す天蠍。曲がりなりにもAクラス冒険者の事はある。それとこの魔法は迷彩であって隠蔽では無い。
「Eater, defeat the enemy!(暴喰者よ、敵を倒せ!)」
暴喰者に命令をするジェイデン! だがこちらも対策済である!
『アン!』
『任せて!』
後方で距離を取っていたアンの魔導小火砲から黒い光が撃ち出され、ベルタ達やユーニス達の間をすり抜けて暴喰者を撃ち抜く! ヤトに襲い掛かろうとしていた暴喰者はビクリとすると、そのまま縮んで動かなくなってしまった!
アンが使ったのは「Dark Ray」、闇属性の属性弾倉である。後からわかったのだが、この弾倉で放たれる黒い光はヒトや魔物を一時的に衰弱させる効果があったのだ。今回はその効果を存分に発揮させて暴喰者を黙らせたのだった。
「な、なんだと?!」
切り札の暴喰者を止められ、慌てるジェイデン達! そのままベルタ達と切り結ぶのを止め、踵を返して一目散に駆け出した!
彼等天蠍は「逃げ」に徹した冒険者パーティーだった。誰よりも「逃げ足」には自信があったみたいである。今度だって逃げ切れると踏んだのだろうが、その考えは脆くも崩れ去った。何故なら奴等の目の前には俺とエリナとルアンジェが待ち構えていたからである。
その事実に気付いた時、ジェイデン達は絶望を顔に貼り付けながら剣を振りかざし、闇雲に斬り掛かって来た──が、それだけであった。
最初に斬り掛かって来たジェイデンと対峙した俺は斬撃を刀剣で受け、剣を腕ごと上に跳ね上げると胸当ての護ってない胴目掛け、切り返した刀剣の峰を勢いよく打ち込む! 肋骨が折れる音がして、ジェイデンはその場に崩れ落ちた。エリナとルアンジェと対峙した2人はそれぞれ片腕や手首を切り飛ばされ戦闘不能になり抵抗をやめていた。
何とも呆気ない幕引きであった。
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天蠍の3人を縛り上げ、デュークに纏めて運ばせる事にした。切り飛ばした腕や手首はマルヴィナの魔法で止血してあるし、ジェイデンの方は痛み止めのみに留めてある。まぁ全く痛くない訳では無いみたいで、偶に呻き声が聞こえるが無視する。
そのまま迷宮を出て非常用転移陣を使いシグヌム市の冒険者ギルドに天蠍を連行する。
「皆さん、ご無事で何よりでした!」
転移陣の前にはネヴァヤ女史が数人のギルド職員と冒険者が出迎えに来ており、俺達は彼等に天蠍を引き渡す。
「確かに身柄を受け取りました。あとはこちらで取り調べます──さあ、歩け!」
冒険者達に囲まれ連行されて行くジェイデン達天蠍。それ等を見送りながらネヴァヤ女史が口を開く。
「さて、本当にご苦労様でした。お疲れでしょうが向こうでお話しを聞かせてください」
そう言って執務室に誘うネヴァヤ女史。俺達はあとについて行き、中であらましを全て話した。
「なるほど……アルカに協力を仰いだのですか。だからこれほど迄に迅速だったんですね。それにしても危なかったですね」
話が終わるとネヴァヤ女史はしきりに感心していた。まぁ実際の所、転移陣のある部屋の直ぐそばまで来ていたのだが、天蠍の奴等に斥候の能力持ちが居なかったのが幸いした。
「まぁ、コーゼストが気付かせてくれたんだけどな」
俺の言葉を受け、肩の上でドヤ顔を決めるコーゼスト。正直うざったい。
「それと──奴等の会話にツェツィーリアの貴族らしい名前が上がっていた。確か、グァンズとか言っていた」
「グァンズ、ですか……それは大変貴重な情報です。早速『世界評議会』からツェツィーリアに確認してもらいます」
天蠍の奴等から聞いた名前を告げると、ネヴァヤ女史は前のめりになり聞き慣れない名前を口にする。
「何だ、世界評議会って?」
「ああ、ウィルさんにとっては初めて聞く名前ですね。世界評議会と言うのはこの大陸にある各国の代表と森精霊族が文字通り評議する集まりの事です。前身組織はアンさんも御存知かと思いますが、蟻亜人の件で最近ヒト族と森精霊族と我々冒険者ギルドの正式な共同組織として発足しました。未だ全大陸の全ての国が参加している訳では無いんですけど……。因みにツェツィーリアは蟻亜人の一件では当事国であり、今回評議会にも暫定的に参加しています」
ネヴァヤ女史が淀みなくスラスラと説明をしてくれた。その内容のあまりの規模に思わず言葉を失う。どうやら俺達が知らない所で俺達ヒト族とエルフ族との間では昔からそうした話し合いが持たれていたらしい。
「アンは知っていたのか?」
俺は傍に居るアンさんに質問する。
「ええ、知っていたわ。その昔、魔族の侵攻によりヒト族とエルフ族が滅亡の危機に瀕した後、ヒト族の王族とエルフ族の長老達が話し合いを持った、それが世界評議会の前身ね。私もその話し合いで決まった、観測者と呼ばれる1人なの。再び脅威が芽を吹くのを事前に防ぐのが私の役割」
そう質問に答えたアンは少し気不味そうな顔をして謝罪の言葉を口にする。
「ごめんね、ウィル。こんな重要な事を今まで黙っていて」
「いや……そもそも聞かなかったのは俺だし、アンが気に病む事は無いから。それより大丈夫なのか? そんな大役を担っているのに俺と結婚しても……」
そう言いつつも、つい余計な事を聞いてしまう俺。そんな俺の台詞にアンは
「大丈夫。そもそも森精霊は長命種だし、いざと言う時に与えられた使命を果たせれば問題無いわ。それにヒトでも森精霊でも侏儒でも男性との結婚はオンナにとっては吉事であり一番望ましい光景なのよ」
柔らかに微笑みながら慈しむ様な声で答える。
「そうよウィル。結婚って女性みんなの夢なんだから♡」
いつの間にか傍に来ていたエリナがアンの言葉に同調する。本当にアンもエリナも俺にとっては過ぎた女性達である。
「あなた達は本当に仲睦まじいですねぇ」
俺達の様子を見てネヴァヤ女史がそんな事を宣う。どうやら俺達はいつの間にか自分達の世界に入り込んでいたらしい。慌てて居住まいを正す俺達を楽しそうに見詰めていたネヴァヤ女史は徐ろに
「コホン、まあ兎も角この件に関してはウィルさんも関係無い訳ではありませんし、曲がりなりにも伯爵位を賜っている貴族なのですから、何れ世界評議会から声が掛かるかも知れません」
そんな物騒な事を言ってくる。出来れば世界評議会とは関わりあいたくないんだがな…… 。
『どうやらマスターはあらゆる人達から注目される運命なのですね』
コーゼストが肩の上でクスリと笑いながら不吉な事を口走る。
俺はただ静かに暮らしたいだけなんだが……はァ………… 。
言い忘れたが捕獲した暴喰者はちゃんと生産設備に戻したのは言うまでもない。
戦闘シーン、少なかったですか?
それでもウィル達は無事事件を解決に導きました! そんななか世界はウィル達が知らない所で色々動いているみたいで、その一端を知るウィル。最後はイチャラブでした!
☆本編十三話にてイラストレーターnyazさん作のヒロイン・アンヘリカのイラストを載せました! 過去作品を振り返る意味も込めて是非見て下さいね!
☆「俺ヒザ」スピンオフ作品、スピンオフ/でうす・えくす・まきなの箱庭も連載中!
https://book1.adouzi.eu.org/n0542fy/
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」をなろうとノベプラにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724
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