動画と記章と新展開と
本日は第百四話を投稿します!
エリナが見つけたモノについてコーゼストがウンチクをたれます! そしてまたもや見つかる証拠とは?!
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「これが、ね……」
エリナベルから手渡された正六面体の鈍色の魔水晶を捏ねくり回す様に見る俺。
「ねえ、万能鍵って何?」
傍で一緒に魔水晶を眺めていたエリナが疑問を呈する。
『この魔道具は魔法と言う手段で施錠されているモノ全ての術式に干渉して解錠してしまう魔道具です。但し一度にかなりの魔力を消費するみたいなので使い勝手が悪いですね』
エリナの疑問に丁寧に説明するコーゼスト。その説明を聞けば聞くほど便利な魔道具なんだなと思うのと同時に、そんな魔道具を使い捨てにする犯人達にある意味感心する。
普通魔道具と言うのは魔力を自ら創り出し、或いは与えられ、その魔力で魔法を起動させ魔法が使えない人に魔法の恩恵を与える便利な道具なのだ。だから使い捨てなどは有り得ないのだ──まぁ余程金持ちでも無い限り。
『何れにしてもこの魔道具は犯人を特定する為に重要かと思われます』
「わかった」
コーゼストに言われ俺は魔道具を無限収納ザックにしまい込むと
『ではマスター、また先程の接続水晶まで戻ってくださいませんか? 少し考えがあります』
コーゼスト先生が何やら自信ありげに宣う。何をする気だ、一体? 俺は首を捻りながらももう一度管理機構に戻った。
「それで? どうする気だ、コーゼスト?」
『まずは──こうします』
妖精体のコーゼストの手が接続水晶に触れる。すると水晶表示板が淡く輝きを放ち始めた!
「お、おい、何だこれは?!」
『──成功しましたね。私の魔導擬似肉体を直接管理機構に接続してみました。此方の方が微細な調整が出来そうです』
よく見るとコーゼストの身体の周りに幾重にも魔法陣が展開し目まぐるしく巡っている。
『先程接続した時に管理機構に映像データがある事に気付きました。恐らくこの施設の監視映像機器が生きていたのでしょう。ただ乱信号が多く先程は再生出来ませんでしたが。なので私が直接接続して映像を処理してみます』
そう言いながらもコーゼストの周りを目まぐるしく巡る魔法陣。やがてその輝きが薄れると
『──処理が終わりました。ここの映像データは1ヶ月単位で更新されているみたいですね。犯行日時の映像を選択して処理しましたので水晶表示板に再生します』
そう言うと横の水晶表示板が動く画像を映し出し始めた。
「「おお……」」
俺とエリナが同時に声を上げる。そこには確かにこの生産設備の中が映し出されていた。
『先ずは調整漕が開けられる直前まで映像を進めます』
水晶表示板の画像に映る人が急に忙しく動き回る。
『次に開けられた調整漕を拡大投影します』
画像の中で忙しく動き回っていた人の姿が消えたと思ったら画像の一角が大写しになる。すると程なくして大写しになっている調整漕の硝子が開き、中から紫色の塊が宙に浮いて外に出る。同時に紫の塊を持ち上げる黒づくめの3人の人物が不意に画像に映る。
『どうやら暴喰者を持ち出す時に迷彩が切れたみたいですね』
一緒に画像を見ていたコーゼストが呟く。すると3人のうちの1人の手元に魔法陣が浮かび上がると再び姿を消したのである。
「なるほど……な」
俺は画像を見終えて深く息を吐く。横に並んで見ていたエリナも同様である。
『この映像データは私が記憶領域に記録しました。明確な証拠として提出も出来ます。何れにしてもあとは犯人達の足取りですね』
「それに関しては皆んなの調査いかんだな」
コーゼストの言葉にそう返事を返す。3人組が暴食者を持ち出したのは間違い無いが、何処に向かったか判れば行動指針も決まるからな。
そんな事を思いながらエリナと共に調査に戻る俺だった。
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「御主人様〜。こんなの見つけたわ!」
少ししてヤトが何やら見つけたと言って俺の所に来た。手には何やら光るモノが。
「何だこれ?」
手渡された品物は縦横1セルト程の金の記章であった。盾の中央に交差する2本の槌と、その上に正面を向いたドラゴンの意匠の図柄のである。少なくともオールディス王国やその貴族のでは無いのは確かだ。
「何処かの貴族か国のか……」
『調べてみない事にはわかりませんが、犯人の落とした物なら足取りの手掛かりになりますね』
コーゼストの言葉に頷く俺。どちらにせよこれはギルマスに見てもらった方が良さそうである。
「もしかして私、何か重要なの見つけたの?!」
記章を無限収納に仕舞う俺に興奮気味に尋ねてくるヤト。金色の瞳がキラキラしている。
「ああ。良くやったな、ヤト」
そう言いながらファウストみたいにヤトの頭を撫でる。するとヤトは一瞬驚いた表情をしたが直ぐに嬉しそうに目を細める。そして徐ろに
「あ〜ん御主人様〜! 大好き〜♡♡」
全力で抱き着いて来た! ちょ、蛇身で締め付けるのはヤメロ!
そんな事をしていると周りを調査していた他のメンバー達が集まってくる。アンとエリナも含めて皆んな何故か生暖かい視線を俺とヤトに向けてくる。皆んな、頼むからそんな視線を向けないでくれ!
兎に角全員が集まったので何か発見した物があるか尋ねるが、めぼしいモノは見つからなかったみたいだった。
『ではこれで調査を打ち切り、調べた結果をギルマスを交えて検討しましょう』
「そ、そうだな。それじゃあ地上に戻ろう」
コーゼストの言葉に同意して帰還を宣言する。
兎に角帰って休みたい………… 。
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「これはツェツィーリア共和国のだな」
ギルドに戻りギルマスに報告しながら、ヤトが見つけた記章を見せるとギルマスは難しい顔付きでそう答えた。
「より厳密に言うとツェツィーリア共和国貴族院議員のだ。議員とその関係者が持っていたな。以前、ツェツィーリアのギルドを訪れた時に見た事がある」
そう言葉を締め括るギルマス。しかしなぁ…… 。
「コーゼストが見つけた画像には如何にも怪しげな黒づくめの3人組は映っていたが……そいつらが天蠍だとしてツェツィーリアの議員と関わりがあるとは……」
「それだがな」
俺が犯人との関連性を指摘すると、ギルマスがその言葉に言葉を被せる。
「天蠍はリーダーのジェイデン・ヘルナンデスを始め3人のメンバー全員ツェツィーリア共和国出身だ。ギルド本部の情報とも照合した結果判明した」
「……どうやら証拠と証拠を繋ぐ線が見えてきたな」
ギルマスの台詞に1つの確証を感じ取る俺。
『それでその天蠍の足取りは掴めたのでしょうか?』
「恐らくこのラーナルー市にあるツェツィーリア共和国領事館に逃げ込んだ可能性が高い。まず門衛に確認したら天蠍の奴等、ラーナルー市から出た記録が無いんだ。隠蔽を使ってこのラーナルー市から出ようとしようとしても正門には魔法妨害の結界があるから直ぐにバレるしな。あと市内の宿屋にも全て問い合わせたがこちらにも宿泊記録が無い。未確認情報だが領事館付近での目撃情報もある」
『だとすると自国民である天蠍の3人をツェツィーリアの領事館が匿っていると考えるのが自然ですね』
コーゼストはギルマスとの話で色々得心が行ったみたいであるが、かなりきな臭い話でもある。
「だが幾ら領事館が治外法権だと言っても我々冒険者ギルドには通用しない。我々は国家間を跨ぐ中道組織だからな。直ぐにギルド本部から天蠍の身柄をこちらに引き渡す様に領事館に話をつけてやる」
「それと何処から生産設備の情報が漏れたのか、もだな」
「当然だ! そっちも早急に突き止めてやる!」
そう息巻くギルマス。何と言うか……ギルマスがここまでキチンと仕事をしているのを見るのは久しぶりである。
まぁ、そこはお偉いさん同士でやり合ってもらうとするか…… 。
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何はともあれ俺達の仕事はここまでと言う事でギルドを辞する事にした。ここから先はギルマスの仕事である。尤も状況によっては再び俺達の出番になるが。
ギルドを出ると日がかなり傾いており、俺達は常宿にしている『蒼眼の新月』に向かう事にした。いきなり大人数で押し掛けたのだが運良く部屋が空いていたので助かった。だが…… 。
「あーっと、女将さん?」
「なーに、ウィルさん?」
「何で俺とアンとエリナが一緒の部屋なんだ?!」
因みにルアンジェと『白の一角獣』のメンバーとヤトは、別の大部屋が宛てがわれていたのは言うまでもない。
俺の抗議に女将さんは人差し指を立てるとチッチッチッと言いながら左右に振り
「ウィルさん、2人も娶っておいて別々の部屋が良いとか……有り得ないわよ? 男ならちゃんと纏めて面倒みないとね!」
そんな事をドヤ顔で宣う。いやいや、まだ婚約しただけなんだが?! いきなり同衾とか、それこそ有り得ないわ!? しかも2人とか身体が持たんわ!! その前にここは連れ込み宿じゃ無かったんじゃ無いのか?!
脇を見やるとアンとエリナが頬に手を当て「ど、同衾とか……イヤン♡」と身悶えしていた。
俺は平穏無事に眠りたいんだが!?!
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身体は休めたが気持ちが休まらない、そんな変事を乗り越えながら5日が経ち、ギルマスから呼び出された。これは──嫌な予感しかしない。俺達の目の前には疲れた顔のギルマスが執務机の椅子に腰掛けていた。そして徐ろに口を開く。
「一昨日ギルド本部から領事館の捜査令状が発布され、俺達は領事館に乗り込んだんだが……天蠍の奴等、影も形も消えちまいやがった! 領事館付近と正門にはギルド職員と冒険者が張り付き、人の出入りを確認していたにもかかわらず、だ」
そう言ってがっくり肩を落とすギルマス。あれだけ意気込んでいただけに失望感が半端ない。
「結局逃げられた訳か……」
俺も何となくがっかりする。折角手掛かりを掴んでいただけに残念な気持ちである。
「だが足取りの手掛かりは掴んで来たぞ」
ギルマスが顔を上げ、そう言葉を発する。
「何だ、その手掛かりって?」
「捜査している時に職員の1人が隠し部屋を見つけてな。そこに天蠍が潜んでいるかもと踏み込んだのだが、もぬけの殻だった。だが部屋の床に巧妙に隠されていた魔法陣を見つけたんだ。その魔法陣と言うのが──」
『転移陣ですね』
ギルマスの台詞にコーゼストが台詞を重ねる。
「そうだコーゼスト殿。恐らく手紙や荷物をやり取りする為のだと思われるんだが、その大きさが問題でな。人をギリギリ送れる大きさだったんだよ。そうなればいっぺんにでは無く、1人ずつ転移して逃げた可能性が高い」
ギルマスはどうだと言わんばかりのドヤ顔で鼻息を荒くする。流石はギルドマスター、転んでもタダじゃ起きないって訳か。
「それだとその転移陣の行先も判っているんだろ?」
「勿論だ! 領事の奴は言い渋っていたが聞き出したぞ!」
俺の質問に良くぞ聞いてくれたとばかりに答えるギルマス。
「それは何処なんだ?」
「そこの転移陣の行先は──シグヌム市の総領事館だそうだ。そこを経由して本国や各地にある別の領事館に行けるらしい。なのでお前達にはシグヌム市に向かってもらいたい。ネヴァヤには既に話をしてあるから協力して貰え」
ギルマスの言葉にネヴァヤ女史や『紅霞』など懐かしい顔が思い浮かぶ。
『これで次の目標が決まりましたね』
俺の顔の傍らを浮遊するコーゼストがそう言葉を紡ぎ、俺は後ろにいるアン達やエリナ達に目を向ける。アンもルアンジェもエリナも『白の一角獣』のメンバーも皆んな、俺と視線が合うと頷く。1人1人の顔を見回した俺はギルマスの方に向き直ると了承を口にする。
「わかった。準備を整えてからシグヌム市に向かう事にする」
「頼むぞ、ウィル、コーゼスト殿。こちらも引き続き内部調査を続ける」
『出来るだけ御期待に添える様に善処致します』
コーゼストの言葉を受け、俺達皆んなに頭を下げるギルマス。
奴等の狙いはわからんが……何としても解決しないとな!
エリナに引き続きヤトが見つけたモノで事態が動きました! 何となく国家規模の陰謀の匂いが…… 。
次回、事態は更に動きます!
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近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の冒険活劇です!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
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