閑話〈7〉エリナベル 〜これまでの生とこれからの人生と〜
本日は閑話を投稿します!
ウィルの事実上の第二夫人予定のエリナベルの話です。
閑話〈7〉
「わぁ……」
私の右手の中指にキラリと輝く星銀製の婚約指輪。それを良く見える様に翳してウットリする私と羨ましそうに見ているベルタ達『白の一角獣』のメンバー達。
私の横では同じ婚約者のアンヘリカ──アンが私と同じ様に婚約指輪をウットリ眺めています。
「あ、ありがとうウィル♡」
私は指輪を贈ってくれた男性──ウィルフレドに最高の満面の笑みを感謝の言葉と一緒に贈ります。でも本当に夢みたい………… 。
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私の名はエリナベル・セルウィン。国境の街シグヌム市の冒険者ギルド所属の冒険者パーティー『白の一角獣』のリーダーを務めています。
パーティーとしての所属はシグヌム市ですが私自身はワクト市の出身なんです。パーティーのメンバー達も私と同じ様にシグヌム市の近郊の街が出身です。そして皆んな自分の街に冒険者ギルドが無かったからシグヌム市まで来て冒険者登録をしたのも一緒なんです。だからなのか彼女達と一緒にパーティーを組んだのも自然と言うか当然の流れでした。
そしてパーティー結成時に皆んなで話し合って付けたパーティー名が『白の一角獣』、女性だけ5人のパーティーと言う事から自分の好きな色である白と、純潔な乙女の守護獣として伝説に謳われるユニコーンの名を冠したのでした。
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私の生まれた家は国王陛下から騎士爵を賜った準貴族でした。隣国との戦争で武勲を立て、従士だった父は騎士に取り立てられたのです。
そんな父は私にとって誇りであり目標でした。いつかは父の様な騎士になりたいと、まだ幼かった私は父に付いて剣術の、そして騎士とは何かと言う事を学びました。
だけど15歳の時、どんなに努力しても越えられない壁が目の前に立ちはだかりました。
オールディス王国での女性騎士の数は決して多くありません。実力はあっても先ず第一に家柄で選ばれるのです。なのでしがない準貴族の娘などに誰も見向きもしませんでした。例え従士の入団テストで試験官を圧倒しても── 。
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結局私の夢は叶いませんでした。だけど私は父からの教えである『力ある者は力無き者の為に剣を振るうべき』と言う騎士としての教えを、その想いを諦めたくはありませんでした。
そんな時知り合ったのは1人の冒険者。彼女から冒険者と言う職業について色々教えてもらい、その『困った人を助ける』と言う理念の中に騎士の教えを見た私は、正に天啓を受けたのでした。騎士にならなくても自分の力で誰かを守れるなら騎士に拘る必要など無いのでは、と。その思いを父に話すと父は黙って私を送り出してくれました──寂しそうな笑顔と共に。
それは私が16歳になって間もなくの出来事でした。
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「リーダー! そっちをお願いします!」
「ええ!!」
剣士のベルタの声が響き、目の前に錆びた両持剣を振りかざした巨猪人が迫ります! 私は身体強化魔法を発動させると長剣を構え、斬りかかって来たオークを迎え撃ちます! 剣が衝突し合う甲高い音が響き、火花を散らす剣と剣!
「ハァァァァァァー!」
気合一閃、オークをバスタードソードごと押し返す私! 私の身に付けた身体強化魔法はオークにだって押し負けない力を瞬間的に産み出せるんです。
元々目指していたのもあり、冒険者としての基本職業は冒険者としては珍しい騎士となり、更に昔から魔力が高かった事もあって魔法の技能を特訓してみたら火属性魔法と、このブーストを熟達したんです!
私がオークを押し切ると、背後から魔法士のフェリピナの火炎槍が飛んできてオークの胸を穿ちます! 凄い威力ね──精々火炎弾ぐらいしか使えない私はフェリピナの魔法の威力に感心しながら、ベルタと剣士のユーニスの応援に入ります。
そして──オークの群れは討伐されたのです。
「皆さん、治療します。光よ、治療の空間を──『治しの領域』」
神官のマルヴィナが回復魔法を詠唱すると、私とベルタ、ユーニスにフェリピナが淡い光に包まれます。
「ありがとう、マルヴィナ」
「いえっ、これが私の役目ですから」
お礼を言うとマルヴィナは何のことは無いと笑顔で返して来ます。皆んなが回復したのを確認すると私は号令をかけます。
「それじゃあ皆んなで手分けして討伐証明を集めましょうか」
「「「「はい!」」」」
ベルタ・ユーニス・フェリピナ・マルヴィナが元気良く返事を返して来ました。
さて、オークは討伐証明がその耳でしたね…… 。
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「そこまで!」
ギルドの修練場にネヴァヤ様の声が響きます。ネヴァヤ様はシグヌム市二国間ギルドのギルドマスターであり、また女性として数少ない最高位のSクラス冒険者を修めた人でもあり憧れの存在です。
私達がオーク討伐から帰った数日後、ネヴァヤ様から直々に「一度受けてみない?」と声を掛けられ、晴れて今日はネヴァヤ様立ち会いの元、私達の昇級試験が行われていました。何でも私達の今までの功績がネヴァヤ様の目に留まったらしいのです。
試験の相手はSクラス冒険者パーティー『高潔な雷光』の人達です。勿論これは殺し合いでは無いので、故意による殺害は罪に問われます。
私達は『高潔な雷光』の人達の胸を借りて、自分達が出せうる力を振り絞りました。やれるだけの事をやった充足感があります。
「どうでしたか? 彼女達『白の一角獣』は?」
ネヴァヤ様が『高潔な雷光』の人達に確認します。
「うん、純粋な戦闘力はもちろん、戦闘に於ける瞬間的な判断力も申し分無しだな!」
リーダーの戦士がそう私達を評価してくれて、メンバーの人達も口々に高評価をしてくれます。
「すると──」
ネヴァヤ様がリーダーに先を促します。
「ああ、文句無く合格だ! 俺達『高潔な雷光』は『白の一角獣』の昇級を認める!」
『高潔な雷光』のリーダーさんが、にこりと白い歯を見せながらそう宣言してくれます。
私達『白の一角獣』がSクラス冒険者の仲間入りを果たした瞬間です──私が22歳になってから3ヶ月経っていました。
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「ではこれを」
ネヴァヤ様の手からミスリルの認識札が私達に渡されます。
「これで貴女達『白の一角獣』も晴れてSクラス冒険者です。今後の活躍に期待します」
ネヴァヤ様は姿勢を正しそこまで言うと、顔に笑みを浮かべながら
「まあ、あまり気負いしないでね。私達冒険者に大切なのは『困った人を助ける』事なのですから」
格好を崩しあの時の様に話し掛けて来ます。
「「「「「はいっ!」」」」」
「それとエリナベルさん。貴女のジョブは新たに『魔法騎士』として統合されました。タグにはちゃんとその様に記載されていますからね」
「は、はい!」
聞くと『魔法騎士』と言うジョブは、『騎士』若しくは『戦士』の基本ジョブ以外に魔法の技能を最低2つ保有し、尚且つそのうちの1つを常時使用出来れば取得出来るジョブなのだそうです。
改めて真新しいミスリルのタグを手に取り、感慨に耽っていると
「そう言えば、あの人達は貴女達の少し先輩になるんですね」
ネヴァヤ様が何かを思い出したみたいに言葉を発します。
「あの人達って……『黒の軌跡』の事ですか?」
「そう、その『黒の軌跡』の事です。あの人達も1ヶ月ほど前にSクラスに昇級したと聞いています。貴女達も何れ執り行われる叙爵式の時にきっと会う事があると思いますよ」
ネヴァヤ様はにっこりと笑ってそんな事を仰います。ネヴァヤ様から折ある毎に聞かされた、ネヴァヤ様の恩人である『黒の軌跡』、本当に会うのが楽しみです。
何でもウィルフレドと言う男性がリーダーで二つ名を持つ涅森精霊の女性と孤児の少女と更に魔物を使役している変わったパーティーらしいんです。ネヴァヤ様が事ある毎に口にするそのパーティーに私の興味は強まります。
そして──そのパーティーとの、ウィルフレドとの出会いは意外と早く訪れたのでした。
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私達が昇級してから半月後、王都ノルベールで今年Sクラスに登り詰めた冒険者達の叙爵式が執り行われる事になり、私達『白の一角獣』は初めて王都に来ました。
先ずは国王陛下に謁見する為に簡単な作法講座が王都ギルド本部にて今回叙爵する冒険者パーティーを私達を含め6組集めて行われました。その中に『黒の軌跡』もおり、講座が終わると私はリーダーの男性──ウィルフレドに声を掛けました。なるべく友好的に── 。
「ちょっと良いかしら?」
声を掛けられたウィルフレドは私の目に視線を合わせると
「……すまないんだが、顔が近い」
何となくバツの悪そうな顔で言葉を返して来ました。心做しか顔を赤らめています。この人は目付きの鋭さとは違い、結構初なのかも知れませんね。
そうして初めて言葉を交わした私とウィルフレド──ウィルですが、会話をしてみると今まで出会って来た男性冒険者とは明らかに違いました。
先ず私達をオンナだからと言って侮ったり蔑んだりを一切しないのです。それに変に偉ぶらずとても話しやすく、話している内にどんどん親しみを感じました。また「黒の美姫」の二つ名を持つダークエルフのアンヘリカさんも、自動人形の少女ルアンジェさんもウィルはとても大切にしていて、更に好感度が増します。そして彼の左肩にちょこんと座る妖精──知性ある魔道具のコーゼストさんも彼、ウィルには全幅の信頼を寄せているのが良くわかりました。
それらを自ら見て知った私は、自分の胸の内に甘い何かが湧き上がるのを感じたのです。
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それからすっかり意気投合した私達はウィルの薦めで『銀の林檎亭』と言う宿屋で食事を共にし、ウィルの勧めで宿泊を決め寝起きのあらぬ姿を見られたり……と、あっという間に親密度を増して行きました。
そのうち王都の伯爵家の御当主のアドルフィーネ様が訪ねて来られて、ウィルが伯爵家の出だった事を知ったりもしたけど……アドルフィーネ様が来られた事により私は自分の中に湧き上がっていた甘い何かと向き合う事になりました。アドルフィーネ様──面倒なのでアドル様との言い争いの中で、私は私がウィルの事を好きなのだと自覚させられたのです。
でもその想いはアンも同じでした。彼女もまたウィルを好きだったのです。アンと私はウィルに自分の思いの丈を伝えました──例え、いいえ、間違い無くアンが選ばれるでしょうけど、自分の想いをウィルに伝えずにはいられなかったのです。
そのあとは──アンが「自分と一緒にエリナもウィルの彼女になりましょう」と言われ、思い切ってウィルに話すと何と認められアンと2人でウィルの恋人になり、嬉しくて浮かれていたら王都に来た日に声を掛けてきた『竜牙』と言う冒険者パーティーにウィルが因縁を付けられグラマスの立ち会いの元、修練場で決闘をして見事ウィル達の『黒の軌跡』が勝ち、更に彼等の不正を暴いたりもしました。
そして叙爵式を迎え、私達『白の一角獣』も子爵の位を賜りましたが、一番驚いたのはウィルが伯爵位を賜ったのです!
それを我が事の様に喜んでいたら、またアドル様が『銀の林檎亭』に現れ、すったもんだの末ウィルからまさかの求婚をされたのです!! 勿論私の中に否などと言う気持ちは微塵もありません、即座にお受けしました! まあアドル様は大変驚いていたみたいでしたが。
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そして今日──私はウィルからアンと一緒に婚約指輪を受け取ったのです。本当に人生なんて何が起こるのかわかりませんね。
だけど私はウィルの婚約者になった事を全く全然後悔なんてしていません! こんなに人を好きになれて、それがウィルで良かったと心の底から思えるんです。私のこれからの人生はウィルと共に歩んでいきます。
でも──初恋が叶って本当に良かった!
エリナとウィルが出逢う前の話と婚約直後の話を描きました。
こうしたキャラ設定に基づく閑話ってキャラクターのイメージを作るのに重要ですよね!またウィルの嫁候補が現れたら描きたいと思います(笑)
次回から再び本編に戻ります。次回は婚約してホッとしたウィル達を襲う面倒事の話です!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」もなろうとノベルアッププラスにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です! 戦場に轟く魔法と銃声の冒険活劇をお楽しみください!
なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
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