ブラコンシスター再び 〜盛大なる自爆〜(☆イラスト有り)
本日は本編第百一話を投稿します!
叙爵式を終え寛いでいるウィル達をブラコンシスターのアドルフィーネが強襲します!
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「兄様〜♡愛に参りましたわ♡」
叙爵式の翌日、主に精神的に疲れて『銀の林檎亭』で休んでいた俺の元を愚妹が朝っぱらから強襲した。
どうでもいいが宿の前に伯爵家の紋章が付いた馬車で乗り付けるな!
「お前は相変わらず高揚感が高いな……」
皆んなとの朝飯を終えて和やかに語らっていた俺はアドルとは逆に陰鬱とした台詞を吐いてしまう。ヤトは3皿目のステーキを食して満足そうにしているが、アンもエリナ達も迷惑そうである。ルアンジェは相変わらず表情に出ないが。
「んもう、兄様ったら♡そんなにお照れになられなくてもよろしくてよ♡」
だが俺の嫌味にしか聞こえない台詞すらもアドルには効かないらしい。何で俺の周りにいる女性はブレない奴が多いんだ?! 思わず挫けそうになる俺を
『マスター、しっかりしてください。アドルさんにはちゃんとお話ししなくては駄目なのではありませんか?』
左肩に座るコーゼストが激励してくる。その言葉に萎えかけていた気持ちを奮い立たせた。そうなのだ、アンとエリナの事はちゃんと言っておかなくては!!
「アドル。話がある」
俺はアドルを正面に見据えながら声を掛ける。
「えっ、えっ?! も、もしかして私、いよいよ求婚されるのかしら!?!」
「そんな訳あるか〜〜〜!!! 良いから黙って聞けっての!」
俺の一言に頬に手を当てクネクネするアドルに、一瞬脱力しそうになるが慌てて否定の言葉を叫ぶ俺。何で俺がお前にプロポーズせにゃならんのだ!?!
「そうじゃ無くてだな……アンとエリナの事で言っておきたい事があるんだ」
俺がそう言うと急に真剣な顔付きになって居住まいを正すアドル。それに釣られてアンとエリナも居住まいを正す。他のメンバーは静観の構えである。
「実は……2人と付き合う事にした。お前は親じゃないが片親で繋がる身内だからな、これだけは言っておこうと思ってな。予め断っておくがお前の意見は聞くつもりは無いから。そこはハッキリ言っておく」
「えっ?! ええええええええええええ!?!?!」
椅子を蹴って立ち上がるアドル。そして
「アンさんなら兎も角、何でエリナさんとも?!」
凄まじくエリナに対して失礼な事を口走る。何なんだ、「とも」って?!? 傍らに居たヤトが驚いてステーキを喉に詰まらせて悶絶している。
「兎に角これは俺自身が決めた事だ。お前にとやかく言われる筋合いは無い!」
ワタワタするアドルに思いっきりキツい視線とキツい台詞を浴びせる! するとアドルは「そ、そんな〜」と呟くと、いつの間にかイグリットが直しておいてくれた椅子に力無く腰を降ろし項垂れる。片やアンとエリナは「良くぞ言いました」と言わんばかりの満面の笑みである。ヤトはヤトでルアンジェが持ってきた木杯の水をがぶ飲みしている。
実に対照的な構図が目前で展開していた。
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「……でもその言い方だと、お付き合いだけですわよね?」
椅子に腰掛け俯いたままのアドルが、不意に小さな声でそんな事を訊ねて来た。
「そ、そうだが?」
アドルの周りに沸き立つ黒い霊気に少し気圧されながらそんな返事を返すと
「ならば──許しますわ」
俯いていた顔を上げ、一転満面の笑みを見せるアドル。許すも何もお前の許可は必要無いんだが?
「一体、何を言って──」
「兄様はお気付きになられてませんが、そもそも貴族の間では結婚前提でのお付き合いが普通! それをお付き合いだけと言ってらっしゃる兄様は彼女達と将来結婚する気は無いと言っているのと同義なのですわ!! それはつまり私と一緒になると言っているのと同義!!!」
語気を強めてそんなご高説を宣うアドルさん。だから誰がお前と一緒になると言ったんだ!?!
それにお前のその台詞は墓穴を掘っているんだが?! 何故にわざわざそんな重要な事を俺に教えた?!?
だが……すっかり忘れていたが、曲がりなりにも爵位持ち同士が付き合うと言う事は結婚前提なのが普通だった! すると俺はアンとエリナの2人と将来結婚する事を決めなくてはならない訳で………… 。
いや、そらまぁ将来的には結婚もアリなんだが、それを急に真剣に考えなくてはいけないのは正直言うとキツい。キツいと言うか、そこまで覚悟が出来る自信が無い。ふと横を見やるとアンとエリナ達が何やら期待に満ちた熱い視線を俺に向けていた。そんな中ヤトはイグリットに4皿目のステーキを注文していた。
『私は結婚とか婚姻と言うものは概念として理解しているつもりです。ヒトが愛するヒトと共に1つの共同生活圏を営むものだと。そして誰もが最初から自信を持ってその営為に当たる事は無いとも。ですからそんなに自信を持つ必要は無いかと推測します。自信とは覚悟の先にある物です』
思わず思い悩む俺の頭の中に響くコーゼストの励ましの念話。肩の方に視線を向けると妖精コーゼストが片目を瞑っている姿が映る。その言葉と姿に後押しされ── 。
「アドル」
「何でしょうか、兄様♡」
俺の声に満面の笑みで答えるアドル。俺は決意の言葉を紡ぐ。
「俺はアンとエリナと正式に婚約する事にする。それなら問題無いだろ?」
「な!?」
俺の台詞が予想外だったのだろう。驚愕の表情を顔に貼り付けて固まったアドルに追撃の台詞を言う俺。
「言っておくがお前がそう言ったんだぞ? 結婚前提が普通だと」
「し、し、し、しまった〜〜〜!!」
情けない声を上げヘナヘナと椅子から崩れ落ち、そのまま床にペタンと座り込んでしまうアドル。両手を床について虚ろな目で
「なんで……なんで……何でこんな事になるの…………私の馬鹿馬鹿バカ馬鹿馬鹿………………」
まるで譫言の様にブツブツ呟いている。正直言って不気味な事この上ないがこの際無視してアンとエリナの方に向き直る。ヤトはステーキを頬張りながらルアンジェと共に聞き耳を立てている。
「こんな形になってしまったが……改めてアン、そしてエリナ、俺と結婚して欲しい。何時になるかは確約出来ないが、この約束は違えない。俺は2人を必ず幸せにするとかそんな陳腐な事は言えないが、後悔はさせないつもりだ。受けてもらえるだろう……か?」
出来る限りの、それこそ竜にただ1人対峙する程の勇気を振り絞って2人に告白する。
「はい、ウィル♡喜んで♡」
エリナが真っ先に涙を浮かべながら返事を返して来る一方で、アンは静止していたが、俺を見詰める翠玉の瞳に見る見るうちに涙が溢れ
「私は森精霊。貴方よりうんと年上よ? それでも一緒になってくれるの?」
「ああ」
「貴方よりうんと長生きよ?」
「そうだな。恐らく──いや間違いなく俺の方が先に死ぬだろうな。俺は冒険者だし普通の人より早死にしそうだし……そうしたらアンやエリナを悲しませてしまう事になるが……」
「でも私もエリナも冒険者よ? もしかしたら私やエリナが貴方を置いて逝ってしまうかもしれない……だから、お互い様よ? ね、エリナ」
「ええ、人なんていつ何があるかわからないんだから。だからお互い様」
「そう……だな。それでも俺は2人と一緒に居たいと思うんだ。だから結婚して欲しい」
「はい……はい、喜んで♡」
「私達を貴方の傍に居させてください、ウィル♡」
そう言って溢れる涙を拭うアンと、一緒になって涙を流すエリナの2人をそっと抱き締める俺。
「ウィル、アン、エリナ、おめでとう」
「御主人様おめでとう! 何だか良くわからないけど!」
「「「「リーダー、おめでとうございます!!」」」」
ルアンジェとヤトと『白の一角獣』のメンバー達が俺達に祝福の言葉を贈ってくれる。
今までで一番幸せな時間がそこには流れていた。
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『盛り上がっている所を申し訳ありませんが……あちらはどうするんですか?』
少し離れた場所にふよふよ浮いていたコーゼストが的確な突っ込みを入れてくる。
「「「「「「「「「あ……」」」」」」」」」
俺達全員の視線の先には真っ黒な霊気に包まれ蹲っているアドルの姿が。
そういやすっかり忘れてた!
『改めて思うのですが──マスターはアドルさんに対し辛辣ではありませんか? 少しは労わってあげても宜しいのでは?』
傍らに舞い戻って来たコーゼスト先生が素朴な疑問を投げ掛けて来るが……
「いや、嫌っている訳じゃないんだが……ただあの愛情表現が重過ぎる……」
そう言って思わず辟易とする俺。小さい頃は「お兄ちゃん、好き」とか言って可愛かったんだが、多感な時期を迎えた頃から愛情表現が過多になり、いつの間にか「好き」が「愛してる」に変わり、ここまで拗らせるとは夢にも思わなかったなァ……だけど………… 。
『マスター、また現実逃避してますね』
コーゼストが俺の方をジト目で見やる。軽く咳払いをして白く燃え尽きているアドルの傍に歩み寄ると声を掛ける。
「あーっと、アドルさんや?」
俺の呼び掛けに虚ろな目を向けてくるアドル。
「……ナンデスカ?」
俺は大きく溜め息をつくと、アドルの肩に手を掛け
「お前は昔からそう言う所は変わらないんだな。好きな玩具を兄さん達に取られるとむくれて駄々を捏ねて、何時もリディアーヌ母様を困らせていた。そして必ず俺の所に来ては泣いて、無理難題を言って困らせてもくれた」
アドルは何も言わずに黙って聞いている。
「なぁアドル。小さい頃にはお前の我儘な願いを沢山聞いて来たんだから、今回は兄さんの我儘ぐらい素直に喜んで聞いてくれないか?」
俺がそこまで言うとピクリとするアドル。やがて纏っていた霊気がフッと消え失せて
「……わかりました。私の負けですわ、兄様……」
まだ立ち直りきれないらしく何時もの元気は無いが、目に生気が戻ったアドルがそこに居た。
「アンさん、そしてエリナさん。おめでとうございます。そして兄様の事を宜しく御願い致しますわ。今までお2人には失礼な事ばかり言って申し訳もございませんでした」
アンとエリナに向かい頭を下げ、謝辞と謝罪の言葉を連ねると2人に対して力無く笑うアドル。
「でも──」
そう言って徐ろに俺の方を向くと
「もしも兄様がお2人に捨てられたなら、即座に私は兄様を受け入れる準備はしておきますわ! よろしくて? 兄様! アンさん! エリナさん!」
力強く宣言をするアドルフィーネ。結局諦めてないのかよ!?! 俺はアドルの宣言に思わず畏怖しそうになるが
「なになに? 何か揉め事かしら?!」
ヤトの今更ながらの台詞に盛大な脱力感を先に感じてしまった。
『なかなか逞しいですね、アドルさんは』
コーゼストが感心したみたいな呆れたみたいな、何とも言えない微妙な意味合いの台詞を口にする。
奇遇だな、俺もそう思った!
紆余曲折はあったが、何とかアンとエリナの件をアドルに認めさせられた。
尤も真逆交際宣言から数日で婚約する羽目になるとは思いもよらなかったが…… 。
「結局、流されているよな……俺」
馬車に乗り屋敷に帰るアドルを見送りながらそんな事を呟く俺。アンさんとエリナさんは俺の両腕を取り、何時もの定位置に立っている。当然、ルアンジェもヤトも『白の一角獣』のメンバー達も言わずもがなである。
『まぁ、今回は流された結果が良かったからよろしかったのではないですか?』
コーゼストも何時もの定位置でそんな事を宣う。
それに関しては全く後悔はしてないけどな!
どちらにしてもこの件はグラマスのみならず国王陛下にも言っておいた方が良さそうである。俺はまたグラマス達にニヨニヨされる自分を幻視するのだった。
因みに後日、国王陛下に報告に行ったら「ヴィルジール内務卿代理の様子が変だったのだが、ハーヴィー卿は何か知らないか?」と尋ねられ、物凄く婚約の報告をしづらかった。
何でも会議中にも関わらず始終ボンヤリしていたらしい。もちろん婚約の報告したらしたで、国王陛下から「成程、それでか」と妙な納得もされてしまったのは言うまでもない。
アドルよ、頼むから施政に支障をきたしてくれるな!
結局流れで婚約まで行ってしまったウィル! まぁ早いか遅いかの差なんですけどね。いずれにしてもいきなり嫁候補が2人とかモテ期にも程があります!
ところで今回で本編百一話……100が1つの区切りなら、今回から新たなスタートになります! どうか皆様今後ともよろしくお願いします!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」もなろうとノベルアッププラスにて連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です。戦場に轟く魔法と銃声!
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