閑話〈6〉ヤトの夢 〜私が私でいる為に〜
本日は久しぶりに閑話をお送りします!
ヤトの主観と視線からの話です。
閑話〈6〉
──
────だれ?
『魔物に──同等──知識を与え──実験を行──』
────だめ、ねむい──おねがいだからわたしのことはほおっておいて…… 。
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──
────わたし
──────私…… ?
私、わたし、私、わたし、私…… !
私、イーヴィリアードは気付いたら透き通った何かの中にいた。一体どのくらい眠っていたんだろう?
私、イーヴィリアードは気が付いたら自分の名前を知っていた。なぜだか分からないけど、私が自分の事を考えたら頭の中に浮かんだんの。だからイーヴィリアードだと思う
──なぜだと聞かれても困るけど。
それに──何でこんなにたくさんの事を考えられるんだろう? 分からないけど考えるとたくさんの事が頭に浮かぶの。昔の私だったらこんなにたくさんの事を考える事も無かったのに。
でも、私の昔って、なに?
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またいつの間にか眠っていた。
今度の目覚めは無理矢理。だって頭の中が沢山の言葉で埋め尽くされているから。とても寝られていたもんじゃないわ。
私は身をよじる。すると透き通った何かが突然割れて私は外に出れたの。外に出れて気が付いたけど──私は蛇の魔物ラミアだったのね。
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初めての外は薄暗く、何かが沢山あって、ここは部屋なんだと感じたわ。私はしばらく部屋で過ごしたの。お腹が空くと私が眠っていた透き通った柱の中に置かれているお肉を食べながら。このお肉は沢山食べても次の日には柱の中にいつも置かれていたので、とりあえず飢える心配は無かったのは良かったわ。
何日、何十日経ったかしら? 私は部屋を出てみる事にしたの。部屋を出て通路を先に進むと他の魔物が沢山襲って来たんだけど、どれもこれも皆んな倒したわ。倒した魔物を食べようとしたら光って消えたのには驚いたけど。でもこれじゃ魔物を食べる事が出来ない──どうしよう。
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初めて部屋を出てから更に数日が経ったわ。その頃になると私は魔物の狩り方を覚えていたわ。魔物を殺してしまうと光になって消えてしまうけど、腕とか脚とかだけを切り落とすと切り落とされた腕や脚は消えずに食べれる事に気が付いたのよ。だからたまに襲って来る魔物は食べる分だけ手脚を切り落とす事にして、あとは殺していたわ。
私が他の魔物より優れていたのは魔術が使えたから。どうして魔術が使えるのかさっぱり分からないけど私の強みになったのは確かね。
そんな事をして更に何百日経った頃、初めてニンゲンに会ったわ。彼らは5体現れ、私を見るなり襲って来たの。驚いた事に私は初めて聞く彼らの言葉をわかってしまったのよ。だから私は彼らを追い払うだけにしたわ。何となく殺す気になれなかったから。でもそのあともニンゲン達は何度も来たわ。だからことごとく追い払ったのよ。私の頭の中にあったのは『この部屋にニンゲンを近付けてはダメだ』と言う気持ちだけだったから。だけどニンゲンってなんて弱いのかしら。
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それからの私はこの部屋を守る事が目的になった。人間魔物問わず侵入してくる者は全て追い払って殺したわ。でも何故そんな事をしているのか、私にはわからなかったけどそれでも良かった。ここに居れば私は私で居られると思ったから。
そんな中、私はここに来る人間達の事を冒険者と言う事を彼らの言葉から覚えた。そしてここが『魔王の庭』と言う迷宮だと言う事も。だけど何年か経つと、人間がここに来る事がめっきり減ったわ。
そして、あの日が来たわ。
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その日、本当に久しぶりに冒険者達が私の部屋を訪れた。
1人は有知性魔道具を持つ人間のオトコ、もう1人は森精霊のオンナ、更にもう1人は人間じゃ無い何か、そして何故かヘルハウンドとゴーレムの2匹の魔物を従えていたの見て、何だか奇妙な気持ちを覚えたわ。
「ここに冒険者が訪れるのも久しいのぅ……どれだけ我を楽しませてくれるか……楽しみだ」
精一杯の威厳を見せながら台詞を言う。これは散々冒険者を相手にして来て身に付けた事。こう言うと大概の冒険者はまず怯むから。そして蜷を解きながら
「さて……ヒトの冒険者よ、我が名はイーヴィリアード。蛇鱗族が半人半蛇のイーヴィリアードだ」
これも今まで通りの決まりきった台詞。何故か知らないけど、私が自分の名を言うと冒険者達は一目散に逃げていったから言っているだけなんだけどね。
だけど今度の冒険者は違っていたわ。何と私の台詞に応える様に自分達の名を言ってきたの! オトコの冒険者はウィルフレド、オンナのエルフはアンヘリカ、人間じゃないのはルアンジェと言うらしいの。こんな事は初めて、私の事を怖がらないで話し掛けてくる人間なんて。
でもそれは本気の殺し合いの始まりだったの。彼ら──ウィルフレド達は私を殺す気で掛かってきたわ。勿論私だって黙って殺されたりしないわ。だから本気の全力で相手をしたわ。でも──私は負けた。彼らだって殺される為にここに来た訳じゃないんだもの。必死に抵抗され、私の魔術すら打ち破り、最後に私が見たのは自分の胸に深く突き刺さる剣と剣を握るウィルフレドの顔。そこで私の意識は途絶え──
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──次に意識を取り戻したのは、御主人様に呼ばれた時。
意識が途切れる寸前にインテリジェンスアイテムのコーゼストが私の心に話し掛けて来たの、生きたいかって。もし生きたいなら御主人様──ウィルの仲間になれとね。そうすれば私を生き返らせてくれるって。私は選んだわ、御主人様の仲間になって生きる事を。そもそも私達魔物には「勝つか負けるか」しか無いし、別に死ぬのは仕方ないとは思っていたけど、生きるのをあきらめた訳じゃないから。
それに──御主人様は私みたいな魔物にも優しくしてくれたから。あの時──死ぬ寸前の私に「生きたいのか」と聞いた御主人様の声がずっとずっと耳の奥に、頭の中に響いていたから。ああ、このヒトなら私みたいな魔物でもきっと受け入れてくれる、そんな気がしたからなの。
そして私が思った通り、御主人様はとても優しくて、私はこのヒトの魔物になれたのが嬉しかった。ヘルハウンドのファウストやゴーレムのデュークも私と同じ思いを持っていた事を知って、このヒトの魔物になれた事がとても誇らしかったわ。
そしてその気持ちは毎日毎日一緒に過ごしていると、どんどんと大きく膨らんできて──私は御主人様と── 。
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私は新しく「ヤト」と言う名前を与えられたわ。御主人様が言うには遥か東の大陸の蛇の神様の名前らしいの! ヤト……なんて素敵な名前……私はこれからこの新しい名前で新しい生を生きて行くと心に決めた。
それからのあとの日々はとても慌ただしい日々だったのを覚えているわ。冒険者ギルドのギルマスとか言うヒトに私の事を認めさせたり、私が居たあの部屋を調べたら私が「造られた魔物」だって言う事がわかり、今度は王都? まで行ってグラマスとか言うヒトに会って御主人様が認められて、ラファエルとか言うヒトと会ったり、オルティースとか言う変なヒト達と戦って御主人様の強さが認められてSクラス? とか言うのになったり、私は薙刀と言う武器を買ってもらったり、『精霊の鏡』とか言う迷宮に行ってユリウスと言うヒトや他のヒトとも出会ったり、『精霊の鏡』の奥にある部屋で私の鎧や色んな武器なんかを見つけてきたり、いきなりコーゼストがヒトの体を手に入れたり、と本当に沢山あったわ。
でもどんな時でも私は何時も御主人様の一番の僕であり仲間だと言う事を誇っていたわ! あとは良くファウストやデュークと寝ている御主人様のヒザの上を誰が取るか争ったりもしたわね。だって御主人様のヒザの上って抱き着くととっても気持ち良いのよ♡
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そしてまた王都とかに呼ばれたんだけど── 。
「御主人様の一の僕、ヤト参上!……って誰?」
御主人様が今度は貴族とか言う偉いヒトになる事になって、一番偉い王様とか言うヒトに会う為にグラマスと何かしている間は大人しくコーゼストの中に居たんだけど、御飯になるからって呼ばれたら目の前に知らない女やドワーフがぞろぞろ居たの。
御主人様が言うには自分と同じ貴族になる冒険者のお仲間だったの。女5人のパーティーは「白の一角獣」、ドワーフの5人組は「月明かりの梟」とか言っていたわね。ただ1人の女──エリナベルがやたら御主人様に馴れ馴れしかったけど。それを見ていたら何だか胸の中がモヤモヤするんだけど?
そんな事を気にしていたら今度は御主人様の妹とか言う血の繋がった女が現れたわ! 名前はアドルフィーネって言って、この女も御主人様に物凄く馴れ馴れしいの! だけど御主人様はアドルフィーネとエリナベルだと全然態度が違っていたの。だからアドルフィーネを見ていても胸の中がモヤモヤする事は無かったわ。
だけどこのアドルフィーネが御主人様と会ってからアンとエリナベルが御主人様に『好き』って言ったの! 好きって事は愛しているって事で、つまり、御主人様と番になっても良いと言っている訳よね!
それを聞いたらアンとエリナベルが凄く羨ましくなったわ。でも何で私は2人を羨ましいんだろう? そう考えたら、私は自分の気持ちに気が付いた。私は御主人様と番になりたいんだって。私は魔物だけど御主人様となら番になっても良いかなと思えるの。だからきっと、私は御主人様を好きで愛しているんだと!
そう思えた時、さっきのモヤモヤが何だったのかわかったわ! あれはきっと『嫉妬』って言うのだって。そう思えたら胸の中のモヤモヤが綺麗に無くなったから間違い無いわ。それとヒトが番になる事は「結婚」って言うのも教えてもらえたしね!
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そして今日、御主人様は貴族になる為に王様が居る所に行った。何だか色々あったみたいだけど無事に貴族になれたみたい。
私はコーゼストの中で眠りながら御主人様にまた呼ばれるのを待ち望んでいるの。私はラミアだから御主人様と「結婚」したくても番にはなれない事ぐらいわかっている。だけどそれでも──私は私でいる限り御主人様を好きでいたいし愛していたい。それが叶わないとしても私はこれからも御主人様の一番の僕で居られる様に頑張って行くわ!
もしかしたら御主人様は気付いてくれるかも知れない、私の気持ちを。
その時は笑顔で『好き』って言いたいから。
もちろん美味しいご飯を食べさせてくれるのも好きなんだけど!
本編では描かれていないヤトの今までと心情を描写しました。食いしん坊のヤトの意外な(?)一面が垣間見れたと思います。
次回は本編に戻りますが、本編一話を挟んで再び閑話をお送りする予定です!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」も連載中!
近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です!
http://book1.adouzi.eu.org/n0259fr/
是非お読みください!




