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懇談と嗜欲と達観と

本日は記念すべき本編第百話を投稿します!

国王陛下が直々にウィルの伯爵叙爵の理由を話します。その影に見え隠れするアドルフィーネの影(笑)

 -100-


 国王陛下は威儀(いぎ)を正すと話し始めた。


「卿の今回の叙爵(じょしゃく)に関してはライナルト卿より前々から打診されていてな、内々(うちうち)には検討されていたのだよ。卿の一連の功績は特筆すべきものであるし近隣諸国や魔法工学、果ては考古学に与えた影響も大きい。だが最も大きな理由は卿の持つ有知性魔道具(インテリジェンス・アイテム)の存在だ。その存在は我ら人類は勿論(もちろん)の事、我が国の国益にも直結しうる重要な事案である事は明白。それならば手の届く範囲に居させる様に、と御前会議で発議され私が了承したのだ」


 (よど)みなく話し終えると用意された香茶に口をつける国王陛下。何というか……改めて人に言われると結構な事をして来たんだと言う自覚を持たざるを得ない。勿論それなりには自覚していたんだが。


「まぁ、ウィルく……ハーヴィー卿はその辺の自覚が少なかったみたいだけど、ね……」


 セルギウス(グラマス)殿が苦笑混じりにそんな事を(のたま)う──しっかりバレていました!


「だがそれだけでは無いぞ」


 喉を(うるお)した国王陛下がまだあると話を再開する。


「実は卿の事は、そこに(ひか)えるアドルフィーネ・フォン・ヴィルジール伯爵からも話があってな。伯爵家から出奔(しゅっぽん)した自分の兄が冒険者として名を上げたので取り立ててもらえまいかと、な」


 俺は思わず隣りに居るアドルに視線を向ける。


「勿論、卿が出奔した経緯(いきさつ)も理解している。知らなかった事とは言え卿と卿の母君を守れなかった事、()ずは()びさせてもらいたい」


 そう言うと国王陛下は俺に軽くではあるが頭を下げたのだ! 流石にアドルだけじゃなく俺もこれには慌てた。


「どうか頭をお上げください! 王に瑕疵(かし)はございません!」


「俺も気にしてない! ……と言えば嘘になりますが、それで王を責めるつもりはありません!」


 アドルと俺は異口同音に王の謝罪を受ける(むね)を伝えると


「ハーヴィー卿、ヴィルジール卿、有難う」


 と(ようや)愁眉(しゅうび)を開く国王陛下。こんな所はジュリアス殿下とそっくりである──まぁ、親子なのだから当然と言えば当然だが。


「なので今回の叙爵には、卿に対する私なりの贖罪(しょくざい)の気持ちも含まれているのだ。勿論伯爵と言っても宮中勤め扱いなので領地は無いがな。きちんと給金は払うし卿の今後の活動の自由は保証する。その辺はライナルト卿からきつく言われたのでな」


 そう言って苦笑混じりでグラマスの方を見やる国王陛下。対するグラマスは全く笑顔を崩さないでいた。


「それともう1つ、ハーヴィー卿の話をジュリアスから聞かされてな。卿がジュリアスに話した冒険譚(ぼうけんたん)の数々! それに心を動かされた! 私にも是非聞かせて欲しい!! ()ずはその肩の上に居る()()殿()を紹介してもらえまいか?!」


 急に声高らかにそんな事を宣う国王陛下。それを聞いて俺は思わずその場に突っ伏す所だった! 確かに以前ネヴァヤ女史から国王陛下は冒険譚が好きだとは聞かされていたが……これほどとは!


 何とか突っ伏さない様に耐えながら国王陛下を見ると子供の様に目をキラキラさせていて、その隣りではマティルダ王妃が「あらあら、貴方ったら」と口元に手を添え笑みを浮かべ、ジュリアス殿下は苦笑を浮かべ、マウリシオ宰相は額に手を当てていた。


 それを受けて俺は(おもむ)ろに右手を左肩に近付ける。するとコーゼストは俺の意志を理解したみたいで近付けた右手の平にスッ……と乗り移ると、俺はその手を国王陛下の前に差し出した。手の平の上でコーゼストは臣下の礼を()ると


『お初にお目にかかりますエリンクス王、そしてマティルダ王妃。私が古代魔族(アンデモン)により創られた有知性魔道具(インテリジェンス・アイテム)のコーゼストと申します。挨拶が遅くなり申し訳も御座いません。そしてジュリアス殿下にも謝罪を──必要以上の情報の漏洩(ろうえい)を防ぐ為の処置とは言え、あの時は何も明かす事無く誠に申し訳御座いませんでした』


 淀みなく口上を述べ深々と頭を下げるコーゼスト。それを聞いて国王陛下は「こちらこそ(よろ)しくな、コーゼスト卿」と鷹揚(おうよう)に頷き、王妃は「宜しくね、コーゼスト卿」と笑みを浮かべていた。


「宜しく、コーゼスト卿。それにしても卿の思慮深さには感服せざるを得ない。(ゆえ)に私に謝罪は不要だ」


 ジュリアス殿下も笑顔でコーゼストに話し掛けて来る。『精霊の鏡』での一件を事後承諾(じごしょうだく)とは言えジュリアス殿下が是認(ぜにん)してくれたので正直ホッとした。


「それに──また(いず)れ世話になるかも知れない。その時は宜しく御願いする」


 ジュリアス殿下が爽やかな笑顔でそんな事を宣って来る。そんな様子を見て、やはりエリンクス王とジュリアス殿下は生き写しみたいな親子なんだなと実感した。


 (ただ)しジュリアス殿下の顔は母親のマティルダ王妃似ではあるが。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 とりあえず国王陛下から理由を聞かされたが、素直に喜ぶべきなのか──釈然(しゃくぜん)としない自分がそこには居た。でも(すで)(じょ)された爵位を納得出来ないからと返上する訳にもいかない。そんな事をしたら不敬(ふけい)(ざい)まっしぐらである。なので理解出来た様にする事にした。正に「沈黙は金」である。


『マスターも色々学習されていらっしゃる様で』


 肩に戻ったコーゼストが俺だけに聞こえる声で(ささや)く。人を物覚えが悪いみたいに言うな!!


 何はともあれ国王陛下との懇談(こんだん)を終え俺達は応接室を後にした。話は俺とコーゼストの事が中心に話され、ルアンジェがイオシフの迷宮(ダンジョン)混沌(カオティック)の庭園(・ガーデン)』で出会った自動人形(オートマトン)だと言う話まで(およ)んだ。その事実を知った時の国王陛下達の驚愕に満ちた顔がまた印象的だった。流石にヤトを顕現(けんげん)する様に言われた時には固辞(こじ)したのは言うまでもない。


 まぁ、それ等も踏まえて俺への対応にも今後また変化がありそうである。正直巻き込まれたくは無かったが、自身が特別な位置に立っている事を自覚せざるを得ないのも確かだ。だがそれにしても…… 。


「流されてるよな、俺……」


 長い廊下を歩きながらそう(つぶや)き、小さな溜め息を漏らす俺。


「まぁ、これもきっとこうなる運命だったと(あきら)めるしかないよ。人は状況に流されるものなのさ」


 ぶつぶつ(ぼや)く俺の肩を叩きながら語り掛けて来るグラマス。その顔は何か達観した顔をしていた──結構苦労しているみたいである。


「しかし、ウィルく……ハーヴィー卿がヴィルジール卿の兄上とは思いもよらなかったよ。僕には其方(そちら)の方が驚きだね」


 グラマスはいつの間にか俺の隣りに居るアドルと俺の顔を交互に見ながら曖昧(あいまい)な苦笑を浮かべる。


「申し訳も御座いませんでした、ライナルト閣下。兄が叙爵する事を知ったのは数日前でしたので…… 。もっと前に判っていたなら閣下にもお話(いた)しましたのに……」


 そう言って見た目は申し訳無さそうな殊勝(しゅしょう)な態度をとるアドル。だがその見た目に(だま)されてはならない。


「その(わず)か数日の間に何をそんなに奔走(ほんそう)した、アドルさん……?」


「そこは勿論! 兄様の素晴らしさを国王陛下とお歴々(れきれき)喧伝(けんでん)致しましたわ♡」


 思わず突っ込んだ俺にドヤ顔で返すアドル。お前は本当にブレないな!? 何だよ喧伝って?!?


「君達兄妹は本当に仲が良いんだねぇ」


 その慈愛(じあい)(こも)った眼差しはやめてくれ、グラマス!


「はい! それはもう! (わたくし)は兄様を敬愛(けいあい)しておりますの♡」


 何が敬愛だ! お前のは偏愛(へんあい)盲愛(もうあい)だろうが!!!


 色々突っ込みどころ満載のグラマスとアドルの台詞に大声出して突っ込みたかったが、まだ王城の中なので自粛(じしゅく)して、その代わりにジト目で2人を見やる俺。


 頼むから、これ以上話を(こじ)らせないでくれ!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 このあと会議があると言うアドルと別れ、大広間(ホール)に戻った。何でもアドルはあの若さで内務卿(ないむきょう)代理を務めているのだそうだ。本当にそんな重要な地位に()いているのが不思議でしょうがない。まぁ兄恋慕(ブラコン)なのは仕事には関係無いんだが…… 。


 別れ際に「また『銀の林檎亭』にお邪魔致しますわ♡」と言っていたのでアンとエリナの話はその時で良いだろう。


 大広間には(すで)に人も(まば)らでヒギンズのおっさんやネヴァヤ女史の姿は無かったが、エリナ達『白の一角獣(ホワイトユニコーン)』の面々はこの場に(とど)まっていてくれた。


「あ、ウィル。お帰りなさい!」


「「「「お帰りなさい、ウィルさん!」」」」


 メンバー総勢で迎えてくれるエリナ達。何時見ても統制(チームワーク)がとれたパーティーだなと感心する。


「改めて──伯爵叙爵おめでとう!」


「「「「おめでとうございます!」」」」


 祝福の言葉も見事に重なる(ハモる)。ここ(まで)来ると最早(もはや)芸術的である。


「ありがとうエリナ、皆んな」


 ちょっとこそばゆくて頬を()きながら謝辞の言葉を伝えると一斉に「キャッ♡」と言う反応が返って来た。それには俺の方が反応に困るんだが…… 。


 とりあえず貴族としての給金や責務などの詳細はマウリシオ宰相から全て説明を聞かされたし、忘れてしまってもコーゼスト先生がいるから一安心である。エリナも担当の文官から説明を受けたので問題ないらしいので王城を辞する事にした。大広間から馬車が停まっている出入口まで向かう。


『私を備忘録(メモ)扱いするとは……良い度胸ですね』


 その道すがらコーゼストが肩の上に腰掛けながらジト目で苦情を言ってくるが無視(スルー)する。それこそ物事を事細かに覚えておくのはお前の最も得意とする所だろうが?


「それでは僕もギルド本部に戻るとしよう。君達は明後日にでも顔を出して貰えれば良いからね」


 出入口に着くとグラマスは笑顔でそう言って一足先に帰って行った。(なん)にせよ明日は休めるらしい。


「んじゃ、俺達も帰って休むとするか……」


 俺はアン達とエリナ達と連れ立ってそれぞれ馬車に乗り込み、王城を後に『銀の林檎亭』への帰路についた。


 正直、ぶっ通しで迷宮(ダンジョン)に潜っているのより疲れた──主に精神的にであるが!!



すったもんだの末、無事に(?)伯爵になったウィル! これからもトラブル続きでしょう(笑)

それにしても国王陛下がフランク過ぎる気が…… 。

まぁ何にせよ、今後のウィルの活躍に期待……しないでくださいませ!


☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」

なろうとノベルアッププラスにて連載中!

近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの活躍する冒険譚をどうぞ!


なろう→http://book1.adouzi.eu.org/n259fr/


ノベルアッププラス→https://novelup.plus/story/529278724


よろしくお願いしますm(*_ _)m

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