叙爵式 〜サプライズはハプニング〜
本日は第九十九話を投稿します!
いよいよ叙爵式当日になりました! そしてドタバタは……当然あります(笑)
-99-
──ガタガタガタガタ
馬車の車列が王城の重厚な城門をくぐり敷地に入る。今日はいよいよ王城で叙爵式が執り行われる日となり、俺達はそれぞれのパーティー毎に迎えの馬車に乗り登城する運びとなった。
やがて馬車の列は大きな門扉の前に横付けされると、先頭の馬車からセルギウス殿が降車し、他の馬車からも俺達もぞろぞろ降車して城内に入る。そのまま案内されて控えの間に入る。ここで声が掛かるまで待機する事になった。
「……皆んな、表情が固いねぇ」
グラマスが全員を見回し苦笑いを浮かべる。確かに表情が強ばっているな──俺もだが!
「でも流石はウィルフレド君。いつもと変わらず自然体だね」
いきなり俺に話を振らないでくれグラマス! ただ単に顔が強ばって表情を変えられないだけなんだが!?
「……いや、これでも緊張しているんだが……」
とりあえず何とかそれだけ言うと用意された香茶をグイッと煽る様に飲む。冷めていたので口を火傷せずに済んだ…… 。
「でも、こうした事にも慣れないといけないわよね。私達も曲がりなりにも貴族になるんですし、そうなると王様にも会う機会とかも増えるだろうし」
エリナベルが思いついた事を口にすると『蒼の深淵』と『炎精霊』と『月明かりの梟』の面々は一様に「それはそうだな……」と頷いていた。
因みに3つのパーティーには、『竜牙』が不正行為で叙爵の資格を失った事をグラマスがキチンと全て話したらしい。勿論それには俺達が関係している事も含めて、だそうだ。なので『月明かりの梟』は兎も角として『蒼の深淵』と『炎精霊』のメンバーの俺達に対する風当たりは静かになっていた。
まぁ、意味も無く突っ掛かられるよりはマシだけどな…… 。
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隣りから大きな声が掛かり侍従官が呼びに来た。グラマスを先頭に俺達は姿勢をビシッと正して付いて行く。重厚な扉が開くと燦然とした灯りに満ちた大広間へと進み出る。
大広間の高い天井には大燭台が3つ中央に列んで設置され、部屋の左右には何十人かの貴族が立ち並び、その中には見知った顔が──ラーナルー市のギルマスであるヒギンズのおっさんとシグヌム市のネヴァヤ女史が居た。そういやあの2人も子爵だったな…… 。
そして大広間の奥は一段高くなっておりその場所──上座に豪奢な椅子──玉座が置かれそこには、威厳に満ちた金髪の立派な髭を蓄えた偉丈夫が──このオールディス王国の王、エリンクス・フォン・ローゼンフェルト国王陛下が腰をお掛けになられていた。
侍従官が一礼し、そして「セルギウス・フォン・ライナルト侯爵閣下並びに、本日叙爵される冒険者の方々をお連れしました」と告げて一礼し退室する。グラマスと俺達は一礼するとゆっくりとそして静々と国王陛下の前まで歩を進めると、右手を左胸に当て、右膝を床に着き頭を深々と垂れた。所謂臣下の礼である。
「面を上げよ」
威厳に満ちた国王陛下の声が響き、俺達は礼を解く。
「ライナルト侯爵、此度は大義であった」
国王陛下が短くグラマスを労うと、傍に控える宰相がその言葉を受けて台詞を続ける。
「では、そこに控える者達の叙爵にあたり先ずはその功績を読み上げる。文官」
指定された文官が前に出て俺達のパーティー名と1人1人の名前と共にそれぞれの功績を簡潔に読み上げ始めた。それを聞きながらふと、両脇に並んで立つ貴族の方に視線を向けるとギョッとした!
『どうかしましたか?』
コーゼストが念話で聞いて来ながら俺の視線を追い掛けて
『あれは……アドルフィーネ様?』
俺とコーゼストの視線の先には妹のアドルフィーネが立っていたのだ! 何で叙爵式の場にアドルが居るんだ!? そらまあアドルは貴族だから居ても当然なのだが…… 。俺の混乱を余所にアドルは俺の視線に気付くと、ニコリと笑顔を見せる。あの笑顔、嫌な予感しかしないんだが!?
そんな事をしているうちにも功績の読み上げは続き──
「続けて冒険者パーティー『黒の軌跡』のアンヘリカ・アルヴォデュモンド。貴殿は──」
俺達『黒の軌跡』の順番となった。何故か俺より先にアンが爵位を叙されるか不自然を感じていると、程なく俺の順番になり
「最後に、『黒の軌跡』主導者ウィルフレド・ハーヴィー」
名前を呼ばれ俺は姿勢を正す。だがこの後に続く台詞は驚くべき内容だった!
「貴殿は迷宮『魔王の庭』にて過去の遺物である有知性魔道具を発見、その後不正行為を働いた冒険者の捕縛に貢献した。また隣国ツェツィーリア共和国においては発見された未知の迷宮の探索に従事、これを全踏破し更に未知の種族蟻亜人を発見・交渉を行う事に成功し、ツェツィーリア共和国のみならず近隣諸国に多大なる貢献をした。また同迷宮にてやはり過去の遺物である魔導頭脳と自動人形と遭遇、自動人形の所有者となり、更に『魔王の庭』の第八階層の未踏破区域において古代魔族の遺跡を発見し魔法工学及び考古学に多大なる貢献と影響を与えた。以上の輝かしい功績に対し先例を鑑みて、貴殿を伯爵に叙する。尚、貴殿の所有する有知性魔道具と自動人形も男爵に叙するものとする」
正直何を言われているのか、一瞬思考停止に陥ったが頭の中で反覆する言葉が麻痺した思考を覚醒させる。
俺が子爵じゃ無くて伯爵だと!?! そらまぁ、今まで色々してきたのは言われた通り間違い無いが、それにしても子爵を通り越して伯爵位とか……有り得ない!! それにルアンジェは兎に角、コーゼストにも男爵位とか叙されるとは!
周りに視線を巡らすとアンとエリナ達は我が事の様に顔に喜色を浮かべ、他のパーティーの面々は一様に驚きの色を隠せずにいた。更に列席している貴族の一部からもどよめきが起きていて、その中でアドルは満面の笑みで小さく胸元で手を握り締めている。それを見た瞬間、今回の一件にアドルが絡んでいるのを確証出来た! アドル、お前王様に何を言ったんだ!?!
「鎮れ!」
国王陛下がざわつく貴族達を一喝する。
「余の決定に不服があるならこの場にて申立てよ!」
その一言でシン……となる大広間。場が鎮まった事を確認すると国王陛下は徐ろに
「ではここに1人の伯爵と18人の子爵、2人の男爵が誕生した事を認めるものとする! 我がオールディス王国に栄光あれ!」
そう片腕を高々と上げ宣言し、列席している貴族達と俺達は深々と頭を垂れる。そうしている間に国王陛下は退室し、そのあと貴族達は思い思いに話し合う者、新しく貴族の仲間入りをした他の冒険者達に声を掛ける者と様々な事をしていた。その中で俺は1人脱力感に襲われていたのだった。
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兎にも角にも無事に叙爵式も終わったのでヒギンズのおっさんに声を掛けて早々に帰ろうかとしていた時
「ハーヴィー卿には国王陛下が直々に話がおありになるそうです。こちらにお越しください」
と侍従官が言葉を掛けて来た。俺は仕方なくアンとルアンジェに声を掛けると一緒に付いて行く。侍従官は大広間から続く廊下を通り応接室に俺達を案内した。
「ハーヴィー卿をお連れ致しました」
応接室の扉をノックし俺達が来た事を告げる侍従官。中からは「入りたまえ」と国王陛下の声がして侍従官が扉を開け、俺達は中に通された。豪奢な応接揃の上座にはエリンクス国王陛下が御座りになられていた。
「エリンクス国王陛下、仰せによりウィルフレド・ハーヴィー、ただ今罷り越しました」
俺とアン達は倣った通り恭しく礼を執る。
王の向かって右手には宰相が、左手には長い金髪を盛髪に纏めた貴婦人が──恐らく王妃様だな。あと1人、その隣りにやはり長い金髪を垂髪にした1人の若き青年が座っていた。その青年を顔を見た瞬間、俺は思わず叫んでしまった!
「ユ、ユリウス!?」
そこに居たのは嘗て地方都市ディリイースの迷宮『精霊の鏡』で1週間と言う期間を共にしたシャヴァネル伯爵家の嫡男ユリウスだったのだ! 何でユリウスがこんな所に?! 宰相はそんな俺を咎める様に
「ハーヴィー卿、控えたまえ。こちらに御座す方はジュリアス・フォン・ローゼンフェルト殿下である」
と衝撃の事実を言葉にする! ユリウスが王子様だって?!
「良い、マウリシオ。彼は知らなかったのだからな」
そんな宰相をやんわり押し留めるユリウス──ジュリアス殿下。と言うか宰相の名はマウリシオって言うのか…… 。
「久しいなウィル。いや、ハーヴィー卿と呼ぶべきか? 何はともあれ叙爵おめでとう」
そして笑顔で祝福の言葉を掛けてくれる。そんな所は変わらないんだな…… 。そんな事を思いながらも恭しく礼を執ろうとする俺。するとジュリアス殿下はそんな俺を押し止め
「ハーヴィー卿、そんなに畏まらないで欲しい。あの時と同じ様にして貰えると有難いんだが……」
と懇請して来る。俺は国王陛下の方に視線を向けると国王は笑顔で頷いていた。
「では……ユリウス、いやジュリアス殿下、久しぶりです」
「まだ少し堅いが……まぁいいか。ありがとうウィル、私の我儘を聞き入れてくれて」
そう言ってジュリアス殿下は手を差し出され、俺はその手をしっかり握り握手を交わす。
「良かったなジュリアス。済まんなハーヴィー卿、息子の我儘を聞いて貰い感謝する」
「ありがとう、ハーヴィー卿。私は王妃のマティルダ。ジュリアスがこんなにはしゃぐのは久しぶりに見るわ」
国王陛下とマティルダ王妃様が、そんな息子の様子を見て謝意を伝えて来る。何だか畏れ多い…… 。
とりあえず国王陛下から席を勧められたので会釈して席に着く。グラマスはマウリシオ宰相の右隣に座っていてアン達は俺の右隣に座り、左隣には何故かアドルが澄まし顔で座っていた。聞きたい事は山ほどあるが──
「ハーヴィー卿も色々聞きたい事も多いだろうが、先ずは礼を言わせて欲しい。以前ジュリアスが卿の世話になった事だ」
そう言って謝辞を伝えてくる国王陛下に「謹んでお受け致します」と返礼する俺。それを見て満足そうな顔をする国王陛下は続けて
「では今回の件についてだが──」
いよいよこの一件の核心を話されようとしている。
俺達は居住まいを正してその語られる言葉に聞き入った。
ウィルはまさかの伯爵位に叙されました! アドルフィーネが一枚かんでいるのは間違いありません! そして再会したユリウスがまさか王子様だったとは!?
そして話は次回まで続きます!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」も連載中!
地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です! 隔週木曜日15時更新! 是非お読み下さい!
http://book1.adouzi.eu.org/n259fr/




