竜の罪と黒の功
本日は第九十八話を投稿します!
今回決闘の決着が着きます! そして冒険者パーティー「竜牙」がモブの理由が明らかに!
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ガシッ!! ガキン!!!
振り下ろされた長剣をカイトシールドで受け止める! これで何度目かの攻勢を受けているのだが、ディランの攻撃はイマイチ決定打に欠けている。
『格63ではこんなものかと。技能も1つしか無いみたいですし』
ディランを視たコーゼストが念話でそんな事を報告して来るが……Sクラスの割に格が低くないか、それ?
何でも俺の格は現在73だとはコーゼストの談である。因みにアンは格71、ルアンジェは格72相当(自動人形なので推測で)、ファウスト・デュークが73で、ヤトが格74なのだそうだ。更に因みに『デュミナス』のオルトは格が76なのだそうだ。まぁ格に関しては後で聞くとして…… 。
「ぜぃ、ぜぃ、ぜぃ…… な、何で攻撃が通らねえ!?」
息を切らせながらディランが悪態をつく。そりゃ、そんなに闇雲に剣を振り回したら息も切れるわな…… 。
因みに魔法士はヤトから散々魔法を撃ち落とされ魔力が尽き、弓士は弓の弦をアンに早々に断ち切られ、張り替えてからも放つ矢は全てアンに叩き落とされ矢筒が空になり降参、神官は強化魔法をパーティーメンバーに掛けるべく詠唱している最中にルアンジェに突っ込まれて、鎌剣の峰で強打され早々に戦線から離脱していた。本当にコイツらはSクラス冒険者なのか?
俺はディランと盾役の戦士を相手にしながらそんな事を考えてしまう。それだけディラン達『竜牙』の練度は低かったのだ。対人戦闘は兎も角、こんなので本当に高位の魔物と戦った事があるのか? と疑問に思わざるを得ない。
『まぁ、そこの疑問はあとで考える事にして──そろそろ決着をお付けになっては?』
コーゼストに促されてしまったが、確かにこのままだと唯の苛めに見えなくもない。
俺はとりあえず頭に浮かんだ疑問を棚上げにして、攻撃が散発気味になったディランと大盾の戦士に向かって攻勢に転ずる!
「うおぉぉぉ!」
叫び声と共に迅風増強を発動させてディラン達に突っ込む!
「ひぃ!?」
慌てたディランは迎撃するどころか短い悲鳴をあげ大盾の影に隠れた! 盾役の戦士が構える大盾に、俺はカイトシールドの仕込み槍を打ち込み同時に武技『皇竜砕牙』を発動させる! 身体のバネの収縮と捻りが一気に解放され発生した衝撃波を脚元から腿、腿から腰、腰から上半身、そして腕へと伝え、槍を通して大盾に解き放った!
打ち出された衝撃波は嵐の奔流の様に大盾の内側に吹き荒れ、盾役の戦士とディランを吹き飛ばす! 悲鳴をあげる暇もなく大盾の向こう側に転がる2人の姿がそこにはあったのだった。
「勝負あり! 勝者『黒の軌跡』!」
セルギウス殿の声が高らかに響いた。
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「すごい! 凄いわウィル♡♡」
事の成り行きを息を殺して見守っていたエリナが、決着の声を聞いて顔に喜色を浮かべ一目散に駆け寄って来る。少し遅れて『白の一角獣』の面々もやって来る。短い溜め息を吐きながら後ろを振り向くと満足気な表情をしたアンとルアンジェと、何故かドヤ顔のヤトがこちらを見ている。そんなアン達に軽く親指を立てる俺。
「流石だね。まぁ君達なら勝てると思っていたが」
審判を務めていたグラマスがこちらに笑顔で話し掛けてきた。
「グラマス……こんな時にこんな事を言うのはどうかと思うんだが、『竜牙』は練度が低くないか?」
俺は戦闘中に感じた疑問をグラマスにぶつけると、グラマスは我が意を得たりとばかりに
「ウィル君もそう思うかい? 実はタッカー市を初めとする一部の地方都市のギルドでは、高位の階級を金で買うと言う行為が横行しているらしいんだ。まぁ飽くまで噂だったんだけど、ね……」
そこまで言い、手当を受けている『竜牙』の方を見やると
「でもこの一件で噂は本当だと実証されたかな。彼等『竜牙』は実力が伴っていない」
そして『竜牙』のリーダーであるディランの前まで歩み寄ると
「さて、君達には詳しく話を聞かせて貰う事にしようか? 洗いざらいね……」
何時に無くドスの効いた声色でディラン達に詰問するグラマス。
正直言って、笑顔が怖い…… 。
「それにしてもウィルは凄いわね! あんな武技、見た事無いわ!」
「私は以前も見たけど、本当に凄いわよね。魔法も使わずにあれほどの威力を発揮出来るなんて♡」
「ん、この前は『デュミナス』のオルトを吹き飛ばしていた」
エリナとアンとルアンジェが思い思いに話していたが、ルアンジェの台詞を聞いたエリナがピキリと固まった。
「それは本当だよ。何と言っても僕がその場に立ち会ったからね」
後ろで話を聞いていたグラマスが是認した事で更に固まるエリナと顔を青褪めさせるディラン達。何なんだ、一体??
『マスターは、先ずご自分の強さを認識すべきかと』
「うん、それは言えてるね」
疑問を顔に貼り付けていたらコーゼストから呆れ気味に言われてしまい、更にグラマスがそれを是認する。
「……俺が悪いのか?!」
「良いじゃない! 御主人様は本当に強いんだから♡」
思わず叫んだ俺の言葉に見当違いの台詞で答えるヤト。
いや、そうじゃなくてだな………… 。
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修練場から場所を移してグラマスの執務室── 。
「やはりディラン達は階級を金で買っていたよ。どうやら幾つかのギルド支部にそうした組織網が有って一定の金額を積めば望む階級を手に入れられるらしい。ディラン達から金を受け取った胴元のタッカー市の副ギルマスは捕らえたし、この不正行為を働いた輩も間もなく捕縛させるだろう。当然、否認して来るだろうが既に金の流れは掴んだし、何よりディラン達が素直に証言してくれるそうだし」
満面の笑みで事後報告して来るグラマス。いや、そんな話を俺達にされても…… 。
「勿論、君達『黒の軌跡』の今回の功績は大きい。叙爵とは別に国王陛下から褒賞を賜わるのは間違い無いね。当然、我がギルド本部からもだけど」
そこまで言ってグラマスは笑みを深める。何なんだ、褒賞って…… 。
「ところで話は変わるけど……アン君は兎も角、ウィル君とエリナ君はいつの間にそんな関係になったんだい?」
セルギウス殿は興味津々と言う顔で聞いて来る。そらまぁ、エリナが俺にべったりとくっ付いているのを見れば言われるか…… 。因みにアンは空いている腕にルアンジェと一緒に自分の腕を絡め、背中はヤトが占拠している。
「まぁ、一言では言えないが色々あって……エリナとアンを恋人にした。何か問題になる……のか?」
俺がおずおずとグラマスに尋ねると、グラマスはニコリと笑い
「いや? 我がギルドでは職員や冒険者の自由な恋愛を禁止している訳じゃないし、むしろ奨励しているから何ら問題は無いよ。ただ結婚するにしてもパーティーを1つにするにしても叙爵した後にしてもらいたいだけさ」
とはっきり言い表してくれた。それなら良かったが……だが、ちょっと待て。いま結婚とか言わなかったか?!
いやいやいやいやいや! そら将来的には有り得るとは思うが、恋人同士になって未だ2日目なのにそこまで将来設計が出来ている訳じゃないんだが?!? エリナの方を見ると紅く染めた頬に手を当て「け、結婚とか?! イヤン♡」と身悶えしている。アンはアンで「しょ、将来的には……ポッ♡」となっているし、ルアンジェは「先ずは恋人になるのが先決」と盛んに頷いている。背後のヤトは「けっこん? 何それ、食べれるの?!」とこちらもブレていない。
「皆んな、大変仲が良いねぇ〜」
そう言いながらニヨニヨしてるグラマス。あんた、絶対楽しんでるだろ!?!
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結果としてディラン達の不正行為を暴く事になり、権謀術数を用いた奴等を文字通り一網打尽にする事に繋がる事にもなった。言うまでも無くディラン達『竜牙』は昇級を取り消され同時に爵位を授けられる事も無くなった。ディラン達は三階級降格と言う処分になるらしい。
まぁ、あんな奴等がSクラス冒険者として活躍出来たとは思えないし、やはり地道に実力を付けてから1つ1つ昇級するのが一番なのだと思う──あまり俺が言えた立場では無いが。
それに何より、グラマスにアンとエリナの件を結果的に認知してもらった事が大きい。グラマスは俺達がギルド本部を辞する際に「結婚の日取りが決まったら必ず教えてくれよ」と満面の笑みで宣っていたのだが、悪ふざけも大概にして欲しいものである。
「やれやれ、とんだ1日だったな……」
ギルド本部を出て大きく伸びをする俺。女性陣に囲まれ買い物をしてメシを食べ、勝手に恨みを買い決闘を挑まれ、倒したらそいつ等の不正を暴いた── 何だ、この状況?!
「でも色々あって楽しかったわ♡」
「そうね、目まぐるしかったけど♡」
「ん、ウィルが強いのを再認識出来た」
「当然! 御主人様は強いわよね♡」
「「「「ですよね〜」」」」
相変わらず女性達は姦しい………… 。
「兎に角、『銀の林檎亭』に帰ろうか……色々疲れた……」
俺が歩き始めると何時もの定位置にアンとエリナとルアンジェとヤトが着いて来る。正直歩きにくいんだが……と言う言葉をグッと呑み込み宿への帰路に着く。
気を取り直して──いよいよ明後日は叙爵式だ!
「竜牙」はそのクラスを金で買っていました! どんな世界でも不正が横行するんですが、何事も結局長続きはしません。まさに三日天下!
そしてウィルは自分の強さに意外と無自覚であります!
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」も連載中! 地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です!
隔週木曜日15時更新!
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