色恋沙汰には揉事がある 〜拗れた恋慕〜
本日は第九十七話を投稿します!
晴れて(?)アンとエリナ2人と恋人同士になったウィル。束の間の休日を団体で楽しんでいると、トラブルが向こうからやって来ます(笑)
-97-
叙爵式までの貴重な時間を一日費やして晴れてアンとエリナベルの2人と恋人になった翌日、『黒の軌跡』とエリナの『白の一角獣』の面々と連れ立って王都の市場にやって来た。何と言うか、女性が7人(+1体)の中に男が1人だと疎外感があるんだが?
『私は計算に入っていないんですか?』
顔の横をふよふよ浮かんでいるコーゼストから抗議を受けるが無視する。因みにファウストとデュークはミニサイズで顕現していて、デュークはアンが抱き、ファウストはエリナ以下『白の一角獣』のメンバーに揉みくちゃにさせている。
『白の一角獣』のメンバーには俺とエリナとアンが事の成り行きを説明すると、「「「「リーダーをよろしくお願いします!」」」」と一斉に頭を下げられたのには吃驚した。
但し「「「「私達もよろしくお願いします!」」」」と続けて言われたのは断然却下させてもらったのは言うまでもない! 俺は后宮を作りたい訳じゃないんだ!!
「何か美味しい食べ物とかあるかしら〜♡」
ヤトが俺の直ぐ後ろを這いながらそんな台詞を口にする。本当にブレない奴だな?!
そんな事を言い合いながら市場の中を進んで行く。すれ違う人達はヤトを見て皆んなギョッとしていた。中には二度見して来る人も居て目立つ事この上ない。
『まぁヤトはどうしても目立ちますし、仕方ありませんね』
コーゼストが然も当然のように言うが、目立っているのはお前もだぞ?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ウィル、この服はどうかしら♡」
「う、ウィル、似合っているかな?」
「ウィル、こんな服があったから着てみた」
「「「「ウィルさん、これはどうでしょう?」」」」
「……皆んな、何で俺に聞く?」
市場の一番大きな服飾店に入ると、女性陣は思い思いに服を試着しては何故か俺に見せに来る。最初のうちは何かと返事を返していたが、絶え間ない女性陣の衣装発表会には流石に閉口せざるを得なかった。
「「「そこはウィルの好みに合わせようかと」」」
アンとエリナとルアンジェが然も当然のように胸を張って宣い
「「「「私達はウィルさんに選んでいただこうかと」」」」
『白の一角獣』のメンバー達はそう言って「よろしくお願いします!」と全員で頭を下げる。俺に拒否権は無いのか?! 近くではヤトが「ラミアが着れる服とか無いの?」と店員さんを困らせていた。
『この際ですから色々な意匠の衣装を見させていただきたいものですね。そうすれば私の衣装の選択範囲が増えます』
コーゼストはコーゼストで俺の肩に腰掛けながら勝手な事を言っている。つまり俺にこの衣装発表会を最後まで見届けろと?!?
『マスターの社会復帰訓練には丁度良いかと』
コーゼストがクスリと笑ってそんな言葉を口にする。
社会復帰訓練って………… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
結局女性陣は最近流行りの色のドレスシャツとワンピースとスカート、そしてハーフパンツやショートパンツにスパッツ等をそれぞれ何着か買い込んだ。結構な荷物になったので仕方なくコーゼストの無限収納に纏めて仕舞い込む事になったのは言うまでもない。
因みに俺のはと言うとアンとエリナとルアンジェが結託して選んでくれた、と言うか押し切られた! どうやら俺には拒否権は疎か決定権も無いらしい。
とりあえず服飾店を出て市場をぶらぶらと見て回る事にした。さて、先ずは──
「御主人様〜、お腹空いた〜」
開口一番、ヤトが食事を要求して来た。お前は今朝、朝飯でかなりの量のステーキをその腹に収めた筈では?!?
ヤトのリクエストもあり、仕方なく市場で早めの昼飯を摂る事にした。この大人数+俺の従魔が入れる店を探すのは骨が折れたが、大通りから1つ外れた通りにあるこじんまりした料理店が快く受け入れてくれたので、何とか食事にありつけた。王都で流行りの料理を皆んなで充分に堪能してから散策を再開する。買う気は無いが武器店や防具店や魔法店などを覗いたりしていたのだが──
「ああ!? お前達は!!」
不意に後ろから声を掛けられ振り向くと、5人組の冒険者パーティー『竜牙』の面々が立っていた。
「何でお前達がこんな所に?!」
『竜牙』のリーダーの戦士がそう言うと俺を見てピキリと固まり、みるみるうちに顔を憤怒の表情に歪めていく。
「て、て、て、てめぇ……」
そのままワナワナと身体を震わせ見た目に似合わぬ低い声を発する。何でそんなに怒るのかと思い改めて自分の状態を確認すると、右にアン左にエリナが傍らに並んで立ち、それぞれが俺の腕に抱きついていたのだ──あ、これは面倒事の予感が…… 。
「てめぇ! 俺達と勝負だ!!!」
顔から烈火の如き炎を吹き出しそうな勢いで、俺にビシッと指差して吠える『竜牙』のリーダー。
やっぱり面倒事かよ………… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺達『黒の軌跡』とエリナ達『白の一角獣』、そして名前は知らんが『竜牙』の面々は、そのままギルド本部の修練場に場所を移した。
セルギウス殿にはちゃんと断ったのは言うまでもないが、グラマスは「面白そうだね」と審判役を買って出たので頼む事にした。あまり楽しまないで欲しいんだが…… 。
「それでは只今より『黒の軌跡』と『竜牙』の模擬戦を開始する。注意事項は昇級試験時と同じく相手を故意に殺傷しない事、いいね?」
グラマスの言葉に俺達と『竜牙』のメンバー達が頷く。
「ウィルフレド! この勝負にお前達が負けたらエリナから手を引け! 二度と付き纏うんじゃねぇぞ!!」
『竜牙』のリーダーの戦士が俺をビシッと指差し息巻いているが──エリナの方を向くと両手を広げ首を振っていた。
道すがら、エリナから聞かされた話だと──この『竜牙』のリーダー、ディラン・ガートンは大陸西方のタッカー市の冒険者で、何でも王都に集まった初日にエリナ達『白の一角獣』を見るなりパーティーメンバー全員で「俺達と付き合わないか?」と声を掛けて来たらしい。中でもリーダーのディランはエリナに向かい「一目惚れした! 俺と結婚してくれ!!」と言い寄って来たのだそうだ。何とも飛んだ軟派者達である──今の俺が言うと説得力が無いが。
と言う事はだ、ディランから見ると俺はいきなり現れエリナとの仲を裂いた仇に見えている訳か。逆恨みも甚だしい…… 。
『何と言うか、若者特有の思い込みを拗らせていますね』
コーゼストが耳元で小声で話す。俺もそれには激しく同意する!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
互いに修練場の真ん中まで進み出て対峙する。『竜牙』はリーダーのディランとメンバーの1人が戦士で前衛、メンバーの戦士は大盾を持っているので盾役らしい。その後ろには魔法士と弓士が1人ずつと、更にその後ろには神官と言う正統派な編成である。
対する俺達はと言うと、まず俺は刀剣ではなく以前使っていた長剣を使う事にした。刀剣だと未だ加減が難しいからだ。アンも魔導小火砲ではなく、以前使っていた弓を使用するとの事だ。ルアンジェは何時も通りの鎌剣を使い、ヤトは薙刀を使用する。勿論ヤトには魔法を主に受け持ってもらう手筈になっている。
「コイツら、この前御主人様に敵意を向けていたヤツらでしょ?! 私が全員懲らしめてあげるわ!」
うちの武闘派さんは俄然ヤル気に満ち、物騒な事を言ってくるが何とか窘める──最高戦力のお前が本気を出したら怪我どころでは済まなくなるからな。
「では双方準備は良いかな?──始め!」
グラマスの掛け声と同時に戦闘を開始する!
『竜牙』の魔法士が短杖を突き出し、自分の目の前に火球を3つ創り撃ち出して来た──が、その火球は即座にヤトが『竜咆衝撃波』で撃ち落とした!
「「な、なに?!」」
あっさり火球を堕とされ魔法士とリーダーのディランの驚きの声が重なる。この程度で驚くとか有り得ないだろ?
魔法士が火球を撃ち出すのに時機を合わせ、弓士が矢を番えて俺を狙って放ったが、直ぐにアンが放った矢にこちらも撃ち堕とされた!
それを見て驚くディラン。弓士は続けて矢を放つがそれも全てアンに撃ち落とされ、目を剥くディランと弓士。
そのままアンは1本の矢を番えると、弓を引き絞り矢を放つ! 放たれた矢は風切り音を残して一気に飛び切ると、次の瞬間、弓士が構えていた弓の弦を断ち切った!
「ウィルを傷付けようとする者は私が全て射抜きます!」
アンから滅多に見る事が無い闘気が揺らいで立ち上がる。
『正妻の地位の力は伊達ではありませんね』
コーゼストが肩で感心したみたいに呟く。
何なんだ、その正妻力って!?!
団体デートと言う甘いひと時(笑)が急転直下、決闘になってしまいました。そらまあ周りに女の子をはべらせていたらこうもなります。つまり自業自得!
それにしても『竜牙』はメンバー全員こじらせております。
*竜牙…………大陸西方の街タッカー市冒険者ギルド所属の冒険者パーティー。リーダーのディラン・ガートンともう1人が戦士で、あとは魔法士、弓士、神官と言うバランスのとれたパーティーである。ただしモブ←(理由は次回)
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」も連載中です!地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です!
隔週木曜日15時更新!
http://book1.adouzi.eu.org/n259fr/




