16.友達との思い出も作るべきものであるはずだ。
修学旅行二日目、俺達は班行動を行っていた。
俺の属する班のメンバーは、由佳、竜太、四条、七海の四人だ。この五人で、ある程度自由に各地を回れるというのが今日の日程だ。
という訳で、俺達は観光地を巡った。特に問題も起こらず、由佳も終始笑顔だったし、今日も一日楽しかったと思う。
「今日も楽しかったね。でも、やっぱりちょっと疲れちゃったかも……」
「まあ、今日も昨日も観光した訳だからな……」
そんな俺達は、次の宿へと向かうためにバスに乗っていた。
周りでは、クラスメイトが色々と話している。大方皆、今日一日のことか、明日のことを振り返っているのだろう。
その例に漏れず、俺達も今日の話をしている。そしてこれから、明日の話をすることになるだろう。
「さて由佳、明日はテーマパークに行く訳だが……」
「ああうん。自由行動だよね?」
「由佳は、どうしたいと思っているんだ? それを聞かせてもらいたくてな……」
そこで俺は、由佳に明日の自由行動について聞いてみた。
自由行動というものの、明日の行き先は決まっている。有名なテーマパークに行くことになっているのだ。
そのテーマパークでどのように行動をしたいか。それを俺は、由佳に聞いておかなければならないのだ。
「もちろん、ろーくんと一緒に行きたいよ? 二人で回ろっか?」
「まあ、それも選択肢の一つではあると思う。ただ、四条や月宮や水原とも行きたいんじゃないか?」
「うっ……それは、そうなんだけど。でも、ろーくんと一緒がいいっていうのも本当だよ?」
「もちろんわかっているさ。ただ、俺とは今日も昨日も一緒だっただろう? 逆に、月宮や水原との修学旅行の思い出が作れていない訳だ。それはなんというか、違うんじゃないかと思う」
当然のことながら、俺も由佳と一緒にテーマパークを楽しみたいと思っている。
ただ由佳のことを俺が独占してもいいのかどうかというと、それは違う気もしてしまう。友達との修学旅行の思い出だって、作るべきものであるはずだ。
「でも……」
「別にテーマパークは、また来ればいい訳だしさ。それに関しては、昨日も今日も思っていたことではあるんだが……本当に二人っきりで由佳とまた来たいんだ」
「ろーくん……」
そこで俺は、修学旅行中にずっと思っていたことを口にした。
昨日も今日も楽しかった訳ではあるが、それでも俺は少しだけ物足りなさを感じていた。それはきっと、これが修学旅行だからなのだろう。
学校として来ているという事実は、俺と由佳にとっては邪魔なものであるような気がする。故にできれば、何もない状態で恋人としてまた来たいのだ。
「そっか……そういうことなら、明日は千夜や涼音も誘って、いつもの四人で楽しもうかな?」
「ああ……ちなみに、俺のことは心配しなくてもいいからな? 多分、一緒に楽しむ奴には困らない」
「ふふ、それならよかったな……」
俺の言葉に、由佳は笑顔を浮かべてくれた。
その笑顔を見ながら、俺は自らの現状が本当に幸福であることを実感する。
小学校の時も中学校の時も、俺の修学旅行はつまらないものだった。だけど、今はそうじゃない。俺は本当に、友人達に恵まれたものである。




