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魔王の子供 ―side リーシャ―

 ――そして、翌日、再び皇国城内。


「……貴様、リーシャ。俺は言ったよな? 証拠を見せろと。それがどういう事だ? あの金髪バカ勇者共、勝手に魔王領に向かって行ったらしいじゃねーか?」


「ああ、その事でしたわね。それでしたらご安心下さい。あの金髪バカ……いえ、勇者様方は今頃、四天王達にぼこぼこに……いえ、命をかけて汚名を、挽回しているのではないでしょうか?」


 返上すべき汚名だらけですけど……


「とにかくだな。貴様が清廉潔白な証拠は確認出来なかったんだ。一晩付き合ってもらうぞ」


「嫌でございます」


「即答かよ! 違う! 一晩付き合うってのは、そう、ちちくりあうって意味じゃなくて、勾留させてもらうって事だ。沙汰は明日決める」


「仕方ないですわ」


 バカ皇太子と、一晩語らわなくていいのは助かったわ。こんなのと一晩語り合って夜を明かしたら、バカがうつってしまいそうだから。



 ……そして、朝方わたしに吉報が届いた。


 四天王の特攻隊長ガトーからのテレパシーだ。


 “お嬢、元気か? ちゃんと食べてるか? 今日未明にな、昨日お嬢が言ってた、金髪バカ勇者と、聖女達が来たよ。


 軽く威圧飛ばしたらさ、金髪バカ勇者失禁して、逃げて行ったんだけど、放っておいたよ。多分あれ何回生まれ変わっても驚異にはならないだろうから。


 一緒にいた聖女達に、生ゴミを見るような目で見られてたよ。もう人生捨てるかもしれねーな。


 聖女達は、どうもいやいやながら来ていたみたいで、四天王のイケメン、リックにくらくらしてるよ“


 わたし、よくあんなパーティーにいられたよなあ。

 あっ、そう言えば、勇者の偵察の名目だから狩りなんて行ってなかったっけ。


「……よお、リーシャ。昨日は、最後の一時よく眠れたか? 今日がどうなるか怖くて、凍えて眠れなかったか、そうか、そうか」


 意外に眠れました。多分、魔王と一緒に行くキャンプが楽しくて、雑魚寝オーケーなので。


「おはようございます。ベルガー様。してわたくしには、どのような沙汰が下されるのでしょうか?」


「まあ、待て。まずさっきな、あの金髪バカ勇者が小便漏らして逃げ帰ってきたようだ。しかも、仲間の聖女達置きっぱらしい。バカだよな?」


 聖女達は、いいとして、あなたもバカは似たり寄ったりですわ。


「それでだ。我が国は魔王の驚異を目の当たりにしたわけだ。だからな、頭の切れる俺は最高の方法を編み出したわけだ」


 あなたと、ちちくりあうのだけはパスで。


「俺は貴様との婚約は破棄した。だから貴様にはお似合いの嫁ぎ先を、紹介してやろうと思ってな。なんと相手はあの魔王イザークだ。考え抜いた末のナイスアイデアだ。魔王と婚姻関係を結ぶ事で、魔族との友好平和条約が締結出来るからな。どうだ? 凍えてチビりそうだろ?」


 頭空っぽの割にはよく考えたようですが……


「……お聞きしますが、ベルガー様は、殿下としてそれでよろしいのですか?」


「……は? 何を言っている、それが最高の方法なのだ」


「分かりました。あなたがそうおっしゃるのであれば……」


 わたしは、すぐ様、魔王領にドナドナされていく事になった。まあ、正確には帰郷するって事だけど。

 馬車の御者も迷惑そうな顔色だ。


 悪役令嬢のわたしにのしを付けて渡す上に、何やら奇妙な手紙まで添えられている。



 “親愛なる魔王殿。


 この悪役令嬢をあなたに献上致します。金髪バカ勇者がそちらに踏み行ったのは、我が皇国とは全く関係がありません。どうか我が皇国と崇高なる親密な国交条約を結んで頂きたく思います“



 どうもあのバカ皇太子、一晩中必死に考えた書状っぽいけれど……


 わたしは魔王イザークに、こんなゴミみたいなもの読ませたくないので、街道にいたヤギにあげてきた。


 久しぶりの故郷は、楽しかった。

 魔王イザークはわたしのお父さんでもあり、見た目は20歳くらいの超イケメンだ。

 長くは生きていても、すごくカッコいい。

 しかも、魔王は生涯愛した人が、わたしの母親ノアと、その子供のわたしだけだそうだから。


 わたしだって、公の場で、魔王と婚姻関係になるのは、最高の幸せと言えるだろう。


 一週間程たち、アルトリア皇国から、使者の来場があった。


 まず皇国皇帝からのわたしへの謝罪だった。

 勝手な婚約破棄から始まり、挙句の果ての勝手な婚約相手の身売り。

 承諾なしの人身売買に同義であると。

 愚息のしたことは、到底許されるものではない。


 あーあ、だから、わたしあんなに確認したのにな。殿下としてそれでいいのかって。


 ベルガー皇太子は、その悪行を公にされ、廃嫡の上、国外追放となった。


 一方、わたしはその身を投げ出してまで、魔王との平和条約を締結させた悲劇のヒロインとして、勝手にアルトリア皇国で大聖堂に、石像が作られ、崇められているそうだ。


 そして、正式な永久安全平和条約の締結をお願いする旨だ。これでもう、わたしの愛する故郷に、金髪バカ勇者みたいなハゲが土足で入り込む事もなくなるだろう。


 魔王はもちろん、全てを快く受け入れ、今では皇帝らと連れ立って、大好きなキャンプに行く仲だ。


 キャンプでは、バーベキューの最中、聖女5人が四天王リックの取り合いしてたり、みんなでワイワイするのは本当に楽しい。


 ……そんな光景を見てわたしは思った。


 ――ノアお母さん、わたしをここで生んでくれてありがとう! 魔王イザークに出会わせてくれてありがとう!


 ……わたしは今、誰よりも幸せです!



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ……どうしてこうも、わたしの異世界線って婚約破棄ばっかなの?

 でも今のこのクロード様のいるこの世界には、どんな世界も及ばない。最高の幸せを獲得出来た世界。

 わたしは確信していた。

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