更なる窮地
さて、俺達には早急に対応しないといけない事案がある。
風紀隊の詰所まで、この素っ裸の2人をどう連れていくかだ。ルシェ城及び城下町には、特殊な魔術の行使が出来ないよう念のため、強い結界が張ってある。
俺が提案し、自分で張ったものなんだが……
いかに複雑な術式であろうと無効化するのだ。
過去の話だが、超有能なネクロマンサーが、強力なネクロマンシー(死霊術)を使い、全ての人を傀儡にかえ列強国を一夜のうちに手に入れたと言う例があるので、念には念を入れた結果、【空間連鎖】は街の外までしか使えなくなったのだ。自分の首を閉める結果になった。実は今詰所内にだけ、これまた【空間連鎖】のみ行使可能な術式を開発中だ。ちょっと間に合わなかったかー。
「クロードちゃん、何か思い悩んでいるようだけど、どうしたの? いつでも相談にのるわよ」
素っ裸で、アークが優しく声を掛けてきた。
そうだな……悩んではいるよ。お前の事でな。
「そうだ! ドイル、エドワード! 急いで街へ行って簡易的な隠せる服買ってきてくれないか? 2人分」
まあ応急処置だが、我ながら良い考えだと思う。
……手持ちは……銀貨2枚か。
「さすがクロード様です! 早速2人分の隠すもの買って参ります!」
エドワードが答えた。
そして、俺はなけなしの銀貨2枚をエドワードに手渡した。
「頼むぞ! このままじゃさすがに女の子のスージーがかわいそうだ」
「必ずやいいぶつを仕入れてくるわ!」
ドイルが力強く応えた。
あーやはりここぞという時に頼りになる仲間達。
詰所まで戻らせて、事情を説明してもエドワードはともかく、ドイルはスーパー変態のレッテルを追加されるだけだろうからな。ここは男達だけで対処した。
「クロードちゃん! ドイルとエドワードは大丈夫かしら? 心配だから、わたしもついていこうかしら?」
全て晒しているアークが声をかけてきた。
「わたしもお手伝いしたいのですが、ついて行った方がいいでしょうか?」
スージーが気を利かせたようだ。
この子は依然として全開オープンなのだが、どうしたらいい?
「いや。それが困るから、ドイルとエドワードの二人に頼んだんだ」
とりあえず今俺は全裸の男女と一緒にいるわけだが、これは風紀隊指揮官として、どうなんだろうか?
そう雑談しているうちに、ドイルとエドワードが戻ってきた。
ものの10分というところだ。お見事としか言いようがない。
「ドイル! エドワード! ありがとう!」
「クロード様! 銀貨2枚で買えるものがなくて、大出血サービスでこれを2着売って頂きました」
ちょっと拝借……
「…………」
最初は際どい危ないビキニだと思った。そして何とか詰所まではこれで……と思ったのだが……広げてみたら――
一番隠したい大事なところだけに丸い穴が空いていた。ブラもパンツも。地上波アウト的な。こういうデザインなのかな?
しかも何で女物2着なんだよ!
どうしよう……
「これなら、2着で銀貨2枚でいいよ! っと店主に二つ返事頂けましたので……」
そう言うことか。抱き合わせの在庫処分なら、仕方ない。
「――せっかくドイルさんとエドワードさんが買ってきてくれたので、これ二人で着てみたのですが、いかがでしょうか?」
いつの間にか、二人とも着ていた。
いかがでしょうか? と言われてもさー。
見えてるんだけど……完全に……大事な部分だけさ。
見方によっては全裸よりエロイなこれ。
アークに関しては、元々男だ。そもそも前提が間違っている。
そしてアークの方は、見てはいけないと理性が警告を発したので見ないようにした。
いやいやいや! まずい……どうする! 全く解決していない。
「あのー。わたしお洋服みたいな簡単な構造のものなら擬態出来るので、アーク様のお洋服に擬態しますね!」
刹那、スージーは一瞬でピンクの可愛いワンピースに擬態した。サイズもどうにでもなるようだ。男に免疫がないスージーは、女の子の下着と服にしか擬態出来ないようだ。
アークは喜んでそうだしいいか。
「スージー、ありがとう。じゃあこれ着て詰所戻るわね」
アークとスージーが融合した超絶ピンクワンピース美女が出来上がった。
スージーの一言であっさり窮地を脱してしまった。
スージーの機転で何とか窮地を脱した俺達は、他のメンバーに事情を説明し、スージーも無事、風紀隊に雇用されることになった。
詰所に戻ったところで、アークとスージーはそれぞれ無事に服を取り繕う事が出来た。
スージーはやはり普段は、美少女に擬態している方が魔力の無駄遣いがなく楽らしい。
「わたしがリーシャよ! クロード様の嫁候補です」
「わたくしがマールですわ! 同じくクロード様の嫁候補やってます」
「ミリーだにゃ――アヤネと申します」
「クロード様が連れてきたのであれば、大事なお仲間でございますね。皆様のお世話をさせて頂いております。ミミでございます。どうぞよろしくお願いいたします」
ミミはいつの間にか、皆の世話を焼いてくれるようになっていた。可愛い。便乗して嫁候補に名乗りを挙げて欲しいところだ。
「わたしここ気に入りました。皆さんよろしくお願いします!」
かなり頼りになるスライムのスージーが加入した。また賑やかになったな。




