表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/69

再認識

 えーと……これでしばらくしたら、俺が抜けた勇者パーティーに瓦解が起こるはずなんだよな。

 少ししたら、ギルドに入ればいいってことかな。


 俺はしばし傷んだ心に潤いを与えるために仮眠をとることにした――やばい! 状況が最悪だしなんか予行演習じゃない気がしてきた。


「…………」


 おっといけない。寝すぎるところだった。

 彼女たちを待たせて更に怒らせるわけにはいかないからな。


 大体瓦解の原因は、追放者が隠されたチートバフつけてたり、パーティーの底上げ知られないようにやってたりすることが気付かれず、または気付かれたとしても慣れ過ぎていて、大したことないと切り捨てられるのが大体らしいよな。


 そして追放者の再雇用を懇願して『ざまぁみろ! 今更もう遅い!』と返される。

 ただし、彼女達にそれはあり得ない。

 俺が認めた最強ガールズだからだ。精神的にも身体的にも。

 従って、俺はただ追放されただけのダメ男と言う事になるのだが。

 しかも風紀隊の指揮官が……何か社会的にもまずい気がする。


 ここで思い詰めて、深く考えることはやめようか。

 えっと次は『ざまぁ。今更もう遅い』からだな。

 考えが整理出来たところで、扉を開けた。


 そこには受付嬢を交え、3人でお茶会が催されていた。女子会のようだ。


「クロード様。『まだ早い』です。もう少し外でお待ちくださいませ」


 あれ? 優しい声色でリーシャに声をかけられた。なんだろう? 心変わりしたとか?


「あっ? ごめん」


 俺はそっとドアを閉めた。


「いいなぁ。俺も入りたかった」


 ただ、この仲間外れ感は何とも言い難い。追放された気分が味わえた。


 30分がたっただろうか。そろそろ戻ってみようか。


 再度ドアを開けてみた。

 そこにはリーシャ、マールが倒れていた。

 なんだ? 何があった? マールはともかくリーシャはそこらの冒険者では相手にならんぞ。


 ふと見るとマールの胸の谷間に頭がうまっている猫がいた。これはミーちゃんじゃないか! 

 どうやらミーちゃんに蹂躙されたことになったらしい。


 えっと……

「ざまぁねーぜ……」


「ぐ……なんて事なの……。今更クロード様の偉大さを思い知る事になるとは……」


 リーダーのリーシャが瀕死らしい。


「クロード様……追放なんて事して申し訳ありませんでした。何とかこのラスボスを退治しては頂けないでしょうか?」


 マールものってきた。ミーちゃんをラスボスに仕立て上げたらしい。


「このままではわたし達は全滅してしまいます……どうか……」


「仕方ないな」


 俺はマールの胸にうずもれているミーちゃんの背中を撫でてやった。ゴロゴロ言っている。


「まさか……そのような猛獣を一瞬で手名付けてしまうとは……

 申し訳ありませんでした!」


 リーシャが堕ちた。


「わたし達をまた助けてください!」


 マールも乗り気だ。


「どうか……わたし達の勇者パーティーにお戻りください! クロード様!」


 まあ、俺が勇者なんだが。俺いなくても勇者パーティー名乗るのだろうか?


「俺を見限った成れの果てだろう……あの時に戻りたいと言っても今更もう遅い!」


 あっ? 結構スッキリするかもしれない。


 そこへ美味しそうな焼きたてのホットケーキ、ティーカップセットを受付嬢が迷惑そうな顔で運んできた。頭にはポチが乗っているが、突っ込むのはやめておこう。


「……あの、わたしたち、お茶会の時、実はクロード様に食べて欲しくて一生懸命これ作っていました。大変お待たせしてしまい、すみませんでした。わたし達の全愛情と血と汗と涙が大量に混ざっています! 『もう遅い!』と言わずお召し上がり下さい!」


 リーダーのリーシャが輝くような笑顔で言ってくれた。血と汗と涙はいらないけどなー。


 えっ? 何この神サプライズは?

 涙が出るじゃないか……


「リーシャ! マール! お前たちは俺の最高のパートナーだ。ありがとう!」


 2人とも俺に飛びついてきてくれた。

 暑苦しいくらいだが、心の底から嬉しかった。


 どうやらこの茶番を手伝わされていた受付嬢は迷惑そうな表情だが。

 ミーちゃんとポチは喜んでホットケーキをむしゃぼり食べている。


 ホットケーキはどんなごちそうよりも俺には至高の味だった。


 俺にとっては、パーティーの絆を再認識できた最高のイベントだった。


 あれ? 風紀隊としての……

『追放ダメ! 絶対!』の啓蒙活動はどうなったの?


 そこへ現れたミミ。


「クロード様。お疲れ様でございました。今の追放予行演習全てこの水晶に、記憶させて頂きました。

 これをこのギルドの冒険者全てにお見せして、追放の恐ろしさをお伝えしようと思います」


 ……なるほど。


「クロード様、ごめんなさい。責めることになってしまって……でもちゃんとリーシャさんとマールさんには、お色気にゃんにゃんパラダイスへは、お父様の方はプレミアムコースでも承りますが、クロード様は、お触りなしのビキナーズコースを選択していた事をあらかじめ弁明しておりましたので、大丈夫です」


 うん、まさかこんな美しい2人を差し置いて、情事に走る俺じゃないさ。


「クロード様、風紀隊の活動とは言え、本気にさせてしまい申し訳ありませんでした。わたしリーシャはいつでも、あなたを信じ続けます」


「クロード様、わたくしも本当に心が痛んだのですが、これも風紀隊の活動だと言う事でしたので、思い切って人肌脱いじゃいました。わたくしマールはあなたを信じ続けます!」


 一肌だね。人肌は何かムラムラする。


 まさかの指揮官が、かつがれていた事など、どうでもいい!

 俺は情けないが、嬉しくて男泣きしてしまった。

 リーシャ、マール! 最高の追放劇をありがとう。


 こうしてこの命がけのミッションを終えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ