オレと妹女神サマと人の営みの話
つり下げられていたご主人がアルラの手によってべちゃりと地面に落下したのを見届けて、オレはスィエたちに警戒を解くようお願いした。
渋々といった感じで武器を下げた三人に、アルラも安心したのかほっと胸を撫で下ろしてくれた。だけど、さっきちょっとだけ降ろしたパンツがスカートの裾から見えてるんだが、歩きにくくはないのだろうかと思った。思うだけにした。
だって、眼福だし。
「ご主人、大丈夫かー」
猿轡を外しつつ声を掛けると、気持ち悪い笑い声を上げたご主人。
「ソーマもこれ覚えよう」
「めんどくせえから断る。自分で覚えろ」
開口一番言われると思っていた言葉をにべもなく切り捨てる。
亀甲縛りって相当手間だぞ。なんでいちいちめんどくさい縛り方をしなければならんのだ。
「じゃ、じゃあせめて手足を縛って吊上げるのだけでも……」
「……そんくらいは考えておくわ。後で滑車買ってこいよ」
「おお、やったあ!」
子供みたいにビクンビクンと跳ね回るご主人を、ゴミのような目で見ながら放置する。
その内転がってくるだろうから、放置してれば問題ないだろう。
「茶を入れるから、応接室の方で待っててくれ」
アルラたちに声を掛けて、応接室の場所を教える。
「あの、私は後ででいいかな……、あの三人恐い」
「……警戒してるなあ。実際なにやらかしたんだよ」
「ええと、軽く街五個くらい滅ぼした感じ。私の攻撃ぜーんぶあなたのご主人様が受けきってくれたけどね!」
「そりゃ、普通に考えて警戒されるわ。邪神もいいところじゃねーか」
「あなたも酷くない!?」
ぶーたれるアルラに、オレは苦笑を浮かべるしかない。
正直なところ、街を滅ぼしたことに関しても随分とリアリティがないのに、そいつが神様だっていうんだから、余計に気持ちが追いついていかないのだ。
生まれも育ちも庶民、死んで転生してからも即奴隷落ちなオレの育ちに、神様や仏様というのは介在していないのが全て悪い。
「まあ、何されるかわかんねーってんだったら、ご主人を引っ張っていけば良いよ。どうせ話ついてるんだろ?」
「うん、まあ。封印されたときのことはちゃんと謝ったし」
「んじゃ、問題ないだろ。後パンツはちゃんとはけ。気になって仕方が無い!」
「あらー、同性なのに何を気にする必要が」
「オレは元々は男だっての! 女が好きなの!!」
「でも、あなたのここからは随分と男の匂いがするけれど?」
指差されたのは、オレの下腹部。
言いたいことは分かる。湧き上がる性欲を、奴隷の時に施された調教の後遺症を解消するために、何度となく交わりをして来たのだ。
だから、男の匂いがすると言われてもなんとも思わない。男と女が一緒にいて、する事なんてそれこそセックスくらいなものだ。しない方が不健全だ。
「それがどうかした?」
「……へ?」
ぽかんと間の抜けた声と顔。
それがおかしくて噴き出してしまった。
神様を出し抜くというのは中々に気分がいい!
「気持ちいいからヤる。まあ、男とやるのも悪くないよ。慣れたら奥をかき混ぜられるのも悪くない。女の柔らかい体をずっと触ったり舐めたりするのもいいけどなー」
「な、なるほど……も、もっと詳しく聞かせてくれないかしら」
耳まで真っ赤になっているアルラを見ると、何というか可愛らしさやいじらしさが勝ってくる。混沌と破壊を司る女神といえども、人の営みには興味があるのだ。
興味があるからこそ、姉神のソールテリアを執拗に追い回し、リーダーであるご主人を付け狙ったわけだろうし。
「それはベッドの中で、だな」
「わ、わわ……そ、それって!」
期待に充ち満ちた表情を向けてくるアルラに、やはり神様といえど人の営みに興味があれば少女のような顔付きになるのかと思ってしまった。
「まあ、期待しておくといい! だがオレはそこまで上手じゃないぞ! なんせずっとやられっぱなしだからな!」
「本当に自慢じゃないわね! まあいいわ、お誘いを期待しているから! 今は先に彼らに報告をしないとね」
お茶を入れましょう、手伝うわと言ってアルラはてきぱきと台所へと向かう。
家の間取りはどうやら把握しているようだ。
もしかしたら暫くの間観察していたのかもしれない。それは今更詮索するものでも無いだろう。
しかし、女神様がご主人たちを頼ってやってくる厄介ごとは全くもって想像がつかないな




