オレとご主人サマと縛りプレイ
屋敷に戻ってきた。
辺りはしんと静まりかえり、二人が予想していた襲撃は何もなかった。
一人の時は鍛錬をしているご主人も今日は寒さにかまけて外に出ていなかったし本当に静かだった。
「な、だから大丈夫だろうって言っただろ」
オレは笑いながらそう言って、屋敷の扉を開ける。
「んふーー!!」
「あ、ごゆっくりー」
そこには縛られて海老反りに吊されて猿轡をされてるご主人がいた。
おまけに恍惚な表情を浮かべており、始末に負えない。
とりあえず扉は閉めた。ちょっと見したかぎりアレは亀甲縛りだった。一人でできるようなものでも無い。
「はああああああ……大丈夫じゃなかったわー。今日はスィエの所に泊めてくれ」
「一体何が……」
「ご主人が何物かによって吊されていた。しかもご褒美系のやり口で」
オレは見た物を素直に答えた。
悦んでるなら放置プレイが一番なんだよなあ。
「ちょ、ちょっと、あなたそれでいいの!?」
やれやれと肩を竦めて現状報告をしていたら、玄関の扉が開いて、血相を変えた少女が飛び出てくる。
朧気ながら覚えているが、多分この少女はアルラだ。
「いやだって、ご主人悦んでたし。てか先行してたマークはどこに行ったんだ……」
「既にこちらが到着していたときにはあの状態だったので、身を隠しておりました」
「うおわっ! 後ろに立つなよ!! びっくりするだろ!」
オレのぼやきに、瞬時に背後から声が聞こえてびっくりした。
コイツ、なんだかんだで痛い目に遭うの嫌いだよなあ。アルラの件にしても傍観決め込んでたみたいだし。まあ別にいいけど。ちゃんと戦闘能力があるのは知ってるし。
「えっと、無視しないでくれる?」
「ああ、すまん。クレイジーでサイコなレズの妹神様」
「ちょっと見ない間に酷い風説を受けてる気がするわ! 侮辱は大概にして欲しい物ね!」
「ああ、いや、ゴメン。思った事が口に出た。アルラ、でいいんだよな?」
本当にうすらぼんやりとした記憶しか無いし、改めて容姿を見ようにも像がぼやけるのか見よう見ようと思えば思うほどに、陽炎のようにアルラの姿が分からなくなる。
「そんなんじゃ私は見えないよ? ええと、視界の隅っこにちょっと意識するくらいじゃないとー。ごめんねー、面倒な体質で」
「そうだったのか。なるほど。おお、見えた見えた」
言われたとおりに、意識の片隅にアルラがいると思って、風景を見るように見れば、しっかりとアルラの姿が見える。
そうすると視界に、亀甲縛りで吊されてご満悦のご主人が視界に飛び込んでくるから、余りにも暴力的すぎる光景となっている。
どうにかなんねえかなあ、あれ……。
「そう、それならよかったわ」
「んぐっ!?」
かつかつと屋敷の中に戻り、アルラはふわりと浮かぶと、ブランコに載るような気軽さで海老反りになっているご主人の背に座った。
いちいち嬉しそうな反応するなよな、ご主人。なんかむかつくわ。
「その椅子、座り心地いいのか……?」
「微妙ね。ゴツゴツしてるわ」
「だよなあ」
正直揺れも恐いし、座りたいとも全くもって思わない。
でも、なんでこういうことをするのかというと、要するに示威行為なわけで。
自分の方が立場が上である事を示したいのだ。
何とかと煙は高いところが好きって奴だな。まあ何とかに入るのはバカなんだけど。
「それで、何の用なんだ? 監視の目があるの分かっててオレに近づいたよな」
「あら、それバレてるの……。意外と頭がキレるのね」
「いや、監視の目が合ったのはさっき知ったんだけど、知ったからにはそういう予想が立てられるだけだよ。一度やられた相手に近づくなんて、バカでは無い限り、よっぽどの事だろうし」
まあ、バカの可能性は否定できない。なんといっても、クレイジーサイコレズゴッデスリトルシスターなわけだし。略してCPLGLSだ。何言ってんのか分からんわ……。
「まあ、そのよっぽどって事なんだけど」
「なるほどなー。とりあえず、後ろ三人の圧が凄いから、警戒解かせるな……」
「そうして頂戴、私何もする気ないのに、その物々しさ向けられると、おしっこ漏らしそう」
「漏らすときは是非パンツを脱いで見せてください!」
反射的にそう答えてしまった!
オレより立場の弱そうな人間を見ると、どうしても反射的に物事を言ってしまう。
なんと言ったって今のところオレが最底辺だからな!
「姉様の顔とか声でそんな事言われたら……」
アルラも満更じゃなく、頬を赤らめながらスカートの中に手を突っ込んでパンツを降ろそうする。
ご主人も女神様のおしょんしょんぶっかけられたらご褒美だろう。誰も損をしないな!
「冗談はさておき」
「冗談だったの!?」
「お前は本気だったのか!」
「そうよ!」
あかん……。オレにこのアルラを御しきれる気がしない。
抱くぞっていう宣言を撤回したいです。はい。いやでも、女神様のいやらしいところ見たい……男のオレがそう囁いているのだ、くそう、どうすれば……!
「とりあえず、ご褒美はさておき」
「えぇ……こんなのがご褒美なの……」
「一部の界隈じゃ、まあ……。とりあえず、話をしたいから落ち着こうぜ」
「……そうね」
アルラは、一度ご主人の背中の、丁度背骨の辺りに立つとぐいっと片足に力を込めて飛び降りた。ついでに、ご主人のおうふという嬉しそうな吐息が聞こえる。
あのドエムは死んでも直りそうにないなあ……
「一応、あんなんでもオレの飼い主だから降ろしてやってくんない?」
目の前に降り立ったアルラにオレはお願いをするのだった。




