オレと護衛人二人と確たる宣言
さて、ミセリが要警戒の中、事の重大さへの認識が全くもって無いオレは、呑気に無警戒に帰路に着く。
その間、オレによく似たソルナという人物、そして災禍の魔女と呼ばれるアルラという人物についてかいつまんで説明を受けた。
ソルナというのは、ご主人を見いだした秩序と守護を司る女神ソールテリアが地上で活動するために生み出した依り代だったらしい。魔神討伐時力を使い果たした女神は魂だけが天に戻り、肉体は都合良くこの世界に転生を果たそうとしていたオレに与えたという寸法だ。
だから、オレの体にはソルナの肉体的特徴が如実にあるらしい。
胸の大きさや肉付き、体格なんかは少しは変わっているけれど、オレがこの世界で持つ魔法の素養なんかはソールテリア由来の物が多々あるという。
そして、災禍の魔女アルラは、混沌と破壊を司る女神アーラットというソールテリアの妹神で、所謂クレイジーでサイコなシスコンのレズ神らしい。
争いにソールテリアを駆り出したご主人とその一味を非常に恨んでいるらしく、ソルナを感じるとどこにでも現れてご主人たちのパーティをぼろぼろにしたとか何とか。
「だから、あいつ、オレには友好的に接してきたんだな」
スィエと合流して、説明を受けたオレは納得が行った。
「全く、常人なら向こう二十年は出てこれないような封印をしていたのに……」
「神様封印するならせめて、向こう五百年くらいの封印にしようぜ……」
封印術も嗜むミセリが頬に手を当て困ったように言うが、オレはそれじゃあ足りないと突っ込む。大体短い封印なんて破られるのがオチだと、オレは創作物の中で知っているからだ。
「それも考えたのだけれど、ソルナ様がどうしても甘やかしてしまってねえ」
「あー……身内に甘いのかー」
それなら仕方が無い。
誰にだって身内には甘い。神様だってそれは変わらないのだろう。
だからまあ、ご主人を逆恨みして追い回してくると言うのも分かる。
しかしだ。オレはそのソルナという女神ではないし、意識だけなら異世界の日本で死んだ一般人の元男ってだけで、特別な物は何もない。
つまり、アルラが狙っているのはオレの体だけなのではないだろうか。
「うーむ、たしかそこそこ可愛い風貌だった気がするけれど、オレの体だけが狙いなのか……エロいな……」
「ソーマって、自分が狙われているのに呑気ねー……」
警戒を厳とするスィエが呆れた様に言う。
いつものような狩弓ではなく、連射性能だけを追求した弩を装備している辺り本気の度合いが伺える。
実際考えて見て欲しい。体だけの関係。字面だけでもうとてつもなくエロい。
「なんか、急に安全な気がしてきたぞ」
「なんでそうなるの!?」
こめかみに青筋でも浮かびそうなまでのスィエの言葉の強さにオレは驚く。
「いやだって、小一時間話した限りじゃ良い子だったし……」
実際、穏やかに、そして和やかに話をして別れたのだ。
それで名前を聞いて無意味に驚いているのがミセリとスィエ、そしてご主人に連絡をしに行っているマークだ。
確かに、被害に遭ったみんなは名前を聞いて警戒をするかもしれない。でもオレにとってアルラは姿も朧気だけれど、仲良く談笑しただけの人物である。
そこまで邪険に扱うわけにも行かないと思っている。
それが呑気で無警戒であると言うことは確かだけれども、何、女神様の造りたもうと依り代とエロいことができると考えれば、とても良いとは思うのだが、どうだろう。
均整の取れた肢体に、その女神の考えが色濃く反映されているであろう女性的プロポーション。爪先から頭の天辺まで、その神様の最高が反映されているんだ。
どう考えてもエロい。
そんなエロい女神様が、オレの体だけを求めている。さらにエロい。エロいにエロいを掛ければものすごくエロいのだ! もうこれは抱くしかないだろう。
惜しむらくはオレにチンコがないことである。マジでそろそろ生やす魔法だか薬を探して貰わなければ。自在に生やせれば、ご主人を攻めるレパートリーも増える。男のケツ掘っても面白く無いけどな!! あともしかしたら生えたら萎えて襲われなくなる可能性も微粒子レベルで存在するかもしれない。
「まあ、ソーマが無警戒なのも仕方ないって、何も知らないんだから。だから私たちが頑張って護衛するしかないんだよ」
苦笑するスィエに、ミセリも溜息だけで答えた。
大体あれだ。オレが本気を出せばスィエもミセリも勝てないんだからな! ランク差の守護のせいでダメージ自体は大した物じゃないけれども、手傷を負わせる事くらいはできる。
オレだって自衛できるくらいには日に日にレベルが上がっているのである。もう随分と戦闘行為をしてはいないがな!
「スィエとミセリが警戒してくれてるのはありがたいけれど、一ついいたいことがある」
オレは買い出しの荷物を抱え治しながら、オレの前と後ろに陣取る二人に声を掛ける。
二者二様の先を促す言葉を聞くと、オレはにんまりと笑みを浮かべて、
「オレ、そのアルラを抱こうと思う!」
そう高らかに宣言した。
今のところ何の害も無いのだ。そう宣言してもいいだろう。
その宣言を聞いた二人は、やれやれと頭を抱えた。バカじゃ無いのと言われるかと思ったけれど、随分とオレの性格を把握してくれたようで、どうなっても知らないからねというありがたいお言葉だけをいただいたのだった。




