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オレとご主人サマ  作者: 来宮悠里


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オレとご主人サマと暑い日

 うだるような暑い日だった。

 どこを見渡しても、暑さに辟易している人ばかり。


「ソーマちゃん、暑くないの……?」


 道行く人々にそんな声を掛けられる。

 灼けるような陽射しの暑さじゃなくて、雨季特有の雨と雨の間の湿度の高さによる蒸し暑さ。

 数年に一度来るという物らしいが、オレにとってこの暑さは慣れ親しんだ物だ。

 ただ、季節感が壊れるのが問題だ。なぜ秋と冬の間にまた一度夏じみた気温まで上がった上で雨季がくるのか……。

 雨季が開ければ例年通り冬が来るらしいのだが……。


 しかし、道行く人々にオレに暑さを聞くのは、そういう事じゃない。


「勿論暑い。だけど、こうしないと出かけさせないと言うから仕方が無い」


 辟易する。

 暑いのだ。物理的に。

 先日のカボチャ祭りの時分にオレは攫われた。そして、ご主人が暴走した。

 それから、過保護に輪が掛かったかのように暑苦しくなってきている。


 街に出れば、手を繋ぎ腕を組み、恋人のようにひっついていないと行動すら許してくれなくなった。

 曰く、ソーマは可愛いから、やっぱり僕がちゃんとついてないとダメだよね。

 だそうだ。


 どこのヤンデレだ。


「えっと、頑張ってね……」


 オレに声を掛けてきた街の人がそそくさと退散する。

 溜息をつきながら、今日何度目ともしれない拳をご主人の腹にたたき込んだ。


「何度も言うが、この前のは狂言だっただろ!」


 正直、お互いの汗で組んでいる腕とか手がべたべたして気持ち悪い。

 オレが気持ち悪いのだから、ご主人も相当気持ち悪いと思うのだが、なぜ話さない。

 そもそも、出かけるならオレを置いて行けばいいのに……。


「狂言でもなんでも、あんなことは二度とごめんだよー。もう絶対ソーマは離さないからね」

「そんなこと言うくらいなら、隷属の腕輪で縛ればいいだろ……」

「それはできないよ!!」


 呆れて溜息が出る。

 冗談抜きで、視線が痛いし。微笑ましい物を見るような目で見るんじゃあ無い。

 見世物じゃないんだからな!


 という意味合いを込めて、オレ達を見ている人達に片っ端から威嚇して回っているのだが、どういうことか、大分別方向に取られてしまっている。

 誰か、このご主人の引き取り手いませんか。

 オレには不要な物です。

 ああ、でも、養ってくれる人は別にいて欲しいです、できればおっぱい大きくて美人な女性の方で。


「どうして頑なに縛らないんだか……所有物だってはよく言うのにねぇ」

「それは……そのー……ソーマは自立した一個人だけど、一応僕がお金を出して買った奴隷っていう立場もあるから、僕としてはできればそういうの無しにしたいんだけどもー……」

「あーはいはい、体裁って大事だもんな。そういうことにしておいてやるよ」


 まあ、やってることが明らかに恋人に近いそれなのがとても腹立つが、ご主人がそういう体裁を気にするなら、あわせてやらないといけないだろう。

 なんて言ったって、ご主人に買われた奴隷ですし、オレ。

 そう言う所はわきまえてるし、だからできれば外に出たくはないと言っているのに、ご主人がムリヤリ外に連れ出すもんだから、面倒な事になっているんじゃあないか。

 なんて、口が裂けても言えないな。

 このご主人のどこに地雷があるのか分からないが、今の生活から放り出されたら生きていける自信は全くもって無いし。

 だからまあ、ご主人のちっぽけな体裁のために、オレは気を揉むこととしよう。


 あーだめだ……、なんか思考がネガティブ方面に行ってやがる。

 絶対暑いからだ。そうに決まってる。


「ご主人、暑いから戻ろうぜ。氷室に水と果物入れておいたから」

「んー、そうする? でもまだ必要な物買い揃えてないよ」

「粗方買ったからいい。残りはまた今度で十分だ」

「そう、それならいいけど。それじゃ夕飯の代わりでも買って戻ろうか」

「気が利くな! 今日は暑いから作りたいとは思わなかったんだよ!」


 そう、暑い上にべたべたとくっついてくるご主人が鬱陶しいから変な思考になるのだ。

 ならば、その状況を改善すればいい。

 早く戻って、この状況から解放されなければ!

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