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オレとご主人サマ  作者: 来宮悠里


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33/40

オレとご主人サマと金貸しの娘

「んあっ!」


 どこだここ……。

 目を覚ますと目に入ってきたのは豪奢な天井だ。

 フカフカのベッドの上に寝かされていて、服も着替えさせられていた。


「あら、起きましたの?」

「うわあ……」


 悪趣味なドレス、けばい化粧、鼻の曲がりそうなニオイの香水、それに、極めつけはコルセットでも隠しようがないだらしのない体。

 ダメ要素満載の縦ロールがいた。

 やばいって、体のラインが出るドレスで、そのウエストラインはやばい。

 なんといったってくびれがない。どれだけ贅沢な暮らしをしてくっちゃねくっちゃねしてたんだ。羨ましいぞクソッタレ。


「どうかされました?」

「いや、なんというか……初対面の奴に言うのも失礼なんだが……お前運動した方がいいぞ……」

「まあ! なんて汚らしい言葉遣い。同じ女性とは思えませんわ」

「うるせえよ!」


 どこの貴族のお嬢様的な物言いだ。いや、しかし、この部屋の内装見る限り貴族的な何かの屋敷なのか?

 あの街でそれが考えられるのは……。


「あー……、ここもしかして、金貸しの家か」

「あら、もうバレましたの。あなた奴隷のくせに中々頭がよろしいのね」

「いや、まあ普通に街の事情考えれば予想がつくレベルだな。オレは特別頭は良くないよ」

「嘘おっしゃいな。街に繰り出せば、あなたとあなたのご主人様の話はよく耳にしましてよ? 冒険者の間でもあなたは話題になってるじゃないの」


 オレ、そこまで有名になった覚えはないんだけどなあ。大体ご主人のせいじゃね。ドエムだし。奴隷にあるまじき行為をしてるのは確かにあるしな。

 とりあえず、相手に敵意がないことだけはわかった。


「オーケー。わかった。とりあえず自己紹介といこう。オレはあんたの名前を知らない」

「あら、わたくしの名前知らなくて? この街の金貸し、ゴルドリストの一人娘、シルヴァラント・ゴルドリストよ」

「聞いたことねえなあ。そもそも金貸しに用はないからな」

「そう、それはとても残念だわ」


 全然残念そうに見えないんだけど。

 まあ、いいか。なんとなーく読めてきた。


「オレは……ソーマでいいよ。ホントは名前違うんだが、もうこっちで呼ばれることが多いからな」

「そう? なら、ソーマと」


 からからと気持ちよく笑う縦ロール。所詮一期一会だし、名前は覚える必要は無いな。

 それにこんなだらしのない女は付き合いたいとも思わない。やっぱり適度に体のラインが出てないとな!


「はいよ。んで、こんな荒っぽい真似事をしてまで、何のようだ?」

「カボチャ祭りですもの。可愛い悪戯ですわ」

「なるほどなあ。人攫いのトリックオアトリートでオレが菓子を出せたのなら、引き下がるつもりだったと」

「丁重にお迎えするつもりでしたのよ?」

「へえ」


 目を細めて、敵意を露わにする。

 嘘つきは大嫌いだ。そして、この縦ロール、意外に食えない。真意が読めない。


「先に言っておきますけれど、わたくし、荒事は苦手ですの。眠ってる間に細工をさせていただきましたわ」


 それはわかってる。さっきから、魔法を使おうとしているのに魔力が纏まらない。働きかけに答えない。

 大方、この腕輪とチョーカーのせいだろう。


「魔法使いと伺っておりますの。お食事を一緒にしたいのですが、ダメでしょうか?」

「ふむ……。確かに腹減ってるんだよなあ。今日は朝からご主人と昼までヤって……昼飯食わずでおっさんとこいったからなあ……」

「まあ、はしたない。でも、わたくし庶民の睦言に興味がありますわ」

「んー? 顔赤いぞ。なんだ、セックスに興味あるのか、やっぱり年頃の女の子ってところだなあ」

「あら、あらら? まあ、ほんと、頬が熱いですわ!」

「自覚なしかい。オーケー分かった。シルヴァラント……長いなあ」

「屋敷の物からはシルヴィと呼ばれております」


 なるほど、こいつあれだ。お嬢様過ぎて友達がいないタイプ。

 そして、自堕落な生活をしてぶくぶく肥え太ったと。

 ちゃんとした運動なり何なりすれば美人さんなんだろうよ。化粧映えしやすい顔立ちだし、こんな濃い化粧はいらない。


「シルヴィ、飯を食わせて貰う! ついでに言うと、多分ご主人が来ると思うから、ご主人の分もよろしくなー」

「わかりましたわ! 腕によりを掛けて持て成させていただきます」

「あんがと。あと、これ外してくれね?」

「あら、お似合いでしたのに!」

「奴隷時代の名残で粗相しやすいんだわ。その後処理の為に魔法が使えないと色々困る」

「そうでしたの、それは配慮がたりませんでした。すぐに外しますね」


 何があるか分からないから、枷は解いておくに限る。

 もしかしたらご主人が殴り込んでくる可能性があるしなあ……。

 なんだかんだで、地上最強に近い男が本気で暴力を振るったらどうなるかなんて、簡単に想像が付くし……。せめてヒールくらいは即座に使えるようにしておかないと。


 全く……けったいなトリックに引っかかってしまったもんだ!

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