有音の親友に出来ること 5
◇
~奏サイド~
「あれ? 有音じゃないの!?」
「鈴歌!!」
僕はキッチンにやって来たのが谷川さんだと思った。彼女と有音が久しぶりだって喜びあっている。
「どうしたの、久しぶり~!」
「鈴歌こそよ。最近元気にしているかなって旧交を温めに来たの」
それだけ小学校時代仲が良かったんだろうけどと、有音達の再会の喜びをぼんやりと見ていた。きっと小学生特有の僕と有音をはやしたてる流れから僕が有音と距離を取って、学校ではお互い最低限の話をしないって時期に出来た有音の親友なのだろう。ちなみに今はもうはやしたててくるやつなんかガキだと無視しているから有音と一緒にいろいろ話していたりするけどね。
「!? 君って……ちょっと前に……」
谷川さんに視線を気付かれたので、僕は照れつつ自己紹介する。
「響奏です……いやあ、どうも……」
有音と谷川さんで積もる話をしているのに割り込むわけにもいかないだろうと僕はプロ料理人の作っているものをながめていた。
「鈴歌のおばさんが新田シェフを呼んだのって!!」
「まあ、予想通りじゃないかな。私に栄養をつけて元気になってという気遣い……」
親友同士の話は自然と聞こえていたので、僕は話のキリが良いタイミングを図り、素直にこんな機会まずないよと誘われた事を喜ぶ。
「でもさっ、一流シェフの仲間入りしたあの人の材料を食べれるとか……」
「学校で少し気を落としていそうだったから寄ったんだけど……心配しすぎだったかな!」
「え……そうね……」
新田シェフがパスタをゆで始める。パスタとは別の鍋で豚ひき肉を炒め出し、にんにくで香りづけ。そして一口大のナスも入れる。具の方に塩コショウ適量、ケチャップ大さじ2、ウスター大さじ1、コンソメ小さじ半分の順番で味付け。その一連の動作が見事である。奏はプロの実力に息を呑んだ。
(すごいや!! こんだけ鮮やかな手つきそうそう見られないぞ。しかもこんな間近で……。僕だってあんな風に"かっこいい料理"を作ってみたい」
パスタ出来上がり直前にほうれん草やシソもパスタにからめていたので予想がつかない。
「どうぞお召し上がりを!」
食卓に用意してもらったパスタ料理に僕と有音は釘付けになる。テーブルに持ってきてもらったので2人で食前の挨拶をした。




