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あなたが運命の相手、なのですか?  作者: gacchi(がっち)


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23.救いの手

「アンジェ様!逃げないでください!!

 ジョーゼル様を返してくれるまでは逃がしません!」


「そんな!?」


どこにそんな力が?と思うほど強く腕をつかまれ、その場から去ることもできない。

ユミールがミリア様の手をつかんで離そうとしても、びくともしなかった。

離さないとばかりに左腕をぎりぎりと締め上げられて、痛みで悲鳴をあげそうになる。


「…や、やめてっ…。いたっ!!」


痛みで声を押さえられなくなって叫んだら、ふっと痛みが無くなった。


「え?」


顔をあげて見たら、ゼル様がミリア様の手を後ろからひねりあげている。

よほど強くつかまれているのか、ミリア様の顔がゆがんでいた。

ゼル様はミリア様の手を放り出すように離すと、

すぐさま私のところまできて私を庇うように抱き寄せた。


「アンジェ、大丈夫か?」


「はい…。」


「あぁ、すぐに医術室へと行こう。

 でも、その前に…ミリア嬢。」


「ジョーゼル様!」


ぱぁっと笑顔になったミリア様がゼル様に駆け寄ろうとする。

それを後ろから二人の騎士がミリア様の両腕をとって動きを止める。


「え?」


何が起きたのかわからないという顔のミリア様に、ゼル様が冷たく言い放った。


「まさかアンジェに危害を加えるとは…!

 これ以上何かする気なら、王宮の貴族牢に入ってもらうことになる。

 王族の婚約者にこんなことをしてただで済むと思っているのか。」


「え?ジョーゼル様、何を言っているの?

 私、今アンジェ様にお願いをしたところなの。

 ジョーゼル様の婚約者は私だから返してくれるようにと。」


「ふざけるな…俺がミリア嬢の婚約者になることは、もう二度とない!」


「…どうして?」


「どうして?嫌いだからだって、この前も言ったはずだが?

 婚約していたのも王命だったからで、その王命も取り消されている。

 もう一度ミリア嬢と婚約するわけないだろう。」


「…私、ずっと素直になれなくて…でも反省したの。

 ジョーゼル様をお慕いしているわ。ずっと。

 婚約する前から…ずっとお慕いしているの…だから…。」


「そんなことはどうでもいい。

 俺が…ミリア嬢を好きになることはありえない。」


「…どうして?やっと素直に言えたのに…?」



呆然とするミリア様に、一連の騒動を見ていた周囲の者たちがざわめきだした。



「ねぇ、ミリア様ってジョーゼル様のこと嫌っていたわよね?」


「ああ、そうだよな。俺も聞いたことある。

 王命で無理やり婚約させられたけど、大嫌いだって。

 しかも、本人に聞こえるように言ってた。」


「私、今年のミリア様の誕生日パーティで、

 ジョーゼル様からの贈り物を投げ返したの見たわ。

 あなたからの贈り物なんて中身を見る価値すらないって。」


「それってひどくないか?でも、じゃあ、なんでこんな真似を?」


「あれだろう?ジョーゼル様が侯爵令息じゃなくて、

 第三王子だったことがわかったから、手のひら返し?」


「ええ~それって最低じゃない?

 あれだけ拒絶しておきながら…王子様だったからなかったことに?」


「それどころか…お慕いしている?冗談でしょう?」


最初はこそこそと話していた声が、最後は聞こえるように話される。

それだけミリア様の行為が呆れられているということでもある。

ミリア様も周囲の声が聞こえたのか、顔色が悪くなっていく。

きょろきょろと辺りを見渡して、誰も味方がいなことに気が付いたのか、

小走りでどこかへと消えていった。


「…何だったんだ。」


「わかりません…急にあんな風に感情的に責められて。」


「ミリア嬢が騒いでアンジェに絡んでるって一学年のやつが呼びに来てくれて。

 …もっと早くに助けに来れたらよかったんだが…。すまない。」


「いいえ。助けてくれてありがとうございます。

 おかげであれ以上ひどいことにはなりませんでした。」


「ああなる前に助けたかったけどね。

 あぁ、二人ともアンジェを守ってくれてありがとう。」


「いいえ、完全に守ることはできませんでした。」


「もう少し用心するべきでした。申し訳ありません。」


ダイアナとユミールが神妙な顔してゼル様に謝っている。

そういえば第三王子から命令を受けているって言ってたのは、冗談ではなく…?


「アンジェに何かあったら助けてくれってお願いしていたんだ。

 言っておいて良かったよ…さ、医術室に行こう?」









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