3.出産日、決定!
二人目の性別が分かった時、私は喜んだ。
男の子だったのだ。
兄弟同性の方が良いなと思っていたのもあるし、長男でいかに男の子が可愛いかを知れた。
おそらく女の子が生まれていたら、女の子の方が可愛いと思っていたのだろうが。母親なんてそんなものである。
次男はお腹の中にいた時から、非常に活発でグルングルン動いていた。キックとパンチがこれまた強烈で、鳩尾をドガンと蹴られた時には「グフッ」とうずくまって耐えなければいけない程に。
長男の時は逆子だったのもあって、どちらかというと蹴られるのは膀胱が多かった。それはそれで困ったもんだったっけど、次男はとにかく勢いの良いキックとパンチだ。
名前が正式に決まるまでは、暴れん坊将軍と呼んでいた事を記しておこう。
そんな暴れん坊将軍の出産予定日は、四月十四日だった。
が、前回私は帝王切開で産んでいる。つまり今回も、生まれる二週間ほど前には帝王切開をしなくてはならないのだ。
「帝王切開の日取り、四月三日にしましょうか」
先生にそう言われたとき、私は唸った。
知っての通り私はど田舎に住んでいるため、地域の子供の数がとんでもなく少ない。
長男が生まれた時はベビーラッシュ世代と言われ、何と同級生が十人もいた。
そこ、笑わないで貰いたい。長男の一学年上は三人、一学年下は一人だった事を考えると、十人という数字でベビーラッシュ世代と言われるのも分かって貰えると思う。
そして、長男の弟妹世代の多くが二学年差で生まれていて、こちらも十人程いるベビーラッシュ世代になっていた。
三月までに産まれればベビーラッシュ世代の一員、でも四月に産まれれば同級生がゼロという可能性もあった。
これは……悩む。
「ちょっと決めきれないんで、家族と相談してきていいですか?」
「え、なんで? 産むなら四月生まれの方が良いよ。月齢の差が出るし」
うーむ、確かにその通り。
でももし同級生が誰もいなかったら、月齢の差がどうとか関係ないわけで。高校生になって町を出るまでは、この環境のままのはずだし。
三月生まれにするか、四月生まれにするか、私はとにかく悩んだ。自分で決められる分、余計に悩む。
やっぱり同級生は多い方が良いんじゃないだろうか。たった一人でいるよりは。
これから妊娠する人もいるだろうし、同級生がゼロって決まったわけじゃない。でも兄弟で同い年の友達というのも捨てがたい。
ぬあーーーーどうするどうする、と私は頭を悩ませた。
旦那様に相談すると、「別にどっちでもどうとでもなるって。更紗の好きな方にしていいよ」と言われた。
え、そんなもの!? だって一学年の違いで色々出会いとか変わってくるかもなのに!? というと笑われた。
「どっちの方が良い出会いがあるかなんて分からないんだから、そこまで考える必要ない」って。
それはそうだけど、決定権が委ねられてしまい、私の責任が増してしまったように思う。
どうすべどうすべ。
三月生まれか、四月生まれか。
悩み抜いた末に私が出した答えは、三月生まれにする事だった。
というのも、長男を保育所に入れる手続きをしていたのだ。その入園式が四月八日。四月三日に帝王切開をすると、四月十三日まで入院しなくてはいけない。つまり、入園式には出られない。
せっかくの長男の晴れ姿だ。どうにかこうにか出席したかった。
それと、もう一つ理由がある。
それは私の姉も妊娠していて、四月十二日だったかが予定日だったのだ。姉は遠く離れた都会に住んでおり、既に女の子を一人産んでいる。里帰り出産はする気は無いようだったので、母が姉の元に行く予定になっていた。
しかし、私も長男を母に預けて面倒をみて貰わなければならない。それも帝王切開なので十日間も。それでは、姉の出産に間に合わないかもしれないではないか。
私は色々理由を考え出して、三月に産むと決めた。
先生にそれを告げると、三月は出産が立て込んでいたらしく、すごーく嫌な顔をされてしまったが。
ともあれ、暴れん坊将軍の出産は、三月二十七日に決まったのである。




