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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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曲射の弱点?

全員を集合場所に集め、目を覚ますのを待つ。


「おいライト。いくらなんでもあれは無くないか?」

「どういう意味?」

「いや、どうもこうも、一切反撃もさせずに一方的過ぎないかなって思うんだが」

「そうかな?もう少し迫られてたらボクも正面から戦わざるを得なかったよ?シドさんも分かってたよね?」

「まあ、俺はな?」

しかし、彼らはライトの曲射の弱点を知らない。

ライトの姿も見えないのに一方的に撃ち込まれるのは恐怖以外の何物でもなかっただろう。

何人か心が折れても可笑しくないのでは?とシドは考える。

<大丈夫でしょう。ここで折れる人達がここまで耐えられるとは思えません>

<まあ、そうかもな>


しばらく経つと目を覚ますものが現れる。

一番最初はタカヤだった。目を覚まし起き上がると、ライトを見つけ言い放つ。

「オマエあれはないだろう?!」

シドもその気持ちはよく分かった。

「シドさんよりマシじゃない?」

ライトは平然と反論するがタカヤは止まらなかった。

「いや、シドさんもあり得ないけど、無力感を叩き付けてくるのはお前の方が酷かったぞ!!」

タカヤにそう言われ、ライトはちょっとやり過ぎたかと思ったが、怯まずに反論する。

「それはシドさんなら仕方ないってどこか諦めてたんじゃない?ボクならそこまで酷いことにはならないだろうって無意識に考えてたと思うよ?」

シドはそうだろうか?と思いながら2人のやり取りを眺める。

「・・・いやそうかもしれないけどさ・・・・」

タカヤの反論も小さくなっていく。

すると、いつの間にか目を覚ましたレオナとユキが起き上がって来た。

「・・・・まさか防護服のシールドを使って跳弾を撃ち込んでくるとは思わなかったよ」

「はぁ~、ライトもずいぶんシドさんに染まったんだね・・・・」

レオナは常識外れの攻撃にしてやられたといった雰囲気で言い、ユキは残念な人を見る目でライトを見た。

「ユキ止めて、その視線はボクに刺さる」

シドは、俺には言葉が刺さったぞと思った。

「ライト君、君が使用してる情報収集機って教えてもらってもいいかな?」

レオナはライトの情報収集機に興味が湧いたのか、ライトに聞いて来る。

「ボクのは唐澤重工製のIFG-EX80ですよ」

「EX80か・・・」

レオナはその機種を知っていた。

というより、シーカー業界ではかなり有名な機種である。唐澤直下の販売店で精密な調整をしなければ、使用した瞬間脳を焼かれると一時期話題になったのだ。

当然正規店で購入し、調整を施せば非常に優秀な性能を持つことも併せて広まっているが、唐澤重工の名前が購入することを躊躇わせる大きな要因となっている。

なぜあの企業が潰れないのか不思議だが、使いこなせば非常に優秀である商品をリリースする。この一点で最前線でのファンが多いという事実もある。

「ライト君、私も出来るように成れるかな?」

レオナは自分より年下の、さらに低ランクのシーカーに教えを乞うのは屈辱と言ってもいい。

だが、ライトが自分とは隔絶した実力を保有しているのは疑いようがない事実。訓練に参加しているのだからここは恥を捨てて貪欲に技術を取得することにまい進するのが合理的と判断した。

「そうですね。体感時間操作と並列思考が出来るように成れば可能だと思いますよ?」

並列思考は漠然とだがレオナも出来る。それが出来なければシーカーとしてランク40に到達することは難しい。だが、時間圧縮と併用するのは躊躇われた。

時間圧縮は並列思考よりも脳の負担が大きいらしく、短時間でも頭痛が襲い掛かってくるのだ。

「二つも使うのって危険じゃない?頭痛が凄いことになると思うんだけど・・・」

「その為の回復薬じゃないですか。あ、安いのはダメですよ?100万コールからの物を使ってください。それならキッチリ鍛錬をフォローしてくれますから」

「回復薬か・・・・鍛錬で使用するって考えが無かったんだよね。この訓練に参加してから発見が多いわ」

「それなら開催して良かったです。タカヤとユキに声を掛けられた時は、彼らの集中訓練の予定でしたから」

ライトの言葉を聞き、タカヤとユキは震えあがった。

この訓練合宿が開催されなければ、バケモノ2人にひたすらボテクリ回される1ヶ月だったのだろう。

しかし、ユキもライトの技術には興味があるようだ。

「ライト、私もその訓練方法教えてもらっていいかな?」

「うん、大丈夫だよ。今日の夕食後、2人に教えるから寝る前にやってみるといいよ」

「ありがとう、助かるよ」

「ありがとね、ライト」

2人から笑顔でお礼を言われ嬉しくなるライト。

「どういたしまして」

ライトも笑顔で返答を返す。

<おいイデア。見たか?ライトの野郎、女性2人との夜の約束を取り付けやがったぞ?>

<そうですね。これがプレイボーイと呼ばれるやつでしょうか?>

<そうだろうな。見ろよあの嬉しそうな顔>

<2人とも、変な話しないでよ>

シドとイデアが謂れのない話を繰り広げているところにライトは抗議の声を上げる。


そうしていると、他のメンバーも目を覚まし始める。

そして、皆一様にライトとの模擬戦について話し始めた。


「・・・・なんだったの?私、いつの間にやられたわけ?」

不意打ちと言っていい状況でやられたアリアは呆然としてつぶやいた。

「私も・・・やられた記憶がない・・・」

同じくミリーも頭を捻りながらつぶやいた。

「ライトはエネルギーシールドで跳弾を行いながら皆を攻撃したんです。全くの無警戒の状況で狙撃されたので、何も覚えてないのはしかたないですよ」

2人にユキはその時の状況を説明した。

「跳弾?!」

「!やっぱり!私の予想は正しかったのね?!」

アリアが驚き、ミリーは自分の予想が正しかったことに嬉しそうに声を上げた。

「ライト・・お前凄く強くなったんだな・・・」

キサラギは、以前のライトとは見違えるほどの力を付けたことに素直な賞賛の声を上げた。

「そうだね、シドさんと一緒にいるとあれくらい出来ないと話にならないんだ」

ライトはそういい、シドの方を見る。キサラギもシドの方を向き、納得したように頷いた。

「そうだろうな。・・・全く、あの時シドと和解した・・・いや、シドと話をしようとしたボスの目は正しかったわけだ・・・」

キサラギはこれまで以上にボスの言葉に従おうと考える。

「でも、あんな戦い方されたら手も足も出ないな・・・」

ラインハルトがそう呟き、タカヤとアズミも同意した。

「そうだな・・・動きもライトの方が早いし、逃げ回られたら対処のしようがないぞ」

「そうね、最初から遮蔽物の無いところに・・・・でもそれじゃーハンター5の連射力で殲滅されちゃうのか・・・八方塞がりね・・・」

「皆ごめんね?私がライト君の跳弾攻撃の可能性を否定したから・・・」

レオナがしょんぼりしながら皆に謝罪する。

「いえ、俺も否定しましたし、なによりエネルギーシールドを使って跳弾攻撃を行おうなんて思わないですよ」

「そうだよね。でもそれでやられたんだ・・・やっぱりバケモノの相棒はバケモノってことね」

ラインハルトとアリアがそういい、全員が深く頷く。

「でも何か対策を考えないと、今日と明日、一方的にやられて終わっちゃいますよ?」

「そうなんだよね・・・どうしようか・・・」

ユキが何か対策を立てようといい、レオナが頭を抱える。

そこにシドが少しフォローを入れる。

「ライトの跳弾攻撃も弱点はあるぞ。それはさっきの模擬戦でも現れてた。最初からよく思い出してみろよ」

「弱点?」

ユキが不思議そうにシドを見る。

「ああ、誰がどのタイミングでやられたのかとか、ユキとレオナさんは情報収集機でライトの動きも分かってただろ?その時の状況を冷静に分析するといいぞ。今回は長めに1時間の休憩を取るから、さっきの戦闘データを見ながら考えてみると良いぞ」

シドはそういい、ライトと共に車の方へ歩いていく。


「・・・・・・弱点か・・・みんな、さっきの戦闘データを送信するから、全員で考えてみよう」

レオナがそういい、全員のコンタクト型ディスプレイに先ほどの戦闘状況を再生させた。


「・・・・・これは、一度に攻撃できるのは3人~4人までみたいですね」

「それに、あまり連続では出来ないのかな?1回攻撃した後は暫く移動に専念してる・・・いや、たぶん移動しながらは出来ないんじゃないかな?」

「なるほどな・・・これは跳弾と言うより、弾道を曲げていないか?それに3回以上曲げることは出来ないんじゃないか?」

ユキ・レオナ・ラインハルトは先ほどの戦闘データを閲覧しながら意見を言い合う。

「それと、さっき食らった感想なんだが、2回曲げた弾丸の威力が1回曲げた弾丸より落ちてるようだぞ。俺は岩の隙間を通して飛んできた弾丸に動きを止められて、上から来た弾丸で止めを刺されたからな」

キサラギは自身がくらった感覚を伝える。

「なるほどね、威力が落ちるから3回以上曲げないのか、技術的に曲げられないのかは判断付かないけど。カーブさせる限界数が分かってるならどこから飛んでくるのかは大体予測できるわね」

「そうだね、次の模擬戦はライトの位置と自分の位置をよく確認して行動しようか。それで、遮蔽物の少ないところまでどうやって追い込むかだけど・・・」

アズミとレオナがライト対策を1つ1つ挙げていく。

「一方向から追いかけても意味ないですよね。私たちよりライトの方が速いですし」

「でも散開した状態で戦うと各個撃破されるぞ?ハンター5の投射量は個人で対応できる限界を超えてる」

「そうだよね~・・・でも固まってたら釣瓶撃ちにされるし・・・・」

タカヤとユキも頭を抱える。

「ならさっきみたいに布陣して、近づいてきたタイミングで散開すれば良いんじゃない?一番移動スピードが速い人がライト君の後方に回り込んでいく感じで」

ミリーがそう提案し、全員がそれしか方法は無いかと考える。

「よし、その方向で戦ってみよう。ライト君の身体能力自体はシド君みたいに理不尽じゃないみたいだから、絶対に追いつけるはず」

「そうですね。何度も戦って対策を確立しましょう」


全員は気合を入れて、2回目の模擬戦へ挑んでいくのであった。


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