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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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新たな訓練参加者?

キル判定を受けた全員と、生き残りであるレオナとタカヤが集合場所に集まった。


すでに全員が目を覚ましており、回復薬を服用していた。


「ああ~~~・・・負けた~~」

アリアは悔しそうに顔を歪めていた。

「途中までは順調だったんですけどね・・・ラインハルトさんに梃子摺らされました・・・」

「いや、4人で来られたらどうにもならないな・・・・あそこまで粘れたのは運も大きい」

ユキも残念そうにしており、ラインハルトは先程の展開を思い返して自己反省しているようだった。

「・・・てかレオナは流石だな・・・ランク43の実力ってのをまざまざと感じたぞ」

キサラギはそう言いレオナに視線を移す。

そこには頭を抱えて座り込んでいるレオナがいた。

「・・・大丈夫ですか?」

タカヤが少し不安そうにレオナに話しかける。

「・・・・・・頭イタイ・・・・」

小声でそういい、顔を上げようとしないレオナ。

するとシドが近寄ってきて症状を聞いてくる。

「どんな感じに痛みます?」

「う~ん・・・キリキリ?ズーン?・・・・良く分からないけどなんかそんな感じ」

レオナは要領を得ない返答を返すが、シドは心当たりがある様だった。

「ああ、初めて体感時間の圧縮をしたからだな。回復薬が効いてきたら治まるよ」

レオナは聞きなれない言葉を耳にし、顔を上げシドを見上げる。

「体感時間の圧縮?」

「そう、終盤の方で周りがゆっくり動いている様な感じしなかったか?」

シドは頷きながらそう聞いてくる。

「・・・う~ん・・・あったね・・・弾丸が見えてた・・・」

「極度の集中状態になると、体感時間を圧縮して周りの景色がゆっくりに見えるんだ。俺やライトはその技術を使って弾丸を避けたり、照準を正確に合わせたりしてるんだよ。レオナさんはその技術に触れたってわけだな」

「・・・そんな事できるの?」

「実際にやっただろ?訓練すれば時間も伸びるし、圧縮率も上げられる。次第に頭痛も無くなるよ」

シドの言葉を聞き、レオナは自分に起こった現象が偶然や奇跡では無く、自分自身が起こしたものだと認識した。

(・・・こんな技術があったなんて・・・)

この技術を体得すれば、今まで以上に危険な場所でも活動できるようになるだろう。これは是が非でも会得しておきたい能力だった。

「その訓練ってどうやるんです?」

ユキがレオナより先にシドに質問する。

「ん?ん~・・・ものすごく集中するとしか・・・その辺りはライトに聞いた方が分かりやすく教えてくれると思うぞ?」

ユキは「そっか」と言ってライトがいる方向を向く。

向こうは向こうでハードな訓練を行っているらしく、相変わらず死屍累々の様子だった。


「さて、そろそろ休憩は終わりだ。また組み分けして模擬戦開始だぞ」

シドはそう言いながらクジを差し出した。


組み分けが決定し、そろぞれのチームが岩場の中へ駆けこんでいく。


<これはユキにとってもいい経験になるでしょう>

<そうだな~・・・さっきの戦いは惜しかったし、レオナさんが凄かったな>

<そうですね。ランク43の底力といった所でしょう>


シドは再び空中に駆け上がり、模擬戦の様子を見守るのだった。




日が傾き始め、4回目の模擬戦が終了した。

最後の模擬戦は双方粘りに粘り、結局決着がつかず、引き分けと相成った。


「うぅ~~・・・・一回も勝てなかった・・・」

ユキは様々な作戦を立て、レオナチーム責め立てたが、3敗1分けの結果に終わってしまった。

「最後のは惜しかったよな~。あと1分あったらラインハルトを仕留められたのにな」

タカヤがそういい、先ほどの模擬戦を振り返る。

「言うね。俺だって1分あったらお前を沈められたんだがな」

ラインハルトはタカヤに笑いかけながら言葉を返す。

「いやユキは凄いよ。私、指揮には結構自身あったんだけど、毎回ヒヤッとさせられるんだから・・・私の欺瞞情報も対処されちゃうし」

「ジャミングに強いタイプの情報収集機を選んでますから、でも最初はなかなか難しかったですけど」

レオナとユキはシーカー同士の戦いでバチバチにやりあっていた様だ。

「・・・・私たち、毎回やられてたよね・・・」

「そうね・・・まだまだ精進が足りないって事かしら・・・」

「・・・・・私って成長してないのかな・・・・」

「お前らはまだいいじゃねーか。俺なんか誰1人倒せなかったんだぞ?」

アズミとミリーとアリアは討ち死に率100%を出し、キサラギはさらに討伐数0を記録した。

その為、4人とも暗い顔をしている。

「アズミさんとミリーさんはあの4人と比べて戦闘経験が少なすぎるってのが問題だろうな。アリアはほんの少し前のめりになる癖がある。もう少し周りをよく見る事だな。キサラギは動きながら撃つって事になれる必要があると思うぞ、静止状態の射撃は正確なのに、動きながらになると途端に大雑把になるからな」

シドはしょげた4人に声をかける。

「自分の欠点を補うのか、長所を伸ばすのかじゃない。欠点を克服して長所を伸ばしていかないとな。その為に訓練に参加してるんだし、たっぷり研鑽してくれ」

「・・・・普通、長所を伸ばして欠点は仲間と補い合うものなんじゃないの?」

「それだとプラスマイナス0だろ?良くて1+1=2にしかならない。上を目指すなら1+1=3にも4にもしないとな」

「ふ~ん、ライト君とのコンビを組んで3や4になってるんだ」

「そうだな。システム系はあいつに任せっきりだが、戦闘についてはアイツもかなりやれるようになってきたからな。一度戦ってみるか?びっくりするぞ?」

「シド君より驚くの?」

「驚くと思うぞ。たぶん俺以上に苦戦するんじゃないか?」

シドがライトをその様に評価し、4人は驚く。

最初の戦闘訓練で、シドは本気で戦ってくれたがライトはそれ以上に強いというのだろうか?

「なあシド。ライトってそんなに強くなったのか?」

「ああ、強いぞ。情報収集機とシールドスーツを着たアイツはなかなか手こずるな」

キサラギはドーマファミリーに居た頃のライトを知っている。そのライトが、シドが手こずるほど強いと言われても上手くイメージ出来なかった。

「明日はライトに相手してもらったらいいと思うぞ、ホントに意味不明な攻撃してくるからな。楽しみにしとけよ」



明日の予定も決まり、全員回復薬で疲労を誤魔化しながらで宿まで歩いて帰っていく。


訓練開始からもうすぐ2週間が経つ。


全員が訓練前から見るとかなり成長しているのだが、まだまだ上を目指せる可能性がある。


訓練期間はあと半分。


意地でも食らいついてダゴラ都市有数のワーカーに成りあがってみせると静かに意気を上げるのであった。


レオナ視点


本日の訓練を終え、宿の自室で寛いでいる。

この宿の料理は美味しいし、お風呂は回復成分入りで非常に気持ちがいい。

ギルドの入浴場もこうならないかと夢想しながらベットに横になっていると、情報端末が着信を知らせてくる。


誰だろ?と思いながら画面を見ると、そこにはヤシロの名前が表示されていた。

久方ぶりに相棒から連絡が入り、少し笑顔を浮かべ通信を繋げる。


「や~、ヤシロ。調子はどう?」

軽く挨拶をと声をかけると、ヤシロは大声で言ってくる。

『レオナ!お前今何してる!!!』

情報端末から顔を放し、顔をしかめるレオナ。

「何って宿の自室でのんびりしてるよ?ここいいね。ご飯は美味しいし、お風呂も最高だよ♪」

『最高だよ♪ じゃねーよ!シドとライトが教官をやってる訓練ってなんだ!!』

ようやくレオナが送ったメッセージに目を通したようだ。送ってから12日も経っているというのに悠長な事である。

「ああ~その件ね。うん、今参加してるの。後2日で私はギルドに戻らないとだけど、凄くためになったよ」

レオナは訓練に対する率直な感想をヤシロに伝える。

『ギリギリギリ・・・・・ふ~・・・・・・まあいい、それは天覇でも実施できそうか?』

なにやら歯ぎしりをしながらも自分を落ち着かせたらしいヤシロがそう質問をしてくる。

「ん~・・・難しいと思うよ。誰が教官役をするのか?って事もあるし、お金もかかる。信じられる?一箱100万コールの回復薬を全員に配布してるんだよ?それに・・・最大の問題は、訓練生が付いてこられないと思うな」

『100万コールの回復薬?!それを訓練に使うのか?!』

「そう。私も渡されたときは信じられなかったけど、あれは必須だね。私も最初の一日で心が折れかけた。自信なんて木っ端みじんだよ・・・・・・でも、今ならヤシロとでも戦えるんじゃないかと思えるくらいのモノは得た」

『ッ・・・・・・・・そうか』

レオナの言葉にヤシロは息をのむ。

何時の頃からかレオナはシーカーとして遺跡に潜り、戦闘ではヤシロから一歩引いたところからフォローする形を取るようになっていた。しかし、今はヤシロとでも戦えるとレオナは言っている。

たった2週間足らずで一体どのような心境の変化だろうか?とヤシロは考える。

『そりゃ~ハードな訓練だったんだな』

「ヤシロが想像してる以上にね。凄いよ?まだランク10台の子が私と模擬戦をやって、追い詰められたんだから」

レオナは嬉しそうにユキの事を話題に上げる。

『才能あるハンター志望ってか?』

「違うよ。シーカー志望の子。前にシド君の訓練を受けたことがあるらしくってね。戦術眼がずば抜けてる。危うく負ける所だったよ」

『・・・・・・指揮能力でお前に匹敵してるってのか?』

「うん、全勝してるけど・・・これからは分からないかな。1回は時間切れで引き分けたし」

『その割には嬉しそうに話すな』

「そうかな?・・・・そうかもね。・・・・嬉しいんだ、私。なんだか、ワーカーに成った時の事を思い出してくるよ」

『なら、もっと上に行けるな』

「・・・・そうだね。このまま足踏みしてたら後輩たちに追い抜かれちゃうな」

『俺は2日後にはダゴラ都市に戻る。また詳しい話を聞かせてくれ』

「わかった。またね」

『ああ』


通信を切り、レオナは目を瞑る。

明日も訓練がある。今度はライトと戦うらしい。

なんでも、シド以上に驚くことになるのだとか・・・・きっとそうなるのだろう。

久しぶりにワクワクが止まらなかった。

レオナはこの訓練に誘ってくれたキクチに感謝を捧げ、明日に向けて体を休めることにした。



ヤシロ視点


通信を切り、久しぶりに話した相棒の楽しそうな声に、ホッとする様な、妬ましいような。


いや、妬ましい。自分は面倒で退屈な任務を振られたのに、なんで相棒だけ成長の機会を手にしているのかと。

こんな事なら、他の誰かにこの仕事を押し付けて俺もシド達の訓練とやらに参加した方が何倍もマシだっただろうと考え、目の前でコーヒーをすすっている人物に嫌味をぶつける。

「おいヤナギ。この件はもう終わりでいいんだよな?俺はダゴラ都市に帰るぞ?」

「ああ、クライアントの了承は得ている。なんなら今すぐにでも出発してくれて構わないぞ?」

「ぬかせ。明日の便で帰らせてもらう。・・・・まったく、つまらねー依頼持ってきやがって・・・」

「そうか?なかなか報酬は良かっただろう?」

「あんなひよっこにもならないヤツを連れて遺跡に潜れなんて依頼、報酬が悪かったらぶん殴ってるところだ・・・」

「そういうなよ、才能はあるんだろう?」

「ああ、そうだな。才能だけならあるだろう。でも磨かないと素材のままで燻るか死ぬかのどっちかだな」

「辛辣だな」

「事実だからな」

ヤシロはダゴラ都市から西方に行った所にある、イワミ都市に滞在していた。

それはイワミ都市の幹部から、自分の子供を護衛して遺跡に潜ってくれと依頼が入り、天覇がそれを受けてしまったのだ。

その時丁度暇にしていたヤシロにお鉢が回ってきてしまい。その為ダゴラ都市から2日かかる場所までやってきていた。

「俺は彼女をつれてダゴラ都市にもどるからまだ数日滞在する事になるけどな」

ヤナギは幹部の子供。要するに先日まで護衛していた人物をダゴラ都市にまで護送する任務を受け、彼女の準備が整うまでの間このイワミ都市に滞在しなければならない。

「そうかそれはご苦労さん。俺はさっさと帰って憂さ晴らしに行くとするぜ」

そうとうストレスが溜まっていると見受けられるヤシロの態度に、ヤナギは苦笑いを浮かべ彼女の予定をヤシロに告げる。

「そんなこと言ってていいのか?彼女が天覇に所属したら面倒を見るのはお前なんだぞ?」

「は?!なんだそりゃ?!今まで通り教育部門に投げればいいだろうが!!」

「彼女の希望だ。良かったな。憧れらしいぞ?」

「止めてくれ・・・・たった一週間程度一緒に遺跡に潜った程度で懐かれたんじゃたまったもんじゃねーよ・・・」

「その前に最低限の訓練もしてやったんだ、最後まで面倒見ろよ」

「俺は教官じゃねーんだ、面倒見るって言っても唯の子守になるだけだろ。ワーカーの仕事なめんなって話だ」

「教育・事務派閥はお前に投げるつもりの様だぞ?古参派の筆頭扱いのお前が万が一彼女を死なせたら、優勢な今の状況がひっくり返るだろうな」

「・・・チ!ただの嫌がらせに人の命を使うんじゃねーよ・・・・・・・・・ん?」

(今シドとライトが訓練やってるってレオナが言ってたな・・・・そこに放り込んだら良くないか?)

ヤシロは、レオナから送られてきていたメッセージと先程の会話を思い出す。

あのレオナが折れそうになる訓練だ。かなり厳しいのは間違いない。そこに放り込んで、クリア出来なかったらワーカーになるのは無理だと言うのはどうだ?と考える。

(意外と名案じゃないか?ワーカー志望のやつらも参加してるみたいだし。丁度いい口実になるな・・・)

ヤシロは頭に浮かんだ迷案を実行に移そうとキクチに連絡を取ろうとするが、今は話し中で繋がらない。

それに、彼女がダゴラ都市に到着するまでに、その訓練が終了してしまえば何の意味もないため、目の前に座るヤナギに彼女の準備を急がせるように言う。

「おい、ヤナギ。あいつに急いで準備しろって伝えろ。明日の昼に出発する。かなりかっ飛ばして帰るからその覚悟もだ」

いきなりヤシロがそんなことを言いだし、慌てるヤナギ。

「おいなんだ急に?明日の昼って・・・無理だろそんなの・・・」

「やれって言えよ。ワーカーになるんだろ?急な対応力も必要だし、今ダゴラ都市で特別訓練が実施中だからな、それに耐えられたら俺のチームに入れてやるって言え。その訓練に間に合わなかったら、教育部へ強制編入だって伝えろよ。俺はキクチに詳細を聞いとくから」

ヤシロはそういうと席を立つ。

情報端末では無く、ちゃんとした通信室に向かうようだ。

ヤシロからの急な指示に困惑するが、言われたのならやらなければならない。

ヤナギは彼女に連絡を取り、明日の昼に出発する事を伝え、特殊訓練の事も伝えた。

直ぐに準備を終わらせると返事があり、自分の予定もだいぶ繰り上がったことに溜息を吐き出すヤナギ。


ヤシロの方もキクチに連絡が繋がり、追加メンバーを送り込みたいことを伝える。

キクチの側にシドとライトも居たのか、直ぐにOKの返事が返ってきて明後日から参加すると伝えると、自身もダゴラ都市へ帰還する準備に入る。


こうして地獄のブートキャンプに新たな人員が放り込まれることになった。


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