表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
93/217

ユキチーム VS レオナチーム

それから5日間、毎日同じ条件でマラソンと戦闘訓練を繰り返す。

シドの装備も、A60と刀を装備した状態だったり、A60だけで戦ったりとバリエーションを増やしていった。


8人のチームワークはかなり向上し、今では30分の時間制限内で、約半数が生き残れるほどになっている。

1番生存率が高いのはレオナとタカヤだった。

レオナは今までのワーカーとしての経験を総動員して戦い、危機回避能力にさらに磨きがかかった様だ。

逆にタカヤは持ち前の体格と耐久力で、攻撃を食らっても耐えきる方向に成長している。

アリアに「あんたも人間離れしてきたわね・・・」と言われるほどに頑丈になっている。


<イデア、タカヤの頑丈さは異常じゃ無いか?>

<そうでもありません。回復薬での超回復と成長の方向性は個人によって異なります。ユキやレオナは俊敏性が特に上昇していますし、アリアとラインハルトは満遍なくオールマイティに成長しています。アズミはやや俊敏に長ける様ですが、平均型。ミリーとキサラギは頑丈さと力を中心に上昇していますね。タカヤの場合は頑丈さとパワーに特化した結果と言えます>

<身体拡張と似たような結果になってないか?>

<もともと身体拡張技術は回復薬に含まれるナノマシン技術を応用しています。専門の身体拡張には劣りますが、似たような効果が出るのは当然でしょう>

シドはふ~んと納得しながら、そろそろこのメンバー同士を戦わせてみるかと考える。

<メンバー分けはどうしますか?>

<・・・くじ引きとかで良いんじゃないか?>

<ずいぶん適当ですね>

<ユキとレオナさんは別れてもらうとして、それ以外はぶっちゃけ考えるのめんどい>

<そうですか・・・>




「え?私たちで別れて模擬戦するの?」

シドの提案にレオナが反応する。

「ああ、このまま俺とやり合っても、俺特化の部隊みたいになられても困るからな。次からはレオナさんチーム・ユキチームに分かれて模擬戦をやってもらう。俺はキル判定になったヤツを回収していくから、時間いっぱいまでやり合ってみてくれ」

「メンバー分けはどうするの?」

ミリーがそう聞いて来たので、シドは「ん」とクジを差し出す。

「・・・くじ引き?」

「赤がユキチームで青がレオナさんチームだ。ほれ、引いた引いた」

シドがそういうと、ユキとレオナ以外がクジを引いていく。


その結果、ユキチームはアリア・キサラギ・アズミ、そしてレオナチームがタカヤ・ミリー・ラインハルトとなった。


「「「「・・・・・」」」」

見事にオールマイティチームVS戦闘チームに振り分けられてしまった様だ。

「これは流石に厳しくない?」

アリアが不満をこぼすが、変更は無い。

「良く考えて戦えよ?勝機を作るのも実力の内だからな」


10分後にスタートだとシドはいい、全員を岩場に送り出す。

それぞれがチームに分かれて移動を開始し、ユキとレオナをリーダーに作戦を立て始める。



模擬戦開始となり、シドは自分が発生させたエネルギーシールドの上に立ち、戦場を見渡しながらイデアと話していた。


<レオナさんはそれぞれ散開させて迎え撃つ構え、ユキはある程度纏まって積極的に攻撃を仕掛ける作戦みたいだな>

<その様ですね、ユキチームの動きは恐らく各個撃破なのでしょう。レオナチームとは個人の力量が離れていますので理にかなっています>

<レオナさんもユキチームの動きは分かってるだろうから対策を取って来るだろうけど・・・・はてさて>



ユキ視点


ユキの思惑はシドとイデアの推測通り、複数対1での各個撃破だった。

まずはレオナに突撃する動きを見せ、敵メンバーが寄って来たところを全員、もしくは二手に分かれて敵の1名、あわよくば2名を落とす。

数的有利を作り出せば勝利への道が見えてくると考えていた。


情報収集機から送られてくる相手の動きを観察し、他のメンバーに指示を送る。

「アズミさんとキサラギさんは2時の方向に向かってください。その方向に誰かいるはずです」

「わかったわ」「了解」

情報収集機が拾う情報では、そこに誰がいるかまで特定することはできない。だが、移動スピードからラインハルトかミリーのどちらかだと考えた。

「アリアさんは私について来てください」

「了解!」

ユキは、おそらくそこに居るであろう敵に向かって走っていく。


レオナ視点


レオナは、今回の模擬戦でこちらの戦力自体はユキチームより上である事を理由に、広く散開して待ち構える作戦を取る。

相手はこちらと真面にぶつかれば敗北は必須。ならば、多対一の状況を作りだして各個撃破を狙うしかない。

そこでレオナは罠を張る。


多対一の状況を作りやすいようにメンバーをバラけさせ、全員を囮としユキチームをつり出す。

狙われたメンバーが戦っている間に、他のメンバーが加勢できるであろう絶妙な距離を開けて全員を配置した。

案の定ユキ達は少し離れた場所に配置した、ラインハルトとミリーの方向へ移動していく。

「ラインハルト・ミリー、ユキチームがそっちに向かったよ。数は2・2に分かれて向かってるみたい」

「わかった」「了解」

「タカヤ、私たちも援護に急ぐよ」

「おう!」

全員に指示を送り、レオナ自身も動き出した。

(ユキは気付くかな??)

レオナは自分の情報集収集機でジャミングを行い、ユキが取得する情報に嘘を混ぜ込んでいた。

案の定、2組の内1組は、ラインハルトからズレた場所に、もう1組はミリーの近くへと進んでいく。

「ミリー、そっちに2人向かってる。そろそろ接敵するよ」

「わかった」

2人の所に向かっている敵チームの動向を監視しながら自分も2人に合流する為に急ぐ。


すると、ズレた場所に移動していた2人を内一人が急に方向を変え、ミリーの方へ向かっていき、もう一人はミリーとラインハルトの間で立ち止まる。

「!!・・・ミリー!そっちに3人行った!ラインハルトは道中に誰か足止め要員がいるから気を付けて!タカヤ!急ぐよ!」

「了解!急いで!」「了解、俺も直ぐに向かう!」

「・・・・ミリーの場所か、少し遠いぞ!」


(・・・・・たぶんこの止まってるのはユキかな・・・)

この反応からすると、ユキはレオナのジャミングに気づいていた様だ。反応に騙されたフリをして、結果3対1の状況を作り、一番早く援護に駆け付けられる者を1人で足止めするつもりなのだろう。

ミリーの方ではすでに2対1の戦闘が発生している様で、もうすぐ3対1になる。

ミリーは多対戦には不向きだ、早く援護に行かなければ撃破されてしまう。

ラインハルトの反応を見ると、徐々にミリーの方へ移動しているが、邪魔されているのだろう、間に合うかどうかは微妙な位置と速度だった。

急いでミリーの元まで向かい、ラインハルトも、もう少しと言う距離まで近づいていたのだがミリーの反応が高速で離れていき、ミリーと戦っていた反応が一斉にラインハルトの方へ移動していく。

「ラインハルト!ミリーがやられた!私たちの方に逃げてきて!」

ラインハルトの方へと方向転換し、指示を送る。

ミリーの反応が高速で移動しているのはシドが回収したからだ。このままではラインハルトは4人に押しつぶされることになる。

「撤退したいがユキが邪魔で動けない!クソ!明らかに時間稼ぎだ!」

(マズイ!この為に完全に足止めせずにミリーの方へ移動してたのか!?タカヤは!?)

タカヤはミリーがやられたと聞いて直ぐにラインハルトの方へ向かっている。このままだと私より少し先に着くことになるだろう。

他の3人がタカヤの所に到着し4対1での銃撃戦が開始された様だ、私が到着するには後2分はかかる。

戦場に向かっていると、4人の内の1人が私の方へ向かって来た。


(ここで私を足止めする気か・・・)

誰が派遣されたのか?アリアかアズミなら大丈夫、相性的には最善だろう。ユキでも問題は無い。戦闘技術は私の方が上だし、耐久力もそこまで高くない為時間は掛からない。

しかし、キサラギはマズイ。彼はタカヤの次に耐久力が高く、このアサルトライフルだと急所に当てなければ止められないだろう。

そう考えていると、岩影から銃撃を受け、瓦礫を盾に回避する。

そのまま止まらずに駆け抜け、相手に射線が通る所まで移動し弾丸を撃ち込んだ。

命中した手ごたえは有ったが、キル判定を与えられた様子は無く。直ぐに移動して私の移動の邪魔をして来る。

(チッ・・・キサラギだ・・・)

戦場の確認をすると、ラインハルトは一人撃破できたようだが、流石に3対1では持ちこたえられなかったらしい、シドに回収されて戦場から遠のいていく。

そして、一人はタカヤの方へ、もう一人は私を仕留めようと移動してきていた。

「クッソ!!なめんな?!」

私は声を上げてキサラギに突撃を掛ける。

キサラギも銃撃を行ってくるが、他のメンバーに比べれば練度は低い、銃口から射線を読み取り、そこから体をズラしながら全力で距離を詰める。

キサラギは苦い表情で私を睨みながら銃を撃ち続けるが、私とは鉄火場の経験が違う。

全ての銃弾を掻い潜り、アサルトライフルの銃口を胸部に押し付け引き金を引く。

発射された銃弾に胸を叩かれ、吹っ飛んだキサラギは地面へ倒れると動かなくなった。

すると、直ぐにシドが現れキサラギを回収していく。

(もう1人!)

もう一つの反応目掛けて突撃をかけ、相手に反応させる暇を与えずに撃破してやろうとする。

しかし、この数日間、一緒にシドにボコボコにやられてきたメンバーだ。

射線が通った瞬間に弾丸を放つが、横っ飛びで躱されこちらに向かって撃って来る。

こちらに向かってきたのはアリアだった。

(小癪な!!!)

今までにないほど集中し、射線だけでなく飛んで来る弾丸すら見えてきた。

此方に向かって正確に飛んで来る弾丸を全て躱しながらアリアへと距離を詰めながら銃撃を行うと、アリアは溜まらずに瓦礫の影に隠れてしまう。

このまま追いかけてもアリアは別の遮蔽物に隠れるだけだと考え、瓦礫の上に数歩で駆け上がり真上からアリアを狙う。

何故か緩やかにながれる世界で、私に気づいたアリアは驚愕の表情でこちらに目を向け逃げようとするがもう遅い。

銃から飛び出た弾丸がしたたかにアリアを打ちのめし、地面に沈める。


(最後はユキ!)

今タカヤと戦っているユキに向かって全力で走り出す。

以前ならとっくに息が上がっている頃だろうが、訓練のお陰でまだまだスタミナには余裕がある。

タカヤは苦手としている遮蔽物の多い場所に誘い込まれたようで、ちょこまかと動き回るユキに翻弄されていた。

(さあユキ!!!お仕置きだよ!!!)

私の接近に気づいたのだろう、ユキはこの場から逃げようとしているようだった。

(逃がさない!)

タカヤもユキが逃げようとしている事に気づいたのか足止めを行おうと瓦礫の上に登りユキを銃撃する。

逃走を邪魔され、岩場に逃げ込んだユキはタカヤに反撃しているようだ。

ユキの銃弾を食らったのだろう、瓦礫から転がり落ちるタカヤだったが、

(ナイス!タカヤ!)

私はユキを射線に捉え、必中のタイミングで引き金を引く。無数に飛んでいく弾丸が、逃げようと足に力を入れたユキを捉え、吹き飛ばした。


ユキは地面を転がり動かなくなる。


「終~了~~」


そこにタカヤと一緒にシドが現れ、模擬戦終了を言い渡す。

「お疲れ様。この模擬戦はレオナさんチームの勝利!」

シドの宣言に一気に体の力が抜け、地面にへたり込んでしまう。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・あ~~疲れた~~~」

私はそのまま倒れ込み、空を見上げる。


視界に入って来たのは、自分を祝福するように晴れ渡った青空だった。


ブックマークと評価を頂ければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ