シドの新装備 尾佐舟刀工製 無銘刀
訓練開始から1週間が過ぎ、ワーカー志望・スラム組は漸く体力強化マラソンを全員が耐えられる程度に鍛えられた。
タカヤとユキに比べてペースは遅いが、訓練密度が違うためこんなものだろうと判断している。
ワーカー組はマラソンでの荷物を増やし、今では60kgの荷物を背負って走っている。
それでも全員が完走できるようになっており、こちらの成長は目覚ましいものがあった。
特にキサラギの頑張りは驚嘆に値する。
スラム組からただ一人、ファミリーの幹部だからという理由でこちらのワーカー組に組み込まれ、よく耐えたものだとシドは感心していた。
戦闘訓練でも、他のメンバーとの連携度合いも上達してきており、射撃の狙いはまだまだ甘いが、装備さえ整えれば十分にファーレン遺跡の浅層でも通用する実力を身に着けたと考えていい。後は実地でどれだけ実力を発揮できるかに掛かっているだろうと思われる。
午前のマラソンが終わり、全員がへたりこんでいる前でシドはうんうん頷きながら言葉を発する。
「よしよし、これで全員最低限の体力は出来たと思う。これからも体力は伸ばしておいた方が生存率は上がるからキッチリ熟していってくれ」
シドの言葉を聞き、これで最低限かよと考えた者は多かっただろう。
「午後からの訓練は昨日とはちょっと趣向を変える」
シドはそういい、腰の部分に着けられていたブレードを引き抜く。
そのブレードは、刀身は黒く輝いており、背に向けて反りが入っていて刃の部分は非常に鋭角に研ぎこまれていた。
それは刀と呼ばれる武器に似ており、通常の刀より、刃幅がかなり広めに作られている様だ。鍔は無く、刃と柄のみで構成されており、以前シドが使用していた双剣よりも攻撃性を重視して作成されていた。
「午後からはこれを使っていこうと思う。この刀を持ってる時は銃は使わない。その代わり、スピードを上げていくからしっかり考えて動いてみてくれ」
シドは超近接戦を想定した訓練を行うと言っている。遺跡の中では物理攻撃に特化したモンスターも多いから、それを想定した訓練なのだろうと皆は考える。
しかし、実際には以前から注文していた剣が昨日届き、早速使ってみたかっただけなのである。
「シド君。その刀ってどこで作ってもらったの?」
レオナはブレードを持つワーカーの存在は知っている。しかし、エネルギーブレードや、使用限界が来ると刃先を交換して使用するカッターブレードでは無く、刀を所有するワーカーは非常に少ない。切れ味は鋭いが、ワーカーが武器として使用するには折れやすく、メンテナンスも非常に高度な技術が必要なため、拘りが強いワーカーしか使っていなかった。
しかし、拘り抜いた刀は、専門のメーカーで作成されれば折れず曲がらずよく斬れる、の3良しの刀を作ってもらえる。その分非常に高額になるが・・・。
レオナはシドの刀をオーダーメイドだと見て、作成元を聞いてみる。
「これは尾佐舟刀工って所で作って貰ったんだ。オートマタ戦で双剣がダメになっちゃったからな」
澄ました顔をして答えるシドだが、嬉しそうな雰囲気を隠しきれていない。
レオナは(これは新装備を使ってみたかったって所か)と見破る。
(しかし、尾佐舟刀工か・・・確か北方の企業だね・・・またハイエンドな所に依頼したな~。幾らかかったんだろ?)
尾佐舟刀工は、現代では数少ない旧文明の流れをくむ企業だった。
普段は普通の刃物を作っている小規模の企業なのだが、その技術は刃物づくりに特化しており、金さえ積めば魔法の様な切れ味の刃物も作成可能である。
ブレード好きのワーカー達には非常に有名で、様々なタイプの剣を作り、高ランクハンターにも愛好家が存在する程だ。
その為企業規模ではありえない程の発言力を持っているのだが、政治的な動きをすることは一切無く、ひたすらに斬れる刃物を追い求める、ある意味で唐澤重工以上の変態企業だった。
「そんな訳で、今日はこれを使っていく」
刀を鞘に納めたシドからは、ワクワクといった感情が漏れ出ており、ワーカー組は何とも言えない感情を抱えることになった。
戦闘訓練が開始され、ワーカー組全員が岩場の中でシドがやって来るのを待っていた。
それは、今回は逃げるのでは無く、シドに一矢報いようと考えたからだった。
訓練開始前の作戦会議
「ねえ、この訓練でシドは銃は使わないんでしょ?ならさ、今日こそ一発入れられるんじゃない?」
そう発言したのは、この中でも勝気なアリアだった。
「ふむ、その心は?」
ユキがそう聞き返し、アリアは自分の考えを披露した。
「遠距離攻撃が無いって事は、私たちの方がかなり有利でしょ?包囲して一気に弾幕を張ったら流石のシドでも被弾すると思うんだけど」
この意見に納得の表情を見せる者と否定的な表情を浮かべる者に分かれる。
肯定的な者は、ラインハルト・キサラギ・アズミ・ミリー
そして否定的なのが、タカヤ・ユキ・レオナだった。
「そんな上手くいくか?弾幕なんか切り裂いて突進してきそうだぞ?」
タカヤが腕を組みながらそう自分の考えを言う。
「そうかな?彼の回避能力は凄まじいが、連射が利くA60 2丁と2本しか無いカタナでは弾丸を弾く数も劇的に減るだろうし、撃たれる心配がないならもっと大胆に攻撃出来る。現実的だと俺は思う」
ラインハルトがそうアリアの意見に賛同し、アズミとミリーも追従した。
「確かにね。流石に全員からの銃弾を2本の刀で捌き斬るのは無理だと思うわ」
「私もそう思う。あとは上手く包囲できるかが問題だけど」
「誰かが囮役になるしかないんじゃないか?まあ、アイツがそんな手に引っかかるとは思えねーけど」
キサラギがそういい、賛成の方向に傾いていく。
「う~ん・・・私もそう思うんだけど・・・シドさんだしな~~・・・・」
ユキは首を傾げながら悩まし気に頭を悩ませる。
「私はやってもいいと思うよ。でも、しっかり作戦を考えないと何もできずに全滅させられると思う」
レオナがそういい、アリアが反応する。
「どうしてそう思うんです?」
「シド君言ってたよね?スピードを上げるって」
レオナがそう言うと、その場の全員が考え込む。
今まで手も足も出ずにやられてきたシドがさらに加速する。確かに無策で銃をぶっ放せば勝てるなどとは到底思えない。
「・・・・やるならシッカリ作戦立てようぜ。俺も一発くらいは撃ちこみたいからな」
タカヤがそう言い、今回は全員で迎撃を行う事に決定した。
そして現在、もうすぐシドがここにやって来る。
作戦通り、レオナの合図で全員で散開し、シドを囲い込む様に動く。その際の囮役を演じるのは司令塔でもあるレオナが行う事になった。
包囲の進行状況を確認しつつ、シドをうまく誘導できそうな者はレオナ以外に居なかったからだ。
「皆、そろそろだよ。全員作戦通りに行動してね」
ユキの情報収集機とも連動させ、シドの進行ルートを正確に把握しているレオナは、もっとも包囲を成功させられる可能性が高いタイミングを見計らう。
全員が合図とともに行動できる様、それぞれが気を引き締めてその時を待った。
シドとの距離が400mを切り、彼の速度なら数秒でこちらに着くタイミングでレオナは合図を出す。
「散開!」
その言葉に全員が各々走り出し、各自指定されたポイントまで全力で駆けていく。
網膜に映るマップに全員が散っていくのを確認し、高速で近づいてくるシドを睨みながらレオナは銃を握りしめる。
シド視点
<今回は全員固まってるな>
<全員で迎え撃つつもりでしょう。シドがあんなことを言うからです>
<しょうがないだろ。使ってみたかったんだから>
<は~・・・・仕方ありません。攻撃する時は峰打ちでお願いします。あの防護服では中身の体まで真っ二つにしてしまいますので>
<わかってるよ。んじゃ、行くぞ!!>
シドは自分を迎え撃とうと銃を構えるレオナに向かって突撃していった。
レオナ視点
(来た!!!)
レオナは引き金を引き、シドの周囲に弾丸をばら撒く。
この程度でシドが止まるとは考えていない。しかし、この数秒の時間で一番近いポイントを割り振られたタカヤとユキがレオナの射撃に合わせてシドを攻撃する。
(タイミング バッチリ!)
2人の援護を受け、レオナも引き金を引く指に力を籠める。
シドは2本の刀で銃弾を弾き飛ばすが、やはり数の暴力には分が悪いらしく宙を蹴って弾丸を回避する。
そのスピードは今までの訓練で見せたものより明らかに速い。
レオナでも姿を見失わない様にするのが精一杯だったが、シドとの模擬戦に慣れているタカヤとユキは、シドを正確に追い銃撃を行っていた。
(やっぱりこの二人に頼んでよかった)
単純な戦闘能力だけなら、ラインハルトとアリアの方が高いかもしれない。だが、ことシドに関してはこの二人の方が上だと考えたのは正解だった様だ。
こちらに近づけさせない様に弾幕を張り、シドの行動を抑制していく。
すると、次に指定していたポイントに到着したミリーとアリアが銃撃に加わる。
不規則に跳ね回るシドに向けて更なる弾幕が襲い掛かり、シドは遮蔽物のある地面へと降りてくる。
(よし!読み通り!!!)
レオナはタカヤとユキに指示を出し、自分もシドを狙うために瓦礫の上に駆け上がっていく。
高所からなら遮蔽物に隠れようとしたシドの姿を捉え続けることが出来、シドに仕切り直しの機会を与えずに済む。
シドが銃を持っている時に高所に出るなど自殺行為でしかないが、今のシドは刀しか持っていない。
この場所にいても攻撃される心配は無かった。
各自が自分達の仕事を全うし、シドを追い詰めていく。
(最後は任せたよ!アズミ!キサラギ!ラインハルト!)
最後にポイントに到着したアズミとキサラギは、レオナの指示でアサルトライフルではなくMKライフルを持たされていた。
宙を駆けていたシドは、5人の攻撃で、地面に追いやられ必死に逃げまどっているように見える。
レオナからは、自分達の方向からは攻撃できない場所にシドが移動した瞬間を狙って撃てと言われている。
それは自分達の目の前、距離にして100~150m程だろうか。
5人の銃弾に追い込まれたシドは、自分達の前に逃げ込んでくる。
(今だ!)(貰った!!)
二人は同時に引き金を引き、シドに向けて弾丸を放つ。
狙い通りに飛んでいった弾丸にシドが気付き、2本の刀で弾き飛ばした。
(これも防ぐの!?)(マジかよコイツ!!)
驚愕する二人だったが、それよりも驚く現象が起こる。
弾丸を弾き飛ばしたシドだったが、自分達の右後方からかもう一発の弾丸が飛んできてシドの胸部に命中する。
その衝撃で吹き飛ばされたシドは開けた場所に飛んでいき、受け身も取らずに2度3度とバウンドし倒れた。
アズミとキサラギは顔を見合わせ、今まで何をしても当てられなかったシドに弾丸を命中させた人物の方に目を向ける。
(当たった・・・・・)
ラインハルトは、アズミとキサラギよりさらに離れた場所でスナイパーライフルを持ち立ちすくんでいた。
「やったやったーーーーー!!!」
「勝った!!コレ勝ったよね!!!!」
瓦礫から飛び出してきたミリーとアリアは、嬉しさを爆発させて倒れているシドに駆け寄っていく。
動かないシドが気絶していると考えたのだ。
「待って二人共!!!あれくらいでシドさんが気絶するはずない!!!!!」
ユキが鋭い声で二人に警告を出す。
「「え?」」
一瞬ユキが何を言っているのか分からず止まってしまう。もう一度倒れているシドの方に顔を向けると、そこにシドの姿は無く顎先に何かが当たった事を感じると、その意識は暗転した。
シド視点
<意地の悪い事をしますね>
<そういうなよ、こんなモンスターもいるだろ?>
<否定はしません>
シドは先程の銃撃の中でもまだ余裕をもって行動していた。
本気でやれば切り抜けられたのだが、この状況を利用し、死んだふり作戦を思いついたのだった。
(敵の死亡を確認するまで気を抜いたらダメだぞ)
アリアとミリーの顎先を刀の柄で叩き、二人を気絶させると、今度は瓦礫の上で逃げ場のないレオナに向かって駆け出す。
シドの事を最後まで警戒していたタカヤとユキは、シドに向けて攻撃してくるが、たった二人の弾幕でシドを止められるはずもなかった。
シドが倒れ動かないのを見て完全に油断していたレオナは反応出来ずにシドの蹴りで吹き飛ばされる。
地面に衝突する前に受け身を取り、なんとか体勢を立て直そうとするレオナだったが、シドはその前に接近し首筋にもう一撃加えレオナの意識を断ち切る。
そこからはもう消化試合の様に時間が進む。
ユキが討ち取られ、タカヤが殴り倒され、アズミとキサラギも峰打ちで倒された。
残ったラインハルトは手に持ったスナイパーライフルで攻撃を続けるが、単発の攻撃ではシドの接近を止められる訳もなく敢え無く撃破されてしまう。
戦闘訓練が終わり、集合場所で全員が目を覚ます。
思った以上にダメージが大きいらしく、直ぐに起き上がることが出来ない。痛みが走る体を無理やり起こすと、近くにはシドが立っており、満足そうな表情を浮かべていた。
(なんで銃で撃たれるより殴られる方がダメージ大きいんだよ・・・・)
キサラギは心の中で愚痴をこぼしながら回復薬を手に取り飲み込んだ。
他の皆も同じように回復薬を飲み込み、体を回復させようとしている。
「シド君さっきのは無いよ・・・」
レオナが恨みがましそうにシドを睨む。
「そうは言うけど、死んだふりするモンスターも実際いるだろ?」
シドにそう反論され、レオナは顔をしかめる。
「それはそうだけど・・・」
そういいながら、自分もだいぶ抜けていたと考える。これは訓練であり実戦ではない。心のどこかでそう考えているからあの時、シドが自分に向かって来た時に反応できなかったのだ。
あれを遺跡でやってしまえば命は無い。
ランクが40になってからレオナは苦戦らしい苦戦をしたことが無かった。
ヤシロという頼もしい相棒がいるという事も大きいが、シーカーであるという事から戦闘は自分の本領ではないと無意識に考えるようになっていたのだろう。
しかし、後輩シーカーであるはずのユキにそんな意識は無い。
作戦の立案から索敵、自分からも進んで戦闘に参加するその姿は、シーカーである前にワーカーとしてやるべきことをしっかりと認識して行動しているように見えた。
遺跡でのトラップ解除や、システム回収は自分の専門だが、戦闘行為を人任せにしていては生き残れないと分かっている。
駆け出しの頃はレオナもその認識で自身を鍛えてきたが、最近になって緩みが出てきていると、この訓練でハッキリ認識できた。
(この訓練。参加できたのはラッキーだったな)
「ああ~~~~!勝ったと思ったのに~~~!!!」
レオナが自分を振り返っていると、ミリーが手足をジタバタさせながら駄々をこねるように大声を上げる。
「ほんとにそう!!ぬか喜びさせて不意打ちとか!!この人で無し!!!!」
ミリーの癇癪に乗じてアリアもそう非難の声を上げる。
「まあまあ、シドさんが人じゃない事には同意するけどな、死亡確認も終わってない敵に不用意に近づいた2人が悪いぞ、あれは」
「そうだね、油断大敵だよ」
タカヤとユキが2人に指摘する。
「ちょっとm「あれを油断って言う!?・・・・言うわね・・・でも、あれは仕方ないでしょ?!ラインハルトも何とか言ってよ!!!」
シドは何かを言おうとしたが、アリアの納得できないとラインハルトに援護を求める声にかき消される。
「おいタカy「まあそうだな。俺もシド君に命中させたときは呆然としてしまった。あの頭がしびれる様な感覚の後で冷静に行動するのは難しいだろう」
再度シドが声を出すが、ラインハルトに被せられ誰にも聞こえていない。
「タカヤさっk「でしょう?!ていうかなんであんた達はあの状況でも銃を構えられたのよ!」
アリアはタカヤとユキに食って掛かっていく。そしてシドの言葉はまた届かない。
「いやさ「だって、シドさんが一発しか食らってないのに動かなくなるなんておかしいよ」
「そうだな。それに、ラインハルトの攻撃は完璧なタイミングだった。あれはシドさんでも避けられなかったと思うけど、食らった時の様子が不自然だったからな、それが気になって演技じゃないか?って思ったんだよ」
シドの抗議は全て遮られ、議論は続いていく。
「私とキサラギは直撃したところを見たけど、不自然じゃなかったわよ?」
「ああそうだな。衝撃を逃がそうとしてる素振りすらなかった。それがなぜ不自然なんだ?」
アズミとキサラギがそう疑問を投げる。
「受け流す気配すらなかったことが不自然なんだよ。シドさんはあの嵐の様な攻撃を避けられるんだぞ?MKライフルの銃弾を弾くのに力が必要だったとしても、ラインハルトの弾丸に気づかなかったとは思えない。避けられないまでも体を捻ったり後ろに飛んだり、何かしらダメージを軽減する行動がとれるはずなんだ。それなのに真面にくらって吹っ飛んだ。その後受け身を取る様子も無くダウン。これは何かの罠だって思ったぜ」
「それが案の定罠で、まんまと引っかかったアリア・ミリー・私は直ぐに叩きのめされたって訳ね・・・」
「まあ、そうなりますね。対人でも対モンスターでも、撃破確認は必須です。死体蹴りに成ろうとも、しっかり確認してから戦闘姿勢を解除しないと」
レオナの言葉に同意するユキ。
こういうことは先輩の私が言うべきなのにな、と心の中で呟き苦笑いをするレオナ。
「ちょっとすまん。車でレーション貰ってくるわ。運動と回復のせいで腹減ってきちまった」
タカヤはそう言うと、車の方へ駆けていく。
「それなら俺も」
「俺も行く」
ラインハルトがタカヤに続き、キサラギも続こうとする。
「それなら全員分持ってきてよ。食べながら次の作戦考えよう」
レオナに笑顔でそう言われ、ラインハルトとキサラギは全員分のレーションを取りに行かされるのであった。
<散々な言われようだな・・・>
<これが身から出た錆と言う事でしょうか?>
<それは意味が違くないか???>
その日の戦闘訓練は、ユキとレオナが交互に作戦を出しシドを仕留めんとありとあらゆる方法で戦いを挑んできた。
その度にシドは力づくで突破し、叩き伏せる。
だが、卑怯と言われる様な戦い方をしたのは最初の一回目だけ。
後は正面から正々堂々と戦い、シドは全勝を飾る。
しかし、回数を重ねるごとに全員のチームワークが上昇していき、次第にシドに被弾させることが出来るようになって来ていた。
<これは、プランを前倒しにしてもいいかもしれませんね>
<ん~・・・そうかな>
<なにか不満でも?>
<いや、今日一日でもこのメンバーの戦術眼?ってのは凄く鍛えられたと思うぞ?でもさ、俺に特化しすぎてないか?>
<それはそうでしょうね。今戦っているのはシドですから・・・・しかし、ワーカーとしてそれが正解かと言われると違うと思います>
<そうだよな~・・・どうしたらいい?>
<ある程度練度が安定してきたら、お互いに戦わせればよいと思います>
<ん?このメンバー同士でか?>
<はい、ちょうど数も半分に割れます。メンバーを変更しながら臨機応変な対応を考える機会になるかと>
<なるほどな~・・・・その場合俺は何するんだ?>
<キル判定を受けた人を運んでください>
<さいですか>
全員が奮起した結果、限界以上に体を動かしたらしく、訓練終了時には全員が地面に倒れ動こうとしない。
ワーカーオフィスの送迎は1週間で終了なので、これから全員自分の足で宿まで帰っていかなければならないが、回復薬を飲んでもまだ動ける者が出てこなかった。
<・・・これは俺が引きずって帰るしかないか?>
<最悪の場合はそうなるでしょうね>
シドはこの8人を運ぶ方法を考えため息を吐き出すのだった。
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